※Skeb依頼にて書かせていただきました。
縮小学園の設定をお借りしていますが、キャラは別物です。本家のキャラは一切出てきません。
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高校生探偵の俺は数日前、とある学園で起きている事件の調査を依頼された。なんでも、その学園や周辺で何人も行方不明者が出ているらしい。捜査の基本は情報収集から。ということで周辺の住民に聞き込みを行ったり、関連しそうな事件がないかネットで調べたりしてみたが、収穫はなかった。となれば、現場を調べるのが一番だろう。俺は潜入捜査をすることに決めた。
「助手くんには……言わない方が良いかな」
助手は中学生の女の子だ。俺のことを慕ってくれていて、探偵の仕事を手伝ってくれる。とはいえ同い年と比べても背が低くてか弱い女の子だ。手伝ってもらう依頼は迷子の猫探しみたいな簡単なものばかり。浮気調査やストーカー調査みたいな、時間も体力も必要な仕事をやってもらうわけにはいかない。特にストーカー調査なんて、一歩間違えたらこっちが襲われる危険だってあるんだ。虫も潰せないような子にやらせるわけにはいかない。
少しでも手掛かりが欲しかった俺は、この依頼については助手くんに話してある。クラスの子にも聞き込みをしてもらったが、特に情報は得られなかった。
もし俺が潜入捜査をすると知ったらきっとついてくるだろう。でももしかすると、俺も行方不明者になってしまうかもしれない危ない事件だ。一番怪しい場所にまで連れていくわけにはいかない。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
俺は1人で学園へと向かった。
*
「……手掛かり無し、かぁ」
学園の生徒数人に聞き込みをしてみたが、誰も心当たりが無いみたいだ。休日で人が少なく、部活をしに来ている生徒くらいしか居ないのが問題だろうか。しかし平日の授業中に堂々と歩き回るわけにもいかない。
人から情報が得られないのなら、やっぱり現場を調査するしか無いだろう。一見普通の学園に見えるが、人を消せるほどの何かがきっとあるはずだ。たとえば、人を監禁できるような地下室なんかが、教室とは違うどこかに……
しばらく歩いていると、気になる扉を見つけた。科学研究部の扉だ。他の部屋とは違い鍵がかかっていて、【危険 立ち入り禁止】と大きく張り出されている。
俺の勘が告げている。間違いなくここには事件につながる何かがあると。
周りに誰もいないことを確認し、聞き耳を立てる。人の気配はしない。中に入ろうとするが、もちろん鍵がかかっている。俺は探偵業で磨いたピッキングを駆使して鍵を開けた。
中には様々な装置や薬品が置かれており、一般の理科準備室とは比べ物にならない程の設備があった。高校生が通う学園ながら、企業の研究室とも張り合えるだろう。
鍵をかけ直して部屋の中を歩く。よくわからないものが並ぶ中、机の上に懐中電灯のようなものがポツリと置かれていた。この異質な空間では、一見普通のものに違和感を覚える。
手に取って見回してみるが、特に変わったところは見当たらない。なんでこんなところにこんな物が?
その時、部屋の外に人の気配を感じた。
「も〜! なんで忘れ物しちゃうかな〜。私のバカ!」
ドアノブをガチャガチャと回す音がする。俺はその出来事に驚き、うっかり手に持っていたそれを落としてしまった。落ちた衝撃で作動してしまい、俺の体が照らされる。眩しさに目が開けていられない。一瞬、体が波打つような不思議な感覚に襲われたかと思うと、光は消えた。
何が起きたか分からないが、戸惑っている間にも部屋の外の人間は中に入ろうとしている。
「えーっと、鍵は……。あったあった!」
(まずい、早く隠れないと!)
隠れる場所を探すために辺りを見渡して、俺は世界が変わっていることに気づいた。
(広い……。いや、何もかも大きくなってる……?!)
さっきまで手に持っていた持っていた懐中電灯は大きな船のように鎮座している。机は大きな家のような存在感を放っていて、上に何が乗っているか全く見えない。振り返った先の扉は数十メートル先にあり、大きな壁のようにそびえたっていた。
どう足掻いても動かせないだろうそれがガチャリと音を立てて開くと、そこから巨大な女子高生が現れた。
「あれ? なんで床に落ちてんの?」
ズシン!ズシン!
彼女が足を踏み出すたびに大きな音が鳴り、巨大化していく。実際に大きくなっているわけでは無いが、一歩で俺にとっての数十メートルもの距離を縮めるせいで遠近感が狂ってしまっているのだ。
やがて踏み出された足は俺の目の前に振り落とされる。
ズドオォォォン!
女子高生が生み出したとは思えない轟音が鳴り響く。しかしそれは意図して出した音ではなく、ただ歩いているだけで発生した音だった。その証拠に、その女子は俺のことを全く見ていない。その目はそばに落ちている懐中電灯を見下ろしていた。同じ高校生であるはずの俺が軽々と跨がれる。青と白の縞々パンツが俺の上空で止まった。
「転がって落ちちゃったのかな〜。壊れてないと良いけど」
グオオオオ
大きなお尻を包んだパンツが落石のように落ちてくる。
(潰される!!)
あまりの迫力に逃げることを忘れ、目を瞑る。しかし感じたのは風圧だけで、何かに押されるような感触は無かった。女子はしゃがみ込んだだけで、腰はおろさなかったのだ。懐中電灯に手を伸ばし、舐めるように見ている。
(今のうちだ……!!)
俺は扉に向かって走る。幸いにも入ってきた女子がズボラなおかげで、扉は半開きになっていた。俺は扉の隙間から外に出ることが出来た。
飛び出た先の廊下はまるで異世界のようだった。
はるか先まで続く道、横切るにも数十秒はかかるだろう幅。その広大な場所は壁の白さも相まって神秘感があり、まるであの世へ導く道かと見間違う程だ。
しかし実際には、一般の高校生が通り道として使うただの廊下だ。今も後ろから、ただの女子高生が歩いてきている。
そう、なんの変哲もない光景。何も怖がることなんてない。そのはずなのに。
ズシィン……ズシン……!!
徐々に大きくなる足音が体を震わせる。今は異常事態だと体が危険信号を発する。動けずに立ち止まっていると、足音は俺の後ろで止まった。嫌な予感に振り返って見上げると、ビルのような巨大な女子が俺を見下ろしている。
「何これ、虫? 気持ち悪〜」
女子は足を振りかざすと、テニスコートみたいに広い足裏が俺に影を落とした。
(まずい! 動け動け動け動け‼︎)
「潰れちゃえ」
ズドン‼︎
可愛らしい声とは反対に、重機が落ちてきたような激しい音が響く。俺は間一髪で落ちてきた靴を避けることが出来た。心臓がうるさく鼓動する。目の前にある巨大な物体がただの上靴だとはとても信じられない。こんな物が体に乗ったらひとたまりもないことは明らかだ。俺が何人いても持ち上げられない。
しかしそれは軽々と持ち上げられた。1人の女子によって。
「どれどれ、潰れたかな? あ、まだつぶれてな〜い! もう!」
また同じように振り落とされる足を俺は必死に避けた。
俺に取っては命懸け、でも女子によってはただの遊び感覚の攻防が続く。
そんな攻防が続くうち、やがて女子は俺を見失ってしまった。
「あれ? あの虫どこにいっちゃったんだろう? まぁいっか、どうせどっかで潰れてるでしょ」
ズシン、ズシン、ズシィン……
なんとか生き残ることが出来た。ただの女子に殺されかけるなんて、なんて様だ。
疲れ切った体を廊下の端で休めていると、懐中電灯を拾っていた女子が部屋から出ていった。今度はしっかりと鍵がかけられ、もう中に入ることが出来ない。
ここでじっとしていても駄目だ。元に戻る手掛かりは、あの女子が持っているに違いない。俺は小さくなった体で学園を歩き回ることにした。
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「ここが探偵さんの言ってた学園ですね」
数時間前から連絡が取れない探偵さんが心配になった私は、調査中の学園にやってきました。
お仕事に熱心な探偵さんは情報集めに必死だから、連絡が取れなくなるようなことは今までありませんでした。考えられるのは、事件に巻き込まれたということ。助手として、動かないわけにはいきません。何かあった時のためにと用意されていた学園の制服を着て、いざ潜入です。
……一番小さな制服でも少しブカブカなのが少し悲しいです。
疑われないコツは、堂々とすること。
探偵さんの教えをもとに、聞き込みを始めました。まず目に入ったあの二人組に話を聞いてみます。
「あ、あの……この人見てませんか?」
やっぱり無理です。堂々とはいきませんでした。
「さあ、見てないな」
「そうですか……。ありがとうございます」
軽くお辞儀をして立ち去ります。長く話すとバレるかもしれませんから。
離れる時に2人の話し声が後ろから聞こえてきました。
「あんな小さい子居たっけ?」
「さあ? 1年の転校生じゃね?」
ちょっと疑われてますが大丈夫そうです。この調子で聞き込みを続けましょう。
*
「はぁ……。全然見つかりません。探偵さんはどこに行ってしまったんでしょう……」
中庭に出た私は、思わずため息をついてしまいました。
でも落ち込んでなんていられません。もしかしたら探偵さんは事件に巻き込まれているのかもしれないんですから。それにもしこの事件を解決できたら、いっぱい褒めてもらえるかもしれません。
「……よし」
むん、と気合を入れ直すと、足元に虫さんを見つけました。
(可愛い虫さんですけど、うっかり踏み潰してしまうかもしれません)
私は虫さんに当たらないような位置に足を軽く踏み下ろしました。
「人の足元にいたら危ないですよ」
何度か踏み下ろしていると、虫さんは去っていってくれました。これで誰にも近づかないようになって欲しいです。見つかったらきっと潰されてしまいますから。
虫さんを見送った私は、探偵さんを探しにグラウンドに向かうことにしました。
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「ハァ……ハァ……」
やっとの事で校舎から出た俺は息も絶え絶えだった。廊下は床が綺麗な分見つかりやすく、一体何度虫に間違われ、踏み潰されかけたか分からない。外ならば適当な草むらにでも隠れていれば見つからないだろう。これからどうするか考えるためにも、俺はグラウンドに出てきた。
一息ついて見渡すと巨人が数人いる中で、周りよりも小さな巨人がいることに気づいた。あの顔には見覚えがある。遠くからでも分かる程何度も見た顔だ。俺はその巨人に向かって走り出した。
「おーい! 助手くん! 俺はここだ!」
散々虫扱いされた後で見つけた知り合いの顔は、絶望の中で見つけた希望だ。見つけてもらえれば、きっと助けてくれる!
まだまだかなりの距離があり、声は届かない。それでも俺は声を張り上げて走る。
恵ちゃんが立ち止まって辺りを見渡しているのは、きっと俺を探しているからだろう。こんなに小さくなっているなんて思ってもいないだろうし、俺が見つからなければまたすぐに移動してしまうはずだ。
「おーい! 気付いてく……わっ?!」
走っていた俺は助手のそばまで来たところで、急に謎の穴に落ちてしまった。ただのグラウンドになんでこんなに深い穴が……?
その穴は俺の背よりも深く広くて、真ん中が窪んでいて歪な瓢箪のような形をしている。そして穴の中はところどころ盛り上がっていて模様のようだ。
まずい、こんなところでモタモタしている場合じゃない。早く気付いてもらわないと!
「待ってくれ! 俺はここだ! 行かないでくれ!」
そんな叫びも虚しく、助手は歩いていってしまった。持ち上げたローファーの裏に見えた模様は、今俺が嵌っている穴の模様にそっくりだった。俺が広い落とし穴だと思っていたものは助手の足跡だったんだ。
*
なんとか足跡から抜け出した俺は、助手を追って校舎へと戻る。他の生徒が少なくなっているおかげで、助手はすぐに見つかった。
廊下と女子高生という何度も見た光景に足が震える。
落ち着け、大丈夫だ。あれは女子高生じゃない。うちの可愛い助手だ。
助手は虫も殺せないような娘だから、踏み潰されることはない。俺だと気付いてもらえるまで何度でも近づける。実際に俺は何度も女子高生に踏み潰されそうになったけど、今こうして無事に逃げ切っている。踏み潰す気のない警告なんて怖くない。しかも相手は女子中学生だ。その中でもさらに非力な助手なんて怖くない。
俺は深呼吸をして震えを抑え、助手へと近づいた。大丈夫、助手ならきっと気付いてくれる。そう信じて俺は走った。
これで助かるかもしれない。そう安心したその時。
ズシン!!
突然爆音が発生し、俺は突風に吹き飛ばされた。爆心地を見ると、巨大で重厚な助手の足がある。それは今まで俺が踏み潰されかけていた女子高生の足と大差ないものだった。
普段は可愛らしく見えていた助手の可憐な足を降ろす動作も、今ではこの小さな体を簡単に粉砕する大災害になっている。
「そんな所に居たら危ないですよ。小さな虫さん」
助手は俺のことを完全に虫だと思っているようで、何度も足を踏み降ろす。
考えが甘かった。確かに廊下に鳴り響く爆音は女子高生のそれよりは小さいのかもしれない。きっと助手は本当に踏み潰す気なんてないだろう。けれどもこれだけ大きさに差があると、巨人の考えていることなんて小人には何の関係もない。
一部でも自分に乗っかった時点であっけなく潰されてしまいそうな程巨大で重厚な足が、何度も目の前に落下して爆音を発生させる。踏み潰す気があろうがなかろうが、そんなことは小人には分からない。
女子高生の本気の踏み潰しも、女子中学生の警告の踏み鳴らしも、小さな体にとってはいつ潰されるか分からない恐怖の時間でしかなかった。
本来なら恐怖なんて全く感じない年下の少女。自分よりも背が低く、同年代の子と比べても身体能力が低い助手に、今の俺は簡単に踏み潰されてしまう。もし彼女が気まぐれやうっかりで俺に足を乗せてしまえば、それだけで俺の人生は終わってしまう。そんな現実を理解してしまい、俺は恐怖と絶望で一歩も動けなくなってしまった。
「虫さん、全然動いてくれませんね。怖くないんでしょうか」
助手は呆れている。ため息をつくと、踵を返して歩き出してしまった。
「早くそこから離れた方が良いですよ。他の誰かに踏まれちゃっても知りませんからね」
そう言って歩き去った助手は、数個先の教室へ入っていった。
見逃してもらえた。
そんな気持ちが湧き出る。全身から嫌な汗がドバッと溢れ、目に涙が滲んだ。
なんてことだ。助手を怖いと思うだなんて。
最も信頼できる味方に怯えていたら、きっと2度ともとに戻ることはできない。虫と間違われる俺は、本当の虫に会ったら死んでしまうだろう。こんな体だと、1人で生きていくことすらままならないのだ。
なんにせよ、助手の力は必要だ。
俺は意を決して助手の入っていった教室を目指した。
そこは空き教室で、助手の他に人はいなかった。
助手は椅子に座って何やらペンを走らせている。
「えーっと、あそこはもう探しましたし、この部活の人も知らなさそうでした。あとは……」
どうやら操作状況をまとめているらしい。あれならしばらくは移動しないだろう。俺は足元まで近づいた。
背の低い助手に学園の椅子は合わないようで、短い足がぷらぷらと浮いている。つま先を立てればなんとか床に届くかどうかというくらいだ。
そんな可愛らしい動作とは反対に、上靴の裏には小さな人間の残骸がこびりついている。俺も気づかれなかったらこの残骸の仲間入りだったんだろうと思うとゾッとする。
残骸にならないためにも、一刻も早く気付いてもらわないといけない。俺は人生でいちばんの大声をあげた。
「助手くん! ここだー! 俺はここにいるぞー‼︎」
助手は何の反応も示さない。
だめか。やっぱり今の俺なんて、普通の人間にとっては虫のような存在でしかないみたいだ。
座っていれば立っている時よりは耳が低いから、もしかしたら声が届くかと思ったけどそんなことはなかった。
こうなったら耳のそばで話すしかない。
俺は助手のつま先が床に近づいた時を見計らって、上靴へとしがみついた。ロッククライミングならぬ人体クライミングの始まりだ。
普段は見下ろしていた助手の小柄な脚も、今では柱みたいに長い。急に動き出さないことを願いながら、俺は靴下にしがみついて登っていった。
ひとまず椅子の上まで来てひと段落する。
しかしいつ動き出すか分からないので、俺は少しだけ休憩を挟んだ後すぐにスカートを登った。布一枚を挟んだ先にはぷにぷにの太ももがある。それは今登っている巨大なものが確かに助手の体の一部なんだと実感させた。
登るにつれ、上空にあった顔に近づいていく。しかしまだここで気付かれるわけには行かない。
もし見つかったら、また虫と思われて払い落とされるはずだからだ。
かといって、背中に回り込む時間も体力も惜しい。俺は見つからないよう祈りながら、なるべく肩までの最短距離を登っていった。
こんな時、助手が幼児体型であることがありがたいと思った。もし胸が発育してたなら、きっとひどい鼠返しになっていただろう。そんな失礼なことを考えながら、俺は肩へとたどり着いた。
頭の上には耳が見えている。後もう少しだ。
サラサラの髪の毛にしがみつき、登り棒の要領で上を目指す。全身でぶら下がっても気づかれないのは、嬉しいやら悲しいやらで複雑な気持ちだった。
ついに耳の穴まで見えた。俺は髪の毛を手放してゴールに辿り着く。
やっとだ。
これでやっと味方ができる……!!
俺は喜びを胸に最後の呼びかけをした。
「助手くん。聞こえるか?」
「えっ⁈ 探偵さん⁈」
すごい勢いで耳の洞窟が回転する。きっと俺が横にいると思ったのだろう。俺は振り落とされないよう必死でしがみついた。
「どこ? どこにいるんですか?」
グオングオンと振り回される。しかしここで落ちたら全てが水の泡だ。俺は最後の力を振り絞り、しがみつきながら声を上げた。
「落ち着いて! 止まってくれ!」
「はいっ!」
ピタッと揺れが収まる。慣性で飛ばされそうになったが何とか耐えた。
「信じられないかもしれないけど、今俺は君の耳の中にいるんだ」
「えっ……?」
どうやら困惑しているようだ。
無理もない。俺だって、急に「耳の中にいる」なんて言われても信じない。頭がおかしくなったんじゃないかと心配する。
そんなことを考えていると、ふいに地面が傾いた。
突然のことに反応できず、俺は耳の中を転がり落ちていく。
宙に投げ出された俺は死を覚悟したけれど、大きな掌が受け止めてくれた。
そのまま助手の顔の前まで運ばれ、大きな瞳に見下ろされる。
「探偵さん⁈ どうしてこんなに小さくなってるんですか⁈」
轟音が鳴り響く。助手はただ普通に話しているだけなんだろうけど、俺は耳が痛かった。
「ごめん、小さな声で話してもらっても良いかな?」
「あっ、ごめんなさい」
慌てて口を押さえる姿は可愛らしく、確かに助手なんだと安心した。気付いてもらえた今、怖がる必要なんてない。
「それにしても、よく耳の中にいるなんて信じたね」
「確かに変だとは思いましたけど、探偵さんの言うことですもん。信じますよ」
にへっと笑うその顔は巨大だけれど、安心感を与えてくれた。
「ありがとう。さて、こうなってしまったのは予想外だけど、これが失踪事件の正体に違いない。今の俺はまともに動けないから助手くんに頑張ってもらうよ。元の姿に戻るためにも調査を頑張ろう!」
「はい。分かりました」
助手はこくりと頷くと、俺をじっと見つめた。
うーん、と小さく唸ったかと思うと、制服の胸ポケットを引っ張る。
「手に持ってるとうっかり落としちゃったり握ったりしちゃいそうなので、ここに入っていてください」
少し照れくさそうにしながら、俺を胸ポケットに落とした。
中には甘い香りが充満している。
小さくなって良かったかもしれないと、少しだけ思ってしまった。