タイトル
「恐ろしい天使様8.5」



「あ!また動きました。動いてはいけません。父上ー」
「ご・・ごめん。でも退屈で・・」

今僕は椅子の上に座らされて、リアのことを見つめている。
しかも、じっとしていなくてはいけない。
さっきからずっと、リアとにらめっこ状態だ。
なぜこうなったのか?それはリアが僕の似顔絵を書いているからだ。
最初はヌードを書きたいって、言ったきたが流石にそれはやめさせた。
父親のヌードをなんで書きたいのか理解に苦しむが、
とりあえず似顔絵を描くことで妥協し、今僕の似顔絵を書いている。
リアの大きな目が覆いつくす。こんな大きな子が僕の血を受け継いだ娘だなんて未だに信じられない。
こんな大きな子が僕の娘・・・・。
リアは基本母親似だが、間違いなく僕の子だ。それは本能でわかる。


「もう少しです・・・もう少しで完成です」

僕から顔を放し、カリカリと色鉛筆で色を塗っている。

「できました!」

僕に完成した絵を見せて喜んでいる。
ようやく完成か・・・。もう二時間も座りっぱなしで正直疲れた。
それにリアの大きな目とにらめっこするなんて、正直心臓によくない。
娘とはいえ、至近距離から見つめられると怖いのだ。
僕の体の何倍もある目・・・まつ毛ですら見上げる高さがある。
そのまつ毛が目の前を通過し、また上に上がっていく。
そんなことを何回も繰り返している。当たり前だが瞬きは何回もするもの。
鉄棒のようなまつ毛が何本揃って目の前を通過するのは怖い。

「あら?できたみたいね。見せて」

リイが戻ってきて娘の絵の出来を見ている。

「よく書けているじゃない。ここの顔の形なんか王様そっくりね~」

確かにリイは年の割にはよくかけていると思う。
まあ子供の描いた絵なんだから、見る人がみたらそれほどのことでもないかもしれないけど、僕は子供の描く絵は嫌いじゃない。
子供の時にしか描けない絵は確実に存在するし、一生懸命リアが書いてくれたんだ。
だから僕にとってはいい絵だと思う。

「あ!でもこの絵、名前が入ってないわ。リア、ちゃんと名前は書かなくちゃ」
「どこに書いたらいいですか?」
「この辺の隅っこにちっちゃくリアって書いて」
「そういえば、母上ー。私の名前ってなぜリアなんですか?なにか理由があるのでしょう?教えくださいー」
「うふふー。それはね。私のリイの「リ」とアルト様の「ア」の文字を取って「リア」にしたのよ」
「へー初めて知りました。母上と父上の文字を貰ってリアなんですね」
「うふふふ、素敵でしょ。王様と一生懸命二人で考えたんだから、大事にしなきゃダメよ」
「はい、母上ー私の名前、大事にします」
「さ、名前も書けたようだし、そうね・・・ここに飾りましょう。丁度いい額縁があったし」

あれよあれよという間に世話係が何人も入ってきて、壁に釘を打ちつけ絵が飾られた。
飾られた額縁は子供の絵なんかには不釣り合いなほど、豪華な金のフレームで、
美術館に飾られているような立派な額縁だった。

「父上ー大きくなりましたねー」

リアの顔ぐらいある巨大な絵だったので、確かに僕が大きくなったようにも見える。
でもこの巨大な紙・・・改めてみるとすごい大きさだな・・・。
まるで地上絵みたいだ。リアの描いた絵の上に降ろされても何が描いてあるのか見当もつかないだろう。

「王様の大きなお顔を見ているとなんだか・・・意識しちゃうわね・・・・」

リイが僕の似顔絵を見ながら顔を赤くしている。
よく見ると他の世話係もチッラチッラと絵を見ながら赤面している。
普段小さい僕が、リアの描いた絵によって拡大され、細かい顔のパーツ一つ一つがよくわかるそうだ。
その絵を見ることによって、なんともいえない気持ちになるらしい。
リイはさっきからしきりに絵に近づいたり、離れたり、横から眺めたりして熱心に絵を見ている。

「王様・・あの・・キスしてもよろしいですか・・・急にしたくなったのです・・うーん・・・」
「あ!母上ばかりずるいですー。私も私もー、うーん・・・」

走って二人から逃げようとしたが、二人の唇の速さに敵うわけもなく、あっさり追いつかれた。
影が濃くなり、生温かい女の匂いが立ち込める。
まずはリアにキス・・・というより上から唇が降ってきたと言った方が正しい。
リアの柔らかい肉の壁に全身抱き着かれるような感じ。

「ふわ・・・」

口から息が吐かれ、唇が離される。
その吐息を真正面から受けたら、たぶん吹き飛ばされていただろう。
でもそこはリアだ。僕とキスするのは慣れているため、そんなことにはならない。

「うふふー、次は私の番ですね。うーん・・・」

リアの顔が遠ざかっていくと、今度はリイの顔が近づいて来た。
どんどん顔が近づいてきて、ピンクの唇が覆いつくす。
リアにキスされた後、次はリイにキスされた。
やはり、二人とも巨人。
リイもリアと同じように僕にキスし、キスというより、肉の壁に抱きつくといった感じになる。
その唇の大きさは子供でも大人でも大して変わらない。結局どっちの唇も抱えきれないほどの巨大なピンクの壁なのだから。
リイ、リア、リイ、リアといった具合に交代交代にめちゃめちゃキスされた。
僕の体は二人の唾液でぬるぬるになり、二人の匂いが全身に染みつくほどの熱いキス。
それが何回も嵐のように続いた。