タイトル
「ミルクを絞ると」



それがどれぐらいの大きいのか? 果たしてどこまで続いているのかわからない。
ただ一つだけ、確かなことは、ソレが果てしなく大きいということだ。
宇宙の概念を超えて存在する、ソレは人間程度の微生物に観測すら許さなかった。
そんな果てしなく巨大なソレと、塵以下の存在の人間・・・
しかし、巨大な・・・宇宙という概念よりも大きなソレは大きくため息をつき、宇宙が存在する入れ物に視線を落としていた。

「ふぅー・・・また溜まってきちゃったな」

プルンと大きく突き出た胸。
その持ち主である少女は、幼い顔に似合わず、かなりの乳を持っていた。

「また、ミルク?」
「うん。そうなの。なんかムズムズするっていうか・・・」

胸を持ち上げて、ため息をついていたところに、一人に別の少女が現れた。

「しょうがないよ。体内でミルクが生成されているってことは、宇宙がたくさんある証拠。
 どんどん、新しいミルクを作らないと、宇宙が持たないし・・・」
「まあ。わかってはいるんだけどね。でも、そうなると今わたしの中にある宇宙は消滅しちゃうじゃん。だから、ちょっと名残惜しいっていうか・・・」
「なになに。もしかして気に入っちゃった? 今アンタの乳首の中にある宇宙の・・・その中にいる男子にでも恋したの?」
「ちょ・・・ちょっと!!」
「乳首の中の王子様かー。でも、王子様って言ってもアンタのミルクのおかげで生き長らえているんだから・・・
 アンタさ。もしかしたら乳首の中で女神様って崇められているかもよ?」
「もおー、やめてよ。女神だ、なんていわれても困るし、そんなんじゃないよー。ただ今まであった宇宙が無くなっちゃうと、
 中の人たちが、ちょっと可哀そうだなーって思っただけ。それだけだよ」
「ふーん。そっか。でも、溜まったミルクを出さないと、胸が張って苦しくなるし、ミルクの質も悪くなっちゃう。
 それに炎症でも起こったりしたら・・・宇宙が作れなくなっちゃう。そうなったら・・・」
「もう、だ・か・ら! わかってるって。ほら、今から出すから」


少女は服を脱ぎ、胸を晒して、ピューと乳からミルクを出した。
両胸から出る二本の白い線。
勢いよく出たと思うと、だんだん勢いがなくなり、水滴状になっていき、やがてミルクが止まる。

「ふうーすっきりした」
「ほんと・・・よく出たわね。で、どう? 新しい宇宙はできそう?」
「え? ・・・・・うん。でき始めたみたい」
「そう、ならよかった。じゃあ、もっといい宇宙を作れるように、いいものを食べて、運動しなきゃね」
「うん。ありがとう。じゃあ、いこっか」

ミルクを出し終わると、二人の少女はその場を去っていった。
地面には生暖かい、ミルクが散乱し、地面を白く汚していた。
だが、その出されたミルクは人間・・・いや、人間の住む宇宙の規模から考えると、とてつもない量だった。
出されたミルクの単位など、想像もできないような、とんでもない量のミルク。
仮にたった一滴のミルクの雫が、地球に落ちたのなら、かするだけで地球は・・いや、銀河ごと消滅するだろし、
地球が滅んだことにさえ、人間が気づくかどうか怪しい。
気づいていたら、死んでいた。そんなことが現実で起こっている。

ミルクを絞る

たったそれだけのことで、宇宙は壊滅し滅んでいる。
その宇宙の残骸は、ミルクを出した時の水圧でとっくに押しつぶされており、どこに宇宙の残骸があるのか、もはや見当もつかない。
宇宙は跡形もなく潰されている。
しかし、破壊された宇宙に変わり、全く新しい別の宇宙が少女の乳首の内部で誕生していた。

宇宙が新しくできた経緯、
それはミルクが絞られる時の噴射によるもので、それは俗にいうビックバンと呼ばれる。
つまり、ミルクを絞った時の衝撃で、新たな宇宙が誕生したのだ。

こうして少女たちは、宇宙を育てては、破壊している。
いわば生理現象に近い。
体内で生成された、栄養満点のミルクを宇宙に与え、作り育てているのだ。
だが、ミルクの寿命も永遠ではない。
古くなったり、余ったりしたミルクは外に排出される。
そうなると、ミルクと共に宇宙も一緒に排出されて、その寿命を終える。
こうして地球のある宇宙は138億年の歴史に幕を閉じた。

一方、少女の乳首で、新しく作られつつある宇宙には、新しく知的生命体が誕生していた。
だが彼らは自分たちが、少女の乳首の中にいるなんて思いもしないだろうし、気づくこともないだろう。
少女の胸の内部は広大だ。たった一滴のミルクでさえ、宇宙は耐えられない。
そんな強大な力を持つ、少女に逆らうことなどできるはずもないし、そんな気さえ起こらない。
なぜなら、宇宙のその外側に少女の乳首があり、宇宙がミルクで覆われている、そのことを彼らは知らない。
宇宙どころか、彼らの住む銀河系を探索するのが精一杯。
とてもじゃないが、宇宙の外側の探索など、探索不可能。それが人間の技術の限界だった。

こうして、乳首の中のそのまた中の宇宙に住む、生命が少女に気づくことはなかった。
だが、刻一刻と、宇宙の寿命は迫ってきている。
少女の体が成熟し、ミルクの量も年々増えてきている。
そのため、ミルクタンクがいっぱいになるのも早まってきており、宇宙の寿命が徐々に縮まってきている。
だが・・・・彼らにはどうすることもできない。
宇宙の寿命は、少女のミルクの出来次第で、決まってしまうが、その寿命を延ばすことはできない。
小さな彼らにはミルクを取り出すこともできないのだ。
彼らの力を結集しても、一滴のミルクでさえ消費できない。
宇宙が存在する、全ての時間、すべての人の人生を、ミルクに消費に当てたとしても、もはや追いつかない。
なぜなら、今もなお、ミルクは増え続けており、宇宙が消費するミルクの量よりも、生産され続けているミルクの方がずっと多いのだから。