時は1940年、ドイツ軍は突如ベルギーへの侵攻を開始した。

アルデンヌの森。

静かな森の静寂は無数のドイツ軍戦車のキャタピラの音で打ち破られた。
空は急降下爆撃機スツーカや、空挺部隊が飛び回る。

電撃戦が火ぶたを切ったのだ!
この日の為に訓練を重ねた将兵たちがてきぱきと自分の担務をこなしていく。
士気、錬度ともに高く鍛え上がられた彼らはみじんも迷いがない。

8輪の装甲車両は部隊の先頭をきって、猛スピードで森林を駆け抜けていく。
小隊長は観音開きの金網カバーを開けて、双眼鏡を取り出し前方を確認する。


「貴部隊の前方およそ2400mに敵車両らしきものを発見。注意されたし」

偵察機からの報告が通信されてきたのだ。どうやら敵部隊が展開しているようだ。
「ハンス、出番だよ」

ヘッドセットのマイクを口元に手繰り寄せて、静かにしゃべった。

その瞬間、木々をなぎ倒す轟音とともに巨大な黒いブーツが地面に振りおろされた。
ブーツ着地の衝撃で幾人かの兵士たちは立つことができずに、次々に転んでしまう。
動揺した兵士は、のろのろと泥まみれになった顔を上空に向ける。そこには森の木々よりも
はるかに背が高い、巨大な少年が立ちはだかっていたのだ!

彼の名はハンス・シュタイガー
 
まだあどけなさが残る11歳の少年である。

彼はヒトラーユーゲントの内部組織である「ギガントキンダー」に所属する巨大少年兵士であった。
ナチスのヨーゼフ・メンゲル博士は、彼を人体巨大化プロジェクトの実験台として
巨大化施術を10年間行ってきた。当時の最高の医学と科学を結集しておこなった
ギガントガルテンプロジェクトはみごとに成功し、少年はみるみる巨大化していった。
軍は少年をペーネミュンデの地下基地に移送し、巨体を人目を遠ざけるように隠遁させていた。
その日が来るまでに...


さて人間が巨人を見るとき、まず足元から徐々に見上げていくのが普通だと思う。

まず黒く形のよいブーツがハンス君の足から膝下までを覆っている
対象的に雪のように真っ白で透き通るような肌の長い脚が二本、その上へと続いて伸びていく。
両脚は足元の小さな同胞を踏みつぶさないように、道路を跨いでその先の樹木に下ろされている。
まるで巨大な二本の塔のようである。

白く長い脚の上には小さく盛り上がった桃のようなお尻がぷるんと存在をアピールしているようだ。
そして巨大少年兵用に開発された黒いブルマは特殊鋼材で編み込まれて、巨大少年兵の激しい動きにも
十分耐えることができるのだ。
重量は装甲車両一台分ほどもあるが、少年にとっては薄地のポリエステル素材のような柔軟性をもつ
履き心地を享受しているのだった。
少年の無防備で敏感な下半身をきゅっと包み込んで、少年の部分を申し訳程度にガードしている。
初出動がうれしくて興奮気味のせいか、ブルマの前は少年自身が隆起して盛り上げられている。
ぴっちりとしたしめつけ感が少年に淫靡な快感を与えていることも手伝っているようだ。

上着はノースリーブ。国防軍採用のフィールドグレイで染め上げられている。
一着の製造にかかる工数は100人パワー/週とも言われている。
着心地を確保するために、ドイツ女性がほぼ手作業で裏地をぬいあげているからだ。

襟章の階級は少佐、であった。

若干11歳の少年としては異例の階級であるが、巨大少年兵としての戦力を期待しての処遇と察せられる。
産毛が太陽の光を受けてきらきらと輝いている顔は、ほんのり赤みをおびており、
金髪をきらきらとなびかせてながら、笑みを浮かべて見下ろしている。
屈強な兵隊たちもハンス少年にとってはおもちゃの兵隊にすぎない。
うれしさと憐れみがまざったような笑顔で彼らを見つめている。
ちょっと脚を振り上げて下ろせば、たとえ戦車といえど、鋼鉄がきしみをあげてひしゃげていくことは訓練でも
行っていたのでわかっている。
彼らは少年にとってもろすぎる存在なのだ。
本来少年という存在自体はか弱い...その少年がこんなエロティックな恰好で街を歩けば、
たちまちショタコンに襲われてしまうだろう
しかし現実には少年はとほうもなく巨大であり、うかつに近寄れば踏みつぶされてしまう恐怖もある。
巨大少年とは、性欲と恐怖心の二つのアンビバレンツな感情を抱かせてしまう現代の天使なのかもしれない。

天使のように美しく巨大な少年を見た敵兵は戦意を喪失すると考えたゲッペルスは、
その効果を増大させるべく巨大少年兵士コスチュームの制作を指示したのだった。

そしてそれはみごとに的中した。
背の高い樹木の上に広がる青い空。突然虚空にありえない大きさの人間の顔が飛び出した。
見慣れているはずの兵士たちは、彼がどんなに巨大でも年端のいかない子供だと理解しているにもかかわらず、
恐怖で震え上がってしまうのだった。

そんな彼は十分に自分の身体が小さな大人たちに与える効果を理解しているようだった。
ハンス君はその長い脚を上方に持ち上げて、足元の車輛や兵隊を大股で跨いで、その先に足をおろした。
アルデンヌの森の針葉樹は、巨大な黒いブーツに蹴り飛ばされて粉々に砕け散っていく。
轟音とともに土煙が巻き起こり、地面はえぐられて、土砂が地面に降り注ぐ。

年端も行かない11歳の少年がゆっくりと歩いているだけに過ぎないのだが...

部隊から数歩はなれると、少年は軽く深呼吸する。
口元に笑みを浮かべながらつぶやく。

「さあ、いくよ」

突然少年はその巨体を揺り動かして走り出したのだ。
足元の森の木々はひとたまりもなく吹き飛んでいく。そのスピードは先ほどの比ではない。
まるで森に絨毯爆撃をしているかのごとく、轟音とともに森が吹き飛ばされていく。
その凄まじい光景を小隊長は茫然と見ていた。
噂には聞いていたが、実際目の当たりにするとあまりの非現実的な光景に圧倒されてしまったのだ。
もしあそこに我々がいたら...想像するだけでぞっとした。
一瞬で虫けらのように踏みにじられてしまっただろう。
たとえ我らの戦車の中にいたとしても、だ。

小隊長は訓練中のハンスを訪ねて行ったことがあった。
彼の部屋は、ペーネミュンデの地下を200m掘削してつくられた。
部屋の壁は高さ100Mのコンクリートで囲まれていて、窓らしい窓はないが、
少年が背伸びをしても天井に手が届かないようにして、少年が圧迫感を感じないように配慮されている。
床は厚さ5Mのコンクリートの上に300mmの鋼板で覆われていて、巨大な少年の重量にも耐えれるように設計されていたが、
あちこちにひび割れが見てとれた。おそらく少年が退屈まぎれに足踏みをしたり、とび跳ねたことがあったのかもしれない。
今の少年がまだ5歳で身長が10Mもなかったころ、ありあまる力で尽くせる限りの「イタズラ」をした。
その残滓だと説明された。
よく見ると窪んだ床には無数のいまよりも”小さな”足跡がスタンプのように押しつけられており、
足跡の真ん中にはなにかを踏みつけたような跡もあるようだ。
何をふみつけたのだろうか?

少年が退屈すると、必ずやっていたのが動物園ごっこであった。
動物はもちろん本物のアフリカゾウやキリン、ライオン、そして人間も含まれていた。
身長9Mの巨大幼児ハンスは、アフリカゾウを抱き上げたり、またがったりして遊ぶことが多かった。
大きなアフリカゾウと言えど、ハンスの1/3程の肩高にすぎず、まるで柴犬のようにじゃれていたのだった。
ライオンはせいぜいネコサイズである。
やんちゃなハンス君がしっぽをひっぱったり、両手をつかんで立たせてみたりと、
玩具のようにいじりまわしても決してライオンが怒ることはなかった。
幼くても巨きな男の子には逆らえないとわかっていたのだろう...

そして彼が一番好きな”玩具”。それは人間だった。

生きたおもちゃ、彼らは戦争捕虜または犯罪者であった。
まず彼らは部屋の外にある待機用の収容部屋に移送される。
その後、少年が遊びたくなったときに部屋の隅に建てられた”ドールハウス”風2階建て家屋の中へはいって待機するきまりとなっていた。

ハンス君の部屋へ送り込まれてくる彼らは、死刑判決を受けている者たちである。
世界中のどんな子供でも手に入れることはできない、”玩具箱の中の生きたおもちゃ”にハンス君は目を輝かせた。

部屋にはいくつか扉がついている。
一つは主に人間が出入りするための小さめな扉。
もうお一つは少年用の食事を搬送するトラックが出入りする扉。
一番大きい扉は高さ60Mにも達し、重量も40tある。
扉はマイバッハ社製エンジンで大型油圧モーターを動かすことでゆっくりと開閉される。
この扉から部屋の外に出ると、短いトンネルがあり部屋の外に建造されている排泄施設に通じているのであった。
少年はそこで毎日用を足していた。
排泄物はただちに化学薬品で消臭・消毒し、専用大型エレベータで地上へ運びあげられて廃棄される。
また少年が巨大化するにつれて食事量が増大していくため、食料の生産計画を絶えず見直していく必要があった。

ハンス君が8歳のころは身長が30Mにまで巨大化していた。
体重はおよそ470t。
同年齢の子供の約25倍の大きさである。
ブルマのみ身に纏っている格好だ。

一回の食事で10tのミルクと8tのパンと肉を食べていた。
ミルクはV2号のオペル燃料補給車4台に封入され、部屋の下部にある搬入用扉から部屋の中へ進入する。
少年はトラックを無造作につかむと、運転手が乗っているのもお構いなしに顔の高さまで、
まるでロケットのようなスピードで持ち上げ、タンクのふたを丸太のような太い指でひきちぎり、
中のミルクをおいしそうにのどを鳴らせて飲む。
この間運転台に乗っている哀れな運転手は巨大少年の手でトラックを振り回されないことを
祈りながら、飲み終わるのを息を殺して待っているのだ。
もちろん高所恐怖症の運転手はこの任務には配属されていない。

あるときハンス君がミルクを飲み終わったトラックをいたずらでポイと頭上にほうり上げてしまった。
運転手は何が起こったのか理解する前に、天井のコンクリートにトラックごと叩きつけられて潰れてしまった。
少年は軽い気持ちでやったにすぎなかったのだが、叩きつけられたトラックはコンクリートの天井を削り取りながら
鋼鉄の床に落下し、爆発してしまった。
彼はあわててブルマを脱いだかと思うと、炎上しているトラックにむけて放尿をし始めた。
子供の浅知恵で尿で消火しようと試みたのだった。
しかしさすがは巨大少年、放たれた大量の水分によって、みごと鎮火させることができたのだった。