第3章~迫り来る巨大な女神様


暫くして、大和博一、福田正平は目を覚ました。彼らは無人の街中にいるようであった。
そして・・・そこが何処であるか、直ぐに理解した。そう、そこは撮影を行っていたミニチュアセットの街中だった。
すると、その街中に大音量の声が響いた。

緑:「アハハハ・・・ようやく気がついたみたいね、大和くん、福田くん。」
静:「アハハハ・・・では、撮影の主旨を説明してあげるわ。大和くん、福田くん。」

その声の主は言うまでも無く鹿島緑、鹿島静であり、彼女達もこの街中にいた。そう、周囲の建物よりも圧倒的に巨大な身体で聳え立っていた。

静:「内容は簡単よ。お前たちは鹿島姉妹から必死に逃げ回ればいいのよ。」
緑:「そして、私たち鹿島姉妹はお前たちを捕まえようと追い回すわよ。」
静:「そうそう、私たちの能力でお前たちの見る物全てが撮影されるようになってるのよ。」
緑:「どうかしら?凄くリアリティのある撮影になると思わない?」

大和博一はその主旨を理解した。確かにリアリティのある映像になりそうである・・・ただ、もしも彼女達に捕まったりしたら・・・しかし、あくまでも撮影の域を出ないのなら本当の危害までは
加えられないはず・・・様々な思いが頭を駆け巡っていた。
一方の福田正平は、完全にパニックになっていた。2人の巨大女に追い回される・・・どう考えても逃げ切れるわけが無い。逃げ出したくても逃げられない、絶望的な気分になっていた。

静:「では、リアル「巨大美女スーパーモデル撮影会」行くわよ~アハハハ・・・」
緑:「私たちに見つかって捕まらないように必死に逃げるのよ~アハハハ・・・」

鹿島静、鹿島緑は歩き始めた。意図的に地響きを響かせながら。大和博一、福田正平は二手に分かれて逃げた。
2人は建物の陰に隠れながら、時折上空を見上げ、巨大な鹿島静、鹿島緑の動き、視線に注意を払いながら逃げ回っていた。特に、視線が合ってしまったら直ぐに追いつかれてしまう危機感があったので
恐る恐る見上げていた。

しかし・・・鹿島姉妹は男の気配を感じ取ることが出来たので、姿形は見えなくとも容易く男を追い詰めることが可能であった。
そして、鹿島緑は福田正平を、鹿島静は大和博一に狙いを定めて追い回していった。それは、逃げている2人も感じていた。そう、福田正平は鹿島緑に、大和博一は鹿島静に狙われていることを。


福田正平は必死に街中を逃げ回りながら、何処か隠れることの出来る建物が無いか探していた。すると、1つのビルが中に入ることが出来る構造になっており、彼はその中へ逃げ入り、階段を上って
窓から外を覗いていた。

「あぁ・・・何とかやり過ごせないだろうか・・・?鹿島緑様に見つからないように・・・」

正平は祈るような気持ちでいた。しかし、鹿島緑は福田正平のその動きなど容易に読み取っていた。そして、その建物の前に聳え立った。

「うわぁぁぁ・・・巨大な鹿島緑様に見つかってしまった・・・」

正平は恐怖で震えていた。そして、鹿島緑は視線を下へと移し、福田正平の姿を確認した。

緑:「ウフフ・・・遂に見つけたわよ~福田くん。もう鹿島緑様からは逃げられないわよ~アハハハ・・・」

鹿島緑は笑いながら建物の中で恐怖と絶望で震えている福田正平を見つめていた。


大和博一は自分を標的に追い回している鹿島静から逃げながらも、見つからないギリギリの所までその美しい鹿島静の姿、巨大な女神様の姿を見ていた。
そう、それはカメラマンとしてのプロ意識からである。折角の企画を、良い作品にするために。
そして、少しでも自身の身の安全を確保するために、どこかの建物内に入って、2人の巨大な女神様の姿を撮影することを考えていた。
すると、1つのビルが中に入ることが出来ることが判り、そこへ入って階段を上っていった。

「よし・・・何とか此処から鹿島静様、鹿島緑様の姿を撮ることにしよう・・・」

鹿島静は大和博一の動きを容易く感じ取っていたので、ゆっくりと余裕を持ってその建物の前へと移動し、聳え立った。

大和博一は階段を上っていくと、そこに福田正平がいることに気がついた。

「あれ?福田さんもここへ避難しに来たんですか?」
「大和さん、ここへ来たらダメだ~!!!」

正平は半狂乱になって泣き叫んでいた。博一は窓の方を見て思わず後ずさりした。

「まさか・・・鹿島緑様がこちらを見ている・・・?」
「そうなんだ・・・鹿島緑様に見つかってしまったんだ・・・」

すると、2人は反対側の窓の方に気配を感じてそちらを見ると・・・そこには不敵な笑みを浮かべた鹿島静の顔が見えた。

静:「ウフフ・・・大和くんも福田くんも見つけちゃったわ~もう鹿島静様から逃げられないわよ~アハハハ・・・」

鹿島静は笑いながら大和博一、福田正平を見つめていた。


鹿島静、鹿島緑は2人の小人男が隠れている建物に向かってハァ~と熱い吐息を吹きかけた。その息は強烈な臭いを放つ唾液臭で、建屋の中にまで侵入してきた。
大和博一、福田正平はその強烈な臭いに苦しみ身体が痙攣し始めた。

(オエェェェ・・・なんて臭いの息なんだ・・・全身が痺れる・・・)

しかし、その臭気が徐々に甘い匂いに変化していることに気がついた。その匂いは先ほど眠らされた時の甘い匂いの吐息とは違う匂い・・・そう、それはチョコレートの匂いであった。

静:「ウフフ・・・私たちの息でこの建物自体をチョコレートに変化させてやったわよ~」
緑:「どう?良い匂いでしょ~周囲をチョコレートに囲まれてるから。ウフフ・・・」

2人は甘いチョコの香りに包まれて身体の方も回復していった。しかし・・・食べ物に包まれていると言うことは・・・
博一、正平は想像したくない現実が頭を過ぎっていた。

緑:「アハハハ・・・美味しそう~この建物も、福田くんも大和くんも。」
静:「アハハハ・・・食べてあげるわよ~大和くん、福田くん。」

大和博一はその言葉に流石に戦慄を覚えた。それが撮影の演出の範囲を超えているように感じたため。そして、福田正平はもう精神崩壊し、失禁までしていた。
そう、自分たちは巨大な鹿島緑様、鹿島静様に食べられてしまうと言う恐怖の現実に。

そして、鹿島緑、鹿島静は建物を巨大な舌で舐め始めた。濃厚且つ生暖かい唾がタップリと付いた舌で。
程なくして、建屋の壁に大きな穴が開き、博一、正平は静、緑の巨大な顔と対峙することになった。その恐怖感に耐え切れずに、福田正平は階段を降りて逃げようと企てた。
しかし、そこへ鹿島緑がネットリとした唾を流し込んできた。続いて、鹿島静も糸を引くような濃厚な唾を流し込んだ。そして、逃げようとした階段はあっという間に溶けてしまった。

静:「アハハ・・・鹿島姉妹から逃げようとしても無駄よ。」
緑:「アハハ・・・鹿島姉妹の唾で逃げ道が溶けちゃったわね~」

下の階へ逃げることが出来なくなった2人は、今度は上の階へ逃げようとした。そちらはまだ階段があったため。上へ逃げて逃げ切れる保証は無かったが、兎に角、美味しそうな獲物である自分たちを
見て興奮状態にある鹿島姉妹から逃げるために。
その無様な姿を静、緑は笑いながら見ていた。そして、彼らが逃げているフロアの辺り、というより、この建物自体をその巨大な舌で舐め始めた。

正平、博一は逃げながらも、建物自体が徐々に溶け始めていることに気がついていた。2人の巨大女、鹿島姉妹が外で何をしているかも想像付いていた。
遂に、建物自体が崩壊し始めた。彼らはその建屋の瓦礫に押し潰される・・・訳では無かった。
そう、この建物自体が既にチョコレートになっているのである。しかも巨大な女神様の唾液で柔らかくなっているため、彼らはそのチョコレートを全身で浴びる形になっていた。
つまり・・・2人の身体は上手い具合にチョコレートでコーティングされたのである。

これによって、福田正平、大和博一は鹿島緑、鹿島静から見ると実に美味しそうな食べ物になってしまった。