世界に点在しているダンジョン。モンスターの生まれるその場所に、人々は恐れることなく侵入する。
 己の力を試す為。誰も見たことのないお宝を見つける為。新たな生態に出会う為。人によって理由はさまざまだ。

 今日もまた、とあるダンジョンに3人のパーティが挑んでいる。
 戦士が敵の攻撃を集め、盗賊が撹乱し、魔法使いが補助しつつ火力の高い呪文で押し切る。バランスよく構成されたそのパーティは連携が取れていて、レベルの低い相手には苦戦する事がない。それもそのはず、この3人は幼馴染なのだ。

 子供の頃から冒険者に憧れ、人の為にモンスターと戦う男戦士イスト。
 無茶の多いイストを心配し、側にいると決めた心優しき女魔法使いディマ。
 そんな2人をからかって楽しむ、イタズラ好きの女盗賊アトラ。

 子供の頃から常に一緒にいた3人の連携は、熟練のパーティにも劣らないものだ。

 しかしそれはあくまで戦闘中の話。
 普段から仲の良い3人だが、ある時から気まずくなるシーンが徐々に増えることになった。
 その理由は……



「ふ〜っ! やっと体があったまってきた。お前もそうだろ? イスト」

 アトラは鎖骨に流れる汗を拭き取りつつ、イストに語りかける。その手のすぐ下では、ドンと張り出した大きな胸が腕に押されて揺れていた。
 それを見たイストはすぐに目を背けるが、見てしまったその光景は脳裏にちらつく。
 
「そ、そうだね。アトラ」

 ドキマギするイストを見て、アトラは楽しそうだった。

 気まずくなる理由はこれだ。2人のたわわに実った胸をイストが過剰に意識してしまうのだ。
 小さい頃は当然そんなことはなく、無邪気に遊んでいた。しかし年が経つにつれ3人の体は成長する。2人の胸が膨らみ始めた頃はまだイストも意識しすぎることはなかったが、止まることを知らず大きくなり続けたそれは2人が何をしてもゆさゆさと揺れるようになり、やがて無視できなくなった。

 まじまじと見るのは良くない、そう思っていながらも本能的にどうしても見てしまう。そんなイストの葛藤が面白く、アトラは何かとその豊満な体でからかっている。その胸は顔よりも大きく、盗賊という割には動きづらそうだ。しかし服装は確かに身軽そうで、胸は布を巻いただけのチューブトップ。下はショートパンツという無駄のないもので、その分肌の露出が多い。胸は上からも下からも谷間が見えるし、綺麗なくびれや太ももは曝け出されている。おかげでイストはいつも目のやり場に困ってしまう。

 イストを戸惑わせるのはディマも同じだ。聖母のような優しさを持つ彼女だが、その体はとんでもない爆弾をぶら下げている。
 アトラよりも育った胸は並大抵の服には収まらず、大きめのローブを着てもその存在を主張する。人に胸ばかり見られるのは好きじゃないらしいが、襟は開かれ谷間は解放されている。本人曰く「蒸れるから」らしいが、イスト以外の男の目があるときは隠している事が多い。

 爆乳美少女2人に慕われる男1人。数多の男が羨むそのパーティがダンジョンを進んでいると、目の前に裸の美女が現れた。
 その瞳は鋭く、長い舌をチロチロと震わせている。長い髪が胸を隠し、腋には鱗が見える。鱗はお腹に向かうにつれどんどん増えていき、長い1本の下半身は全て鱗に覆われていた。人間と蛇の見た目が混ざったモンスター、ラミアだ。

 戦闘が始まれば先ほどまでの和気藹々とした雰囲気とは一変し、3人とも真剣になる。女とはいえモンスター。気を抜けばやられてしまうと理解しているイストは、顔を赤らめながらも壁として2人の前に立った。

 ラミアは手を前に出す。何か呪文を唱えるつもりだろう。イストは攻撃に備え、後ろの2人は迎撃の準備をする。火球だろうが槍だろうが、何が飛んできても迎え撃つ準備はできている。
 そしてラミアは人間には理解できない言語で何かを唱えた。

 次の瞬間、イストの姿が消えた。

 突然の出来事に2人は困惑する。しかしアトラはすぐにラミアを睨みつけ、勢いよく飛びかかった。

「テメェ!」

 その叫び声はイストの体を震わせた。
 彼はいなくなったわけでは無く、一瞬で小人サイズに縮められてしまったのだ。

 彼の頭上をアトラが飛び越えていく。その体はあまりにも大きく、まるでモンスターのように見えた。しかしそんな巨体が向かった先もまた、自分の何倍もある巨体だ。飛びかかったアトラの動きは単調で、いともたやすく尻尾にはじき飛ばされてしまった。
 飛ばされた先には小さくなったイストがいる。アトラはそのことに気づかず、持ち前の身軽さで着地した。おかげでイストは目の前に巨大な股間が迫り来る様を見せつけられた。その奥で見事な南半球が跳ねている。

「イストをどこにやった⁈」

 その問いにラミアはニヤリと微笑み、足元を指さした。釣られて股下を覗き込むと、そこには小人がいた。

「い?!」

 思わず耳を塞いでしまうほどの大声がイストに降り注ぐ。すくみつつラミアの方を見ると、長い尻尾がこちらに向かってきていた。イストが慌てて指を刺すと、アトラは「ちいっ」と声をこぼしてイストを拾い上げ、横に飛んだ。
 掴んだイストを腰のポーチに入れようとして思いとどまる。もしここに入れているとアイテムを取り出すときに落ちるかもしれないし、落ちたとしたら気づく事ができない。かといってこのまま手に持っていると満足に戦えないし、どうしたらいいのか……
 一瞬の思考の後、アトラはその手を自らの谷間へと突っ込んだ。

「落ちるなよ!」

 確かな弾力に包まれ、イストの顔が真っ赤になる。しょっちゅう見せつけられていたあの胸に、全身を包まれているという事実が体をこわばらせる。これはいつものおふざけでなく戦闘中の真面目な行動だと分かっていながらも、頭の中はアトラの体のことで埋め尽くされてしまった。

 しかしそこは本来ものを入れて置く場所ではない。柔らかな胸は動き回るアトラに合わせて上下左右に激しく揺れ動き、肌と肌が密着した空間は蒸れている。じわりと染み出す汗で滑り、イストの体は飛び出しそうになっていた。

「あぁもう、しょーがねぇな!」

 アトラは乱暴に手を突っ込み、一番圧のかかる部分までイストを押し込んだ。
 布に締め付けられた胸は四方八方から中の異物を抑え込み、汗の匂いを、女の子の甘い香りを、柔らかな弾力を脳にしっかりと押し付けてくる。
 2人がラミアを倒すまで、イストは脳も体も五感も全てアトラの胸に支配され続けた。



 ラミアとの戦闘が終わり、胸からイストを取り出す。大きな目が彼の顔を覗き込んだ。

「大丈夫か?」

 イストは激しい揺れに耐えられず、すっかり酔ってしまっていた。

「ごめん……無理だ……」
「ったく、しょうがねぇなぁ。ディマ、頼んだ」

 そう言ってディマの手にイストを乗せる。激しく動く自分よりはディマに預けた方が安全だと判断してのことだ。
 ディマは心配そうに声をかける。

「今日はもう攻略を諦めましょうか。元に戻るまでは私たちが守ってあげますね」

 優しく微笑むディマを見て、イストは自分が情けなくなった。守るべき2人に守られている不甲斐なさを感じる。しかし落ち込んでいてはさらに心配させるかもしれない。イストは精一杯の強がりを見せようと立ち上がった。

「心配しなくて大丈夫だよ。小さくたって戦えるんだか……ら……」

 はっきりと言い終える前に気を失い、疲れ切ったイストは手のひらから転がり落ちる。ぽにゅん、とアトラよりも柔らかな胸がその体を優しく受け止めた。
 ディマは「きゃっ」と小さく声をあげて驚いたが、落ちた本人は安らかな顔をしている。

「むにゃ……ふかふかだ……」

 ディマは小さくて可愛らしい小人を赤子のように愛しく思い微笑んだ。彼女が歩くたびふゆん、ほよんと揺れるその胸は、小人にとって寝心地が良くまるでゆりかごのようだ。
 帰りに湧き出る雑魚モンスターはアトラに任せ、世界一優しいゆりかごに乗ったままイストはダンジョンの外へと運ばれた。





「ん……ここは……?」
「あ、気がついたみたいですね」

 甘い香りと心地いい感触の中で目を開けると頭上に大きなディマの顔があった。かつてないほど近く感じる綺麗な顔に心臓が跳ね上がる。状況も整理できないまま飛び起きようとしたが、巨大な手に抑えつけられてしまった。

「あんまり動くと落ちちゃいますよ」

 大きな顔と手を見て、イストは自分が小さくなっていることを思い出した。そして自分が居る場所がディマの胸の上だということに気づき、顔が赤くなる。

「で、でも、こんなの悪いよ」
「良いんですよ、いつも頑張ってくれてるんですから。こういう時くらい甘えてください」

 大きな手が小さなイストを優しく撫でる。どう足掻いても勝てないと悟ったイストは抜け出すことを諦め、大人しく縮こまった。
 なるべくディマの体を見ないようにと前を向くと、アトラがテントを出す姿が見えた。

 この世界のテントには不思議な力が込められている。中で一晩眠れば体力も魔力もかなり回復し、状態異常も治る優れものだ。おまけに周りから存在を隠す魔法がかけられており、モンスターや野盗から襲われる心配もない。しかし展開してから一晩もすれば魔力は尽き、ただの布と化してしまう。おまけに場所を取るので、ダンジョン内などの狭い場所で使えないのが難点だ。
 そんなテントの準備が終わったが、寝るにはまだ早い時刻。3人は今日の反省や明日の予定について話し合いをすることにした。

 イストはずっと胸の中にいると落ち着かないと言って、2人の間に降ろしてもらう。しかしそれはそれですごい光景が目の前に広がった。まず何よりも驚いたのは、座っているはずの2人が立っている自分よりも遥かに大きい事だ。あぐらをかいているアトラどころか、足をピッタリと床につけて女の子座りをしているディマの膝ですらテッペンがジャンプしても届かない高さにある。身長よりも太い脚に囲まれる圧迫感はかなりの強さだ。
 そんな脚の付け根から上に向かって伸びる2人の体はまるで巨大な壁に見える。それが壁じゃ無いとはっきり言えるのは、大きく張り出した巨大な胸が圧倒的な存在感を出しているからだ。2人が前屈みにならないと、イストは顔をまともに見る事ができない。

 そんな光景にドキドキしているイストは発言が少なく、体だけでなく存在感も小さくなっている。そのせいで会話はほぼ2人の間だけで進んでいた。
 ディマがイストの方を見なくなった隙をついて、アトラはイストにデコピンをした。イストはディマの方に弾き飛ばされ、太ももの壁と服の天井で出来た洞窟に入れられる。計画通りと言わんばかりにアトラはニヤリと微笑んだ。

「ところでいいのか? お前イストから下着丸見えだぞ?」
「え? ……きゃあっ!」

 照れながら手で裾を押さえ、慌てて股を閉じる。間にいたイストはムチムチの太ももに挟まれてしまった。幸いにもディマの攻撃力で潰されることはなかったが、その健康的な太ももは脳にしっかりとダメージを刻み込んだ。
 アトラの表情から何が起きたか瞬時に理解したディマは慌ててイストを取り出す。

「ご、ごめんなさい。イスト! ちょっとアトラ!」
「ははっ、悪ぃ悪ぃ。……で? イスト。ディマの太ももはどうだった?」
「なんてこと聞くんですか! もう!」

 ぷりぷりと怒るディマを見てアトラは楽しそうだ。

「はー面白ぇ。にしても、小さくする魔法なんてあったんだな」
「私も知りませんでした。まだまだ勉強不足です。使えば強力な魔法だと思いますが、なぜラミアが覚えているんでしょう?」
「そりゃあ決まってるだろ。あのラミアだぞ?」

 ディマからイストを取り上げ、顔の上に持ってくる。

「きっと丸呑みするためだろ。こ〜んなふうに、な」

 イストの下で大きな口が開く。温かい吐息が漏れ出る口内はイストにとって地獄の釜のように見えた。
 今にも口に落としそうなその光景を見てディマは慌てる。

「ちょちょちょっとまってください! まさか本当に食べたりしませんよね⁈」
「当たり前だろ? ラミアじゃあるまいし」

 少し安心してため息を吐くディマ。そんな彼女を横目に、アトラはイストから手を離した。

「ちょっと味見するだけだよ」

 イストは頭から落下し、ぬるぬると滑る舌に頭から突っ込んだ。すぐに口は閉じられ、上半身が咥えられる。暗闇の中で体をあちこち舐められたのはこれが初めてだ。必死にもがくけれど柔らかな唇が体を離さず、ばたばたと足を動かしても衝撃を簡単に吸収されてしまう。アトラは手も足も使わずに楽しんでいるが、全身の力を振り絞っても抜け出せない状況はイストにとって恐怖だった。

 アトラは手のひらに吐き出したイストに顔を近づける。迫り来る口が怖くてイストは後退りした。

「ありゃりゃ、ちょっとやりすぎたか? 後で良いことしてやるから、許してくれよ」

 ケラケラと笑うアトラと手のひらのイストを眺め、ディマは小さく呟いた。

「いいなぁ……私もイストを……」

 そんなディマに、アトラはニヤニヤと笑いながら近づいた。

「ん〜? なんか言ったか?」
「な、なんでもありません! 今日はもう寝ます!」

 ディマは勢いよく横になる。
 アトラが涎まみれのイストを水辺で洗って帰ってきた時には、すでに寝息を立てていた。

「よし。ディマも寝たことだし、さっきのお詫びに良いもの見せてやるよ」

 イストを床に置くと、アトラはうつ伏せで倒れ込んでいく。お腹に潰されるかと思ったイストだったが、その巨体は腰を床に着け、腕を立てた状態で止まった。相変わらず顔は胸に隠れて見えないが、立派な南半球がしっかりと見えている。その奥から声が聞こえてきた。

「よ〜く見とけよ? でっかい胸が潰れる様ってやつをさ」

 ゆっくりと腕が曲げられ、徐々に胸が降りてくる。ぶら下がっていた大きな胸はやがて床に着き、形を変えて横に広がっていく。イストの頭が当たりそうなほどお腹の天井が降りてきた時には横に横にと押しつぶされ、いつもと比べてかなり平べったくなっていた。

「おまけにこうだ!」

 アトラは脇を閉め、腕を体に引っ付けた。イストからは外の様子が見えなくなり、女体に閉じ込められてしまう。
 思い出したのは胸の中にいた時のこと。あの時の弾力も圧迫感もないが、その匂いはあの感覚と同じものだった。脳に刻まれたあの感触を、イストは再び感じたくなっていた。

「はい、これでお終いな」

 アトラが体を起こすと、イストの周りに新鮮な空気が流れた。自由になったのは良いことなはずなのに、イストはアトラの体に閉じ込められる感覚が恋しくなっていた。もう完全に癖になってしまっているようだ。
 それでも「また閉じ込めてくれ」と言うわけにはいかず、アトラと一緒に寝る支度を始めた。





 夜も更け、ディマとアトラの寝息が聞こえる。しかしイストだけは悶々としたままで、全く寝付けなかった。
 アトラが面白がってイストを自分とディマの間に置いたので、3人は川の字で寝ている。

 アトラの寝息がイストの体を撫でる。横に倒れた体は2つの胸を重ね、深い谷間をこれでもかと見せつけてくる。あの谷間に飛び込みたい気持ちがイストの脳を侵食していく。しかし相手は無防備で、合意なんてものはない。理性との葛藤にイストは苦しんだ。

 反対側へと目を逸らせば、そこには仰向けで綺麗に寝ているディマの姿がある。重力に従って左右に流れるその胸は服によってそこに押し留められていて、寝ていてもその大きさは隠せない。寝息に合わせて上下するその光景も、イストにとってはかなりの刺激だ。

 どこを向いても女体を意識せずにはいられないこの状況で悶えていると、ディマがモゾモゾと動き始めた。

「ん……んぅ……」

 艶かしい声を漏らしたディマの体がイストの方を向く。その体に乗っていた大きな大きな胸が床へとなだれる。

むにゅううぅ

 服越しでも分かる、アトラよりも大きくて柔らかい胸が2つ重なって谷間を見せつける。顔がこちらを向いたことで時折漏れる可愛い声がさらに聞こえるようになり、甘い香りを纏った吐息が両側から流れてくる。

 こんな状況でぐっすりと眠れる健全で年頃な男などいるわけがなかった。





 翌朝、起きた2人が見たのは小さいままのイストだった。見るからにふらふらな彼を見て驚く2人に向かってイストは話しかける

「おはよう……テントって、寝ないと回復しないんだな……。初めて知った……よ……」

 イストは気絶するように眠りについたが、テントの魔力はそう長くは持たない。
 彼は小さいままでまた過ごすことになるのだった。