「待ち合わせ場所は...お、あのコンビニだな」
ネットで知り合った女の子と待ち合わせるため、郊外のコンビニまでやってきた。
正直、なんでこんなところまで来なければならないのかと思ってしまう。
それでもこうやって遠出してきたのには理由があった。
今日会う予定の娘は、個人的にどストライクなのだ。
長身の女の子が好きな俺は、そういったサイトに登録して大きな女性のプロフィールや画像なんかを眺めることもしばしばだった。
それだけでも幸せになれる。
そうやって過ごしていたある日、あるサイトのマイページにメッセージが届いた。
『いきなりですみません...。本当にわたしみたいな巨人でも大丈夫なんでしょうか...?』
俺のプロフィールには「どれだけ大きな女性でも大丈夫です」的なことが書いてある。
おそらくそれを見てメッセージを送ってきたのだろう。
にしても、巨人、ね。長身の女の子は自虐としてこういう表現を使うことも多々ある。
よっぽどコンプレックスなんだろう。
ちなみにサクラだっていうのはあまり考えていない。
こんな特殊性癖相手にするよりフツーの出会い系なんかのほうが効率もいいだろうし。
「メッセありがとう!全然大丈夫ですよ~」
『ホントに大きいんです...。会う人会う人、みんなびっくりさせちゃって...』
「そうなんですか...。でも、大きい人好きなので平気だと思いますよ!ちなみにどのくらいなんですか?」
『ウソだと思われるかもしれませんが...ホントに信じてくれますか?』
「信じますよ~。最初のケタの数字は1だとして、次のケタは8とかですか?」
『ごめんなさい...最初のケタ、1じゃなくて2なんです。やっぱり、引いちゃいますよね』
うぉ、2メートルときたか。
これは嘘っぽいなぁ、とどうしても思ってしまう。好きは好きだけど、現実味が薄い。
「引きはしないですけど...さすがにそこまで大きな人には会ったことないですね」
『ですよね...。わたしもここまで大きい人は他に見たことないですし...』
「それはそうそう居るものでもないでしょうし、仕方ないと思いますが...」
『ごめんなさい、一応これ、証拠、みたいなものです』
画像が一枚アップされた。
映っているのは、2人の女の子。
「これは...すごいですね」
顔を隠した女の子の後ろに、これまた顔を隠した大きな女の子が写っている。
大きな方の娘の胸の下あたりに隣の女の子の頭がくるような状態だ。
足元までばっちり写っているので誤魔化しているわけではなさそう。二人とも素足だった。
『前に写ってる娘は妹なんです。妹は普通なのに、どうしてわたしだけこんなになっちゃったんでしょう...』
聞けば妹さんは平均的な身長だとのこと。写真にも加工の痕跡は見られない。
「わかりました、信じましょう。全然大丈夫ですよ。どれだけ大きくても気にしませんから」
『ほ、本当ですか!?嬉しい...。ぜひ一度お会いしたいです』
こっちとしてもどれだけ大きいのかこの目で見てみたい。
それに写真からは肉付きが相当良さそうなのも伺える。髪型も好みだし、例え身長が嘘でも当たりだろう。
「こちらこそ、よろしくお願いします。自分は○○県住なんですけど、どこで会いましょうか」
『どこでも構いませんっ。どこへでも割とすぐ行けちゃいますから』
んん?面白い返しをする人だな、と思う。交通の便がいいとこに住んでるのだろうか。
どんだけ楽しみにしてるんだ。まぁ、コンプレックスを受け入れてもらえそうな相手だから嬉しいのだろう。
「んー、じゃあ○○の△△の××にあるコンビニなんかどうでしょう」
『わかりましたぁ。ちゃんと調べていきますねっ』
ここまでトントン拍子で決まるなんてツイてるな、とついニヤけてしまう。
日時を決めて、やり取りはいったん終了した。
「しかし、2メートルねぇ...」
本当だとすると俺の頭も肩まで届くかどうか...。ん?なんか揺れてるような...地震か?
ピロン、とメッセージの着信音。
相変わらず地面はグラグラと揺れている。
『あのぉ、何かわかりやすい目印とかないですかね...?たぶん、近くまでは来てると思うんですけどぉ...』
近くまで来てる?県道沿いのコンビニで、周りにはなにもないからわかりやすいはずなんだが...。
「目印って言ってもなぁ」
広い田んぼの中を道が通っててその脇にコンビニがあるだけだから、という旨を返信。すると...。
『広い田んぼですねっ、わかりましたぁ』
そんなので目印になるのだろうか。
相変わらず地面は揺れている、それどころかどんどんと揺れと地響きが大きくなって...!!
ズン...ズゥン...ズウウゥン....ズドオォォン!
『あ、田んぼってこれかな...あっ、コンビニあったぁ!』
一際大きな揺れが辺りを襲い、俺は地面に転がされる。
ビリビリと大気が震えて雷鳴をも掻き消す様な大声が降り注いできた。
『お、お待たせしてすみませんっ!見つけるのにちょっと時間がかかっちゃったんです。思ったより小さくって...』
耳を塞ぎながらもなんとか立ち上がり、空を見上げる。
そこに先程までの青空はなく、しゃがみ込んだ姿勢のとんでもなく巨大な女の子がいた。
顔立ちは整っており、出るところはしっかりと出ている。
本来であれば少し余裕が残るはずのショートパンツをむちむちと突っ張らせる腰回りの肉付きが特に印象的だった。
正直、これでモテないわけがない、というような女の子だ。その大きさを除けば。
『もう、広いって言うからもっとわかりやすいと思ってたのに...。ほら、わたしの手よりも小さいです』
ぐわっ、と大気を切り裂いて広げられる手の平。
すらりと伸びた、それぞれが長さ100メートル、幅10メートルを超えるであろう長さの指。
そんな長大な手の平が、俺の居るコンビニの上空を完全に覆ってしまう。
確かにこれならこの周囲を覆ってまだまだお釣りがくるだろう。
このまま叩き潰されてしまうのではないか。そんな考えが浮かぶ。
叩き潰すなど大げさだ。このまま軽く手を押し付けてやるだけでいいのだから。
『ご、ごめんなさい。怖がらせちゃいましたよね...。でも、会えてよかったです!』
またとんでもない音圧が俺に向かって叩きつけられる。
このままじゃ耳が...!必死にスマフォを操作して、なんとかメッセージを送る。
『...?どうしたんですか?やっぱりこんな巨人なんて嫌になっちゃったんじゃ...ん?』
ヴーッ、ヴーッと彼女の巨大なスマフォが震える。
ショートパンツのポケットから伝わるその振動は、一定の間隔で地面へ伝わり辺りを細かく揺らした。
ポケットからスマフォを引っ張り出し、画面を確認する彼女。
ふふっ、と気流を作り出しながら画面を操作している。
ピロン、と着信音。彼女からだ。
『声だけで死んじゃいそう、なんてカワイイです!...というのはさておき、ちょっとボリューム下げますね』
『あー、あー。このくらいでどうですか?』
聞いたこともないような轟音だったのが大声レベルまで下がったのはありがたい。
『大丈夫みたいですね...っていうか、ホントにカワイかったです。ふつーに喋ってるだけだったのに...』
心なしかうっとりとした顔で見下ろしてくる彼女。
うん、顔は可愛いんだよな。
『こんなにおっきなわたしでもイイなんて、どんなに大きくても良いなんて言ってくれて...すごく嬉しい...!もっとお近くで顔を見せてください』
そう言うと彼女は、しゃがみ込んだ体勢から膝を着き、そのまま両手も地面に突き立てる。
とんでもない揺れと轟音が発生し、その膝と両手の平によって大きな窪みが形成された。
溜まらず今いる地点から距離を取る。。
彼女はあの大きなな胸のせいで地面が良く見えていないんじゃないだろうか。
結果、その予感に助けられることとなる。
『よいしょ、っと...』
一際大きな揺れを起こしながら彼女が寝そべる。
ズズン、と揺れが起こる。
彼女の腰が下ろされたのだろう。もしも航空写真を撮ったのなら、むちむちの太ももの間から、その何倍も頼りなく細く伸びるアスファルト舗装が見えるはずだ。
次に降りてきたのはその大きな胸。
国道を挟むようにしてズン、と降ろされた巨大な双丘は接地した後にむにゅんと広がって完全に道を塞いでしまった。
コンビニの駐車場もあらかたが巻き込まれ、停めてあった車が何台もまとめて胸の下敷きとなる。もちろん俺の愛車も...だが、あの車たちと同じ命運を辿らなくて済んだのは幸いだった。
目の前には長さ数十メートルの腕が折り畳まれている。その長大な腕に顎を乗せて見下ろしてくる彼女。
『ん、これならさっきより良く見えます!改めてよろしくお願いしますね』
えへへ、と笑う彼女。その吐息で仰け反りそうになるがなんとか堪える。
「ひ、一桁目...2って...!」
『えーと、わたし2034メートルあるので...一桁目は2で合ってますよ?』
んなバカな。2034メートル?あり得ない。いや、目の前にしっかりと存在しているのだが。
単位がおかしいんじゃないか?センチの間違い、いやセンチでもおかしいか。
などと自問自答する俺を見下ろしながら彼女は笑っている。
その途方もない大きさを別にすれば、かなりの美人である。地面に押し付けられた大きな胸も微かにゆさゆさと揺れている。地面と共に。
そんな巨大なものが揺れているのに俺みたいな(彼女からすれば)ちっぽけな人間が揺さぶられないハズもなく。
ドォン、ドォンと規則的な地響きが彼女の胸を、周囲の地面を、建物を、車を、そして俺を揺さぶっている。彼女の遥か後方、足先の方から伝わってきているようだ。
見るからに上機嫌な彼女が、脚をバタつかせているのだろう。
彼女のその巨体によっておよそ長さ2000メートル、幅400メートルにわたって地面が平らに均されてしまっている。
それに加えて彼女の足先では巨大な足の甲が数百メートルの高さから振り下ろされては叩きつけられている。
無論、彼女に叩きつけて破壊しようなんてつもりは無いのだろうが、航空機による爆撃なんて目じゃない破壊が確かに行われていた。
当の本人はと言うと、そんなことはまったく気に留めていないようである。
『んふふ、今日はこの後どうしましょうか...まだ明るいですけど、お酒でも呑んじゃいます?』
正直すぐにでも逃げ出したかったが、そんなまねをすればどうなることかわかったもんじゃない。
いや、むしろわかりきっている。
逃げられるはずもないし、逃げられたとしても...彼女から安全に身を隠せる場所なんて存在しないだろう。
それに、お酒って。もし酔っぱらわれでもしたらシャレにならない。
そもそもそんな巨体が呑める量がどこにあるのか。
『それともぉ...やっぱり定番の遊園地!とかですかね。わたしが乗れるものはなさそうですけど』
あるわけないだろう!と叫びたくなるが堪える。
実際、片足だけでいくつものアトラクションがまとめて踏み潰されてしまうだろう。
彼女からすれば観覧車の最高到達点でさえ自分の脛にも届かないんじゃないか?
『デート、楽しみですっ。さてと、どこに行き...あっ』
グオオン、と大気をかき混ぜながら彼女が身体を起こす。その際に着いた右手が、集合場所のコンビニを丸ごと叩き潰してしまった。
いや、コンビニ丸ごとというのは過少な表現だ。
駐車場を含めても、手の平のほんの一部だけで潰せてしまうのだから。
凄まじい威力だった。彼女にしてみれば小さな紙屑をくしゃりと潰したようなものかも知れない。
しかし、その轟音と衝撃は今まで見たどんな映像よりも凄まじかった。
『あーもう、すっかり忘れてましたぁ...さて、気を取り直して...』
と、コンビニのことなどさして気にしていない様子の彼女が上半身を起こした、その時。
ズガシャアアァァン!と音を立ててなにやら大きな金属質のものが降ってきた。ぺしゃんこになっている。これは...。
『あ、さっき横になった時にどこかの駐車場も下に敷いちゃったみたいですね...おっぱいの下にくっついてたのかなぁ?』
彼女はそう言うと、自分の胸をぽんぽんと叩き始める。
服の中でぶるんぶるんと揺れる大きな胸。
その揺れは彼女の身体から地面へと伝わって辺りをグラグラと揺らした。
ガシャアァン、ズガアァン、と降り注ぐスクラップと化した車の残骸。
駐車場に停まっていた車が全て彼女の胸に張り付いてしまっていたらしい。
少し開かれた太ももの合間に降り注ぐスクラップは相応の重量と大きさがあるはずなのだが、極太の太ももと比べるとゴマ粒のようなものなのだろう。
いくつかが勢いを付けて脚に直撃しても、彼女は気付いてもいないようだ。
『どうですかぁ?全部取れてます?』
相変わらず胸を揺らし続ける彼女。
必死に首を縦に振る。
『胸の下のとこは自分じゃ見えないので...胸がおっきいのも困りものです』
はぁ、と溜め息を吐く彼女。
いやいや、もっと気にするべきところがたくさんあるだろう。
『あ、でもおっきい方が、好きなんですよね...その、胸も、身体も...自分では恨めしいカラダですけど、そういってもらえるなら...』
くい、と胸元を広げる彼女。
僅かに覗くだけだった谷間が大きく曝け出される。
『谷間に人を入れられるのなんて、わたしか妹くらいだと思います。どう、ですか...?』
確かに大きい胸も大きい女の人も好きだが。
そこに入ったら最後、絶対に生きて出てこれない気がする。
『ここに入れて、ずっと守ってあげます!これから、仲良くしましょうねっ』
頬を赤らめて幸せそうに笑う彼女に、震えながらも覚悟を決めるしかなかった。