ノースリーブのセーター、デニムのショートパンツに黒スト
楓がよくしている服装だった。

一体何が起きているのか。誰ひとりとして状況が飲み込めていなかった。
遠目から見ただけでも身長40m程だろうか。
楓は元々身長が高いほうではなかったが…ここまで巨大だとかなりの威圧感がある。

周囲の人々も驚きを隠せないでいる。
俺達は巨大な楓に近づいていった。
「楓ー!!どうしたんだよお前ー!!」

どうやらこちらが小さすぎて気づいていないようだ。
「おーい!!」

「……?」

気づいた。
何も言わない楓。

すると楓は膝を曲げてその場に腰を降ろした。

ズズゥン!
大通りにペタンと女の子座りをしながら俺達を見下ろしている。
ここからだと胸に隠れて顔がよく見えない。
下から見ると楓の胸は普段より更に大きく見えた。

「…俺達を恐がってる?」

「なんで俺達を恐がる必要があるんだよ。動揺してるだけだろ。」

サークルメンバーの一人の一樹が楓の足元まで歩み寄って行った。

「おーい楓ーどうなってるのか説明しろよー!」

無言で一樹を見下ろす楓。
すると次の瞬間、楓は右手を顔の辺りまで上げて止めた。
一樹の問い掛けに対しての返事のつもりだろうか。
















しかしそれは…
とんでもない誤解だった。













グォ








ゴキゴキゴキゴキ





ズドォン!!
ブシャア!!



ピシャッ…



自分の顔についた生暖かいもの…それは血だった。



足元に転がるそれは…一樹の右腕だった。


*****



数分前、
同じサークルのメンバーの一人、高梨陽は一足先に駅を出て大学へと徒歩で向かおうとしていた。
そこで先ほどの地響きを聞いた。

気になり少し引き返して大通りへと出てみる。
そこで楓を見つけた…ありえないほど大きな……

右のほうを見れば知った面々。
楓に声を張り上げてコンタクトを取ろうとしている。

それに気づいてその場に座る巨大な楓。




ドズゥゥン…

地響きで立っていられなくなる。



濃い土煙が立ち一時的に視界が塞がれる。


ォォォォォ




土煙が晴れ視界が回復した時そこに見えたのは地面に向かって右手を振り下ろす楓だった。

振り下ろされるその手の先にいたのは…自分のよく知っている顔だった。


「なっ!…」


一樹の体の数倍はありそうな巨大な手の平が一樹の真上から迫っていた。

それが一樹の頭に触れた瞬間一樹の首はありえない方向にへし折れた。
そのまま腰骨を砕かれ両膝をついた一樹を止まることなく押し潰していく楓の手の平。
ゴキゴキゴキ
ドズグシャア!!

首が折れた時点で即死だった一樹を楓の手の平は止まることなく足元まで一気に押し潰した。




数秒前まで一樹のいた場所には巨大な手の平が君臨し、トマトを叩き潰したような状況が広がる。


上を見れば無表情の楓。
仲間を…叩き潰した…




そして偶然か必然か…楓はこちらを向き、自分を視界に捉えた。

逃げなければ。
本能が告げている。

しかし足がすくんで動けない。


*****



目の前で巨大な楓は一樹を虫けらのように叩き潰した。
目の前の状況が理解できない。

楓が表情も変えずに横を向いた。

「あれは…陽か?」

陽のほうへと上体を伸ばす楓。

そして右手ででこぴんの形を作り陽の前に突き付ける。

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!
なぜ逃げない陽!





…ピウッ


次の瞬間目の前の巨大な指は溜めた力を一気に解放し、それは陽に直撃し上半身を吹き飛ばした。
自分の身長程の大きさの指のでこぴんを喰らい陽の上半身は血飛沫と共に霧散した。

その場に残ったのは力無く崩れ落ちる下半身のみだった。