衣替えの季節。
明るい日差しの中でブレザー姿の生徒たちが校門を通り抜けていく。
友達と話したり下を向いていたりといろんな生徒がいるが、毎日とある瞬間だけは皆の視線が1箇所に集まる。

「おはようございます」

落ち着いた声だがその言葉ははっきりと聞こえる。
声のした方を向けば、艶やかな髪を腰まで伸ばした綺麗な少女が凛とした態度で歩いている。
周りの生徒は彼女を見て呟く。

「来たわ、生徒会長よ」「あぁ、今日も綺麗……」

女子は彼女の姿に見惚れため息を漏らす。
一方で一部の男子の目は彼女の持つ特大な武器に集中していた。

「やっぱ生徒会長デケェな」「ブレザーが閉められないってどんだけだよ」

そんな様々な目で見られている彼女だが、近くにいるものには分け隔てなく笑顔で挨拶をする。
物腰も柔らかい彼女は生徒会長に選ばれるだけの評判があった。
問題行動とは無演奏中の彼女は先生からの評判も良く、
本来ならば閉めなければいけないブレザーの前も、身体的な理由ということで見逃してもらっていた。

しかし、そんな彼女にいつもつっかかってくる人間が1人だけいる。

「またアンタはそんな格好をして! だらしないわ!」

そう叫んで生徒会長の前に立ちはだかったのは、この学校の風紀委員長だ。
ズカズカと距離を詰め、顔を近づける。
男子よりも背の高い生徒会長に合わせるために背筋を伸ばすと、
立派に実ったたわわな胸が生徒会長の胸を押し上げた。
生徒会長ほどではないにしろ風紀委員長の胸もかなり大きく、全校生徒の中で1位2位の胸がぶつかり合う。
グイグイと胸を押し付け、きつい口調で言い放つ。

「ブレザーの前くらい閉めなさいよ! 生徒会長さんは服もまともに着られないの?」
「閉まらないのですから仕方がないでしょう。 アナタはいつも厳しすぎるのです」

見下ろす生徒会長と見上げる風紀委員長。
体格差はあれども、お互い一歩も引かずに睨み合う。

誰にでも優しい生徒会長だが、向かってくる風紀委員長にだけは強く言い返すのだ。
厳しすぎる風紀委員長は生徒からの評判があまり良く無く、
しょっちゅうぶつかり合う2人を見て、生徒会長の応援をするものがほとんどだった。

よく見るぶつかり合いは、いつもすぐに終わる。
2人とも真面目な生徒なので、授業や自分の作業には支障をきたさないよう、
こんなことに時間を使わないようにしているのだ。



ーーーーーーーーーー



その日の放課後、
生徒会長は生徒会メンバーを帰らせ、1人で生徒会室に残り仕事を片付けていた。
そんな時、静かな部屋にノックの音が響いた。
返事を聞いてガチャリとドアが開く。
入ってきたのは風紀委員長だ。生徒会長は座ったままため息を漏らす。

「またアナタですか……」
「何度でも来るわよ。 アンタが風紀を乱す限りね」
「私は乱してなんかいません!」
「どの胸を下げて言ってんのよ」

ペチンと胸を叩く。
柔らかな胸はブラウス越しにぷるんっと揺れた。

「いきなり何を……っ?! あ、アナタも大概でしょう!」
「私はちゃんと前を閉めてるもの。 そんなにだらしなく揺らしてないわ」
「閉めると苦しいのだから仕方がないでしょう」
「頑張れば閉めれるでしょう。 苦しくても我慢しなさいよ」

風紀委員長は聞く耳を持たない。
仕事も残っているのに、この人は……!
そう生徒会長が思いながら見上げていると、突然目の前から風紀委員長が消えた。

正確には体が一瞬で消え、その場で浮いた制服がぱさりとその場に落ちた。
生徒会長の頭は困惑しながらも、一つの病名を浮かべていた。





「アイタタタ……」
風紀委員長は戸惑っていた。
ただ立っていただけなのに突然体が浮き、尻餅をついてしまったのだ。
しかも服を一切身に纏っていない状態で、暗闇に放り込まれてしまっている。

とにかく暗闇から脱出しようともがく。
上には大きな布が覆い被さっているようで、まるでテントの下敷きになったようだ。
こんなことは今まで経験したことがないが、心当たりならあった。
「まさかそんな……」
違う、きっと違うと自分に言い聞かせながら這いずる。
風紀委員長もまた、一つの病名が頭に浮かんでいた。

布から這い出し、ようやく明るくなったかと思うとそこには、
椅子に座ったまま自分を見下ろす生徒会長の姿があった。

2人の頭の中で、かっちりとピースがはまる音がした。



【突発性縮小病】

それが2人の思い浮かべた病気の名前だ。
読んで字の如く、急に体が縮んでしまう難病。そんな病気がこの世界には存在する。
原因不明で治療不可。どの程度まで縮んでしまうかも様々で発見するのが難しい。
なんといっても、いつ、どこで発症してしまうか分からないのがこの病気の恐ろしいところだ。

生徒達の中にも発症者や目撃者がいて、2人もその話は聞いたことがある。
ある者は満員電車の中で発症し、たくさんの足から逃げられずローファーに踏み潰された。
ある者はプールの授業中に発症し、波に飲まれた後で水と一緒に飲み込まれた。
またある者は教室に1人でいた時に発症し、助けを求めて廊下に出た時に気付かず踏み潰されてしまった。

小さくなってしまった者はとてもか弱く、誰もが簡単に加害者になってしまう。
そこで政府は、不運な事故によって罪悪感を持つことの無いよう、
小人に危害を加えた者への罰は一切行わないと定めた。
その政策はどんどん過激化していき、
【小さくなった人間には何をしてもいい】という考えがすっかり広まっていた。
保護するのも自由。ペットとして飼うのも自由。一部の間では、玩具として売買されているという噂もある。

突然人が消えて服だけが残っている場合、
誰もが『発症してしまったんだろう』とだけ思い、後のことは気にもしない。



そんな世の中で、発症してしまった人間は恐怖に怯えることしかできない。
しかしプライドの高い風紀委員長は、精一杯虚勢を張った。

「ちょっと、早く助けなさいよ!」

発症してしまった以上、まともな生活を送ることは出来ない。
しかし人前で発症したのは不幸中の幸いだ。
運が悪ければ誰もいないところで発症し、のたれ死んでいたかもしれない。
癪だが、今は目の前の憎き生徒会長に助けてもらうことしかできないのだ。



生徒会長は足元の風紀委員長を見て驚いた。
話には聞いていたが、実際に縮んだ人間を見るのは初めてだったからだ。
どうすればいいか悩んでいると、風紀委員長が叫んでいるのがわかった。
その叫び声はなんと小さいことか。

いつも理不尽なほどに厳しく、生徒にキツく当たる風紀委員長が足元で叫んでいる。
その姿はとても小さく、圧なんてものは微塵も感じない。
しかも全裸だというのだから思わず笑ってしまう。
生徒会長の心に、悪い感情が芽生え始めた。



ギシッ
生徒会長が上半身を倒すと椅子が軋んだ。
風紀委員長は体をビクッと震わせる。その様子に生徒会長の口が緩む。
スラリと伸びた長い指も、小人にとっては丸太のようだ。
風紀委員長の体は今、人差し指程度の大きさしかない。

体くらい大きな指に摘まれ、巨大な顔の前まで持ち運ばれる。
ビルよりも高い位置で丸太2本に挟まれているような感覚が風紀委員長を襲う。
視界に広がる顔と自分を捕まえる指の大きさで、自分の小ささを実感してしまった。

先程まで攻撃していた相手に持ち上げられている恐怖や無力感。
そして裸を見られていることへの屈辱感や恥辱感で感情はぐちゃぐちゃだ。
込み上げたものを吐き出すように、小さなプライドで叫ぶ。

「何するのよ! 離しなさい!」

生徒会長は答えず、ただ微笑むのみ。
その後の言葉が出てこない風紀委員長の裸をまじまじと見つめた後で、ようやく口を開いた。

「校内で全裸になるだなんて、アナタが一番風紀を乱しているのではないですか?」
「なっ……⁈ 状況を考えなさいよ!」
「あぁ、そうですか。 私が持ち上げているから着れないのですね」

そっと手を地面に下ろし、服のそばに風紀委員長を置いた。

「馬鹿じゃないの⁈ そういうことじゃないわよ! どうやって服を着ろっていうのよ!」
「そこにあるのですから、着ればいいじゃないですか。 
 まさか風紀委員長さんは服もまともに着られないのですか?」

生徒会長は風紀委員長が朝言った言葉をそっくりそのままお返しした。
風紀委員長は顔を真っ赤にして反論する。

「それとこれとは話が別でしょ⁈」
「御託はいいです」

怪獣のような手が上から近づいてきて、迫力に目をつぶってしまう。
しかし摘まれることはなく、あたりが暗くなったかと思えば後ろの方で布の擦れる音が聞こえる。
恐る恐る振り向くと、自分が着ていたとは思えないほど大きく
テントのような布の塊から、ブラとパンツが持ち上げられていくのが見えた。

「ほら、せめて下着くらいは着けてください」

逃げる間も無く、それは覆い被さった。

はたから見れば、下着の下で何か虫のようなものが動いているようにしか見えない。
しかし実際にもがいているのは下着の持ち主である。
その様子は真面目な生徒会長に背徳感を与え、新たな快楽を覚えさせるカギとなった。

風紀委員長は己の惨めさを感じていた。
パニックになっていた発症時とは違い、今度はしっかりと【自分の着けていた服の下敷きになっている】と認識してしまっている。
しかも今は下着だけに苦しめられているのだ。
顔が熱くなり、涙が溢れる。
しかし負けてたまるかと踏ん張り、なんとか下着から這い出した。

「人の話はちゃんと聞きなさいよ!」
「それはこちらのセリフです」

足が横に振り下ろされ、ダン!と大きな音が響く。
実際にはつま先しか動かしていないのだが、不安定な小人を驚かすにはそれで十分だった。

「私だって着られないと言いました。 でもアナタは認めませんでしたよね?」

言葉に詰まる。
まさか自分に返ってくるとは思ってもいなかった。
歯を食いしばっていると巨大な手は今度こそ体を掴み、机の上まで持ち上げられてしまった。

グラウンドより広い机に下ろされる。
どむん!という音に振り返ると、高さだけでも自分の倍以上はある巨大な胸が机に下ろされていた。

「文句があるのでしたらお受けいたしますよ。 いつものように」

グイッと突き出した胸の奥に見える会長の顔は赤みを帯びており、
普段の清楚さからは想像も出来ない嗜虐的な笑みを浮かべていた。

ここでひき下がったら相手の思う壺だと思った。
わずかなプライドすら持てなくなったら、おもちゃにされるだけだと感じているのだ。
しかし普段のように胸を押し付けても意味はないと分かる。
そこで風紀委員長は、全体重を乗せて大きな胸に突進した。

結果は虚しく、確かな弾力に跳ね返されただけだった。
ブラ越しでは大して凹ませることもできず、与えた感触すら少ないだろう。

「どうしました? 押し付けてこないのですか? これでは手応えがありませんよ?」

嘲るような口調で優しく声をかけられる。
何度でもぶつかろうと決めた時、背中から指が襲いかかり、体を胸に押しつけられた。
グイグイと押し付けられ、2人の胸が形を変える。
一方は一部が凹み、もう一方は全体がおやきのように平たく潰される。
風紀委員長の突進で凹まなかった胸は、指で押しただけで凹むような柔らかさだった。

「これではまだ足りませんね。 アナタの押し付けはもっと強かったです。」

そういうと指の力がさらに強まり、風紀委員長の胸がもう潰れようのないほどまで潰される。
息も出来ないほどぎゅう〜っと押し付けられ、風紀委員長は失神してしまった。
動かなくなったことに気づいた生徒会長は手を離し、気を失った風紀委員長を見て笑う。

「良かったですね。 これからはいつでも私に注意することが出来ますよ」

生徒会長は落ちた制服と風紀委員長をカバンに詰め、
残っている仕事を鼻歌まじりに片付けていくのであった。