「なんで…なんでこんなこと…楓!」

問わずにはいられなかった。
殺されるのを覚悟で。




「暇つぶしかな。ふふ…勘違いしてるみたいだけど私が大きいんじゃなくてみんなが小さいんだよ?この街もね。わたしはあらゆる物を小さくして異次元に飛ばすことができるの。だからここから逃げるのは諦めて。出入りできるのは私だけ。」


「あいつは何を行ってるんだ。」
「昨日の光はそれか…だから電車も来ない。」



「これから毎日一回私はこの街に来てみんなと遊んであげる。食料とか必要な物は街にたくさんあるから安心して。街にいた人達みんなここに飛ばされてきてるから協力すれば私に殺されちゃう確率も減るかもよ?あ、私と戦うことは考えないほうがいいよ。だってこんな大きな人間に虫みたいなみんなが勝てる訳ないでしょ?」



俺達と大通り上の楓のことなどまったく知らない人達は呆然として聞いていた。

「あ、サークルで一緒の子達は見つけたら優先的に攻撃しちゃうかも。顔見知りだからなんかいじめたくなっちゃうし♪」


嘘だろ…
見つけたら優先的に攻撃って見つかったら終わりってことかよ。
あんなでかいのから逃げ切れるわけないし。




「じゃあ今日は初日だしこれで最後にしてあげよっかな。」


すると楓は四つん這いのまま俺達のほうへ近づいてきた。

ずぅん
ずぅん
ずぅん
ずぅん

わー!!
ぶちゅ

迫り来る巨大な手の平を避けきれず下敷きになり押し潰されてしまう人々。
数万トンの質量はあろう楓の巨大なお尻を支える黒ストに包まれた二本の太ももが固い膝で人々を粉砕していく。


楓の頭が俺達を通り過ぎた。
「俺達が狙いじゃない?…」




それは違った。



楓は俺達をまっすぐ見ていた。


そして俺達の真上には楓の巨大な胸。




「走れみんなー!!」



「ふふ…大きなお姉さんがおっぱいで押し潰してあげる。」


巨大なプレス機と化した楓の胸の着弾範囲から逃れるべく周りの人々も蜘蛛の子を散らすように逃げた。

楓がカクンと肘を曲げ巨体を落下させた。


空が落ちてくる!


ゴォォォォ
低く風を切る音がする。




ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!



爆風と衝撃で俺は吹き飛ばされた。


周りを見る。

サークルの奴らはどうなった!



「二人いない…」

近くに倒れていた早紀が言う
「ゲホッ…由紀と綾子が!転んだ由紀を綾子助けようとして一緒に…く…助けなきゃ!」


ここにいなければ二人は当然楓の胸の下だろう。


しかし生きているはずもなかった。

俺は着弾の寸前振り返って見た。

4トントラックが紙細工のように楓の胸に押し潰されていくところを…ましてや人間なんてひとたまりもないだろう。


おそらく二人以外にもたくさんの人が胸の下敷きになっていることだろう。

かすかに笑みを浮かべながら上から俺達を見下ろす楓。

楓の胸のほうへと走っていく早紀。

「よせ!」

楓の巨大な胸を谷間になっている場所で必死に持ち上げようとするが上がるはずもない。

「くそ…よくも二人を…なんでなのよ楓!この!このぉ!」

楓の胸を何度も殴りつける早紀。
それを無表情で見下ろす楓。
「この!この!死ね!死んじゃえ怪物!」

「むぅ、友達に向かってそんなこと言っちゃうんだ早紀。」

「あんたなんかもう友達でもなんでもない!」

「ふぅん。じゃあいいよ仲良しの二人と同じ死に方させたげる。」

「えっ?…」

次の瞬間
楓は上半身を少しだけ浮かせ前方に微調整すると早紀を一気に胸で押し潰した。


きゃあああああ!
ずぅん!
ごきごきばきぼき
ぶしゃあ

押し倒され楓の巨大な胸を真下から抱えるような形で早紀は押し潰された。


「あはは、結局サークルからは女の子三人私の胸で消えちゃったね。男の子達いっつも私の胸見てたからこの死に方がよかったんじゃない?」


こいつそんなつもりなさそうでやっぱり自分の胸の魅力は自覚してたのか。


「じゃあ今日は帰ろうかな。また明日遊んであげるね。ばいばい♪」

楓が立ち上がる。
胸からは押し潰された人々の圧死体が剥がれ落ちていく。
クレーターとなった胸の真下には無数のぺちゃんこに潰れた人、人、人。
そして目の前には早紀の成れの果て。
その向こうには由紀と綾子の潰れて一緒になった死体。
楓の胸でなければこんなクレーターはできないだろう。
押し潰された人々は一体どれほど莫大な重量をその身に受け潰れていったのだろうか。
自分より遥かに重いものに全身を押し潰される…どれほど苦しいんだろうか。

俺は自分がどんな殺され方をするのか案じた。
想いを寄せていた楓の手によって…





空間に光の筋が現れ楓はそこに消えていった。