タイトル
「夏は海に行こう」






突然変異とは突然起こるから、突然変異と言うのだが、今回はいくらなんでも異常だ。

「そんなこと言ったってしょうがないじゃん。大きいものは大きんだから」

この雷鳴のような声の持ち主。
それが俺の妹だ。
しかし、ただの妹じゃない。

「兄貴ってほんとチビだよね」

ひょいっと俺は持ち上げられる。
別に妹が特別怪力ってわけでもない。
ただ・・・

「おまえがデカいんだろ!」

妹は去年、突然巨大化した。
理由は全くの不明だが、妹のように巨大化する事例が稀に報告されている。
社会問題にもなっているほどだが、妹の場合、自分が大きいことにあまり気にした様子はない。
意外にも、今の自分の状況を受け入れているようである。

「ほんと兄貴ってチビだよね。ほらウリウリ」

妹の親指と人差し指の間で、もみくちゃにされる。
指と言っても、俺の体よりも大きく、妹の身長は200倍にも達する。
今では東京タワーと肩を並べられるまでに成長していた。

「あはははー。よっわーー!」

200倍の極太指に、ぐりぐりされる。
それはどんなプロレスラーよりも強く、一発でダウンしてしまう。

「兄貴も男なんだからもっと頑張りなさいよ。ほら次は足ね」

妹の足は全長46メートル、横幅は18メートルに達する。
テニスコート二個分という、とんでもない巨足なのだ。

「踏んじゃうぞ~えい!」
「ぎゃーーー!」
「あははは。ピチピチしてくすぐったい~」

生暖かい足が俺にのしかかる。
しかし、ものすごい重さだ。
たぶん、それほど体重をかけていないのだろうが、それでも身動きが取れなくなる。
しかも最悪なことに、妹の足は汗っぽくて、べたべたしている。

「汚な・・」
「ほほう・・妹の足が汚いってか・・・」

ヤバい。妹の目がSの目をしている。
こんな目をするときは、大抵ロクなことにならない。

「だったら、もっと汚くしてあげる」

妹は器用に足を動かし、俺を指の股へと押し込んだ。

「ぎゃーーー臭い臭い」

バタバタともがく俺。
しかし、妹の足の力は強く、指の股から逃ることはできない。

「あはは。いい気味」
「うふふ。楽しそうね」

そこに入ってきたのは、俺の姉ちゃんだった。
当然、姉ちゃんも妹同様とんでもない巨人。
200倍の巨大姉妹だった。

「最近仕事が辛くってね。今日は疲れちゃった」

姉ちゃんは、地元の企業に就職して、今や立派なOLだ。
こんな大きなOLが、一体どんな仕事をしているのか全く想像もつかないが、頑張って毎日会社に行っている。

「姉貴お帰り~。今日は遅かったね」

妹は、デーブルの上に俺を降ろし、そして姉に抱き着いた
すると、この部屋全体を揺らすのようなすさまじい振動が発生した。
ビルとビルにぶつかるような、ものすごい衝撃。

「姉貴はいいよね~。外で仕事ができてさ~。わたしなんか、外に出れないから、いっつも部屋で勉強。もうー! つまない」

妹は頭をボリボリとかいていた。
それを見て姉ちゃんは笑う。

「お兄ちゃんがいるから、一緒に遊んでればいいじゃないの~」
「さっきまで、遊んでたけど・・・もう飽きちゃった」
「あら」

あれが遊びだなんて、とんでもない。
あんなの殺人未遂だろ。

「姉貴。姉貴。ねえねえ~どっか連れてってよ~。お願いだからさ~」
「どうしよかな~」
「ねえ~。いいでしょ・・・ね?」
「じゃあ。次の日曜日にね」
「え? いいの! やったーーー!」

飛び上がって喜ぶ妹。
ズンズンと地面を揺らし、ものすごい重みが床にかかっている。
底が抜けそうなぐらいグラグラと揺れていた。

「兄貴も行くよね?」

二人が俺を見つめる。
だけど、ここはきっぱりと断ることにする。

「行かない」
「え~なんで! 兄貴」
「その日は勉強」

というのは建前で、ほんとは海に行くのが嫌なのだ。
こんな巨人たちと、海に行ったら命がいくらあっても足りない。
こう見えて姉ちゃんは元陸上部だし、妹は元水泳部だ。
二人とも運動部に所属していたから、かなり運動ができる。

「姉貴。どうする? 兄貴行かないってさ・・・」
「あらあら・・・困ったわね~。よいしょっと~」

ぽわわんとした甘ったるい声。
しかし、その声からは想像もつかないような、ものすごい振動が襲ってきた。

「うわわわ・・・」
「最近また重くなったのよね~」

テーブルの上にズンと乗せられる姉ちゃんの胸。
スーツを着ていても、その大きさを隠しきることはできない巨乳、いや爆乳か。
それはまるでガスタンクのようだった。
高さ30メートルはくだらない。
姉ちゃんが、その気になれば、あの胸の上になんにも人を乗せることだってできる。
それぐらい大きいのだ。

「最近肩が凝るのよね~」

ぶるんぶるんと、テーブルを叩く巨乳。
その振動で足を取られて転んでしまう。
ものすごい重さが、姉の胸には詰まっていた。
あんな重いものに、のしかかれられると、きっとペシャンコ。生きてはいられない。

「海に行って思いっきり遊んだら、肩の凝りもきっと直るんだけど~・・う~ん・・・ねえ?」

地響きを立てながら、姉ちゃんの巨乳が持ち上がった、と同時にその胸、前に突き出され、俺は胸の影に入ってしまった。
今、俺の頭上では姉ちゃんの巨乳がある。
いつ下敷きになってもおかしくない、とても危険な状況だ。

「重いな~重いな~。肩が凝っちゃうだよね~」

徐々に巨乳が下がってきた。
すると、ふんわりと甘い匂いが漂ってくる。
これは・・姉ちゃんの匂いか・・・。
どことなく、ミルクぽい匂いがするような気がする。
だが、もしこれが本当にミルクなら、一体どれぐらいため込んでいるんだろう?
もしかしたら、ご近所さんに配っても、消費できないぐらいの大量のミルクをため込んでいるじゃないかと思う。
そうおもうと、今の姉ちゃんの胸はかなり重いはず。
ミルクが追加される分、その分の重さが加算される。
それは、とんでもない重さになってしまう。

「ね・・姉ちゃん・・・・」
「海・・・みんなで行くわよね~?
「そ・・それは・・・」
「もぉ~~~。め!」

ピンと軽くデコピンされる。
と言っても、相手は巨人なので、ちょっとしたデコピンでも、顔が赤くなるほど痛い・・・。

「痛って!!」
「あらあら。ちょっとやりすぎちゃったわね~。うふふ・・・」

あんまり悪びれた様子はない。
そういうところが、姉ちゃんの怖いところだ。
実は姉ちゃん、隠れSなんじゃないかとたまに思う。
俺が痛がっているのを見て、陰で笑っているようなそんな気がする・・。

「わかったよ。行くよ。行けばいいんだろう」
「良かったわね~。お兄ちゃん。行くって。
「やったー! 流石兄貴~。話しがわかる~。姉貴ーありがとうー」
「あらあら。甘えん坊さんね~」

姉ちゃんと妹がまた抱き合った。
すると、例のごとくグラグラと家が揺れる。
あいかわらず、ものすごいパワーだった。


***********


そしてとうとう、魔の日曜日がやってきた。
生きて帰れるかどうかは、今日を乗り越えれるかどうかによって決まる。

「あれと・・・これと」
「どうしようかしら~。これも持っていくべき?」

早朝から地響きは絶えない。
姉ちゃんと妹は、朝早くから海に出かける準備で大忙しだ。
夏らしい水色の手提げカバンに物を詰めている。
俺の支度は10分で済んだのに、それとは対照的である。

「そう~そう~。言うの忘れてたけど~ここでお着替えしましょうね~」
「え~姉貴。なんで?」
「海で着替えるところが・・・あいにくないのよ~。残念だけど~・・・」

海に巨人用の更衣室はない。
もしそこに無理やり作ろうとすれば、東京タワーを包み込める大量のカーテンが必要となり、その建設費用はバカにならない。
そんな無駄金、政府が承認するわけないのだ。

「たっく! 更衣室ぐらい作っておきなさいよ」

政府の事情など、全く頭にない妹は、文句を言いながらスカートを降ろしていた。

「しょうがないわよ~。わたしたち・・大きんだから~」

と姉ちゃんは、大きく胸を揺らしながらブラジャーを脱いでいた。

「こっちみたら殺すから」

妹は俺にそう警告しているが・・誰がお前の裸なんて見るか!
お前はまだまだ幼児体系、見る価値などない。

「あらあら~。またちょっと大きくなったんじゃない?」

妹の胸を後ろから掴む姉ちゃん。

「ちょ・・ま! やめて姉貴」
「うふふ・・これぐらいの大きさなら、男の人を挟み込めるわよ~」
「姉貴・・やめてよ!」
「ほら、ほら、ちょうどここに男がいるし~、挟んでみる~?」

ひょいっと、俺は姉ちゃんの指につままれる。
すると そこには赤の水着を着た巨人が

「挟んでみて~」
「いや~~~!」

妹は叫んだ

「うふふふ・・・じゃあ、お姉ちゃんが挟んじゃおうかな~」

むにゅ

や・・・柔かい。しかもあったけえ・・・。
姉ちゃんの胸はデカかった。
こぼれんばかりの巨乳だ。

「姉ちゃん。水着・・小さくない?」
「前はこのサイズでピッタリだったんだけど~。水着が縮んだのかしらね~」

姉ちゃんの着ている水着は、全体的に小さく、
尻が水着に食い込み、今にも胸がこぼれ落ちそうだった。

「う・・う~ん。ちょっと窮屈だわ!」

背伸びをする姉ちゃん。すると

ギリギリギリ・・・・。

水着が悲鳴をあげていた。
背伸びをしたことにより、胸が強調されて、その圧力を強めている。
姉ちゃんの胸は、もう・・・存在そのものが暴力なのだ。
圧倒的に肉厚。
その重みは8000トンにも及ぶ。
電車一両が約40トンだから、胸の重さ8000トンは電車200両分。
なんと15両の電車が13編成も走らせれるほどの重さがある。
そんなとんでもなく重いものに、俺は挟まれ捕らえられている。
二つの肉壁。電車よりもはるかに重い胸。
そんな重い胸が、水着を破ろうとして、必死に攻撃をしていた。

ギシギシギシ

水着は姉ちゃんの胸に張り付き、わずかな隙間もない。
乳首でさえ、水着に密着している。
もし、水着と胸の間になにかを挟んだのなら一瞬で潰れてしまうだろう。
たとえ、鉄のように硬い物であっても、今の姉ちゃんの胸を前にしては無力だ。

「姉ちゃん。降ろしてよ」
「だぁ~め!」
「くっそ! なあ。見てないでお前も助けろよ」

妹に助けを求めた。

「知らない。自分でなんとかすれば?」
「そこをなんとか・・なあ。頼むよ」
「うっさい!」

妹に怒鳴られた。
誰も助けてくれないなんて・・・可愛そうな俺。


「やったー! 久しぶりのお外ーー!」

家の扉を開けると眩いほどの太陽が差し込んできた。
外はかなり熱い。真夏の熱さだ。
だが、その熱さも妹にとっては気持ちがいいみたい。

「あっついー! でも最高ーー!」
「うふふ・・・家から出ただけなのに、随分とご機嫌ね~」
「そりゃ姉貴ー。外に出たのは久しぶりだからねー。それより、ここ。歩いてもいいんだよね?」
「もちろん。大丈夫よ~。みんな避難させてあるから~」

巨人が歩くには、住人を避難させなければならない。
なぜなら誤って人を踏むかもしれないし、それに

「よかった~。じゃあ水着を見られる心配もないんだ」

二人は水着姿で外に出ている。
露出度はかなり高く、人によっては刺激的に感じるはずだ。
プルンプルンと揺れる胸に、ムッチムチの食い込んだお尻。
それをこっそり見ようとする不届き物が、現れないとも限らない。
まあ、そんな命知らずはいないと思うけど。

「こっちよ~。わたしの後についてきて~」

姉ちゃんが先導になって歩き、俺は姉ちゃんの胸の中。
水着によって締め付けられた、ギチギチの胸が俺を捕らえて離さない。
一方妹は、姉の後ろをなぞるようにして歩いていた。

「いいよな。姉ちゃんたちは。自分の足で歩けて」
「あら~あら~。でも、わたしたちが歩いたほうが早いでしょ~」
「そうそうー、兄貴と一緒に歩いてたら日が暮れるっつぅーの」

二人の歩行速度は速く、時速は800キロに達していた。
これは新幹線の約3倍の速さだ。
文字通り、目にも止まらぬ速さで歩いている

「タダで乗せてあげるんだから、ありがたく思いなさい」
「バカ! 乗せてもらってるのは姉ちゃんの方だ! ありがとう姉ちゃん」
「あらあら~」
「ふん! バカ兄貴。そうやっていつも調子に乗って・・・今度、兄貴を乗せる時には特急料金を取るからね」

ふん! ばーか!
誰がお前なんかに乗るか。
乗るなら、やっぱり。

「あらあら~。喧嘩はダメよ~」

やっぱり、こっちだろ!
姉ちゃんの胸は弾力性が豊富で、乗っていて疲れない。
最高級のソファーのようにふかふかだ。

「ここから急に狭くなるから、気をつけて~」

流石は姉ちゃん。
毎日会社に行っているだけのことはある。
小さな家を避けながら、上手に歩いている。
だが、あまり外に出てない妹の方は・・・

「わわわ・・踏んじゃった・・・」

数台の車が、妹のビーサンによってぺしゃんこになっていた。
かかとで一台。つま先で一台。合計二台の車が潰れていた。

「気を付けて~。あんまり踏んだら可哀そうよ~」

姉ちゃんは、ひょいひょいっと、車を飛び越えて歩いている。
だが、地表をよく見てみると、家にヒビが入っていた。
姉ちゃんのジャンプによる、重みに家が耐えきれていない。
流石は8000トンの胸を持つだけのことはある。
軽くジャンプするだけで、家にヒビが入るとは、なんて重い体なんだろう。

「う・・・姉貴・・・。狭いよ~」

一方妹は苦戦をしていた。
平均台を歩くかのように、一歩一歩慎重に足を出しているのだが、それでも限界がある。
街の中を窮屈そうに歩く巨大なビーサン。
車道と歩道がきちんと整備されている道路でさえ、妹にとっては小さく、片足しか踏み下ろせるスペースがない。
妹からしてみれば、道路は平均台のように狭かった。
そこをフラフラと危なっかしく歩いている。
気づけばビルが立ち並ぶ、街の中央に入り込んでいた。
ビルと言っても、それは小さく、妹の腰よりも高いビルはない。

「わ! とと・・・」

ふらつく妹。
道路に隙間なく、踏み下ろされる巨ビーサンと言っても、片足だけでは力不足で、体を支えきるまでには至っていない。
ふらついた妹のお尻で、ビルを吹っ飛ばしていた。
妹の尻は、姉ちゃんの尻よりも一回り小さい。
だがその破壊力はとても高い。
一回ポンと軽く当たるだけで、ビルは次々と倒壊していき将棋倒しになっていた。
ビルの倒壊は一つだけに済まず、二つ三つと、同時にいくつものビルを吹っ飛ばしている。
ビーサンが一歩、道路に降ろされると、大きな縦の亀裂が入り、車が走れなくなる。
まるでチョコレートが割れたようにパキパキに崩れ、あの硬いコンクリートでさえ、妹の体重を支えられなかった。
妹や姉ちゃんが持っている、とんでもない体重に勝てるものなどない。
人間ではあらがえない、圧倒的質量が彼女たちの体内にあった。

「あらあら・・・」

道路に亀裂を与え、ビルの窓ガラスを吹っ飛ばしながら、歩く姉がぴたりと歩を止める。
うん? なにかが光った?

「あらあら。いけない子」

姉ちゃんは指さすビルの屋上。
そこには一人の男が・・・いやカメラを構えた男が一人、屋上に立っていた。

「ダメよ~」

姉ちゃんの手が、屋上へと伸びる。
そして、写真を撮った奴を、そのまま摘み上げた。
まさか・・・このまま殺すのか・・・。

「あんな遠くから、フラッシュ焚いてもわたしには届かないわよ。それにそのレンズ・・あんまりいいレンズじゃないわよね?」

ズコーーー!
なんだよ・・・カメラ話か。これだから姉ちゃんは・・・。

「姉貴ー。なに・・そいつ・・・」

遅れて妹がやってきた。
その顔は険しい。

「この子がね。わたしを撮ったのよぉ~。でも綺麗に撮ってくれなくて・・・・」
「え! 姉貴を撮った? 貸して!」

妹は姉ちゃんの手から、男を奪い取った。

「この盗撮魔! 姉貴を撮るなんて・・・殺してやる」

妹の手に移る男。
その男に向かって、妹は爪を差し向けた。
その爪は大きく、横幅だけでも2メートルはくだらない。
それは彼の体以上の爪が迫ったことを意味し、小さな彼の首など簡単にちょん切られてしまう。

「あらあら~ ダメよ~」
「姉貴・・・」

姉ちゃんはひょいっと、妹から盗撮魔を奪い取った。

「ダメよ~。勝手に写真を撮っただけで、殺すのはやりすぎ~。こんなにちっちゃいのに・・・ねえ? 可哀そうでしょ~」
「でも・・・それだと姉貴が・・・」
「うふ。こういう時はね」

姉ちゃんは地面に降ろして、彼を跨いだ。
ムッチムチのお尻が彼を見下ろす。
そこから見える景色はさぞいい景色なのだろう。
だけど、彼は一枚も写真を撮らない。ただ、茫然と見上げているだけだ。

「うふふ・・・あんまり近づくと危ないわよ~」

姉ちゃんはその場でズンズンと足踏みをしていた。
道路はピキピキに割れ、まるで地震が起こったみたいになる。

「私一人だけの時なら、いいんだけど・・・今日はみんなと一緒だから、あんまりそういうことはしないでね。またやったら、殺しちゃうから・・・」

ニコニコと笑う姉ちゃんの目の隙間から、恐ろしい目が現れた。
その目は冷たく、冷血に彼を見下ろしている。
写真を撮っていない、俺ですら怖くて震えてしまう・・・。

「ひ・・ひーーー! 助けて!」

盗撮魔は、そのピキピキになった道路を這いつくばり、転がるようにして逃げていった。

「うふふ。今度は撮る時はちゃんと綺麗に撮ってね~」

バイバイ~と手を振る姉ちゃん。
でも目が笑っていない。めっちゃ怖い。

「姉貴・・よかったの? あんな奴に写真撮られて・・」
「いいの~いいの~。いつものことだから~」

そういえば、姉ちゃんは毎日会社に行っている。
となれば写真を撮られることもある・・か。
まあ・・・二人ともビキニだし、グラマーだし(特に姉ちゃんが)そう思うと撮られてもおかしくない。
男の欲望は深いのだから・・・。

「でも、わたしは嫌だなー。勝手に撮られるなんて・・・まあ、勝手じゃなくても嫌だけど」
「うふふ。また誰かに撮られたら言って~。私が追い払ってあげるから~うふふ」
「あ・・姉貴・・・大好き!」
「あらあら・・・」

妹は姉ちゃんに抱き着く。
その時、足元では大惨事になっていたのだが、二人は気にしない。
それよりも、姉妹の時間を優先している。

「姉貴はほんと頼りになるよ。そういうとこが好き!」
「あらあら~」

妹が抱き着いたことにより、姉ちゃんは一歩下がることとなった。
その際、水着に食い込んだお尻が、ビルを弾き飛ばしている。
姉ちゃんの尻は妹よりもデカく、破壊力は妹の数倍を行く。
むっちむちに食い込んだ尻が、高さ140メートルの高層ビルを十棟、同時に吹き飛ばし、上空300メートルまで吹っ飛ばしていた。
姉ちゃんの肩まで、吹き飛ばされたビルの残骸。
その飛び散ったコンクリート片と窓ガラスが、姉ちゃんの肌の突き刺さる・・・ことはなかった。
ビルがいくら降り注ごうとも姉ちゃんの肌に傷はつかない。
それどころか巨大な胸が、ぶるんと揺れるとビルの残骸を跳ね返していた。
恐ろしいほどの強度と柔軟性を兼ね備え・・・姉ちゃんの胸はもはや兵器レベルと言ってもいい。

「あらあら。汚れちゃったわね~」

サッサと胸を払えばそれでおしまい。
ビルの残骸が払いのけられ、また綺麗な姿に戻っている。

そして、その後はなんのトラブルもなく、海に着くことができた。

「やったー! 海だ!」
「あらあら」

窮屈な街を抜けるとそこはもう海だ。
海が見えると、妹はダッシュで向かった。

「あ・・・あれ? こんなに小さかったっけ? 前来た時はもっと大きかったのに・・・」

海岸は横に400メートルも広がる規模の大きなもの。
だが、妹からしてみれば、自分の身長と大して変わらない。
小さな小さなコビトサイズの海岸だった。

「でもね~。寝ころべる海岸って結構貴重なのよね~」

姉ちゃんはゴロンとうつ伏せに寝ころんだ。
それだけで、海岸のほぼすべての面積を埋め尽くされる。
海岸にあった砂浜が姉ちゃんの胸に押しつぶされ、大きく窪む。
砂浜に、胸型の形をしたクレーターが刻み込まれた。

「あ! それ、わたしもやってみたいー」

妹が姉ちゃんの隣に寝ころぶ。
それにより、一気に海岸が狭まり、砂浜にとどまっていた姉ちゃんの巨体が、その奥を走る道路にまでその範囲を広めていた。
海岸を左右に走る道路が姉の胸に押しつぶされ、その下を走っていた車を押しつぶす。
運転手は当然、即死。柔らかな胸の下に埋葬されている。

「えへへ・・・姉貴~。あったかい~」
「ほんとね~」

二人は足をパタパタとさせている。
その下には、運悪く家が建っていて二人の足の下敷きになってしまった。
ドスンドスン、振り子のように襲い掛かる四つの足。
何度も何度も押し寄せる足の襲来に家は耐えきれず、家の天井部分が「く」の字に曲がり出す。
そして天井を突き破り、外壁をも吹き飛ばして、家は・・・完全に崩壊してしまった。
ボロボロになった家。それは廃墟というよりは、鉄球で家を解体したといった感じか。
妹と姉ちゃんの足は、工事で使い鉄球並みの破壊力があった。
こうして、家は完全に破壊されたのである。

「ひなたぼっこはこれぐらいにして、泳ぎましょうか」
「うん」

寝そべっていた二人が立ち上がる。
その時、お腹についていた海岸の砂が、一気に剥がれ落ちて、ザーというものすごい音がした。

「きゃははー。冷たいー!」

ちゃぷちゃぷと、海の中に入る妹。
それに続き、姉ちゃんも海に入った。

「姉貴~。それそれ~きゃーー!」
「もぉー・・・こぉ~ら! あんまりかけちゃダメ~」

二人は水をかけあい、遊んでいる。
和やかな光景だ。
美女と水。これほど見栄えする光景はないだろう。
だが、そんな美しい光景に見向きもせず俺は、海岸から避難した。

ザバアアア

水しぶきが、俺の頭上を飛び越えて行った。
そして

ドカン!!

しぶきがまるで爆弾のように破裂して、辺りに広がる。
俺はとっさに伏せた。
幸い水の直撃を受けずに、やり過ごすことができたが、一歩間違っていれば、俺はこの世にいない。
俺のすぐ後ろにある信号が崩れ降ち、地面に横たわっている。
水のしぶきの直撃を受けて、信号機は大破した。
もし、これが信号機ではなく、俺の体に水がかかっていたら・・・体が真っ二つに切断されていただろう。

二人の女巨人がすくい上げている、その大量の水が次々と街に飛来してくる。
はじけ飛ぶ家々。そして粉々に破裂する家。
さらには、屋根が真っ二つ両断される家もあった。
海から飛んでくる海水は重く直撃を受けた、道路に大きなクレータができた。
そこから水道管が破裂し、街は水浸し。
それなのに

「きゃはははー! 冷たい! 冷たいよー! 姉貴ー」
「お返しよ~。それそれ~」

二人は無邪気に水をかけあっていた。
しかも、徐々に激しくなっている。
このままだと危険だ、もっと奥に避難しないと。

ザバアアア。ザバアアア

海から飛来したしぶきは、情け容赦なく襲い掛かり、山へと続く道を完全に破壊してしまった。
これで、逃げることも、海に向かうこともができなくなる。
完全に孤立してしまった。

「それ~」
「あ・・・あいつ!」

妹が海を蹴っていた。
しかも、海側ではなく陸側に向かって蹴っている。
妹の長い脚が、海水を持ち上げ、海を一刀両断する。
海面は大きく揺れ動き、陸地に向かって、一直線に水しぶきが飛来した。

ザバアアアアアア

海岸付近にある郵便局が吹っ飛び次に、住宅に学校、そして最期に俺のいる交差点に水が飛んでくる。
水が着弾して破裂する。
すると、辺りの風景が一変していた。
道路は穴だらけになり、信号や標識は傾いている。
家の窓はない。全部道路に崩れ落ちて、吹き飛ばされていた。
車が止まる駐車場では、しぶきの直撃を受け、一台数百万もする車が、合計で30台が同時に潰れていた。
さらに

「姉貴ー。ビーチボールやろう!」

妹は手提げバックから、ビーチボールを出していた。

「いくよ」

高らかに宙を舞う、ビーチボール。
その高さは、妹の身長を超え、500メートルに達している。
そして落下し始めると、ものすごい衝撃が、ビーチボールにのしかかった。

「そおーれ!」

妹の手に衝撃波が走った。
渦を巻く手のひら、そして、勢いそのままでビーチボールが叩かれる。
ビーチボールには、風を纏っていた。
さながら隕石のような、ものすごい圧を受けながら、空中を突き進むビーチボール。
衝撃波を身にまといながら落下してくる。その先には街があった。
俺がいる方向へと、隕石は・・いやビーチボールが向かって来ている。
その子供っぽい七色のボールからは、想像もつかないような威力が街にもたらされた。

ズウウウン・・・

ビーチボールは街を超え、山に突き刺さっていた。
妹のアタックが、ビーチボールに乗り移り、山を破壊したのである。
ボールは山の頂を押しつぶし、山に食い込んでいる。
それはビニールでできたボールに、山が負けた瞬間でもあった。

「ごめんごめん。暴投。暴投・・・って、あれー兄貴。そんなところでなにやってるの?」

ボールを取りに来た妹が、俺のことを見下ろしている。

「バッカ野郎! 死ぬとこだったんだぞ」
「あは。ごめん。ごめん。今助けてあげるから」

ひょいっと指につままれ、手の上に降ろされる。

「うわ・・・なんだよこれ」

海から山に向かって、一直線に街が破壊されている。
まるでレーザーが撃ち込まれたみたいに、一直線に綺麗に破壊されていた。

「あらあら~。ちょっとやり過ぎちゃったみたいね~」

後から、姉ちゃんもやってきて、その破壊力に驚いている。

「二人ともやりすぎ、もう少しで死ぬとこだったんだよ」

運よく、しぶきの隙間と隙間に居たから助かったけれど、もし、しぶきがちょっとでもズレていたら、俺はペシャンコになって死んでいただろう。

「う~ん・・・これでも、セーブしてたんだけどね~」
「そうよ。兄貴ったら大げさすぎー」
「あほか。被害を見ろ被害を」

街はもう、めちゃめちゃだ。
しぶきを免れた地区でも、水浸しになって、水没しかけている。

「もっと、沖の方へ行きましょうか~。そこなら誰もいないし」
「あ! それそれ。もっと深いところに行って、泳いでみたいー」

というわけで、俺達は沖の方へと向かうことにした。

「なんで、俺も一緒なんだよ!」
「あらあら~。一人でいたら危ないでしょ~」

なんでも、一人でいるより、みんなでいる方が安全だと姉ちゃんは主張しているが、どっちにしろ危険だろ思う。
だって

ザブザブザブ。

全長300メートルの巨体が動くと大波が起こる。
太ももが海をかき分け、渦を作っている。
海の中の魚たちは、姉ちゃんや妹から逃げられず、太ももが引き起こす渦に巻き込まれて、粉々になっていた。
知らず知らずのうちに、海産物に影響を与えたのである。
さらに

「姉貴~。この深さなら泳げるよー」

腰のくびれにまで海水は達し、早速妹が泳いでいる。
妹は泳ぎの名人で、クロールに平泳ぎ背泳ぎからバタフライまで、なんでもこいだ。
魚のように滑らかに泳いでいる。
だが、妹の体が持つ、その圧倒的質量を前に推進させるには、それ相応の推進力が必要だ。
妹がしているバタ足。
水中を蹴り、その巨大を推し進めるスクリューは、海に深刻なダメージを与えていた。
全長140メートルが足が上下に二つ同時に動くと、必然的に海が揺れ動く。
それが津波となって、海岸の街を襲いかかる。
水遊びで瀕死になっている、街に更なる追い打ち。
妹が引き起こすバタ足の波に、街は完全に水没し、家々が流されていく。

「めっちゃー気持ちい。お日様もぽかぽかだよー」

おへそを見せながら、のんびりと浮かぶ妹。
そのすぐ横に、小さな漁船が漂っていた。
だが、その小さな訪問者に、妹は気づいていない。
しかし、それも仕方がないことかもしれない。
漁船の長さは10メートル。
妹からしてみれば、わずか5センチだ。
漁船は妹の手のひらよりも小さく、指の長さ程度しかない。
そんな水面に浮かぶゴミのような漁船を、彼女は見落としていた。

「さあて。もう一回泳ごうっと」

クルリと体を回転させた。
その時起こった波に飲み込まれ、漁船は転覆し乗組員が海に投げ出される。
さらに

「姉貴あそこまで、競争しよー」

ウォーミングアップは終わり、今度は本気になって泳いでいた。
それまでの、のんびりした泳ぎ方とは全然違う。
全身全霊をかけて、その巨体を前に進めていた。
手の足も本気になって、クルクルバシャバシャと激しく回転している。
それに巻き込まれた、漁船はたまったもんじゃない。
既にひっくり返っている漁船は、妹の腹に押しつぶされ粉々になり、油が漏れ出していた。、
海に放り出された乗組員も、その後にやってくる妹のとんでもない巨足に巻き込まれて全員が死んだ。
その時間はわずか5秒に過ぎない。

「あんまり遠くに行ったら、ダメよ~。皆さんに迷惑をかけるから~」
「いいの。いいの。誰もいないんだからー」

ジャブジャブと、全速力で泳ぐ妹。
その下には、多くの漁船を巻き込んでいるのも知らずに、彼女は泳ぐことを楽しんでいた。
多くの人が水没し、その幼い手や足に踏まれて叩かれ、海に水葬されている。
妹の前を遮れば、死刑が待っているのだ。
そして日が暮れる。

「う・・う~ん。今日は疲れた~」

海岸に戻り、座りながら背伸びする姉。
夕日に染まりながら、ぶるんと揺れる巨乳がなんとも美しい。

「姉貴ーお疲れー。ちょっと・・・もうちょい寄れる?」

狭い海岸に、身を寄せ合う二人。
海岸は二人の巨人に占領され、わずかな隙間もない。

「楽しかったわね~。久しぶりの家族水入らずで~」
「楽しかったけど、でもかき氷ぐらい食べたかったなー」
「そんなにたくさん・・・氷が無いのよ・・・・」

浜茶屋をその尻で踏みつぶしながら、そんな話をする二人。
それを横目にしながら、俺はかき氷を頬張っていた。

「あ! 兄貴だけずるーい。一人だけ食べてる」
「あらあら。一人だけ美味しそうにしてるわね~」

すると手が・・・巨大な手が伸びてくる

「あ! 何するんだよ!」
「兄貴だけ食べて、生意気。わたしが食べてやるんだから」

妹はかき氷を、一口でぺろりと食べていた。

「一瞬で溶けちゃった・・・」
「うふふ・・仕方ないわよ。わたしたち大きんだから~」

想像していた味とは違い、妹はがっかりした。

「さ。そろそろ帰りましょうか。帰るまでが旅行・・だからね~」

姉ちゃんの胸に挟まれ、俺達は帰路に着いた。
後に残されたのは、水浸しになった街と、足跡や尻跡だらけになった海岸。
そして、上半分が押しつぶされた山。
それらが全て、復興するには少なくても五年はかかると予想され、その甚大的被害に政府は頭を痛めた。
だが、巨人である二人は、このボロボロになった街や海を気に入っている。
また近いうちに来たいと、そう言うに違いない。
そう判断した政府は、この街を全面的に放棄することに決め、巨人専用のピーチにして、また新たに整備することとなった。
そうする方が安上がりだし、海産物が激減したこの街で生計を立てていることは困難だった。
巨人が海水浴をする。
たったそれだけのことで、街が一つ無くなってしまった。




おわり