タイトル

「10万倍の女勇者」





人間が住まう街の中でもっとも発展し、中心的な存在であるのが王都だ。
上空から王都を眺めるみると、まるで円を描いたかのように城壁で形成されており、この城壁のおかげで一度も敵に襲われたことはない。
王都の城壁は他国の侵略から何度も救い、王都の象徴的存在だったのだが、それも今日で終りを告げる。
王都の城壁を越え、空が黒く染まったのだ。
その正体は魔王軍の魔族たち。
魔族は凶暴であるはずの巨大ドラゴンを巧みに操っており、王都上空まで飛んできたのだ。
その数は数千。
数千もの巨大ドラゴンが王都に襲来し、王都民はパニックになる。
ドラゴンという飛来者には、さすがの城壁も何の役にも立たなかったのだ。
ドラゴンが壁を超え、王都の住宅の真上を我が物顔で悠々と飛んでいる。
さすがに王都軍も黙って見過ごすはずもなく、ドラゴンを追い払おうと、地上から大砲放った。
しかし大砲を放つとドラゴンたちは一斉に急上昇し、高度数千メートルまで高度を上げた。
こうなっては大砲の弾はドラゴンまで届かず、ついに一匹も撃ち落とすことはできなかった。

一匹の被害も出なかったのことに、魔族たちが気をよくしたのか、魔王軍が反撃してきた。
一匹のドラゴンが高度を下げると、王都の城壁に向かって火を噴いた。
丸く赤い球が王都の城壁向かって飛んでいる。
その火炎を止める手段は王都軍にはなく、ただただ見上げて見守ることしかできない。
城壁に着弾する赤い玉。すると、城壁が崩れ、やがて大きな穴が空いた。
その様子を見ていた王都は大パニックになる。
今までこの城壁があったからこそ平和が守られたというのに、それがたった今壊されたのだ。
もし、あのドラゴン吐く火が住宅や城に向かって放たれれば、何人死ぬかわからない。
それこそ王都は地獄と化してしまう。
城壁の一部を壊し、次はいよいよ住宅地に攻撃か、っと頭によぎる。
皆、固唾をのんでドラゴンを見上げていた。
すると、ドラゴンからなにか白いものがパラパラと降ってくる。
最初は爆弾かなにかと心配したが、近づてみるとなんでもないただの紙だった。
しかし、その紙に書かれた内容を見て、王都市民は震えあがる。



****


王都民へ告ぐ

我々魔王軍は明日、王都に総攻撃をかける。
命惜しいものは王都を捨て逃げよ。
もし、王都に留まり続ける者がいるならば、我々魔王軍の捕虜となり、魔王様のため一生働き続けることになる。


*****


と書かれていたのでたまらない。
王都民は、我先にと王都を捨て逃げ出した。
しかし、それをよしとしないものがいる。

「う~む・・・なんとか市民の流失を食い止めれぬものか」

王様は腕組をして悩んでいた。
もし、このまま市民が逃げ出し続けると、王都に収める税金が無くなり、王制は崩壊する。
かといって、今の王都軍に魔王と戦えるだけの戦力もない。
こういった事情もあり王様は悩んでいた。
建国始めって以来の危機である。
なんとしてもこの危機を乗り越えなくてはならない。そう思ったのである。
しかし、いくら考えても妙案が思いつかない。

「何かいい案はないか? 誰でもいい。誰か策を」
「あの、王様。実はこういったものが」

声を上げたのは、若くして大臣にまで上り詰めた優秀な青年。
彼はかなりの切れ者で、王様の信頼も厚く、なにより先を見る力、なにかを予測する力に長けており、人にはない才能のようなものを持っていた。
彼は王様に一枚の紙を差し出した。
その紙には、こう書かれていた。


異世界召喚術。


つまりこういうことである。
異世界にいる勇者をこの世界に呼び出して、魔王と戦ってもらう。
そういうことである。しかし

「勇者を呼ぶには高いと聞いたぞ」

王様の懸念も無理はない。
勇者を召喚するにはどうしても金がかかる。
勇者にとってみれば、どこだかわからない未知なる場所にいき、さらにそこで強敵である魔王を倒す。
リスクが伴うのは当然のこと、なので報酬もそれなりに高額で、とてもじゃないが今の王都の財力では勇者に払うだけの報酬は用意できない。

「王様。なにも一流のパーティーを雇わなくてもいいと思います。例えばこの勇者ですと、ソロですので、かなり安く設定されております」

大臣が見せた勇者候補。その中には女の勇者もおり、彼女が請求する報酬は大臣の言った通りかなり安く、桁が二つも三つも違うほど安かった。

「なんと金貨100枚でいいのか。しかしこれほど安いとは・・・なにか裏があるのではあるまいな」
「備考欄によりますと、この勇者は女だと言うことで、信用されにくく、仕事が少ないようです。なので安いのでしょう」
「しかし・・・女はなぁ・・・」
「王様。確かにこの勇者は女です。ですが実力は一流との噂ですので、かならずや魔王軍を滅ぼしてくれるでしょう 王様。なにとぞ、良きご決断を」
「そうか・・・よし! 決まりだ。勇者の件はそなたにすべて一任する」

こうして、魔王軍討伐のため、一人の女勇者を召喚することになった。



*****


久しぶりに勇者の仕事の依頼が来た。
最近、副業の農作業でばかりで、気が滅入るような思いをしていたところに任務が与えられたのだ。
これほど嬉しいことはない。
仕事内容は魔王討伐。
難易度は最大の10とかなり危険な仕事だが、快く引き受けることにした。
魔王討伐。もし、この任務を完遂できたならば、王様の信頼を得て、運が良ければ王様専属の騎士として雇ってくれるかもしれない。
それに騎士になれずとも、英雄になれる。
国を救った英雄として、称えられ、仕事に困ることも無くなる。
なので魔王討伐という任務はこっちから引き受けたいほどの、美味しい任務だった。
もちろんリスクは高い。魔王は強敵なのだ。もしかしたら死ぬかもしれない。
だが、それでもいいような気がする。勇者たるもの魔王に破れ、死すもまた本望なのだ。

「では行ってくる!」

異世界へとつながる、ゲートを呼び、私は歩き出す。
これから勇者として立派に役目を果たすと思うと、意識せずとも胸を張ってしまう。
胸を張りながら歩き、ゲートを抜けると、そこは青い空が広がる広い世界が広がっていた。
緑の色の地面と青い空が、永遠と広がっており、見たことも聞いたこともないような世界。

「誰もいないのか」

私の声に反応してくれるものはいなかった。
おかしい。ゲート出口で雇い主と落ち合うはずなのに辺りには誰もいない。
少し歩き、雇い主がいないか確かめる。
しかし、辺りの風景に変化はなく、あいかわらず緑の地面と青い空があるばかりだった。

「私が勇者だ。本当に誰もいないのか!」

大きな声を出してみるが、やはり返事はない。
わけのわからぬ土地に一人取り残されてしまった私は途方に暮れてしまった。



******


「ば・・化け物じゃ!!」

王様が目を丸くして驚くのも無理はない。
今、王都には魔王軍よりもはるかに強大な敵が現れているのだ。
それは鉄の塊。いや、鉄の壁。いや、鉄の山とでも言うべきか。
我が王都をすっぽりと覆いつくせるほどの銀色の巨大な壁が現れた。
鉄の壁は高く、王都上空を飛んでいる雲ですら鉄の壁の中腹辺りを漂っているほど壁は高かった。


ゴオオオオオオオオオ!!


思わず耳を塞ぎたくなるほどの巨大な音が王都に響き渡った。
城の窓ガラスは割れ、家具は吹き飛ばされる。
慌てて、城のバルコニーに出てみると、木々が渦を巻いて浮き上がり、落ちてくると住宅に突き刺さっていた。
さらに突風のせいで、王都の城壁も完全に破壊され尽くされてしまい、レンガがボロボロと崩れ落ちている。
王都の城壁は無残な瓦礫になってしまい、その城壁があった奥側に巨大なクレーターがぽっかり空いていた。

「なんと!」

王様もバルコニー出て、私と同じように驚いていた。
そのクレーターはまるで隕石が衝突したみたいに、おわん型に窪んでおり、その深さは1キロはくだらない。
長さは10キロを超え、クレーターの上に街を作れるほどの大きさがあり、皆驚いている。
王都に城の住宅には木々が散らばり、突き刺さっている。
たぶん、この木々は、あのクレーターに生えていた木だ。
あんな重い大木たちが、数十キロも離れた王都の城まで吹き飛ばされたなんて信じられないことだが、あれほど巨大な大木が王都の内には生えてはいない。
なので間違いないと思う。
だが、その王都外の森はクレーターに変わり、
その場所には木々が一本も生えておらず、この飛んできた木こそが、クレーターに元々生えていた木であることは間違いない。

「なぜしゃ? なぜ・・・」
「王様! 危ない!!」

私は、王様に抱き着くようにして、倒れこんだ。


ゴオオオオオオオオオウゴウ!!


「きゃー!」

女官の悲鳴声があっちこっちから聞こえてくる。
それも無理はない。なんせ、城が砕けるようなほどの振動が襲い掛かり、みな地面に伏せているのだ。
城のガラスは全て吹っ飛び、崩れてくる。
私は王様の体を覆い、細かいガラスが王様に刺さらぬようお守りする。

グラグラと不気味に揺れる城。
ミシミシと音を立て、柱にひびが入る。
これまでか、と思い始めた頃ようやく揺れが収まった。

「なにが起こった?」

そう言いながら、私は立ち上がり、外の様子を眺める。
すると、あの巨大な鉄の塊が持ち上がり始めていた。
ゆっくりと持ち上がる鉄塊。あまりにも大きすぎて、もはや山が動いているようにしか見えない。
巨大な鉄の塊は、上昇するにしたがって雲を蹴散らし、やがて空中で静止した。
それは一瞬だった。
鉄の塊はなんと落下し始めたのだ。上昇する時とは打って変わって、落下するときは一瞬。
気がつけば地面に着地している。


ドスウウウウウウウウウウンン

地鳴りのような、いや雷のような長い低音が不気味に王都中に響きわたる。
私の心臓さえも突き破りそうなほど、音の衝撃は強く、恐ろしくて無意識に震えてしまうほどだ。
まさに鉄の塊は天罰。神が与えし天罰のごとく、我々に立ちふさがり、我々に制裁を加えている


「大臣。あれは魔王軍か?」
「違います。いくら魔王でもあれほど大きなものは操れないでしょう」
「では、あれはなんなんじゃ!」
「わかりません!」
「とにかく、勇者じゃ。勇者に早く来てもらって、討伐してもらえ!」
「はい・・・・・」
「大臣。どうした?」
「王様・・それが勇者はもう来ております」
「どういうことだ?」


召喚石は、力を失っていた。
ということは召喚の成功。そういうことになる。


ドスウウウウウウウウウウンン


突然の振動で、思わずひっくり返る。
この振動、あの大きさ、もしかしたら・・・あれこそが勇者?
よく考えてみれば召喚石が力を失った後、鉄の山が突然として現れたのだ。タイミングとしてはあまりにも良すぎる。
それにあの鉄の山・・・・よく見ると鉄のブーツにも見えなくもない。いや、きっとそうだ!
あの鉄の山の様子から察するに足を横に倒した。なので、あれほどの揺れが起こった。そういうことなのだろう。
足を横に倒す。その何気ない行動だけで、城をも揺るがす天災的力を勇者は持っている。

「私が勇者だ。誰か・・・・ゴオオオオオオオオオ!!」

間違いない。あの山は勇者だ。
最後の方は風圧で聞こえなかったものの、鉄のブーツの上空から、勇者だと自ら名乗ったんだ間違いない。
しかし、この山のようなものが勇者のブーツだとは・・・。
私は勇者の顔がどんなものだろうかと思い、上を見上げてみた。
・・・が、勇者の顔はかすんでしまってよく見えない。
私のいる城からはっきりと見えるのは勇者の履くブーツだけ。
それより先は遠すぎて、なにがなんだか、よくわからなかった。

「大臣! 早くあの化け物をなんとかせよ!」

慌てふためいている王様。いや違う。私以外の全ての人が慌てていた。
あの鉄の塊である勇者のブーツを好意的に見ているものはいない。
皆、天からの災いかなんかだと思っているらしく、王様同様この山をなんとかしてほしい、そう思っているに違いない。
言わずとも雰囲気でわかるのだ。
王様の命令に皆の視線が私に集中する。

「大臣。このままでは王都は滅びる! 早くなんとかせよ!」
「ここで勇者を帰せば、勇者が怒り逆に国が滅ぼされてしまうかもしれません。
 今はまず勇者と話し合い、魔族を滅ぼすよう説得するべきです」


辺りがざわつく。
どうやら皆、私の意見には否定的のようだ。

「なにをいうか大臣! 血迷ったか」
「王様。私は血迷ってなんかいません。それより見てください。確かに勇者は化け物のような力を持っていますが敵意はありません。
 その証拠に私たちを探しているようなことを申していたではありませんか」
「な・・ならどうするつもりだ、まさかあの化け物と手を組む気か!?」
「はい。王様。そうするつもりです」

また、辺りがざわつく。
皆は口々に「危険だ」とか「ばかげている」とか「あれこそが魔王の手下かもしれぬ」とかいろいろ好き勝手言っていた。

「王様。30分時間をください。必ず30分で話をまとめてみせますから!」
「あ・・・これ大臣! 待たぬか!」

私は走った。走って城の階段を駆け下り、ドラゴンがいる飼育小屋へと向かった。
そこで、温厚で小型なドラゴンを一匹借り入れ、大空へと飛び上がる。
向かう先はもちろん、勇者のところ。勇者の顔だ!

「頼む! 頑張ってくれよ!」

手綱を引き、目一杯高く飛ぶ。
私の気持ちがドラゴンにも伝わったのか。小さいながらも頑張ってくれている。
小さなドラゴンは時々雄たけびを時々上げながら、私のため、ひいては王都の未来のため頑張ってくれた。
だが、それでも、勇者の顔までの道のりは遠く、とてもじゃないがたどり着けそうにない。
なので、私は秘宝中の秘宝、魔王すら持っていないと噂の魔法石を使うことにした。
この魔法石は空間を飛び越える力を持つ石で、こういう時のため取っておいた。
使い時は今だ。勇者の顔までドラゴンとともに飛ぶことにした。

魔法石を使うと、雲を突き抜け、突然視界が開く、すると、はるか上空に勇者の顔が見えた。
だが、その顔は人間の顔には見えなかった。
なんというか・・自分の顔を地面に着け、真下から人を見上げるような、そんな感覚だ。
勇者の鼻の穴ばかりが大きく見え、勇者の本当の顔がわからない。
だが、そんなことどうだっていい。
なにより、今重要なことは勇者に私の言葉を伝えることが先決だ。


「お~い! 聞こえてますか~!」


ゴオオオオオオオオオ!



私の大声は蚊の羽音程度の音すら出せず、勇者の鼻息が辺りの音を完全に支配していた。
二つの鼻の穴いうとてつもなく巨大な大砲から発射される、鼻息に私の声がかき消され、大声で叫んでいるにもかかわらず、自分の声が聞こえない。
地鳴りに似た轟音が辺りを揺るがしている。
勇者の鼻は山をも凌駕しており、鼻の高さだけでも3000メートル程度はあるはずだ。
なら、私の姿など勇者にとっては埃も同然で肉眼で確認できるかさえも怪しい。
勇者と私にそれほど大きな差があれば、声が届かないのも納得だ。
私の叫び声はまさに蚤の心臓と言うべきだろう。
少し考え、一つの結論にたどり着く。
耳元だ! 
勇者の耳元で叫べば、私の声も聞こえるはずだ。
早速私は、勇者の耳に向かうようドラゴンに支持を与え、勇者の顔を大きく旋回するようにして飛ばす。
その時、勇者の目玉の前を横切るようにして飛んでいたため

「お~い!」

勇者に向かって思いっきり手を振る。山肌のように広大な土地である勇者の瞳孔に向かって手を振ったのだ。
ドラゴンをブルブルと左右に振らせ、私の位置を勇者に知らせる。
その距離は勇者のまつ毛との距離が数百メートルと、勇者からすれば指先の白い爪部分程度の距離しか離れておらず、
本当にギリギリの距離から手を振ってみたが、勇者は私のことを一向に見ようとしない。
勇者の持つ黒い瞳孔は明らかに、私のことをなんか見つめず、もっと遠く方を見つめていた。
目がギョロギョロと生物的に不規則に大きく動く、まるで地獄で出会った化け物のような気持ち悪さだが、
この化け物こそが私たちの救世主となる存在なのだ。
この赤い柱のような毛細血管や、悪魔のような不気味な瞳孔に、
私という勇者からすれば微生物にも思える小さな生き物を、巨大な勇者に認識されるのは予想以上に困難だった。
勇者からしてみれば、私という存在は取るに足らない小さな細菌、なので脅威もなく見る必要もない、そう無言で言っているように思えた。

「仕方ない耳だ!」

勇者の目で気づいてもらうのをあきらめ耳元へと向かう。
悔しいが仕方がない。勇者の目に気づいてもらうのは難しいのだ。あきらめるほかない。
そしてようやく、勇者の耳元についた。

「お~い! 聞こえますか!」
「・・・・・」

信じられないことに、ここまで耳元に近づいても勇者は反応を示さなかった。
仕方がないので、耳元ではなく、直接耳の中へと進むことにした。
耳の中に進むさい、耳にかかる髪の毛が、カーテンのように垂れ下がっていた。
その太さは私乗るドラゴンよりも太く、10メートルはくだらない。
とてつもなく太い、鉄のような柱の集まり、それが勇者の髪の毛だった。

そしてとうとう私は勇者の耳の中に入った。
耳の穴の入り口には細かい白いうぶ毛が、穴を囲むようにして生えていた。
だが、産毛と言えども極太で、5メートルは確実にある白い巨木だった。
勇者の耳の穴はまさに魔界へと続く大洞窟と言った感じで、死を確保しななれば、入る勇気が生まれぬほど、恐ろしい大洞窟であった。
耳の穴の入り口を囲むようして生えている勇者の産毛は、まるで鍾乳石を大きくしたような迫力があり、あれが一本でも降ってくれば命はない。
産毛と言う白い柱が降ってくれば、確実に押しつぶされてしまうだろう。
それにさっきから、急に暖かくなってきており、これが勇者の体温だということを気づかされる。
そして、なんというか若干脂臭いような耳独特の匂い。
ここは勇者の耳の中。巨人の体内なのだ。この洞窟の主である勇者からすれば私は異物、いわば細菌のような存在だ。
誰も歓迎などしない、むしろ勇者の体に殺される側の存在なのだ。
こんなところをぼやぼやしている暇などない。
早く勇者に気づいてもらい、早くこの大魔境から逃げなければ。
私は腹が裂けるような気持ちで思いっきり叫んだ。


「お~い!」




つづく