まだ涼しいと感じられる夏の午後。
開いた窓からとある2階の部屋を覗くとそこには、
扇風機の風を受け、ブツクサ言いながら夏休みの宿題をやる男子高校生がいた。

この歳にもなって、親から「宿題が終わるまで遊びに行ってはいけない」と言われているのだ。
バレずに外に出る事は難しく、しょうがなく宿題に取り組んでいた。
元々勉強が好きではない彼は、飽き飽きしていた。

そんな彼に小さな荷物が届いた。

宛名の欄には「クキ様へ」と書いてある。
少年は自分の名前が書いてあることに驚いた。
通販を頼んだ覚えはないし、差出人は不明だ。

不思議に思いながらも封を開けると、
そこには薬のカプセルが大量に入った小瓶と、手のひらサイズのジェットパック。
それとメモが入っていた。

薬とおもちゃの変な組み合わせが送られてきたと思ったクキは、
とりあえずメモを読んでみることにした。
メモにはデカデカと見出しでこう書かれている。

『女の子の着替えや入浴シーンを覗きたいと思った事はありませんか?
 その願い!この薬で叶います!』

「マジで?!」
思春期真っ只中のクキは飛びついた。目を見開いて続きを読む。
 

『この薬を飲めばあなたは掌に乗っちゃうくらい小さくなれます。
 小さくなれば周りに気づかれる事はありません!
 女の子に紛れて好きなところに入り、堂々と覗いちゃいましょう!
 移動には同封のジェットパックが便利です!』

「小さくなる?へ〜、面白そうじゃん♪
 って事はこれおもちゃじゃなくてマジで動くの?!やべ〜w」

楽観的なクキは、面白半分でメモを読み進める。

『このジェットパックが小さいのは見た目だけじゃありません!
 音も小さく、気づかれずに素早く動けます!
 甘い香りで満ちている女の子の秘密の花園を自由に飛びまわりましょう!

 あなたに彼女がいるのなら、全身を胸や足で包まれるという素敵な体験も出来ちゃうかも!
 新しい快感を、五感で思う存分堪能してみてはいかがでしょう!』

「うお〜!いいじゃんいいじゃん!
 でも、気付かれないって事は蹴っ飛ばされたりするんじゃね?...
 流石に死にたくはねーな…」

喜んだクキだったが、肩を落としてしまった。
ため息を吐いて続きを読む。

『踏まれちゃうかもって思いましたか?
 大丈夫!この薬は体も頑丈にしてくれます!潰れる事はありません!
 なんと痛みも感じません!何度踏まれてもへっちゃら!』

「神かよ!!!?」

最後まで読んだところで、思わず叫んでしまった。
窓の外からカーテンの開く音がした。

「ちょっとクキ!うるさいわよ!」

その声を聞いたクキは窓の外を見る。
飛び移れそうな距離にある隣の家の窓から、
ふんわりしたショートヘアーの女の子が、くりくりした可愛らしい目でクキを見ていた。
放漫な胸で盛り上がったランニングシャツから、へそやワキがチラチラ見えている。

彼女は幼馴染みのイリだ。
はっきりと物を言う彼女は不真面目な男子にとって近寄りがたい。
けれど学校でもかなり上位の見た目をしているので、
チラチラと彼女を見る男子は多い。

女子から人気が高く、一部男子からは煙たがられているイリだが、
クキにとっては仲の良い幼馴染みだ。
厳しく言われるのも今に始まったことじゃない。
こんなの慣れっこだ。

「ハハッ、悪い悪いw」

「まったくもう…おばさんから聞いたわよ。
 宿題やらないと遊びに行けないんでしょ?
 遊んでないで早く終わらせなさいよ!」

「うっ…でも宿題なんて飽きちまったよ
 な〜イリ〜、お前の宿題写させてくれよ〜」

「ダメに決まってるでしょ!
 こういうのは自分でやらないと意味ないの」

「い〜じゃんかよ〜クッソー…
 こうなったらいっそ、ほったらかしてゲーム三昧の夏休みでも過ごすかな〜」

「ダメよ!それじゃ遊びに行けないじゃない!」

「え〜…めんどくせぇ…
 別に俺が外に出れなくてもイリには関係ないだろ?」

「お、大アリよ!
 だ…だってせっかくの夏休みなのに、アンタと遊べないじゃない…(ごにょごにょ)」

「え?なんだって?」

「な、なんでもないわよバカ!」

イリはシャッとレースカーテンを閉め、顔を赤くして部屋に引っ込んでしまった。
クキは彼女の顔に気づかず、(あいつの方がうるさかったよな…?)なんて呑気に思っていた。

まあいっかと一蹴し、クキは目をキラキラさせて薬瓶の蓋を開けた。

(これがマジなら、宿題なんてやんなくても抜け出せるじゃん!
 うひょ〜っ、どこ行こっかな〜)

足元にジェットパックを置き、薬を一粒飲み込む。
ドクン!と体が響いたかと思うと、あっという間に掌に収まるサイズまで縮んでいた。

「マジかよ!本物じゃんこの薬!!」

思わず飛び上がる。
そのジャンプは可愛らしく、女の子の足首に届くくらいの高さだった。

「うお〜!部屋が広ぇ!端まで行くにも一苦労だなw」

部屋の中を走り回る。
今日はずっと机に座っていたため、まともに動けることに大はしゃぎだ。

部屋の広さをしっかり体感したクキは、いよいよジェットパックを背負う。
ご丁寧に、このサイズでも読める説明書までついてきていた。

「えーっと、ここをこうして…
 うおぉぉおおおーーー!!!ヤベェ!!飛んでる!飛んでるよ俺!!!」

持ち前の運動神経を活かし、すぐに操作にも慣れてしまったクキは窓辺に降り立つ。

「さってと、どこ行くかな…
 いきなり遠くまで行くのは怖ぇし…」

そう呟く視線の先には、開いている窓がある。
窓の先には、クキのよく知る美少女の部屋がある。

「普段怒られてばっかだし、ちょっとからかってやるかw」

自分の部屋を飛び出し、イリの部屋を遮るカーテンを潜り抜けた。
イリはローテーブルに向かって座り、宿題をしていた。

集中しているみたいで、テーブルの端に降り立ってみても気付く様子はない。
ガリガリとシャーペンの音が響く。
音の元を支える巨大な手がせわしなく動いている。
手の奥では、広告に使うアドバルーンのように大きな胸が、
クキの立つテーブルに乗っかっていた。

「おーい!イリー!」

叫んだ声は聞こえたらしく、イリは窓の方を向いた。
まさかクキが同じ部屋にいるなんて思ってもいないイリは、
立ち上がって窓へと歩く。

それはクキにとって圧巻の光景だった。
大きな胸は机の支えをなくし、大きく形を変える。
押さえつけられていたシャツはふわりと広がり、
中身が下から丸見えになってしまう。

顔を隠すほど突き出た乳房と、それを支えるブラがクキの目を釘付けにした。
10階建てのビルの高さまで上がったそれは、イリが動くたびにブルンブルン揺れている。

ズシンズシンと大きな足音を鳴らして横を通り過ぎた後も、
クキはさっきまでの光景を振り返り続けた。

「ちょっと何よー?居ないのー?」

カーテンを開け、窓枠に肘をついてクキの部屋に呼びかける。
しかし当然返事はない。
当の本人は部屋に上がり込んでいるのだから。

イリの声にハッとし、クキは窓を向く。
そこにはバンと突き出たお尻があった。

「うおぉ…すっげぇ迫力だ」

スラリと伸びた生足の合流点にあるプリッとしたお尻がある。
いたずら心が働いたクキはジェットパックを動かし、
小さな体でお尻にタックルをかました。

「きゃっ!」

驚いたイリは背筋を伸ばす。
振り返る頃には、クキはイリの顔の高さまで浮かんでいた。

「へっへー!俺はここだぜ!」

「ちょっ?!なによアンタ?!
 なんでそんなにちっちゃくなっちゃってるわけ?!」

イリは大きな瞳で空飛ぶ小人を覗き込む

「凄ぇだろ!空も飛べちゃうんだぜ〜!」

「待って…さっきお尻触ったのアンタね!?
 許さないんだから!!」

「バレたか!ほらほら、悔しかったら捕まえてみろよ!!」

体よりも大きな指を5本も操る、巨大な手がクキに襲いかかる。
飄々とした態度でクキは飛び回り、迫りくる手を何度もかわす。

「この…!!チョコマカ逃げるなバカ〜!!」

「へへ〜ん!捕まえてみろよノロマ!
 肉が付きすぎて早く動けないのか?」

「うるさいこの変態!!」

イリは顔を赤くして両手を振り回す。
しかしクキを捉えるどころか、触れることすら出来ない。

「んもう!アンタってハエみたいに飛び回るんじゃないわよ!!」

「や〜だねっ♪お〜にさんこ〜ちらっ手〜のな〜るほ〜うへっ♪」

2人きりの鬼ごっこは続く。
疲れてきたイリは、クキを見失ってしまった。
クキはこのチャンスを逃さず、すかさずイリの背後に回り込む。

「どこ言ったのよ!出てきなさい!」

イリは首を振ってキョロキョロ見回している。
その後ろでキクはニヤニヤしている。

(ば〜か、見失ってや〜んのw)

その時、余裕をこいているクキを強風が襲った。
いつの間にか、首振りを続けていた扇風機のそばにまできていたのだ。

「うおっ?!」

突然の出来事にバランスを崩してしまい、
驚きで声を上げてしまった。

「そこね!!!」

イリは勢いよく振り返る。
視界にクキは入ってこない。

イリはブルゥゥゥンと揺れた胸で、
無意識の内にクキを壁までボヨォォンと弾き飛ばしてしまった。

「あっ…」

あまりの勢いに、イリは殺してしまったのではないかと心配になる。

「ぶっ!グハッ!ぐべっ!」

胸で弾かれ、壁にぶつかり、床に落とされる。
見事に3コンボを喰らったクキだったが、全く痛みは感じていなかった。

「おぉ…マジで痛くねぇ!」

すぐさま立ち上がって感動するクキを見て、イリは安心した。
それと同時に、あれくらいじゃなんてことない事を理解した。

お尻に続いて胸も触られたイリは、
ズダァン!ズダァン!と、最初よりも大きな足音を立てながらクキの元へと歩き出す。

「や、やべぇ!!動け!!動け!!」

必死にジェットパックを動かす。
しかし頼みの綱からはプスン…と音を立てるだけで、全く動いてくれない。

あっという間にクキは掌に乗せられてしまった。

イリは笑ってさえいるものの、
その顔はピクピクと引きつり、声には怒気がこもっていた。

「アンタよくあんなに逃げ回れたわね〜。
 凄い凄〜い。
 拍手を送らなきゃね〜」

その言葉通り、パチパチと拍手をする。
クキを掌に乗せたまま。

べシン!べシン!と、衝撃が何度もクキを襲う。

その体はまるでゴムのように、潰れては戻りを繰り返す。
クキは最初さえその衝撃に驚いたものの、
痛みも無いのですぐに慣れてしまった。

(アトラクションと思えばおもしれーかも!
 ちょっと熱ぃけど…)

呑気なことを考えていると、拍手が終わった。

「それで?何か言いたいことはある?」

イリは顔を近づけ、笑顔で問い詰める。
その声には「最後の一言だぞ」と言わんばかりの怒りがこもっている。
怖いもの知らずのクキは、満面の笑みで答える。

「お前っておっぱいおっきいな!」

グシャッ!!

クキは握りつぶされてしまった。
全く痛みは感じていない。
それどころか、新たな感触を楽しんでいるようだ。

イリは手を開く。そこには元気なクキが居た。

「なぁ!もっかいやってくれよ!!」

イリは呆れてしまった。むしろ引いてしまうくらいだ。
なんだか怒るのがバカらしい。

「もー!どうしたらアンタを反省させられるのよー!」

「はっはっは!諦めろー!今の俺は無敵だぜ!」

へたり込む少女と手のひらで大笑いする小人。
そんな2人に、開け放した窓から風が舞い込んできた。
イリの鼻先に埃が舞う。

「っくしゅん!」

イリは思わず、クキが乗った手を口に当ててしまった。
唾混じりの豪風がクキを襲う。逃げ場はない。

「あっごめん」

イリはティッシュをとり、クキの体を拭く。

「注意してくれよな〜…
 うわー、きったねぇ、つーか臭ぇ!」

ピキッ

「アンタ今、臭いって言った…?」

イリの怒りスイッチがまた入ってしまった。

「ふ〜ん、そっか〜、臭い、臭いか〜…
 においは感じるのね〜…ふふふ…」

「お…おい…?」

イリの不気味な笑いにクキはたじろぐ。
嫌な予感がする。

「口の中でなら、アンタも反省してくれるのかしらね〜」

大きく口を開け、クキを上に掲げる。
目は笑っていない。
クキは大慌てで叫ぶ。

「うわああぁぁぁ!!待て待て待て待て!!
 呑み込んじゃったらどうするつもりだよ!!」

「別にいーじゃない!どうせ死なないんでしょ?!」

徐々に口との距離が近づいてくる。
もう喋るたびに息や唾がかけられる距離だ。

「お、落ち着けって!!
 ほら、死なないってことは、体の隅々まで俺にみられちゃうんだぞ?!
 汚いところまで全部見られても良いのか?!?!」

「う…それは嫌ね」

イリは観念した。さすがにあんなところやこんなところまで見られてしまうのは恥ずかしい。

(や、ヤバかった…!こいつならマジでやりかねない…!)

クキの心臓はバクバクとうるさく鳴っている。
なんとか今すぐ帰る方法はないか考えに考えている。

しかし、イリはただでクキを帰す気は無かった。
何かしら罰は与えたい…
考える入りの視界に、やりかけの宿題が飛び込んできた。

「アンタ、お尻が好きなのよね?」

「は?急に何を…
 うわっ!」

返事も待たず、クキをローテーブルのそばに投げ捨てた。

「イテテ…おいなにすんだ…よ…」

クキはすぐに影に覆われた。
見上げたクキの視界には、イリのお尻が広がっている。

「お望み通り、好きなだけ触らせてあげる」

ズシーン!

イリは勢いよく座った。
クキを下敷きにして。

「しばらくそこで反省してなさい!」

そういうと、イリは勉強を始めてしまった。
クキはペシャンコに引き伸ばされている。
抜け出そうともがけば、イリは座り直してさらに強く押しつぶした。

まともに呼吸も出来ず、かろうじて吸い込む空気はイリから体から溢れるものばかり。
クキは耐えきれず、気絶してしまった。


数時間が経ったところで、イリは立ち上がった。

「ふ〜…キリもいいし、お風呂入ってこよっと」

そう呟くと、部屋から出て行ってしまった。
クキのことなんてすっかり忘れてしまっているようだ。

「…はっ!」

それから数十分後、クキは目を覚ました。
小さくなってからのことを思い出す。

(ここから早く逃げ出さねえと、次は何をされるかわからねぇ!)

慌てて頼みの綱である、ジェットパックの元へ走る。

「運良く直ってたり…しねぇよなぁ…」

ジェットパックは相も変わらずぷすんぷすんと悲しい音を立てている。

「くっそー!扉の隙間から出られねーか?」

出口に向かって走る。
あともう少しというところで、急に扉が開いた。
クキは扉に吹き飛ばされ、部屋の真ん中まで戻されてしまった。

扉の奥から現れたのは、タオル1枚で体を隠すイリだった。

(いっけない。替えの服持ってくの忘れちゃってた)

湯気を立てるその体からはいい香りがしている。
お風呂上がりの異性は、思春期の男子には刺激が強い。
クキは女神のようなその巨体に見惚れている。

タンスに向かって歩くイリの足を、クキは避けられなかった。

「ん?何かふんだみたい…」

足を上げると、仰向けになったクキが居た。
イリがクキのことを思い出すと同時に、
上げた足からタオルがめくれてとれてしまい、
一糸纏わぬ姿を曝け出してしまった。


「いっ....いやああああああ!!!!」

イリは全体重を乗せ、思い切りクキを踏んづけた。
一方で、初めてソレをモロに見てしまったクキは、鼻血を出して気絶していた。

散々踏みにじったあと、イリは全身真っ赤にしてクキを窓から彼の部屋へと投げ入れた。



翌日、クキは座られてからの記憶をきれいさっぱり失っていた。