夕暮れ時、引っ越して間もない新居で穏やかな時間が流れる。
部屋はとても広く、まるで野原にでもいるような気分だ。
と言っても、それはあくまで俺にとっての話。部屋自体は一人暮らしにしては贅沢なくらいの広さだ。
そんな部屋でも走り回れてしまうのは、俺の体が小さいことが理由だ。
ある朝目覚めると、俺は縮小病という病気にかかっていた。体が小さくなってしまう、原因も治療法も不明な謎の病気だ。
まだまだマイナーなこの病気は世間に広まってなくて、生活を助けてくれる制度やグッズは心許ない。
そんな病気にかかった俺が一人暮らしなんて出来るはずは無い。
この部屋はもともと、もう1人の住民のものだ。
この部屋の主は、すぐそばで部屋で洗濯物を畳んでいるつーちゃんだ。
俺が小さくなる前からの彼女で、ついこの間正式に夫婦になった。
明るい性格で、俺が小さくなっても変わらずに接してくれた自慢の可愛い奥さんだ。
まだ新婚生活は始まったばかりで、色々と新鮮なことが多い。
鼻歌が可愛いこと、洗濯物を畳む仕草が丁寧なこと、そして……
「でっか……」
ついマジマジと見てしまうほど、取り出したブラが大きいこと。
見たことが無いといえば嘘になるけど、はっきりとみる機会は少なかった。
だって大抵はそれが支えていた中身に気を取られていたから……
ウチの奥さんは爆弾級のモノを持ってる。小人からすれば凶器になり得るほどだ。
あまりにも大きすぎると自重で形で崩れていくらしいけど、つーちゃんのソレはきれいな形をしている。
それはきっと、あのブラがしっかり支えてくれてるからなんだろうな。
感謝感謝.....
「そんなに気になるの?」
奥から声が降り注いだ。
流石に見過ぎたらしく、つーちゃんがジト目でこっちを見ている。
バツが悪くなって言い訳を考えていると、つーちゃんはニヤリと笑って俺にブラを被せてきた。
「あーくん捕まえたー!」
ぽふっと置かれたブラは潰れることなく、ドーム状のまま俺を覆い隠した。まるでかまくらみたいだ。
お日様の下で干されていたおかげでほんのりと暖かく、柔軟剤のいい匂いがする。
結構悪くないなこの空間。
居心地の良い空間でのんびりしていると、ブラのドームが傾いて外が見えるようになった。
「出てこないの?」
床とブラの隙間から大きな目が覗き込む様子はちょっとしたホラーだ。つーちゃんじゃなかったらと思うとゾッとする。
正体が分かっている以上、びっくりはするけど怖くはない。可愛いつーちゃんの顔が間近で見られて幸せなくらいだ。
「意外と快適だから出たくなくなっちゃった」
「ふ〜ん。あっ!じゃあこういうのはどうかな?」
パッとブラがどけられたかと思うと俺はつまみ上げられ、ブラの内側に乗せられてしまった。
ストラップを持ったつーちゃんが俺をブラごと揺らす。
「ほ〜ら、お手軽ハンモックだよ〜♪」
おぉ……これは……!
ハンモックには少し憧れがあって、乗ってみたいとずっと思っていた。
この身長だと乗れるはずなんてないと思ってたけど、まさか擬似体験できるなんて!
それになんといっても安心感が違う。しっかり包んでくれるし、本物よりこっちの方がいいかも。
それにしてもつーちゃんよ、下着を夫に触らせまくるだなんて恥じらいというものが無いのか。
まあ幼い頃から知ってる仲だし、これもつーちゃんらしいかな。
俺はしばらく下着ハンモックを楽しませてもらった。
大きく揺らされることもあったけどそこは流石つーちゃんのブラ。
底がしっかり深いおかげで振り落とされる心配は全くなかった。
洗濯物も畳み終わってつーちゃんが伸びをする。
めずらしく正座までしておしとやかなつーちゃんを見る時間も終わりかな。ちょっと残念。
そんな気持ちが読まれたのか、つーちゃんは優しく俺を見つめていた。
太ももをポンポンと優しく叩いて語りかけてくる。
「乗る?」
膝枕に誘うような仕草だ。
乗せてくれるのかと思った俺はコクリと頷いて、持ち上げてくれるのを待った。
だけどつーちゃんは動く気配がない。
もしかして聞き間違いだったのかなんて思いながら苦笑いすると、つーちゃんは薄目でニヤリと笑った。
「あーくんどうしたの? 乗らないの?」
どうやら自分で乗れってことらしい。
こんな時にまでいたずら心出さなくても……
しょうがない。せっかくのチャンスでもあるし、つーちゃんの遊びに付き合おう。
とりあえず膝の前まで歩いてみると、真っ白な肌が目の前に立ちはだかる。
見上げると膝の奥で巨大な胸が存在感を放っており、さらに奥ではつーちゃんがにまにまと笑っていた。
これ、足に乗ったら胸で顔が見えなくなるんじゃないか?
そんなことを考えながら、膝に手を伸ばす。
きめ細やかな肌はスベスベで、全く登れる気がしない。
「くすぐったいよ〜」
クスクスと笑うつーちゃんがもぞもぞと動くせいで、全然登れる気がしない。
膝から登るのは諦めて、横に回ろう。
横に回ったは良いものの、やっぱりこっちも難しい。
段差になると思っていたふくらはぎは太ももにのしかかられてるし、その太ももは軽い鼠返しになっている。
あとはお尻を登ってから前に回るしかないんだけど、それはちょっと気が引けるなぁ……
ペシペシと太ももを叩いて訴えかけてみる。
「もしも〜し。 ちょっと足広げてくんない?」
「え〜? このまま登ってよ〜」
「登れないから言ってんの。 動いてくれないなら、足の裏くすぐっちゃうぞ」
「それはダメ! もし私があーくんの方に倒れちゃったら大変だよ!」
ニヤニヤしていたつーちゃんが焦りだす。
そんなことになったら俺だって困る。新婚生活が始まって早々尻に敷かれるのは辛いし、それが物理的な大事故になるだなんてとんでもない。
「でも登れる場所がないからな〜。足の裏からなら登りやすそうだな〜」
白々しくそんなことを言ってみる。からかわれた仕返しだ。
「ちぇ〜。困ったあーくんをもっと眺めてたかったのにな〜」
軽口を叩きながら笑うつーちゃんは足を崩し、ふくらはぎの段差を作ってくれた。
おかげでようやく脚に登ることができた。
太ももが作る長い溝に寝転がる。これじゃあ膝枕じゃなくて膝布団だ。
見上げると、やっぱり胸の圧が強かった。つーちゃんの顔が全然見えない。
俺は太ももの感触やら匂いやらを楽しめるけど、つーちゃんは面白いんだろうか。
つーちゃんがモゾモゾと動き出したかと思うと、パチンという音が響いた。
その瞬間頭の上にあった巨大な2つの胸がズン!と落ちてきた。
思わず体がびくっと反応してしまったけど、胸はすぐに止まった。
これと似た光景を見たことがある。きっとブラを外したんだ。
つーちゃんはシャツを着たまま器用にブラのストラップに腕を潜らせた。
シャツの裾からずるりとブラを取り出して脇に置く。
シャツ越しに胸をぐぱっと開くと、つーちゃんの目が俺を捕らえた。
「こうすればちゃんと見えるね」
ニコッと笑うその顔はやっぱり可愛くて、いつ落ちてくるか分からない胸が上にあった時より落ち着いた。
結婚する前のデートとは違って帰る時間を気にせずのんびりできる。
そんな幸せを噛みしめながら、俺たちは楽しく話し込んだ。