タイトル
「恐ろしい侵略者2」


どのぐらい眠ったのだろうか?
今が朝なのかそれとも夜なのかわからない。
高熱を出し意識を失うように眠り続けた、あの感じにそっくりで今の俺には全く時間の感覚がなかった。
目が覚め目を開くと見慣れない天井があった。
天井が高い、天井はコンクリートだった。

「そうか・・俺は今宇宙船に乗っているんだったな」

リアという巨人の姫とその部下、約100人の巨人たちと一緒に俺はある星へと向かっている。
リアは俺に王になって欲しいとお願いしてきた。
一度は断ったが、来てくれるまで絶対に地球から離れないと巨人たちは主張し、
そのまま地球へ居座られたら地球の食料や水などの資源が巨人たちに根こそぎ取られ、地球人の食べる分の食料が枯渇し、
そして巨人たちも地球の食料だけでは足りずそのうち餓死する。
そんな両方が破滅する未来でも俺が王として即位してもらえないなら、
餓死しても構わないと巨人たちが固く決心しており、どうしても曲げてくれそうになかったので、
俺はリアと呼ばれる巨人の宇宙人の姫と結婚し、彼女たちの住む星へ向かうことになった。


「あら、健司様お目覚めになりましたか?」
「うん、ぐっすり眠っていたみたいだ。今何時かわかる?」
「はい、現在地球時間で昼の1時です」
「え!もう昼なの?」
「はい、とても安らかにお眠りになっておられましたよ。健司様の寝ているお姿もお可愛いですね。うふふ♪」

自分ではほんの一時間ぐらいしか眠っていないと思っていたのに、ガッツリ眠ってしまったみたいだ。

「見てください。私たちの母星であるM2681が見えてまいりましたよ」

宇宙船の外を見ると地球によく似た青い星が見えていた。
M2681と呼ばれる星は地球と似ているだけで地球ではない。
その星の大きさは地球よりもはるかに大きく太陽すら凌駕していた。

「大きな星だね。どれぐらい大きいの?」
「はい、直径1200万キロです」
「じゃあ地球の1000倍の大きさか」

彼女たちも地球人の1000倍大きさだから、その住んでいる星も1000倍ということか。

「いや、待てよ。じゃあ重力も1000倍ってこと?それじゃあ俺は重力で潰されて死ぬんじゃ・・」
「いえ、ご心配には及びません。普通の地球人でしたら、M2681の持つ強力な重力でどんな頑丈な物でもペシャンコですが、健司様は特別な殿方です、
 この星の重力でも地球と同じように生活できます。ご安心ください」

なるほど、これがいわゆる突然変異ってやつか。
俺は彼女たちと唯一生殖行為のできる生命体であり、その巨人たちと生活するのだから強力な重力でも大丈夫なわけだ。

「私たちはこのM2681の持つ重力圏で生活をしております。地球の1000倍の大きさですから例え地面に伏せているだけでも地球人からは想像を絶するような
 ものすごい圧力が常にかかっております。その生活に慣れてしまいますと地球の重力はずいぶん緩く長いこといると体がなまってしまいそうでした」

リアはウーンと言いながら手を上に伸ばし背伸びをした。
地球に存在するどんな頑丈なものでもペシャンコということは、リアたち巨人に対し、地球の軍事力では太刀打ちできないということだ。
戦闘機やミサイルみたいな強力な兵器でもリアたちの住む星の重力に比べたら、全然大したことないということなのだろう。

「そろそろ、到着するみたいです。では健司様この中にお乗りなってください」

今まで机の上の窓から星を眺めていたが、その机の上にドンっと金色の箱が置かれた。
箱から光が出てきて、その箱の中に吸い込まれる。
箱の中にちゃんと俺が入ったかどうか確認するため、リアは箱の窓をじっと覗き込んみ、そのリアの巨大な黒い球体が窓を覆いつくした。

「健司様はそちらでゆっくりとおくつろぎください。私が宮殿までご案内いたします」

ドスウウウウウン、ドスウウウウウン、ドスウウウウウン

リアが歩き出すと足音が聞こえてくる。
この建物の中からだと揺れは感じず、とても快適ではあるが、リアの手のひらの上だからだろうか?窓を閉め切っていてもリアの匂いが地面から漂ってくる。
昨日初めてこの建物に入った時は切ったばかりの木の匂いがして、とてもリラックスできたが、今はなんだか落ち着かない。
汗と石鹸の匂いが混ざったような若い女性独特の匂いで、女の匂いに嗅ぎなれていない俺はこんな匂いを嗅いでしまっていいのだろうかと困惑してしまった。
しかし今改めて思い返してみるとこの匂いはだいぶ濃い匂いだったと思う。
例えるなら、女の子の住んでいる狭い部屋に二人っきりになり、その部屋の持ち主の女の子に思いっきり抱き着かれているようなそんな感じ。
これも1000倍の巨人だから、その匂いも強いということなのか。

ふと地面を見てみると1000m以上、下にリアのつま先が見えた。
つま先は草履の鼻緒をガッチリと足指で挟み込み、絶え間なく足を前に出し続け歩いている。
全長230mもある2本の足が毎日この巨体を支え、時速4000キロで歩行する彼女の身体能力には驚かされるばかりだ。
ここから1000m以上も離れている足をリアは自分の思うがままに操っている。
こんな巨大で、ものすごい力を持った彼女たちと結婚することになってしまい、とても不安だ。
俺はこの星で一体どうなるんだろう。
殺されないとはいえ、すべてが未知数な星での生活はとても不安である。
そうやって、リアの足をボーッと見ながら、これからのことを考えていると急にリアの足が止まった。

「あの?健司様、先ほどから私の足をずっとご覧になられていますね。うーん・・・もしかして私の足がお好きなのですか!?」

最初は不思議そうに何しているんだろう?といったような声だったが、後半はとてもテンションが高く声も大きくかった。
上を見上げるとリアがニコニコしながら、こっちを見下ろしている。


「健司様、私の足が気になるのでしたら、もっと近くでご覧ください」

リアはその場にしゃがみこんで、手のひらに乗っていた金色の建物を指でつまみ、自分の足指の近くに移動させた。
俺が覗いていた、窓からリアの足の指がよく見えるように角度を調整している。

「健司様いかがですか?よく見えますか?この角度でよろしいでしょうか、ご希望の角度がありましたら、どうぞおっしゃってください。
 すぐにお連れ致します」

リアの足を間近で見ることになった俺はとても驚いた。
なぜなら、草履の上をずらりと指たちが並んでいたからだ。
その様子はまるで住宅が並んで建っているみたいだった。
5本もある指はその一本一本は大型トラックを横にした幅とほぼ同様で、俺が腕を思いっきり広げても足の指の幅には遠く及ばないだろう。
そしてここまで太い大木は地球にはそうそうなく、そんな巨大なものがたった一本の足の指なのだ。
その一本一本の巨大な指たちが力を合わせて、リアを歩行させている。
近くから足を見ると改めて、リアの巨大さを感じさせられた。

「健司様、なんでしたら足に降りてみますか?少し匂いがするかもしれませんが、健司様のご希望とあらば恥ずかしいですけど仕方ありませんね。
 これでも私、足の手入れは毎日しているんですよ」

リアは少し恥ずかしそうにしながらも喜んでいるように見えた。

「いや、リアさんごめん!ちょっと考え事をしていただけなんだ。それにしてもリアさんの足って大きいねーびっくりしたよ」
「そう・・・ですか・・考え事・・・」

リアの顔が一気に曇った。
さっきまでのテンションはどこへ行ってしまったのだろうか?
なんか、悪いこと言ったか、俺?

「健司様!」
「はい!なんでしょう?」

リアは怒ったような口調で俺を呼んだ。
それにつられて、驚いたため返事したときの発音が少しおかしかったかもしれない。

「リアさんとおっしゃるのはもうおやめください。私と健司様はもう夫婦の中です。妻に対しさん付けはおかしいと思います。
 これからはリアとお呼びください」
「じゃあ俺のことも健司って呼び捨てにしてよ」
「そそそそんな・・・恐れ多いこと!!できませんそれだけはご勘弁を!!」

リアは急に慌てだし、とても困惑していた。

「うーん・・なんだかそれじゃあ不公平なんだよね。俺はため口なのにリアさんはそんな口調だし」
「私たちは健司様がいなくなってしまいますといずれ滅んでしまうのですよ。そのようなお方を無下に扱うことなんてできません。
 それに下々の者まで健司様のことを見るのですから、私が健司様に馴れ馴れしく、いたしますと健司様に無礼を働く者も出てくるかもしれません」
「例えばどんな?」
「はい、いまM2681では男に飢えた女が沢山います。私が健司様に馴れ馴れしくすると下々の者は自分と健司様が同じ身分だと勘違いする者も必ず出てまいります。
 そのようなことになると大変です。悪いやからに誘拐されたり、もしかしたら見世物小屋に売り払われるかもしれません。
 それに健司様はもともと清いお方。ため口など私には恐れ多くてできませんが、私のことはどうか呼び捨てでお呼びください。
 それが健司様の身を守ることにつながるのです」
「わかったような、わからないような感じだけど、色々と事情があるならしょうがないね。じゃあ呼び捨てにさて貰うよ。・・・リア!」
「はい、健司様!」

俺が呼び捨てに変えたことによりリアは安心したようで、リアはニッコリと笑い元気よく返事をした。

「では、宮殿へご案内いたしますね。この宇宙ターミナルから約5分歩いた所にございますのですぐに着きます」


宇宙船から降りて、宇宙ターミナルと呼ばれる所を見まわしたがその規模はとてつもなく大きく、巨大な宇宙船がひっきりなしに離着陸を繰り返していた。
地上には宇宙船が沢山止まっており、その数は100を優に超えていた。
その宇宙船も彼女と同じ1000倍の大きさであり、中には幅500キロぐらいあるような超巨大宇宙船も存在し、リアに聞いたところ、あれは貨物を運搬する
宇宙船だそうだ。
さらにその横には巨大な主砲を積んだ、全長200キロはありそうな超巨大軍艦が3隻止まっていたが、そのことについては聞くのをやめた。
彼女たちは素手で地球の軍事力と対峙していたのだ。それを考えると彼女たちの持つ軍事力は聞くまでもなく、強力で強大であることは間違いなく、
その破壊力を聞かされるのが、怖いためあえて聞かなかった。
沢山の宇宙船を見ていると彼女たちのスケールの大きさと科学力に圧倒され、俺は目を丸くするばかりであった。

宇宙船から降り、そしてターミナルの建物から出た瞬間すごい歓声が聞こえてきた。
ターミナルから宮殿へと続く道は人人人で埋め尽くされていた。

健司様!と名前を大声で呼ぶ人やじっとこっちを真剣に無言で見つめる人やキャーと声を上げる人など様々な人が俺の到着を待ちわびている。

「な・・・なにこれ!?」
「健司様の到着を心待ちにしていた者です。私がいつここに来るかは極秘だったのですが、何日もずっと張り込んで待っていたようですね」
「何日も?」

なんてことだ。俺がこんなに歓迎されているなんて思いもしなかった。
しかも俺を見るためだけに何日も同じ場所で待つなんて相当な熱の入れようである。

「健司様、民の声にお応えください。そうすれば民も喜びますよ」
「でもさ、応えるって言ったってどうやって応えたらいいかわからないよ」
「とても簡単なことでございますよ。微笑みながら手を振ればよいのです」
「こ・・こうかな?」

下手な作り笑いをして、群衆に向かって手を振った。
リアの手のひらの上の建物中から手を振ったため、外にいる人たちには俺の姿は見えないだろうと思っていたが、
俺が手を振ったことにより、声援はさらに大きくなり群衆の人たちは皆大きく手を振り返してきた。

「健司様ー!健司様―!健司様ー!!」

ずっと俺の名前を呼び叫び続ける多くの人たち。
その人たちが途切れることを知らず、逆に宇宙ターミナルから離れるにつれて、その人の数は多くなる一方だ。

「ねえ、リア?」
「はい、いかがされましたか?」
「この人たちは一体どこまで続いているの?」
「そうですね。この様子ですと宮殿の入り口まで、ずっと人だかりができていると思います」
「え!?そんなに・・・なんで俺なんかのためにそんなに人が集まるんだろう?」
「それはみな、健司様の即位されることを存じており、いち早くその王のお姿を拝見したいと思っているからでしょう。
 健司様の星でも皇族のお方が通るとなると見物人がいられるでしょう?」
「うん、たしかにそうだけど・・」

たしかにそうだ。
リアの言うとおりだ。
でも、なにかがおかしい。
俺のことを見物している人はただ俺が珍しいという目つきではなく、もっとこうなんか・・・なんというか見物人の目つきが異様に感じる。
道で手を振っている人はみんな若い女ばかりで、男は一人もいなく、いやおばさんやおばあさんも姿が見えず、本当に若い女の人しかいない。

「なんか若い人ばかりいるような気がするんだけど、気のせいかな?」
「いえ気のせいではありません。生殖器の働きが衰えている者はここには入れないことになっております」
「せいしょく・・・どういうこと?」
「はい、ここに健司様を拝見したいもの全てがここに集まるとパニックになりますので、私の部下に命じ健司様の側室にしても差し支えない者を選びましたが、
 それでも多すぎたため、最後は抽選となりました。ここにいる者はその抽選に見事当たった者でございます」
「・・・側室?」
「はい、左様です。みな側室候補者です。側室になれぬ者が健司様のお姿を拝見すると情が移り、のちのち問題になりますので、
 側室候補者以外は健司様のお近くに近づけぬよう配慮いたしました」
「え!?あの人たちはみんな側室候補者なの?」
「はい、左様です。ここに来れなかった者や途中で諦めて帰った者を含めますとまだまだ沢山、側室候補者はおられますよ」

ただの群衆だと思っていて見ていたが、側室候補者だったとは・・・。
なるほど、だから俺を見に来た群衆の人の目つきがおかしかったんだ。
みんなにまっすぐ見つめられ、俺がその前を通ると、彼女たちもその動きに合わせて一斉に首が動き、俺が見えなくなるまで、ずっと見続けている。
顔を真っ赤にする人や口を塞いで驚く人や顔を下に背ける人がいることに違和感を感じていたが、リアの言葉を聞いて納得した。
なるほど、あの目つきは、好きな人を見つめる時の目だ。

そんなことを考えていると、宮殿の前に広場みたいなところに出た。
人を沢山集められる広い広場にはびっしりと人があふれていた。
まるで、優勝パレードでもしているかのようで、人でびっしり埋め尽くされ、地面は見えず、足の踏み場もないぐらいだ。
人があまりにも多いため、ロープが張られ、そのロープが張られている中をリアは無表情で通り抜けた。
その手のひらの上にいた俺はその人人人に圧倒されていたが、リアは気にした様子もなく素っ気なくしている。

「ねえリア?今日どれぐらいの人が集まったんだろう?」
「さあどうでしょう?それはちょっとわかりかねますが、多分10万人ぐらいはいたでしょうね」
「10万!!」

10万人の巨人たちに恋愛対象として俺は見られている。
規模が大きすぎて、もうどうしていいかわからない。

「はい、健司様宮殿に到着いたしました」

困惑と不安の感情が渦巻いていたのに、リアは特に気にしてないのか、いつもと同じ口調だった。
俺は巨大な門の下をくぐりぬけていた。
その門の高さは約1万メートルはあり、リアの身長の10倍もある巨大な門だった。
しかしその門の形は古く、まるで日本の城の門みたいに木でできており、浴衣姿の彼女たちが通るととても絵になり、門と彼女たちの格好がつりあっていた。
門を通り過ぎると、中は手入れの行き届いた日本庭園みたいな庭が広がり、池もあり巨大な鯉が泳いでいた。
その池を超え、木造平平屋建ての建物へと入っていく。

「こちらが今日から健司様のお住まいとなります」

科学の進んだ宇宙人の住んでいる家なんだから、てっきり近未来的なデザインの家かと思っていたが、
その予想は外れ、まるで江戸時代の大名が住んでいるような古風な建物だった。

「「「「健司様ー」」」

巨人が何人も一度に入れる大きな玄関に入ると何十人もの巨人たちが俺を出迎え、そして俺に向かって座礼をし始めた。

「この者たちは私や側室たちの身の回りの世話をする者たちです」
「へえー沢山いるんだね」

自分のことは自分でやるのが今までの俺の生活だったが、改めて考えるとリアも姫様なのだから、世話係がいても不思議じゃないよな。
そう考えるとリアはすごい金持ちで、今まで裕福な生活を過ごしてきたのだろう。

「健司様のお世話は基本的に私や側室がされますが、この中に気に入られた者がおられるようでしたら、今すぐ側室にしても差し支えありませんよ
 いかがなされますか?」
「いや、今まだいい」
「そうですか」

素っ気なく即答するとリアは残念そうな表情で声のトーンも低かった。


「健司様、長旅でお疲れでしょう。これから少しお休みになってはいかがですか?」
「いや、宇宙船は快適だったし、この中も快適だから、そんなに疲れていないよ」
「では、なにかお飲みになりますか?」
「いや、この中に冷蔵庫があって、沢山飲み物があったから、それで十分だよ」
「そうですか・・・ではこれから女王陛下にお会いしていただけますか?」
「女王ってことはリアのお母さんってことだよね」

リアのお母さんってどんな人なんだろう?
女王ってことはこの星で一番偉い人ってことだよな。挨拶とかどうすればいいんだ?とりあえず頭を下げればいいのかな?
もしかしたら結構怖い人なのかな?怖い人だったら嫌だな。

「はい、私の母です。そのように緊張なされなくとも大丈夫ですよ。健司様はこの星の王になられたお方なのですから、
 誰と会うにしても常に堂々としていてください」

玄関を抜けて長い廊下を歩くと一番奥の部屋がリアのお母さんの部屋だった。
しかし巨人が3人ぐらい横並びで歩ける幅のあるまっすぐな廊下には圧巻だ。
こんな幅の広い道路は地球に存在しないだろう。
いや3人どころか彼女の足一本入れる道路も地球ではかなり少ないだろう。

「母上ただいま戻りました」
「入りなさい」

巨大なふすまを開けて、リアは部屋に入った。

「リア!健司様は今どこ!ちゃんとここに連れてこれたのでしょうね!もし連れてこれなかったら・・・・」

部屋に入るなり、リアのお母さんと思われる人はべらべらと一方的にしゃべりだした。

「母上、健司様は私の手のひらの上におられます」
「え!?」

リアのお母さんはリアの手首をつかみ、手のひらをじっと見つめている。
黒い球体がリアの手のひらの上にある金色の建物の窓を覆いつくす。
その姿はリアにそっくりだったが、やはりそこはお母さん、リアと比べると年を取ってはいたが、この人も若い頃はリアに負けず劣らず美人だったのだろう。
リアのお母さんは年の割にはすごく綺麗な人だった。

「健司様、失礼したしました。お初にお目にかかります。リアの母です」

その場に正座し深々と座礼するリアのお母さん。
しかしその姿はリアよりも落ち着いており、座礼もリアよりは慣れている感じだった。

「あ!どうも、田中健司です。えーとかなりの年の離れた人にそこまでかしこまられるとなんか変な感じですね」
「健司様敬語はおやめください。下々の・・・」
「その話はもうすでにリアから聞いています・・・いや聞いている」

なんか年上の人にため口って慣れないな。
相手が困るって言ってるから、仕方なくため口でしゃべるけど、本当にいいのかな?

「健司様、単刀直入にお伺いいたします。うちの娘はいかがですか?」

急にリアのお母さんが真剣な目つきになり、その迫力に少しひるんだ。

「といいますと?いや、というと?」
「はい、性的に興奮できそうですか?」
「なっ!!」

性的に興奮!?この人はいきなり何言ってんだ。
しかも実の娘の前で堂々と言っている。

「いかがなのです!」
「もう~母上ったら~恥ずかしいです~」

リアはもじもじ、しながらこっちを見ている。

「いかがなのです健司様!率直な意見をお聞かせください」
「そ・・・それは・・可愛いとは思うけど・・性的と言われると・・・」
「え!?可愛い!!」

リアの顔が一瞬赤くなったように思えたが、すぐにうつむいてしまい、よくわからなかった。、

「それは見込みあり、ということでよろしいですね」
「いや、そんなこと言われても」
「ではリアはブサイクで匂いもきつくて、性的に受け付けないほどお嫌いですか?」
「いや全然そんなことないよ。リアは可愛いし、匂いもそんなに嫌じゃないし、でも今は性的な目でなんか見れない、だってリアとは昨日会ったばかりだから」
「それでは困ります。私たちの種族は危機的状況なのです。そんな悠長に待っていられません。今すぐリアと子作りをしてあげてください」

リアのお母さんは深々と座礼をしてお願いしているが、
俺は何も返事をすることができず、ただただ黙ってリアのお母さんの話を聞いているだけだった。



それから女王の部屋を後にして今度は俺の部屋に案内された。

「この屋敷全てが健司様のために建て替えられた物ですが、これからご案内する部屋は健司様の寝室となります」

さぞかし広い部屋が用意されているのかと思いきや、さっきリアのお母さんがいた部屋と同じような作りの部屋で大体8畳ぐらいの部屋だった。
しかしそれはあくまで彼女たちの体を考えとのこと、8畳といっても縦横共に3600メートルもある巨大な和室だった。

「では今から畳に降ろさせていただきますね」

ドスウウンという音が鳴りやむと浮遊感が無くなり、畳の上に建物が降ろされたようだ。
外に出てみると驚いた。畳が永遠と地平線のように続き、この部屋を縦に横断するだけでも30分以上歩かなければならない。
彼女のサイズを考えると普通の大きさの部屋だが、今まで乗ってきた金色の建物から出て外を確認してみると、俺が今までいた建物がものすごく小さく見える。
今までいた建物はこの部屋と比べるととても小さく、もしドールハウスなんかと並べるとドールハウスが巨人の家も見えるだろう。
それを考えると俺はなんて小さいんだろう。
この巨大な和室の畳に落ちている、ゴミみたいだ、それもゴマ粒ほどの大きさしかない小さな小さなゴミだ。

「ね・・・ねえ、俺って間違えてホウキで掃かれたりしない。これじゃあゴミと区別がつかないような・・」

リアの手のひらの上からじゃなく、畳に直に降りたことにより自分の小ささが改めて理解し、恐ろしくなってリアに聞いてみた。
いやリアに聞くというより、リアの足指としゃっべているような感覚だ。
リアの足指は高さ19メートルもあり、それだけでも4階建てのビルに相当し、ビルのような足指から視線を上に上げていくと、
リアが太ももに手をついて体を少し乗り出しながら、こっちを見ている。
リアは文字通り山のように巨大だった。
足は俺のすぐそばにあるが、顔は遥か彼方上空1610メートルに存在する。
足はとても近くにあるのに、リアの顔を俺の手の届かない雲の上の存在だった。

「そうですね。では健司様のお世話する者に直接聞いてみましょうか?入りなさい」

ふすまがスウと横にスライドし、黄色を基調とした浴衣姿のショートヘアの女の子が一人地響きを立てながら入ってきた。

「はじめまして、健司様。私が健司様のお世話を担当するカレンといいます」
「この者は掃除洗濯食事はもちろんそのほかにも健司様が必要とされることをなんでもいたします。そうよねカレン!」
「はい、その通りなんでもします。不束者で至らぬ点もありますが、よろしくお願いします」

最初部屋に入って来たときは、足にしか目が行かなかったが、俺の前で足が止まり、視線を上に上げるとそこには可愛い女の子の顔が空いっぱいに広がった。
いかにもお上品なお嬢様といった感じのリアとは違いカレンと呼ばれるこの子は庶民的でくだけた感じの女の子だ。
リアももちろん可愛いがカレンも負けず劣らず可愛い子である。

「カレン、健司様はこの部屋を掃除する時、あなたが誤ってホウキで掃いたりしないかどうか心配しておられるのよ。大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ゴミと健司様を見分ける訓練も沢山しましたし、この部屋にいる時は常に下の方を注意しながら歩きますので大丈夫です」
「大丈夫だとのことです健司様」

そうはいっても本当に大丈夫なのかな?
こんな巨人たちと一緒にうまく生活できるのか本当に不安だ。

「言い忘れていましたけど、ここにいるカレンは側室にしていただきます。よろしいですね、健司様」
「え、ちょっと!!そんなの聞いてない、勝手に決めてないでよ」
「申し訳ありませんが、私と側室以外の者と健司様が深く関わり合いになると色々面倒ごとが起こるやもしれません。
 もしこのカレンが気に入らぬとあらば、他に誰か別の者を・・・」

「うっうっ、えぐっ」と鼻をすするような音が聞こえてきて、ポタポタと水滴が一粒また一粒畳に落ちてくる。

「え!?」

俺は慌てて上を見上げると真っ赤な顔をしたカレンが泣いていた。

「え!えっえ!!どうして泣いているの?俺なんか悪いことした?」
「健司様、このカレンを側室にしないということは、カレンはこの屋敷を出ていかなければなりません。
 屋敷から追い出されると健司様の相手にふさわしくない者として世間では見られるでしょう。
 そうなっては、頭を丸め尼となるほかありません」
「そんな・・・」

「健司様の側室になるため、今まで掃除洗濯や料理などの厳しい修行を一生懸命してきたのにそれが全部無駄になりました・・・ 
これでもう私の人生も今日で終わりです。ぐっす、うっうっう、ひっく」

幅10メートルはあろうかと思われる涙でどんどん畳が濡れていく。
巨大な目から、大粒の涙が大量に作られ、やがてその重さに耐え切れなくなり、目から離れ床に落ちていく。
その涙が畳に直撃すると、スコールなんてレベルじゃなく、銭湯の湯舟を一気に逆さにしたようなものすごい涙だった。
幸い直接涙が俺に衝突することはなかったが、もし直撃するとどうなっていたことやら。
カレンを泣かせた罪悪感と自分の身の危険を感じ、一刻も早くカレンには泣き止んでほしかった。

「健司様の前で涙を見せないで、そんなことしたら健司様が困るじゃない。もうあなたは健司様から不要だと言われたのよ。
 ここは潔く下がりなさい」

その言葉を聞いて、ますます涙の量が増えていく。
これ以上涙の量が増えると俺の身が危ない。

「いや、待って!世話係って何人いるの?」
「特に決まりはございませんが、最低一人はおそばに使える者が必要ですね」
「じゃあいいよ。カレンだっけ?側室にする、側室にするからもう泣かないで・・ねっ」
「健司様よろしいのですか。無理にこの者にこだわる・・・」
「うん、最初から側室を設ける約束だったんだし、このままだとカレンがかわいそうだし仕方がない」
「健司様ーー!!」
「うああああ」

カレンは俺に向かって突進してきた。
いや突進というより、指が俺に向かって真っすぐ伸びてきて、親指と人差し指で俺を挟み込み、顔まで指を近づけてすりすりと自分の顔にこすりつけている。
俺は突然強い浮遊感に襲われ、その浮遊感が収まると、肌色の壁がどんどん近づいてきて、顔という肌の壁にこすりつけられた。
その指の力はものすごく強く、とても太刀打ちできなかった。まるでロープで体全体を縛られたみたいで、
体は少しも動かせず、唯一動かせた、首から上も顔の肌にこすりつけられたことにより動かせなくなっていた。
顔にこすりつけられたことにより、カレンの匂いが強烈に匂ってきた。
強烈といっても悪い意味ではなく、ゼロ距離で俺の鼻がカレンの肌に接触しているため、同じ大きなの普通の人間がキスするよりも、
肌と鼻の位置が近くそのためカレンの匂いも強く匂う。
しかも肌の匂いだけではなく、顔からは髪の匂いや口からの匂いなど様々な匂いがミックスされ、長いこと嗅いでいるとムラムラして気が変になりそうだ。

「これ!健司様に無礼ですよ。すぐに離れなさい」

リアが助け舟を出してくれた。
カレンの顔が遠ざかり、カレンの匂いから畳の匂いに変わり始め、俺は内心ホッとした。

「すみません。うれしくて、つい」
「ですが健司様カレンを側室にしてよろしいのでしょうか?別に無理しなくても大丈夫ですよ」
「いや、いいんだ。だってかわいそうじゃない。このまま一人寂しくここから出ていくなんてさ」
「ありがとうございます。ありがとうございます。私誠心誠意、この身が滅びるまで健司様にお仕えいたします」

カレンは何度も何度もペコペコとお辞儀をしている。

「それでは側室も一人決まりましたし、そろそろ夕食にいたしましょうか。カレン用意を」

カレンは、「はい」といって立ち上がり、地響きを立てながら夕食を運んできた。

ドスウウンと地面が揺れ、4つの巨大な足に支えられた黒い柱が降ってきた。
その大きさは高さ400メートル横幅500メートルぐらいはあり、超巨大建造物が突然降ってきたようだった。
その巨大で太い黒い柱が俺のことを見下ろしている。

「お腹が空いたから、早く食べたいわね」

そういえば、美味しそうないい匂いがする。
それもこの黒い柱の上から匂ってくる。

「健司様の分はこちらです」

カレンの爪に挟まれたゴマ粒以下の小さな小さな善が俺のすぐ横に降りてきた。

「私とリア様も健司様と同じものをいただきます。健司様のお口合えばいいのですが」

降ろされた、善の上には白いご飯とあえ物と椀と魚の切り身と漬物が乗っていた。

「え!?これと同じものをリアとカレンが食べるっていうけど、それはどこにあるの?」
「健司様ここですよ」

カレンの指に摘ままれ上昇した。
400メートルも上昇したところで、さっき降ってきた巨大な4本の柱の上の部分が見えてきた。
するとさっきカレンが持ってきた、俺の善とまったく同じものが1000倍のスケールで乗っていた。
すると黒い巨大な柱は食べ物を乗せる善の足ということか。
その善の上に乗っている、椀一つだけでも幅100メールぐらいあり、高さは70メートルもあった。
その巨大な椀の中に透明なお湯がたっぷり入っており、そこから煙がモクモクと立ち込め、その透明なお湯の中に魚の切り身が沈んでいる。
その切り身だけでも優に50メートルは超えている。その様子はまるで湖の中に巨大クジラが沈んでいるみたいで、
その他にも100メートルクラスの茶碗があり、そのお茶碗の中にはたっぷりと白い巨大なお米が並んでいた。
一粒が縦9メートル横4メートルはあり、そんな巨大なお米がお茶碗を隙間なくぎっしり埋め尽くしている。
その他のおかずも100メートルクラスの器に入っており、ただの食事と思っていたのに度肝を抜かされた。

「これ、全部食べるの?」
「はい、そうですが、それがなにか?」
「うふふふーカレンあなたは知らないでしょうけど、私、健司様の炊いたご飯を食べたことがあるのよ」
「え、そうなんですか。いいなー」
「健司様、いつか私にも作ってください。ぜひ食べてみたいです」
「う・・・うん、そのうちね」
「では、いただきましょうか」
「そうですね。ではいただきます」

彼女たちのスケールには驚かされる、上空400メートル付近に巨大で大量の食べ物が乗っかっており、その食べ物を
長さ200メートルの箸が巨大な食べ物をつかみ、そのままさらに上空へと飛び立ち、
幅50メートルはあろうかと思われる、巨大な洞窟のような口が開き、巨大な箸が口の中に入っていく。
つまり東京タワーよりも高い位置に食べ物が存在し、箸が善に乗っている食べ物を取り、さらに高い位置にある彼女のもつ
巨大な口に向かって食べ物を運んでいるということだ。
そして口から箸が出てくると箸に摘ままれていた食べ物の姿はなく完全に消えてしまった。
今頃あの巨大な食べ物は彼女の持つ巨大な胃袋の中に落ち、消化されるのを待っているのだろう。
そして箸がまた降下して来て、食べ物をつかみ持ち上げ、口の中へ放り込むその繰り返しだ。
彼女たちの持つ箸の長さは200メートル幅9メートルである。
これがどのぐらい大きいのかというと、10両編成の電車は3編成を並べた時とほぼ同じ大きさの箸ということになる。
ただこれは箸一本の大きさなので、2本あるということはその倍の6編成の電車が必要となる。
さすが体重5000万トンもある二人の食べる量は桁違いであった。

「いかがなさいましたか。健司様?」
「い・・いや、すごい迫力だな・・って思って・・・」
「えっと、私たちの食事のことでございますよね?。はい、私たちはこれぐらいの量を毎食食べておりますよ」
「へえ・・やっぱり大きい体だから、いっぱい食べるんだね・・」

彼女たちの食事スケールを考えるとおとなしく彼女たちの要求を飲んでよかった。
もしも拒否していたら、今頃地球はどうなっていたことやら。
とてもじゃないが、これだけの量の食事を地球の資源では用意することはできないだろう。

「私たちの体の大きさを考えるとこれぐらい普通のことでございます。それより、私は健司様の召し上がっている量が少ないのか心配です。
 いかがですか?このお魚少し召し上がってみますか?」

魚の切り身が上から降ってきた。
その大きさは数十メートル。
こんなクジラよりも大きな魚の切り身なんて食べきれる訳もなく、上から大型コンテナが降ってきたような感じだ。
この切り身が俺の上にのしかかってくると踏みつぶされてしまうと思い、俺は驚いてあとずさりした。

「リア様、健司様の栄養管理は私が完璧にしています。私たちから見ると一口にも満たないすごく少ない量ですが、
 健司様のお体の大きさを考えるとこれが適量です」
「え!そうなの?」
「はい、リア様」

たしかにカレンの言うとおりだ。
これでも普通の一人前よりも少し多くご飯やおかずが善の上に乗せなれている。
まさに若い男が腹八分になるように絶妙に調整されている量だった。

「健司様、召し上がられないんですか。もしやどこかお体の調子が・・」
「いや、ごめん今から食べるよ。いただきます」

彼女たちの食べるスケールに驚かされ、夕食を食べることを忘れてしまい。
リアに促されてようやく、自分も善に箸をつけた。

「え!美味しい」

ご飯は完璧な炊きあがりで、お米の一粒一粒がわかるぐらい細かい食感があり、ベタベタと口の中にひっつかず、ふわりと喉を流れていく。
こんな感触のご飯は初めてだ。すごく美味しい。
魚の味付けも濃すぎず、薄すぎず絶妙な味付けで、軽やかな味付けで、変な風味が鼻に残ったりしない。
魚も生臭い、いやな匂いはせず、それでいて魚独独の味がしっかりついており、とても美味しい。

「なにこれ!こんなおいしい料理は初めてだよ」
「えへへへ~ありがとうございます」
「なんで、カレンが喜ぶの?」
「うふふふ、健司様この料理は全てカレンが作ったものなんですよ」

リアは俺が喜んで夕食を食べてる姿を見て、微笑んでいる。

「リア本当?これ全部カレンが作ったの?こんな手の込んだ料理を?」
「はい、左様です。よかったわね、カレンこんなに健司様がお喜びになられて」
「はい、厳しい修行に10年間耐えた甲斐がありました」
「え!10年?」
「健司様、ここにいるカレンはいつかお目見えする私たちの王専用の料理番になるために、7才の頃から調理場に立ち、厳しい競争に勝ち抜いて、
 今では若手一の実力を持つほどなんですよ」

10年って簡単にいうけど、幼少期の10年ってとてつもなく長い。
そんな長いこと、修行してきたのなら、こんな素晴らしい料理が作れるのも納得できる。

「ふーんだからこんなに美味しんだね。厳しい修行ってどれぐらい厳しかったの?」

俺は何気なくカレンに聞いてみた。

「はい、朝5時から夜の7まで料理の勉強や掃除洗濯の仕方やその他の雑用まで色々勉強しましたね」
「朝の5時から夜の7時まで!!」
「でも、さすがに週2日ぐらい休みがあったんだよね?」
「いえ、なかったです。でも盆と正月は2日ずつお休みを頂きましたね」
「それ以外休みなし?」
「はい、そうです」

なんてことだ!地球でそんなことやっていたら真っ黒な企業だ。
修行はさぞ大変だったことだろう。
さっき俺は簡単に美味しいとその一言で片づけてしまったが、その美味しい料理を編み出すのにカレンの血のにじむような努力があったに違いない。

「健司様のお口に入るものです。いい加減な物を健司様の前に出すわけにはまいりません。ですから、いつか来るこの日のために10年も前から
 入念に準備をしていたのでございます」
「そこまでしなくたって・・・俺はそんな大層な人じゃないよ」
「いえ、そんなことはございません。何度も申しますが、健司様は私たちと唯一生殖行為のできるお方。そのようなお方がなにをおっしゃるのですか」

リアはそう言っているがそう言われても、いまだに実感はないし、なんか納得ができない。
本当にこんなんでいいんだろうか?
そんなことを考えながら、パクっとご飯を食べるとやはり美味しい。素晴らしい料理だ。
この料理の完成度に達するまで10年もかかったと知って食べるとまた味が変わってくる。
素晴らしい料理であることは間違いないが、ここまで達する努力を考えるとカレンがかわいそうに思えてくる。。
幼少期から青春時代まで俺なんかのために費やすなんて・・・

「ねえ、カレン?」
「はい、なんでしょう?」
「ごめんね。俺なんかのためにつらい思いをさせたみたいで」
「いえ、そんな滅相もないことですよ。私が好き好んでこの世界に入ったのですから」
「いや、でも!」
「うふふふ、健司様、そんなにカレンのことを思っていらっしゃるなら、なにか褒美をお与えになってはいかがです?」
「褒美?でもお金とかみんな地球に置いてきちゃったから、今なにも持っていないよ」
「ふふ、健司様にはご自身のお体がおありではありませんか」
「体?体で何するの?」
「それは決まっているではありませんか」
「もしかして・・・」
「はい、お察しの通りでございます」
「でもさ、そんなの嫌だよね・・・もっとほかの・・・カレン・・?」
「わあー、ご褒美をくれるなら、健司様のお体がいいです」
「え!?」

絶対嫌がると思っていたのに、なんでこんなに喜んでいるんだ。
カレンはリアとは違い、こういうの弱いと思っていたのに、この様子を見るとどうやらリアと同類のようだ。

「うふふ、さあ健司様!カレンは健司様のお体がよいとおっしゃっております。さあ早く褒美をカレンに授けてください」

リアはニコニコしながら、俺とカレンの方を見ている。

「そんなの無理だよ」
「では、ご褒美は無しってことですか・・・」

カレンはしょんぼりしてしまった。また下を向き、今にも涙が出そうな雰囲気だ。
カレンは泣きそうになり、リアもなんだかガッカリしたように思える。どよーんと暗い雰囲気が部屋を包み込んだ。
なんでこうなるんだ!
なんで、こうエッチなことに結びつけようとするのか?
俺は少しうんざりしてきた。

「悲しい・・せっかくご褒美がもらえると思ったのに・・・そういえばこんなこともあったな・・・あれは確か私が10才の頃・・・」

10年間の苦しかった思い出をブツブツ言っている。
風邪を引いても修行を休むわけもいかず無理がたたり調理場で気を失ったことや誤って自分の指を切り大量出血したことや先輩に怒鳴られたりその他色々・・
いや聞いているだけ、こっちも苦しくなってくる。

「わかったよ。エッチなことはダメだけど、それ以外のことならいいよ」
「え!ご褒美をくれるのですか!!」
「うん、でもエッチなことはなしで、それでもいいなら。」
「えっ!えっ!何してもらおうかな。あれもいいけど、いやこれもいいなーいや~でも恥ずかしい~、え~どうしよ~」

カレンは目をキラキラさせながら、もじもじしている。
それから、カレンは一人妄想の世界に入り込み、しばらく帰って来なかった。
そしてようやく決まったのか、少し顔を赤らめながら、こう言ってきた。

「健司様にあ~んしてもらいたいです」
「あ~んって恋人とかが食べさせ合うあれ?」
「そうです。もしかしてダメですか・・・?」
「でもさ、俺ってこんなに小さいんだよ。とてもじゃないがカレンのご飯を持ち上げることなんてできないよ」
「いえ、健司様のご飯が食べたいです」
「え、でもこれじゃあ小さすぎるよ。この前リアにご飯を食べてもらったことがあったけど、やっぱり少ないって・・・」
「いえ、量の問題ではなく、その気持ちが大事なんです。健司様、ぜひ!ぜひ!」

カレンは目をキラキラさせながら、俺のことを期待の眼差しで見つめている。
これは断れそうな雰囲気じゃない。

「しょうがない、じゃあするか!」
「わあーありがとうございます。では、横になりますね」

ドスウウンと地面が揺れ正座からうつ伏せに状態になり、俺の目の前にカレンの巨大な顔が現れた。
一方リアは自分が邪魔にならないように、自分の善をずらし、カレンに場所を譲ってその隣にリアも同じように寝転がった。

カレンは顔を赤らめらながら、うっとりした顔をしていて、その隣にはリアがニコニコしながら、俺とカレンの様子を観察している。
俺は二人の巨人の顔の前に立ち尽くしていた。
デカい、やはり二人はデカい!顎から頭のてっぺんまで約200メートル前後はありそうだ。

「ねえ、なんでリアもいるの?」
「うふふ、私のことはどうかお気になさらず」

なんでリアまで?褒美はカレンだけでいいはずなのに。

「あ~ん、けんうぃしゃま、はあくぅー」

口を大きく開けながら、催促をするカレン。
口は40メートルは開いている。ビルぐらいの建造物でも簡単にこの巨大な門をくぐり抜けられるだろう。
しかし俺は彼女にご飯を食べさせることができなかった。
カレンのは顎をしっかり、畳の上にしっかりとつけていたが、それでも地上から唇まで40メートルぐらいあり、今俺は彼女の唇を見上げている。
まるでビルの屋上付近に口があるみたいで、俺のいる地上1.7メートルから、思いっきりご飯を投げても、彼女の口には届かないだろう。

「健司様、こちらにお乗りください」

それを見かねて、リアが助け舟を出してくれた。
自分が使っていた箸を2本重ねて、そのてっぺんまで俺を運んでくれた。

「けんうぃしゃま、はひいのうえにいましゅねえ」

カレンは俺が箸の上に移動したことを見届け、口を開けたまま匍匐前進しながら、俺のいる箸の近くまでやってきた。

「あ~ん、はあくぅー」

さっきまでは顎しか見えなかったが、箸の上に移動したからカレンの口の中がよく見える。
まるでカレンの口の中は照明のないコンサート会場のように巨大で、彼女の口の中は魚臭かった。
今さっきまでこのコンサート会場で魚の大処刑会が行われたばかりなので、口の中が魚臭くて当然である。
口の中は手前の方は薄っすらと光が当たって見ることができたが、奥の方は暗闇でよく見えなかった。
中をよく見るとさっき食べていた色んな食べかすが歯と歯の間にくっついていた。
その大きさは1メートルやそれ以下の大きさだったが、俺からすると俺の身長と大して変わらず、彼女の口の中に付いたゴミと同等の大きさだと思うと怖くなった。
つまり、もし俺を食べようとしてもそれは歯と歯に挟まる食べかす程度の大きさしかないということだ。
口の中の上の方を見ると上の前歯がキラリと白の光沢を光らせながら待機している。
健康的なピンク色の歯茎に支えられて、この巨大な上歯は存在している。
その大きさ幅8メートル縦11メートルもある巨大な歯を歯茎は支えている。
もはや大きすぎて、歯というより真っ白の巨岩のようであり、それが無数に扇上に広がっている。
まさに扇上の処刑場といった感じで、ここに沢山の罪人を並べると一瞬で巨岩のようなギロチンが降ってきて、処刑場が一瞬で血の海になるだろう。
前歯の横には鋭くどがった八重歯があり、その八重歯に一刺しされるだけで、簡単に罪人の体を貫通して息絶えるだろう。


「うーけんうぃしゃま、まああ、でしゅかあ?」

カレンがしきりに催促してきた。
カレンは俺にいつ食べさせてもらえるのかと、今か今かを待ち構えており、ピンクの竜のような巨大な舌がうねうねとうねっている。
まるで竜が怒りくるっているようだ。
口の壁から一滴5メートル以上もある唾液がポタポタと溢れだし、舌がうねると唾液が糸を引く。
その糸も糸というよりは、幅1メートルはある透明な柱で、誕生したら一瞬で消える儚い柱であった。
口の中はこの世のものとは思えず、まるで地獄の入り口のような不気味さがあったが、しかしカレンの口の中だと思うと優しく可愛らしいとも思える。
恐ろしさと可愛さの二つの顔を持つ、それがカレンの口の中であった。

「ええーい」

焼却炉の中に勢いよく、物を投げ込むかのようにしてカレンの口の中にお茶碗の中身を乱暴かつ思いっきり投げつけた。
食べ物を粗末に扱っているみたいで、なんだか悪いことをしているような気持ちになったが、ご飯はカレンの下前歯の上に乗っかった。
すると口の中という洞窟が目の前に広がっていたのが、上から上唇が降下してきて洞窟が閉じていく。
口は完全に閉じ、ピンクの唇の壁が俺の目の前に広がっていた。
上唇だけでも10メートルぐらいはあり、その巨大な唇が上下に動き出した。


もぐもぐ


俺はその20メートルはある唇の前でじっと見つめていた。
俺の身長の何倍ある唇はもぐもぐと上下左右に激しく動いているのを至近距離から見ていると、なんだか恐ろしくなった。
もしもあの中に俺が入るとどうなるんだ?そう考えると怖い。
口はもぐもぐと動かし、約10センチのご飯を一生懸命味わっている。
10センチのご飯は彼女の感覚で0.1ミリで唾液一滴よりもかなり小さいく、口の中でご飯の味を感じるのは困難に思えたが、

「とても美味しいです~」

カレンはとてもうれしそうにしていた。

ゴクン!!

唾液の共にご飯は飲み込まれてしまった。
たぶん、あの感じだと、飲み込まれた大半は唾液でその唾液に混じってご飯が飲み込まれたのだろう。

「健司様、あの・・・もう一回してもらえますか?」
「え!?嫌だよ。こんなことやらなくてももういいでしょ」
「そんな・・・お願いします。あと一回だけあと一回だけ!!」
「はあーわかったよ」
「わあーありがとうございます」

といった具合にもう一度同じことをやらされた。
しかしお茶碗の中身はさっきカレンの口の中に全部放り投げてしまったので、今度は魚の切り身を口の中に放り投げた。

「う~ん、やっぱり美味しい~」
「さあ、これでいいだろ」
「健司様、やはりあと一回だけ・・・」
「もうダメ!やらない」
「ええ~そんな~、残念です」
「健司様、私にも同じようにあ~んをなさってください」

リアもカレンと同じように大きく口を開け、俺の目の前に持ってきた。

「え!?リアも?リアは関係ないからダメ!」
「うー、残念です。ではまた次の機会に」

さて、これで夕食を再開できると思ったら、さっきカレンに全部食べさせてしまい、俺の善の上にはなにも残っていなかった。

「健司様、今度は私がお返しにあ~んをする番ですね。さあ健司様、お口を置開けください」
「あ~んってするか!ああー俺の夕食が・・・」
「健司様、少しお待ちください。今おかわりをお持ちします」
「え、まだあるの?」
「はい、まだまだ沢山あります」

カレンは立ち上がり、地響きを立てながら、部屋から出て行った。
そして戻ってくるとさっきとまったく同じ善が降ろさた。

「健司様、おかわりはまだまだ沢山あるので、これで足りなかったら、遠慮なく言ってください」

幸い俺は夕食を食べ損ねることはなかった。

「ふうーお腹いっぱい。いやー本当に美味しかったよ」
「ありがとうございます。健司様」

カレンはニコニコしながら、満足そうな表情だった。
これで少しは彼女の苦労は報われればいいのだが。

「よろしかったですね。健司様、この料理をこれから毎日3食いただけるのですよ」
「うん、ありがたいことだ」

でも食べるときは、カレンに感謝をしながら、食べないとな。
カレンがこれから少しでも幸せになってもらうためにも。

「では、健司様、お食事も召し上がりましたし、次は湯あみといたしましょうか」
「湯あみってお風呂のことだよね?今から入るの?」
「はい、左様です」
「俺はあとでいいよ。先に入っておいで」
「いえ、私とカレンと一緒に入っていただきます」
「え!?」

そんなこの二人の美女と一緒にお風呂に入るなんて、そんなのありえない。
絶対に変に意識してしまい、平常心を保てる自信がない。

「い・・いやさ、ドラム缶みたいなのに湯を張ってよ、その中に入るからさ」
「健司様、ここの屋敷の下から温泉が湧きだしており、その温泉につかることは健康にもよろしんですよ」
「いや、だからさそのお湯をドラム缶みたいなのに入れてもらえば、それでいいから」
「健司様いけません。湯を張るとその湯がすぐに冷めてしまいます。そうするとお風邪を召してしまうやもしれません。
 健司様の健康のためにも直接温泉にお浸かりください」

「健司様、もしかして私との湯あみが嫌なのですか?」

二人の会話を聞いていたカレンが心配そうに聞いてきた。

「そうなのですか?健司様?」

リアもその言葉を聞いて心配そうに俺を見つめてくる
悲しそうな目が俺をじっととらえれいた。

「そんなことないけど、恥ずかしいし、それに二人の裸を見るというのは・・」
「いえ、大丈夫です。私は裸を見られても大丈夫です。いえむしろ見ていただきたいです!」
「いや、リアはそれでいいかもしれないけど、カレンは・・・」
「私も大丈夫です。一緒に湯あみをしましょう!」

カレンもリアもやる気満々である。
この様子から、やはりカレンもリアの同類ということで間違いないのだろう。
なんかリアが二人に増えたみたいで、とても疲れる。

「健司様はお嫌、私とカレンは入りたい。このままでは意見が割れて決まりません。
 ここは民主的に多数決で決めるといたしましょう。みんな、中へ」

とリアが言うとリアのお母さんをはじめ、この屋敷で働いている人が、ゾロゾロと部屋に入ってきた。その数は32人。

「では、挙手をお願いいたします」
「私とカレンが湯あみをするのに反対の人挙手をお願いいたします」
「はーい」

もちろん反対の方に手をあげたが、俺の声が虚しく部屋に響く。
辺りを見渡すと俺以外誰も手をあげていない。
俺一人だけ、声を出して少し恥ずかしい。

「では賛成の人」
「「「「はい」」」」

俺以外の34人全員手をあげた。
さっき俺が出した声とは比べ物にならないほど沢山の声が聞こえてきた。

「賛成34反対1ということで、賛成ということでが可決されました」

「な!!そんな・・・ちょっとリアのお母さん!あなたは母親でしょう?なんで止めないの?おかしいでしょ?」
「できたら私もまぜてほ・・・ゴホン!いえ、なんでもありません。健司様、私の娘は健司様の妻です。夫婦が親睦を深めるのは当然かと思われますが」
「そんな・・アホな・・・」
「わーい健司様と湯あみだ!嬉しいです」

カレンは子供のようにはしゃいでいる。

「では、早速湯あみをいたしましょう」

パチパチパチパチと拍手が起こった。
早く行け!早く風呂場で裸になれ!など皆が言っているように感じる。そんな目線だ!

「いや、でもな・・」
「健司様、多数決です多数決!それにもう決まったことではありませんか。健司様も男です。覚悟をお決めになってください」

結局リアに押し通されてしまった。
今俺は、リアの手のひらの上の金色の建物の中にいる。

ドスウウウウウン、ドスウウウウウン、ドスウウウウウン

地響きを立てながら、歩くリア。
後ろを見るとカレンもしっかりと後をついてきている。
この地響きが一回響くごとに、お風呂が近づいてきていると思うと気が気じゃない。
やがて地響きがやむと竹で編みこまれた籠が、置いてある場所に到着した。
ここが更衣室なのだろう。
地響きがやんだから、外はどうなっているのだろう?と思い窓の外を覗いてみると、浴衣を今から脱ごうとしているリアの姿が一瞬見えた。
俺は、女の子の着替えを誤って見てしまった。
悪いことだと思い、一瞬見ただけで、パッと後ろを向いた。
幸いリアは気づいていないようで、いつとも変わらない。

「健司様もお脱ぎになってください」

俺も裸になれってことだよな。
お風呂に入るとき、服を着て入るものはいない。
ではやはり脱ぐのか。

「健司様、早く出てきてください。なんだか寒くて・・くしゅん」

カレンがくしゃみをした。
このままでは風を引いてしまうかもしれない。
彼女たちを待たしては、悪いと思い俺は急いで服を脱いだ。
建物から出ると丁度彼女たちの鎖骨ぐらいの位置に俺がいて、その後ろには金色の建物よりもはるかに巨大な茶色の籠があった。
その籠の中には浴衣が積み上げっており、一番上にはピンクのパンツが乗っていた。
そのパンツだけでも幅270メートルもあり、パンツが俺のことを見下ろしている。
かわいいパンツだが、すごい存在感で俺を威圧している。
そして、籠の中から、ふんわりとリアのリアの匂いが香ってくる。
その匂いの根源は、籠の中にある衣服からで、むせかえるような甘酸っぱい本能に響く匂いであった。

「さあ、健司様私の指にお乗りください」

リアは指を差し出した。
その指に乗ろうと思ったとき、リアの裸が自然と目に入った。
白く、美しいラインを描く巨大な山の彫刻がそこに存在した。
下を見ると巨大な山のようなおっぱいが激しく自己主張をしていて、その下にはきめ細かいお腹の大地が続き、可愛らしい縦筋のおへそ、
そのくぼみだけでも10メートルはあり、そのおへその中にすっぽりと入ることもできるし、下手したらおへその中に住むこともできる。
さらにその下には陰毛の森が生い茂っており・・・そこで俺はリアの体を見るのをやめてしまい、
目をつぶった。女の裸を生で見るのは初めてだ。
女がどんな体の構造になっているか、もちろん知っているが、写真やパソコンで見るのと違い生々しくリアルで、
しかも普通の人間の1000倍の大きさである。
この女の肉の山ともいえる存在は、俺には刺激が強すぎた。
なんせ1610メートルも肉の山が続き、この肉はどこの部分も柔らかそうで、滑って転んでも怪我しないような柔らかさだということは見ただけでわかった。
彼女の体の部分はどこもエッチで、刺激的でしかもとてつもなく巨大だ。これが今まで普通に話をしていた同じリアとは思えない。
浴衣を脱いだリアは今までのリアとは全く違う別の神秘的な生命体のようにも思え、その美しさから俺は黙り込んでしまった。

「健司様もやはり、殿方ですね。私の体にご興味がおありで?」
「もう、リア様ばかりずるいです。健司様、私の体はどうですか?綺麗ですよね?そうですよね?」

二人は自分が裸なのに堂々と俺に裸体を見せつけるように立っている。
確かに二人の裸体は素晴らしいが、直視はできない。
なぜなら、あまり長いこと彼女たちの体を見ていると、俺の理性が崩壊しそうだからだ。

「う、うん、そうだね」

後ろを向きながら、ボソボソ小声で返答した。

「なんでしたら、今ここで好きなところを、触ってみてください。どこでも結構ですよ。やはり胸?それともお尻?」

リアはニヤニヤしながら、俺を誘惑している。

「いや!、いい、それより早く湯舟に浸かりたい!」
「左様ですか。では、早速入りましょうか」

更衣室を出ると温泉があった。
地響きを立てながら、温泉に近づくリア。
歩いている時、リアの手のひらの位置は丁度、胸辺りにあり、前を見るとカレンのくびれや曲線が美しい背中があり、後ろを振り返ると、
リアの胸が真正面に存在しこっちをじっと胸に見つめられている。
そして下にはへそや陰毛があり、目をやるところには必ずエッチで刺激的な巨大な肉体が存在し、
目のやり場がなく、仕方がないから、俺はうつむき、ずっとリアの手の肌を見ていた。

「一番風呂ははじめてです。やっぱり、掃除されたばかりの温泉はいいですね」

カレンが少しはしゃいでいる。
この様子から、カレンはいつも後の方に入らされているのだろう。
カレンがあんなに楽しそうにしているから、きっと素晴らしい温泉なんだろう。
チラッと辺りを見るともくもくと温泉から湯けむりが出ていて、俺の今いる位置からリアの胸が見えなくなっていた。

「ふー」

胸が見えなくなったことにより、ようやく目のやり場ができて安心して辺りを見まわすことができた。
たしかに立派な露店風呂だ。
一度に何十人も入れる露店風呂で、洗い場も10箇所もある立派な風呂場であった。
洗い場の床は木が張られており、岩で温泉が区切られ、温泉の床は石のタイルでできていた。
ふんふんなるほど、まるで日本名湯ででくるような、立派な温泉だなと感心していると
リアが一歩前に踏み出した。
一歩踏み出したことにより、胸辺りを漂っていた湯けむりを胸が蹴散らしたらしく、ピンクの乳首が薄っすらと見えた。

「わわ!!」

慌てて下を向く。一瞬ではあったがリアの乳首をはっきりと見てしまった。
落ち着け落ち着け、今のは見ていない見てない。
そうやって、心を落ち着かせようとしていると、視線を感じた。
ふと、視線を上にあげるとリアの顔が俺を覗き込んでいる。
やばい気づかれた!どうしよう怒るかな・・

「ふふふー健司様ようやく、私の胸をご覧になってくださいましたね」
「ご・・ごめん、見るつもりはなかったんだけど、つい」
「いえ、いつ健司様の視界に私の胸が入るよう、ずっと待っておりました」
「ささ、そんなにお好きでしたら、もっと近くでご覧ください」
「もう~またリア様ばかりずるいです。健司様私の胸も見てください」

胸が上下に揺れながら、こっちにどんどん接近してくる。
その山のような胸は合計4つあり、前にはカレンの胸が後ろにはリアの胸があった。
しかもリアは意地悪なことに、俺を人差し指の先端に強制的に移動させ、カレンの乳首とリアの乳首の間に人差し指を持って来ていた。


胸指胸
↓ ↓
〇│〇
〇 〇

もうなにがなんだか、わからない。
直径10メートルもあるピンクの乳首が俺に向かって挟み込もうとしている。
遠くから見ると美しい乳首も自分の体の10倍近い合計4の巨大乳首がこっち向かって来て恐怖を感じた。
しかし逃げたくても逃げられない、リアの指の幅は12メートルもあったが、リアが少しでも動くと落下する危険がある、
落下すれば1000メートルも落ちることになり、俺なら助かると思うが恐怖という本能がそれを許さない。
俺は足がすくんで動けなかった。

「リア様、健司様はあまり喜んでないようですよ?」
「そうね、むしろ怖がっているみたいね。健司様、申し訳ありません。少しやりすぎたようです、湯あみをしてどうか機嫌を直してください」

リアはざぶざぶと波を立てながら、温泉に浸かった。
足を湯につけると大波が発生した。
地球でこんなことすると大型船でもグラグラと大きく揺れるか下手をするとひっくり返るだろう。
体重5100万トンの巨体が水の中に入るときの衝撃がすさまじいものがあった。
そしてリアは温泉の中で腰を下ろしたが、腰を下ろしていたも850メートルも高さがあり、リアの手のひらから落ちると見つけるのは困難だろう。
しかしそのことも十分リアは配慮してくれており、俺がとこかに流されないように手をすぼめて、じっと俺がお湯に浸かるのを眺めている。

「ふうー、気持ちがよろしいですね健司様」

気が利いていることにリアは俺が溺れないよう肩が少し水面が出る程度に水位を調整してくれていた。
しかし手のひらの温泉とは生まれて初めてだ。
グッと深く座り込むと、温泉の湯とリアの柔らかい手のひらの肌は極上の癒しを提供してくれた。
温泉は体と心を休めてくれる。
カレンにご飯をあ~んして食べさせた時に見た、歯や舌、そしてさっき見た二人の体のパーツ、どれも桁違いのサイズで驚き恐ろしかったが、
お湯に浸かったことにより、その恐怖心が薄れ、心から癒されていく気がした。

「いかがですか?健司様、この温泉は地球の温泉とは比べ物にならないぐらいすごい温泉で効能もいいですよ」
「どんな効能があるの?」
「効能という効能全てです。特にすごいのがですね・・」
「あ、それ私も聞きました。たしか子宝でしたよね」
「カレンよく知っているわね、そうここはね子宝温泉で有名だったのよ」
「え!子宝・・・」
「はい、そうです。この温泉で男女が共に入ると必ず子宝に恵まれるという言い伝えがあるのです」
「ですがリア様?それって噂だって言っている人もいましたけど」
「そうね。私たちと子供を作れる殿方は一生に一度会えるか会えないかぐらいの貴重な機会だから、確かめようがないのよね。
 でも母上と父上はこの温泉のおかげで私が生まれたっておっしゃっていらしたから、間違いないと思うわ」
「わあーそうなんですか。じゃあ私のお腹の中に健司様の赤ちゃんがもういるかもしれませんね」
「うふふふ、そうだといいわね」

これがいわゆるガールズトークってやつか、いや違うと思うけど、とにかく今彼女たちの会話にはついていけない。
まさか「ハハハ、温泉に浸かったぐらいで子どもなんかできないよ」なんて言ったら、リアやカレンのことだ「ではどうやって子供を作るのですか?
健司様見せてください!」なんて言ってややこしいことになりそうなので、黙って二人の会話を聞いていた。

「健司様もう少し浸かっていらした方がよろしいですか?それとももう上がられますか?」

さっきの乳首の件や子宝温泉の話題の件を考えると、彼女たちが俺に対してまた誘惑してくるような気がする。
幸い体も暖まったので、俺はもう出たいとリアに伝えた。

「では、お体をお洗い致します」
「え?」

ザバアアアアアアアアトと大波を立て、立ち上がりそのまま洗い場に連れてこられた。
ドスウウウウウンと風呂椅子に腰かけ洗面器に水を張り、
左手の人差し指の指先にボディソープを付け、俺のいる左手のひらに向かってやってきた。
リアの指先は幅12メートルもあり、1.7メートルしかない俺に対して、ボディソープがリアの指先に大量に塗られていた。
座っていた俺を人差し指が優しく横になるように俺を押し倒し、そして上下に指が動き出し全身をこすり始めた。
リアの指紋がいい具合にこすれて、気持ちよく体が磨かれていく。
地面はリアの手のひら、巨大なスポンジはリアの指。
リアの手に全身を完全に挟み込まれた俺は気持ちよすぎて、なんかボーとしてきた。
全身マッサージ?いや全身を愛撫しているかのようだ。
ああ~柔らかい気持ちい心が癒される。
女性の肌の滑らかさや、絶妙な力加減、そして全てを優しく包み込むような母性。
リアの手のひらは全てを優しく包み込み、俺はリアの手のひらの上で守られている。
いや、守ってもらっている。
そんな母性溢れるリアの全身マッサージに俺はうっとりして我を忘れた。

「健司様、気持ちよさそうですね。はい、これでお背中は綺麗になりました。次は前を洗います」
「リア様、次は私がやります」

そう言ってカレンが俺の体を摘まむと同じように背中を洗い始めた。

「これ!カレン、もうお背中は十分だから、前を洗って差し上げなさい」
「はい、わかりました。健司様、前を洗います」

カレンの指が優しく俺をひっくり返した。

「うん、たのむよ・・・」

気持ちよすぎて、目をつぶっていたが、カレンの指にひっくり返された時の衝撃で思わず目が開いた。
すると目の前に巨大な胸が存在していた。
その胸は俺より若干高い位置にあり、陰になっていたので、不気味に俺を見下ろしているように見えた。
その巨大な胸の圧倒的スケールと「あの胸が落ちてきたらどうしよう」という恐怖心が俺を襲い、さっきまでの安心しきった気持ちは吹き飛んでしまった。

「いや、いい前は自分がする」
「え!?ですが・・・」
「いや、いい、俺の横にボディソープを持って来て」

カレンは無言で俺のいるすぐ隣に10メートルぐらいのボディソープの塊を置いた。
こんなに必要ないのにと文句を言おうと思ったが、それよりも早く体を洗うのを済ませたかったから、文句も言わずにもくもくと大急ぎで体を洗った。
背中でもあんなに気持ちよかったんだ。
もし前も洗ってもらったら、俺の息子が黙っていないだろう。
カレンやリアの前で大きく成長した息子の姿を見せたくない。
いや前を洗うということは俺の息子をじかで触るということだ。
カレンやリアにはまだ触ってほしくない。なんとしてもそれだけは死守せねば。
ゴシゴシと自分の手で体を洗う俺をじっと黙って見下ろすカレン。
なぜ、無言なのか?
カレンのことだから、文句の一つでも言ってくると思ったが、やけに静かに俺の言うことを素直に聞いてくれた。

「健司様、私のことが嫌いですか?」

カレンがポツリとつぶやいた。

「え!?なぜ?」
「リア様の時はあんなに気持ちよさそうにしていたのに、私が同じことをしようとすると嫌がってたじゃありませんか!」
「いやさ、だってそれは・・・」
「もしかして私のことが嫌いになったんですか?・・・・10年間の厳しい修行にも耐え、ようやく今日側室の座につけたのに
 健司様に嫌われるなんて・・・私の10年間の苦労はなんだったのかな・・・」

カレンは目を真っ赤にさせ、口が斜めに歪ませ今にも泣きだしそうだ。

「いや、そうじゃない、嫌いじゃないよ」
「じゃあなんで、リア様はよくて、私はダメなのですか?」
「それは・・・」
「それは、私のことが嫌いだからでしょう?」
「ち、違うよ!!前は・・その・・・恥ずかしいから・・・」
「恥ずかしい?では私のことが嫌いじゃないのですか?」
「いや、だから、違うよ。嫌いじゃない」
「本当ですか?恥ずかしいだけ?本当に本当?」
「う・・うん」
「よかったー」

カレンは飛び跳ねて、喜びそうなぐらい喜んでいた。
本当に飛び離れると5000万トンもの重量物が上下に動き、振り落とされてしまうので、実際には飛び跳ねなかったが、
俺がいなかったら飛びあがって喜んだことだろう。

「健司様、まだ髪を洗われてはいませんよ。カレン、健司様の髪を洗わせていただいたら?」
「そうです。そうです。健司様ぜひ髪を洗わせてください」
「わかったよ。じゃあ髪だけなら」
「わあーありがとうございます♪」

カレンは「ふんふんふん♪」と鼻歌を歌いながら、指にヘアーシャンプーをつけて、俺の頭の上に指を持ってきた。
潰してしなわないように、そーっとそーっとゆっくり指が降りてくる。
指が降りてくるというより、大型のコンテナが上から降ってくるみたいで、指が作り出す影にすっぽりと覆われてしまった。

「健司様、これぐらいの力加減でいいですか?」

巨大な指が俺の頭上に接触し、指が動き出した。

「うーん少し痛いから、もう少し優しくできる?
「申し訳ありません、このぐらいでどうですか?」
「うんうん、そんな感じ」

指が動くと髪毛もその指の動きに合わせて動く。
なかなか気持ちいい。
女の人の滑らかなでスベスベな指が、体に触れその感触が気持ちよく、うっとりしてしまう。
女性の肌は巨大であっても、その美しさや感触は変わらず、触れていてとても気持ちがよかった。

「では、泡を落としますね」

ザバアアアアア

「うわーゴボゴボ・・・」
「「「健司様!!」」

少し手元が狂ったのか、カレンのかけたお湯は思いのほか量が多くそのままお湯と一緒に流されてしまった。
俺は洪水に流されたように、お湯に飲み込まれ、自分の力ではお湯の流れに逆らえない。
そのままなすすべなく、流されお湯を沢山飲み込んでしまい、しかも恐ろしいことに水圧で体が押しつぶされそうになった。
お湯は俺をどんどん流していき、とうとうカレンの手のひらから落下し、地面に落ちた。
運よく、湯舟の仕切りの岩の麓の位置で止まることができ助かったが、運が悪かったら、排水溝に流されて、どうなっていたか分からない。
幸い排水溝に流されなかったが、岩と岩の隙間に流され、岩凸凹が俺の身長以上の高さがあったため、その場所から身動きができなかった。

「ああーどうしよ!!健司様が健司様が!!あああ!」
「カレン落ち着きなさい。そのまま動かずに、絶対に動いたらダメ」
「はい、そうですね。健司様を誤って踏んだら、ダメですよね」
「あなたの隣にあるそこの赤いスイッチを押して」
「はい、押しました。リア様これは?」
「それは排水溝のスイッチよ。そのスイッチを押すと排水溝の中の水が止まる仕組みになっているの。
 これでもし健司様が排水溝の中に落ちたとしてもその水は外には流れないわ。だからもしここを探してもダメならその排水溝の中を探せばいいわ」
「では、リア様、早速・・」
「だから動いちゃダメ!!もしかしたら私たちの足元に健司様がいるかもしれないから、むやみに動いちゃダメじゃない!」
「では、どうすればいいんですか?」
「多分さっきの水の量だと排水溝まで届くほどの量じゃないから、そんなに遠くまで流されていないはずよ。
 だから四つん這いになって、この辺りを探しましょう。四つん這いになったら、かならずゆっくり慎重に動くのよ。
 激しく動いたりすると地面に張られた水まで動いて水が排水溝に流れていくから、必ずゆっくり慎重に。そうしないと
 排水溝に健司様が落ちる可能性があるからわかったわね。それと湯けむりが濃いところも要注意よ視界が悪いと健司様を見落とすかもしれないから
 そこは念入りに探すことわかったわね。なんども言うけど、慎重にやって!」
「わかりました。では、私はこっちを、リアさはあちらをお願いできますか?」
「うん」

ドスウン、ドスウウウン、ドスウウウウウンン

揺れが大きくなってきた。
ここからだと岩に挟まれているから、周り状況がよくわかないけど、たぶんリアかカレンのどっちかが助けに来てくれたのだろう。

「おーい、こっちだ」
「健司様!!どこですか?もう一度返事をしてください!!」
「おーいここだ!!」

ドスウウウウウンン

岩の向こうから巨大な肌色の物体が近づいてきた。
最初は岩と湯けむりでよく見えなかったが、彼女が近づくにつれて、だんだんその姿がはっきり見えてきた。
湯けむりを蹴散らし、腕がヌッと湯けむりから出てきた。その腕が湯けむりを蹴散らすと遥か上空では顔も腕と同じように湯けむりを蹴散らし
顔がはっきりと確認できた。

「お!カレンこっちだ!!」
「健司様!!リア様、健司様です健司様がいました!!」

お!気づいてもらえた。カレンの大きな目が小さな俺の体をしっかりとらえている。

「え!?カレン?健司様はどこ?」
「ここです。早く早く!!」

ドスウン、ドスウウウン、ドスウウウウウンン

カレンが近づいて来た時と同じような地響きを立てながら、四つん這いのリアが近づいてきた。

「ああこれで助かった。」
「健司様!ご無事でしたか!」

カレンとリアが一歩前に進んだことにより、彼女たちの姿がはっきり見えた。
四つん這いになっているとはいえ、高さ600メートルはあり、四つん這いになったことにより、いつもの二人ではないように見える。
二人の四つ這いの姿はまるで、二匹の超巨大怪獣か何かのように思え、胸が下を向いていたことにより、その胸が地面に向かって伸び、
その大きさを増している。その二本の腕という肉の塔に支えられ、胸がタプン、タプンと揺れる。
その胸は高さだけでも100メートル以上はあり、二つの山が彼女たちの腕の動きに合わせて、大きく揺れる。
もしもあの山のような胸が落ちてきたら、俺はどうなるんだろう?そもそもそんな巨大な山のような胸の持ち主が俺みたいなゴマ粒相手に
ペコペコと頭を下げている状況が、改めて思い返しても信じられない。
俺なんて、あの巨大な肉体を持つ彼女たちに逆らうことなんてできるはずもないのに。
改めて体を支えている腕を見るとスカイツリーとほぼ同程度の高さがあり、そのスカイツリーのような腕が一歩前に出され、
突如4本もの巨大な肉の塔が俺のすぐ近くに降ろされた。
スカイツリーは主に鉄骨でできているが、今降ろされた塔は細胞や肉でできており、その塔の内部は血管が張り巡らされて、血が高速で流れている。
その巨大な塔はまさに自然が生み出した、肉の塔であり、彼女たちの意思一つで簡単に動かすことができる、恐ろしく強力で巨大な塔であった。

そんなものすごい光景が俺の前に急に現れたため、唖然としていたが、突如指が俺に向かって伸びてきて、そのまま上昇した。
指が静止するとカレンの目が現れた。
目は光っており、今にも涙があふれてきそうだった。

「健司様!!私を殺してください!うっうっ」

彼女たちのおっぱいを見るのは目に毒だからカレンの目をだけをじっと見ながらこう言った。

「大丈夫。ほらこの通り大丈夫だから心配しないで。
「ですが、私は健司様を殺めるところでした。もう私どうしていいか・・・」
「でも君が死ぬと誰が俺の料理作るの?」
「それは他にも代わりの者がいるでしょう」

カレンは泣きながら、そんなこと言っていたが果たしてそうだろうか?

「ねえ、リア?」
「はい、健司様なんでしょうか?」
「カレンより美味しい料理を作る人っている?」
「はい、カレンより料理が達者な者は沢山いますが、年寄りばかりで、健司様のお相手にふさわしくありません」
「だってさ、だから死ぬなんて言ったら、ダメ!」
「そうよ、カレンそんなこと言わないで、健司様の身に危険が及ぶのは感心しないけど、私もあなたに死なれたら、寂しいわ」

リアも心配そうにカレンのことを見ている。

「健司様・・・リア様・・・」
「今死んだら、カレンの10年間はなんだったの?10年も我慢してきたその努力を無駄にしたら、罰が当たるよ。
 死んでいい人間なんていないんだ!
 それにカレンの料理が食べられなくなるなんて、そんなの嫌だ。だからさ明日も俺のために料理を作ってよ、ねっ!」

今日あったばかりのカレンになんでここまで強く言ったのか、よくわからない。
でも一応俺は王ということになっているし、カレンの顔を見ると冗談や比喩で言っているように思えず、本当にこのまま自殺でもするんじゃないかと思い
必死に慰めたのだと思う。
健気で真面目でかわいい女の子が苦労して俺の側室兼料理人になれたのだ。
その努力を無駄にしてほしくないし、苦しい思いをようやく乗り越え、目標を達成した当日に自殺するなんて考えたら、
彼女の人生は不幸のどん底で終わるだろう。
そんな最悪のバッドエンドを見たくない。もしも仮に俺が大けがをしたとしてもカレンを許していたと思う。


「うわあああん、健司様」

カレンは俺の体を何度も何度もこすりつけ、わんわん泣いた。
いつもなら、嫌な気持ちになるが、今は全然そんなことはなく、むしろ清々しい。
今までつらい思いをしてきたんだ、カレンには少しでも幸せになってもらいたい。

「健司様?念のため検査をお受けください。流させた時の衝撃でどこか痛めたやもしれません」

リアもかなり心配そうにこっちをじっと見ている。

「いや本当に大丈夫だから、ほらもうすっかり冷えちゃった。悪いけど、もう一度湯舟に入りなおそう。二人ともその方がいいでしょ」

俺はバリアのおかげでなんともなかったが、異様に彼女たちが心配してくるので、俺の好きな歌を二、三曲歌い場を和ませた。
リアとカレンも俺が歌ってる姿にニコニコしていたので、どうやら安心したようだ。

そして、湯舟から上がり、更衣室に戻ってきた
俺は竹籠の麓にある、金色の建物に逃げるように駆け込んだ。
やれやれ、これでようやく服が着られる。
彼女たちも服を着るから、目のやり場に困ることもない。

「健司様、こちらがお着替えになります」

入浴前に履いていたズボンを履き終えた頃にリアがそんなことを言ってきた。
窓を見るとリアの指が窓に横付けされている。

「リア、このままの服でいいよ」
「いけません、服は毎日着替えてください。体を清潔にすることは病気の予防にもなるんですよ。健司様のお命にかかわることです。
 必ず着替えてください。おねがいいたします」

命は大げさかもしれないが、たしかに不潔といえば不潔だ。
そう考え直した俺は、リアの言う通り着替えることにした。
リアから渡された、服は白をベースに黒の線が入った寝巻だった。
普段寝巻なんて着ない俺は帯の扱いが不慣れで、何回か帯を結び直し着るのに少し苦労した。

「健司様、先ほど着ていたお着物をこちらへ乗せてください」

リアはさっきまで着ていた、服を指に乗せろと言っている。
女の子に自分の着ていた服を出すのはやはり抵抗がある。
ほら、汗臭いとか、汚いとか色々と・・・

「いや、あとで俺が洗うよ。でもこの建物の中には洗濯機らしきものはないよね、どこにあるの?」
「この中にはございません」
「なんで、ないの?」
「健司様には必要の無い物です。洗濯とは下々の者がすること。わざわざ健司様自らなさることではございません」
「いや、でも自分で洗いたいから」
「それはいけません。健司様自ら洗濯をなさると洗濯をする係の者が困ってしまいます」
「なんで困るの?」
「健司様が洗濯をいたしますと洗濯係のものは役目を終えてしまい、屋敷を去らねばなりません」

またそれか。
それならしょうがないか・・
「そういうことなら」と言ってリアに服を渡した。

「健司様、下着がありませんが、いかがされたのですか?もしや履いていないのですか?」

おいおい俺は今までノーパンでリアに接していたと勘違いされるぞ、それはまずい。

「いや、さすがに下着は・・・」
「いえ、いけません。下着もお出しください」

俺はしぶしぶ「はい」って言って渡した。
女の子に自分のパンツを手渡しするなんて恥ずかしい。
渡している時の俺の顔は、少し赤かったかもしれない。
そのことをリアが気づいて、いないことを願うばかりだ。

「では健司様、こちらへお越しください」

指をトントンと軽くたたき、建物から外へ出るようにリアが合図をする。
リアに促され、外へ出てみると、いきなりピッカと眩しい光が一瞬光った。

「眩しい。なにするの!」
「失礼いたしました。この装置は病を予防するものです。万が一健司様が病になられると私たちも困りますので」
「ああ、そうなの?そういうことは前もって言ってよ!ビックリするじゃない」
「はい、わかりました。次からそのようにいたします」

そして、手のひらに乗せられ、寝室に帰ってくるとカレンが布団を綺麗に敷いていた。
しかし様子がおかしい、その2つ布団は隙間なく並んで敷かれている。

「ではお布団も引き終わりましたので、そろそろお休みになりましょう」
「うん、そうだね。お休み」
くるっと回り、建物に戻ろうとするとリアに引き止められた。

「どこへ行かれるのですか?」
「どこへって、この中で寝るんだよ」
「健司様は、こちらでお休みになるのですよ」

リアはカレンが敷いた布団を指さしている。
ここ、ここ、と指を布団に向かってツンツンと軽く上下に動かしている。

「まさか・・・一緒に寝るの」
「はい、左様です。私は健司様の妻、そしてカレンは妾です。私たちは今日という日を心待ちしておりました。さあ健司様、今日は神聖なる初夜です。
 私たちに子種を授けてください、お願いいたします」
「健司様、お願いします」

二人は深々と座礼をした。
地球で見た座礼は、俺のいた位置がかなり低かったため、彼女たちが座礼をしていても見上げる形になり、
とてもじゃないが座礼をしているように見えなかったが、今回はテーブルの上の金色の建物から、
見ていたため、彼女たちを見下ろす形になり、俺に向かって土下座をしていることが、ようやく見ることができた。
彼女たちは地面に頭をこすりそうになるぐらい、深く頭を下げている。
その姿は誠心誠意心の籠っており、その姿を目の当たりにした俺は困ってしまった。
いくらお願いしてこられても、昨日初めて知り合った女性と肉体関係になることに強く違和感を感じ、やはり彼女たちを抱くことはできない。
いや、物理的に抱けない。
彼女たちは1000倍の巨人だ。俺が彼女の膣内に体全体を入れるのか?もしやそれ以外の方法?どうやって子作りをするんだ?わからない。
たぶんリアかカレンに聞けばすぐ教えてくれると思うが、する気もないにむやみに聞く気になれす、喉から声が出かかったがやめにした。


「ごめん、それはできない」
「健司様、お約束したではありませんか!!私たちと子作りすると!それに側室も決めていただけねばなりませんが、
 それはまず私たちとの子作りが済んだ後で結構です。ですから、私たちと子作りを何卒」
「ごめん、今はできない。もう少し君たちと距離が縮まってからじゃダメかな?地球ではいきなり肉体関係を持ったりなんてしないよ。
 だからねっ俺の気持ちもわかってよ」
「では、今日の所は仕方ありません。ですが一緒に寝てもらいます」
「いやいやいや!話を聞いてなかったの?だから君たちとは今すぐ子作りできないよ!」
「一緒に寝ていただけるだけで、結構です。私たちは健司様になにも致しません。しかし健司様の気が変わられ、私とカレンの体を求めたくなった時は
 すぐにおっしゃってください。それで結構です。ねえカレン健司様になにもしないでしょ?」
「はい、健司様と一つになれないのは、残念でたまりませんが、一人で寝るのはもっと辛いです」
「お願いいたします。一緒に寝るだけでいいんです」
「うーん・・・寝るだけね・・」

俺が眠ったあとこっそりなにかエッチなことされるかもしれない。
彼女たちの力の前では俺は絶対にかなわない。
山のような巨大な女の子と一緒に寝て本当に何事も起こらずに終わるのだろうか?

「王はお休みになられる時、一人では休んではならぬという掟がございます。それは防犯上の問題からそのような掟ができたと伝わっております。
 健司様がどうしてもお一人でお眠りになられるとおっしゃるなら、お止めは致しませんが、そうなると私とカレンは正座して休まなければなりません」

正座して夜を過ごすのか、なんだかそれもかわいそうだ。
うーん、どうしよ?

「寝返りとか大丈夫なの?」
「はい、私寝相はとてもいいんですよ」
「私もです」

二人はそう言っているがなんか信用できない。
お風呂屋や食事の時を考えるとどうも・・・

「健司様、私とカレンと一緒に寝るのがそんなにお嫌ですか?残念ですが仕方ありません。今夜は正座して休ませていただきます」

二人は、俺に気に入られないのは私たちに非があるのでは?というような困った顔をしながらも、今日の所は仕方がないと諦めたような雰囲気だ。

「じゃあ、少し離れて寝て、それならいいよ」
「「よろしいのですか!!」」

二人は同時に返事をすると、布団まで俺を運んでくれた。
リアの手に乗った時に気づいたが、リアの手はとても綺麗だ。
いや、もともと綺麗な手だがお風呂に入り手を洗いその時に磨き上げられたことにより、その美しさにはさらに磨きがかかり、
宝石のようにピカピカと美しく爪や肌が光っていた。

「では、健司様明かりを消しますね」

リアが明かりを消すとリアとカレンの顔が近づいてくる。
二人はこのままキスするんじゃないかと思うぐらいギリギリまで接近していた。
その口と口の間には当然のように俺が挟まれていた。

「ストップ!ストップ!!」
「「どうしました、健司様」」

二人の吐息が同時に俺の体にかかる。
風呂から上がったばかりなので、二人のシャンプーの匂いが香、二人の甘酸っぱい吐息が俺の鼻をくすぐる。あまりにも近すぎて、本能にダイレクトに響き
俺の理性が崩壊しそうになるぐらいの強烈な刺激だった。
風呂上がりの若い二人の女に超至近距離から挟まれるということは、想像以上に俺の性的本能を刺激し、このままでは気が変になりそうだ。

「近い近すぎる。もっと離れてよ」
「そうですか?これでも離れすぎたと思いますよ?」
「そうです、健司様もう少しお傍に寄ってもよろしいですか?」
「ダアアアメ!!俺の言うことが聞けないなら、ここでは寝ない!」

「「そうですか、残念です」」

二人はしぶしぶ離れていく。
これでもまだ近いと思うが、それでもさっきよりはだいぶ離れており、彼女たちの匂いも薄まったため、なんとか寝れそうである。
目をつぶり、体の力を抜き頭をボーとさせる。
目をつぶりながら、今日あったことや地球のこと、そして彼女たちのエッチな要求をどうやって上手くかわすか考えた。
これから、どうなるんだろう。そしてカレンやリアは本当は俺のことをどう思っているんだろう?
彼女たちは俺のことを人間として見ているのか?それとも肉体としか見ていないのか?本当に心の底から俺のことが好きなのか?
そんなことを考えていると違和感を感じた。

じーー

視線を感じる

じーーー

やっぱりそうだ。
視線を感じる。
目を開けて、左を見るとリアがニコニコしながら、こっちを見ている。

じーーー

後ろからも視線を感じ、後ろを振り向くとカレンもニコニコしながらこっちを見ている。


「ねえ、二人ともなんで、俺のことを見ているの?」

「はい、健司様がその気になるのを待っておるのです」
「健司様、私はいつでも準備万端ですよ!」
「そんな気になりません!早く寝て!!」

二人はしょんぼりとした顔をしていたが、目をつぶりようやく俺も眠れる。
見知らぬ星での一日に疲れてしまい。
そのあとの記憶がないことから、すぐに眠ってしまった。





「リア様カレン様、女王陛下がお呼びです」

健司様が眠ったのを確認して母上の世話係が子声で呼んでいる。

「カレン、行くわよ」
「はい」

健司様を起こさないように、小声でカレンに呼びかけ、なるべく物音を立てず、そして布団から出る時もそーと抜け出した。
世話係に案内され、母上の部屋までやってきた。

「母上、リアです。カレンもここにいます」
「入りなさい」

ガラッとふすまを開けてるといつものように母上が座っておられた。

「そこに座りなさい」

母上が座っている前に二つの座布団が敷かれている。
ここへ座れということだろう。

「健司様はお休みになられたようだけど、子作りはうまくいった?」

母上は期待の眼差しで私のことを見ている。

「いえ、残念ながら、今日はできませんでした」
「あと、三日しかないのよ!そんなんで子作りがうまくいくの?」
「母上!前にも申した通り、せめて2週間はいただきませんと」
「黙りなさい!私たちは今危機的状況なのよ。あんたもそれは分かっているはず」
「はい、もちろん存じております」
「なら、今日を含めてあと3日で健司様を自分のものにしなさい」
「ですが、いくら危機状況といえども、3日で健司様の御心開かせるには無理があります」
「あんた、男の体の構造はもちろん知っているわよね。男は3日ぐらいで精液が満タンになって
 それ以上経過すると、自分の意図と関係なしに外に出たり、尿に混じることもあるの。それにさっきあんたが持ってきた健司様のパンツを調べたけど、
 精液は確認されなかったわ。だから今日を含めてあと3日ぐらいで精液は満タンになるはず、あと3日で成果がでなかったらわかってるわね」

そのことについては今まで嫌っというほど、聞かされてきた。

「ですが・・・薬に頼るなんて・・・」
「危機的状況なのに健司様の貴重な精液を無駄にするなんて許されるはずがないでしょう!
 薬って言ったって、自分の欲望に正直になるだけ、いわば酔っ払った状態に近いわけね。つまり人格を奪うとかじゃないから、安心しなさい」
「ですが、母上、その無理矢理、健司様に子作りをさせるみたいでなんだか・・・その・・」
「今は恋愛ごっこみたいなことをしている暇はないの。それにあんたが精液培養の研究の成果が出るまで待ってくれって言ったのはあんたでしょ!」
 本当は健司様をお迎えするのが遅すぎるぐらいよ。本当は健司様が12歳ぐらいの時には王として迎えたかったのに、
 今まで先延ばしにして!その間、健司様の貴重な精液がどれだけ無駄になったか、あんたも知っているでしょ!!」
「ですが私はもう、父上のようなことはごめんです。なぜ母上はお止めにならなかったんですか!!
 父上はその薬のせいで毎日毎日無理をして・・・母上は父上のことをまるで精液を作る道具のように扱って!!そのせいで父上は・・・」

あの時の悲惨な思い出が脳裏によぎる。

「それは・・・私も悪かったと思っているわ、けどね、そうしないと私たちは生きていけないの!子孫が残せなくなったら、
 この世から私たちの遺伝子が消えてなくなるのよ!!先祖代々受け継がれてきた物や文化が滅んでもいいの?」
「ですが、健司様は父上のようになって欲しくありません」
「だから、あんたは、精液を培養できるようになるまで、待ってくれって私にお願いしてきたんでしょ?それにその薬を使うのは今回だけだから、
 前起こったような悲劇は繰り返されないはず。それなのにあんたは先延ばし先延ばしで
 もうこれ以上あんたのわがままに付き合うことはできない!!それに培養っていったって、それは庶民用でしょ?
 私たち王族は男から一番最初に直接種をいただかなければならない掟があるのよ。忘れたの?そのあんたが開発した培養技術だって、掟に従うと
 あなたかカレンがまず妊娠しないと使えないわよ。だから一刻も早く子作りする必要があるんじゃない!」

そんなことはわかっている。でも

「母上、健司様はきっと私のことを受け入れるはずです。ですから2週間は待ってください。お願いいたします」
「リア、命令よ。3日で健司様から直接種をいただけない場合、私に従うこといいわね。もちろんこの掟も知っているわよね。
 上の者からの命令は掟に反しないかぎり、絶対だと」

「命令!」この言葉には逆らえない。絶対にそう絶対に・・・

「はい・・・、命令とあらば仕方ありません・・・・」
「カレンもわかった?命令よ」
「はい、わかりました。女王様」


ふすまをスウと開けて重い足取りで母上の部屋を去った。

「リア様、元気を出してください・・・3日という短い時間でもきっと健司様は振り向いてくれますよ」

カレンは心配そうに声をかけてくれたが、私の耳に内容が入ってこないぐらい追い詰められていた。


悔しく悔しい、なんで母上は私の気持ちをわかってくれないの?
あんなに私に優しくしてくれた父上が最後はむごったらしく、死んでいったのにそのことをなんとも思っていないの?
生前に会った最後の言葉「お前の幸せだけが私の幸せだ・・・」と言ったことが忘れられない。
今思い出しても涙が出そうだ。
それから、私はこんな不幸を二度と起こさないように研究を重ねた。
そしてついに一週間前に精液の培養に成功した。
これで、精液を無限に増やすことができる、たから殿方の体の負担が大幅に減る。
この培養技術の成功が確実となった時、健司様をようやく迎えることができた。
健司様には父上と同じ道をたどって欲しくないから、必死に母上を説得し、健司様をお迎えするのを先延ばしにしてもらった。
そうじゃないと健司様がおかわいそうだ。

私が健司様のお顔を初めて画面越しで拝見したときは驚いた。
若いころの父上にそっくりだ。
そしてひとめぼれした。
父上がお亡くなりになってからは研究に没頭する忙しい毎日だったが、健司様のせいで研究の日程に支障が出てしまった。
健司様に夢中になりすぎると研究の進行に支障がでるため、昨日までずっと我慢に我慢を重ねていた。
そして昨日から健司様のお傍にずっといられる、それは夢のような出来事の連続で、私は天国にでもいるんじゃないかと思えるぐらい幸せな時間だった。
実はさっき病を予防するためって嘘をついたけど、実はこれは健司様の御心がわかる装置だ。
その装置によるとずっと私やカレンを拒否して続けているのは、健司様もおっしゃっていたけど、段階を踏んでいないからだ。
それに私やカレンのことが嫌いではなく、内心私たちにドキドキしっぱなしで、理性を保つのに苦労されていらっしゃる。
なんて可愛い殿方なんだろう。ついいじめたくなっちゃう。
本当は力ずくで、健司様をわがものにしたい欲求はもちろんあるが、そんなことをしても嫌われるだけだ。
最愛の人に嫌われたくないし幻滅されたくない。好きな人と両想いになり、お互いがお互いを受け入れ子作りをする。
それが私の理想だが、それも時間的に困難になってきている。
健司様は段階を踏めば私たちを受け入れるとおっしゃったが、3日では時間が無さすぎる。
一生懸命恥ずかしいのを我慢して裸を健司様にお見せしたのに結局最後まで私の体に自ら触られることはなかった。
せめて2週間、2週間あれば、健司様は私たちのことを受け入れてくださると読んでいたのにその計画が全て水の泡である。
3日でなにができる?3日で子作り?そんなの健司様のきだてを考えると絶対に無理だ。
でもなんとかしなくちゃいけないなんとか・・・なんとか・・・いい方法は・・・



つづく