*地球上の物理法則を無視した記述もあろうかと思いますが、
全て作者の思い込みによるファンタジーとして理解のほどお願いいたします。m(_ _)m

「おはよう~♪」

朝、はるか頭上から甲高い声が響きわたる。
出勤途中の通行人をひょいひょいと跨ぎ越しながら、地響きをたてて歩いてくる巨人、健二くんである。
交差点の影からひょいと身体を現わして、電信柱を片手につかみながら股下にもとどかない人たちを
蹴り飛ばさないように注意しながら歩いている。

「はーい!みんなどいてね~♪あぶないよ~」

自分をさらに大きくみせるように、大股で脚を振り上げて進むのが大好きなのだ。
低学年の子たちの集団登校を見つけると、先回りして自分の股下をくぐらせる。
最近子供たちを見下ろしていると、なんだかおまたが熱くなってくる。
この快感を知ってから、挑発的なポーズをとって股をひろげる健二くんであった。

同級生で大きな子でも健二くんほどの背丈はもちろんいない。
一番小さな同級生は、なんと彼の穿いているハイソックスと同じくらいの高さなのである。
靴のサイズも66cmと特大である。もちろん特注。
比較対象物がない海などで、遠くから健二くんを見ればそれほど巨大には見えない。。。のだが
青いサッカーシャツにデニム地の半ズボンと白いハイソックス。
笑顔がまぶしい美少年であるが、身長は4m50cmをやや超える。

身体測定でも保健室においてある身長計は2mまでしか計測ができない。
通常であればどんなに背の高い小学生でも問題なく計測できるシロモノなのだが、彼の場合は例外だった。
体育館の天井に格納されているバスケットゴールポストにロープを結びつけて、地面まで垂らす。
その下に健二くんが立って背をできる限りまっすぐ伸ばしたままで、ロープが頭のてっぺんに接しているところ
をゆびでつまんで爪で印をつけろことで、計測できるようになった。
もちろん10cm程度の誤差はあると思われる。

体育館に入るときは四つん這いになっていかないと入れないのが玉にきず。
活発な少年としてはあまり楽しい瞬間ではなかったのだが、ドラえもんの「ガリバートンネル」をテレビで
見てから、「ガリバーごっこ」を思いついてしまう。

体育館に入る入口をガリバートンネルに見立てて、トンネルを通過する前は精いっぱい屈みこんで
自分を小人のように見せる。入口の扉をくぐりぬけた瞬間に思い切り立ちあがって、「ぐーーん」と
叫びながら素早く立ち上がり、その巨大な身体を見せつけるように伸びをしてから「ぼく、がりばーになっちゃった!」と言うのである。
最初からデカイよと言ってはいけない。
ここはみんなお約束でびっくりした!と言わねばならない。
もちろん先生も例外ではないのだ。

さすがに高さが12mある体育館の天井に手がつくことはないが、見ている同級生は毎回見せられているにも
かかわらず、今度こそ体育館の屋根を突き破るスーパー巨大少年になってしまった!と思うほど、心理的な効果は大きいものがあった。

また学校でサッカーの授業があったとき、思わず力が入って同級生ごとボールを蹴りあげてしまった!
あわれ蹴られた同級生は他の子供を巻き込みながら4Mほど吹っ飛んで地面にたたきつけられて
全身を複雑骨折で即刻病院送りとなり、ボールははるか校庭を超えて隣接する民家の窓ガラスを突き破ってしまった。

健二くんは悪びれたようすもなく、ペロっと舌をだしてごめんね♪と笑顔で謝ったが、
彼の周りにいた同級生や上級生は恐怖ですっかり凍りついてしまい、ばね仕掛けの人形のようにこくこくとうなずくだけであった。
救急車のサイレンの音が聞こえてくると、猛ダッシュで走り出して車道に飛び出した。
突然飛び出してきた少年に驚いたタクシーの運転手はブレーキペダルをきしむほど踏み込んだ。。。
が、間に合わずに少年の太ももにボンネットがぶつかってしまう。
さすがの巨人少年も衝突の衝撃に耐えきれず、もんどりうって道路沿いにある本屋の本棚を大きなからだでめちゃくちゃに壊したあと、
その隣の八百屋の店先に転がり込んで、積み上げてある野菜を段ボールごと蹴散らして大股開きの格好でやっと止まった。

でもすぐに何もなかったように立ち上がり、少年の頭は八百屋の瓦葺の屋根を威勢よく突き破ってしまった!
平屋の家屋。せいぜい3mくらいしかないから、少年が立ちあがったらひとたまりもない。
屋根から頭を突き出してニコニコしている。
なんだなんだと人が集まってくる。
「あああ、なんてことするんだよう~けんちゃん。。。」
「えへへ、ごめんね~っ!でもおじさんのところの野菜いつも買ってるからさぁ~。。。許してね♪」
お尻にはつぶれたカボチャやバナナがべっとりこびりついている。
すぐさましゃがみ込むと、店の中をこれ以上こわさないように注意深く外にでる。
しかし、家屋の柱という柱がへし折れてしまっていることには健二くんも気がついていなかった。
四つん這いになりながら身体を店から引き抜いた瞬間、あわれ八百屋は大音響とともに崩れてしまった。
店主は泣きながら訴える。
「わあああああ!!けんちゃぁぁああああんん。。。」

ここでも悪びれずに舌をペロリ。

この天使の笑顔をみた瞬間、大人たちは例外なく電気にうたれたように身体が痺れて、
あたかも魔法にかかったようにフラフラと健二少年を許してしまうのだった。

美少年は得。ということか