目の前にそびえる黒い柱。
お店で売っているものと桁違いのサイズのブーツだった。

それを履いて自分を見下ろす巨人。
ブーツの上部には女の子らしい柔らかそうな太もも。
その上には白いミニスカート。
自分の高校ではまず見ないような大きな大人の女性の胸。
一番上に見える自分を見下ろす顔。
かわいい……

逃げなきゃ。
昨日はこの人にたくさんの人が殺されたんだ。
ナイフや銃を使ってではない。
虫けらみたいに叩き潰したり体で押し潰したり。
あれだけ大きな人間にのしかかられたんだ。
みんな一瞬で人間としての形を失って一気にぺちゃんこになった。
あの胸の下で…

ズン…

ズン…

ズン…

ゴシャア!!

ズゥン…

ズゥン…
乗り捨てられた車を踏み潰しながら自分に向かって近付いてくる巨大なブーツ。
一体どれだけの体重なんだろう。

「ふふ。震えてるよ。怖いのー?でもそのままそこにいると私に踏み潰されちゃうよ?逃げてくれると私も楽しいんだけどなあ。」

ニコニコしながら恐ろしいことを述べる目の前のお姉さん。

「…大丈夫君?あんまり怖がらせるとかわいそうだからあんまり痛くないように一気に踏み潰してあげるね。」

どこか言ってることがおかしい。

なんでこの人の娯楽のために僕の人生がここでこの人に踏み殺されて終わらなきゃいけないんだ。

ブーツが空高く上がっていく。
太ももが地面と平行になったあたりで上昇が止まった。
真下からはパンツがまる見えになっているが気にしている様子はない。
今から殺す相手に下着を見られようが恥ずかしくもないか…
「じゃあばいばい。昨日私に殺された人達よりは楽に死ねるはずだよ。一撃でぺちゃんこにしてあげるからね♪」

ぐぉ!



その時、ふいに生きたいという気持ちが間欠泉のように沸いて来た。