書いてみたけど、「艦これ」というゲームを知らなければ何のことやらなんだろうなぁ・・・汗
知ってる人も内容に突っ込まないでくださいね。あくまでも唐変木の勝手な解釈なんだから。


朝靄が立ち込める港内、静かだった海面がだんだんと騒がしくなり、大き目の波が寄せては返すのを繰り返し始めた頃、港口に6つの大きな影がその姿を現した。
「お、戻ってきたみたいだぞ。」
それを見て誰かが司令官とドック長を呼びにいくために駆け出した。
「今日は誰が出てたんだっけ?」
「神通ちゃんだよ。」
「そっかぁ、じゃあ、俺たちの仕事も忙しくなるなぁ。」
だんだんと近いてくるその大きな影を眺めながら、男たちは自分の仕事の支度を始めるためにそれぞれの持ち場に散っていった。

岸壁の前には6人の女の子が並んでいた。身長(全長?)100mほどの駆逐艦級から、160mほどの軽巡洋艦級の巨大な女の子が、それぞれの肩や腕などに大砲や機銃を装着し、
ある子は魚雷まで持っている。彼女たちが艦娘(かんむす)である。
川内、神通、那珂の軽巡洋艦3姉妹と駆逐艦級の3人が数日前に哨戒行動に出撃して、帰投してきたのだ。
「また、神通ちゃんだけ派手にやられたなぁ。」
ドック長が、制服までボロボロになって半べそで胸元を隠している神通の姿を見上げる。
「だ、だって・・・私だけ狙うんです。。。」
今にも泣き崩れそうな神通。これがまた可愛い。司令官は口許が緩むのを必死に抑えながら、全員に命令を下した。
「神通、1番ドックへ入れ。それから、順次交代で修理を済ませて置くように。それから川内、残って戦況報告してくれ。」
それを合図に艦娘たちがざばざばと波を立ててドックへと移動していく。しっかりもので気が強い川内がその場にしゃがんで司令官を摘んで掌に乗せた。
「・・・と、言うわけです。」
「いつものパターンか。まあ、お前たちが無事に戻ってくれればそれでいい。」
「ありがとうございます。でも、神通を旗艦にするのはちょっと荷が重いんじゃないですか?あの子、弱そうに見えるからいつも集中攻撃の的になっちゃうし。」
「そうだな、考えておく。」
司令官は横を見ると、神通が1番ドックに横たわり、修理が始まろうとしていた。修理といっても損傷するのは兵装くらいで、強靭な彼女たちの肉体には
ほとんどダメージが無い。神通の巨体の上を蟻のように動き回る整備兵たちは、なにやら嬉しそうに働いているようにも見えた。
「あら、司令官も神通の修理に加わりたいみたいですね。」
司令官が見上げると、川内が悪戯っぽい笑顔で見下ろしている。
「あ、いや・・・その・・・」
しどろもどろしている間に、川内は1番ドックに近づいて、神通の胸元にそっと司令官を下ろしてしまった。
「え?どしたの?おねえちゃ・・・えっ?しっ、司令官っ?な、なんで・・・」
神通の顔が瞬時に真紅に染まる。下手に動くと整備兵を振り落としてしまうから、動きたくても動けないのだ。
「あたしの報告は終わったから、ちゃんと旗艦として司令官に報告しなさい。じゃあ、司令官閣下、ごゆっくり。」
ほとんど損傷の無かった川内は、笑いながらその場を去っていった。
神通部隊帰投後の、いつもの日常である。

ある日、ドックの整備兵たちは、いつものように神通たちが戻るのを待ち受けていた。波がだんだんと大きくなり、港口に大きな影が見え始める。
「お、帰ってきた。。。って、なんかおかしくねぇか?」
艦娘たちは基本6人で1部隊を編成する。だが、戻ってくるその姿はどう数えてもひとつ足りない。ただならぬ気配を感じた整備兵のひとりが、
慌てて司令官室に走り込んでいった。
駆逐艦白雪は、神通に抱きかかえられていた。兵装は完全に破壊され、息遣いも荒い。この地に艦隊司令部が発足して初めての撃沈だった。
しかも、他の艦娘たちもかなりの損傷を負っている。神通と那珂は大破。他の3人も中破されていた。
「何があった。」
だが、誰も答えようとしない。やがて川内に促されるように神通が重い口を開いた。
「戦艦に、遭遇してしまって・・・ごめんなさい。白雪ちゃんを助けられ・・・」
もうそこから先は声にならない。神通の瞳からは大粒の涙がポロポロと零れ落ちている。
「軽空母もいたのよ。制空取られて逃げ切れなくてさ。神通が殿でがんばってくれたんだけど・・・」
軽巡洋艦主体の部隊と戦艦と空母を擁する部隊では、勝敗はおのずと明らかだ。撃沈したのがひとりだけだったことはむしろ幸運だったのかもしれない。
神通は白雪を第1ドックに横たえ、自らは第2ドックに腰を下ろした。第1ドックの横では司令官とドック長が深刻な表情で会話をしている。
時折漏れてくる「無理だ」「除隊」という単語がさらに神通を落ち込ませていったが、それも泥のような疲れには勝てず、いつしか涙を流しながら眠りについていた。

白雪は除隊と決まった。兵装を全て外され、身体が民間人のサイズにまで小さくなるまで別の場所で過ごすのだ。艦娘は元々巨大な体躯を持っているわけではない。
選抜試験を通った志願者が、巨大化して武器を装着して戦うのだ。ちなみに巨大化のプロセスは軍事機密である。
修理が終わった神通が岸壁に腰を下ろして司令官を掌に乗せていた。
「じゃあ、白雪ちゃんはもう戻れないんですか。」
「ああ、何回も巨大化させると身体への負担が心配だからな。それよりもお前に大事な命令を伝える。」
「え?あ、はい。」
「白雪を見送った後、直ちに改修用ドックに入れ。お前の大改造を行う。」
「大、改造?ですか?」
「そうだ。このあたりにも敵戦艦が出没するとわかった以上、こちらも戦力の増強を図る必要がある。」
神通は少し考えて、司令官に恐る恐る言い返してみる。
「で、でも、戦艦だったら扶桑ちゃんや山城ちゃんがいるじゃないですか。重巡洋艦だっているし・・・」
「お前は白雪の敵討ちがしたくないのか?」
「そ、それは・・・したい、ですけど、私、弱いから・・・」
「だから強くしてやろうと言っている。いいか、これは命令だ。わかったな!」
「は・・・い・・・」

小さくなった白雪はとても可愛らしかった。神通の掌に乗せられた白雪は、5人の元僚友を見回していた。
「わぁ!みんなすっごくおっきいんだねぇ!でも、私もこんなにおっきかったんだぁ!なんか不思議っ!」
無理に明るく振舞っているのがすぐにわかってしまう。見送る5人も一生懸命笑顔を作っている。そんな光景を見て司令官はひとり呟いていた。
「もう、こんな辛い思いはさせないぞ。そのための大改造だ。」
「本当にいいんですか?まあ、神通だったら暴走しないとは思いますが。」
となりのドック長の意味深な発言を、司令官は聞こえなかった風を装っていた。

数日後、司令部の前にはこの司令部最強のメンバーが集まっていた。扶桑、山城の戦艦姉妹、重巡洋艦の愛宕と鳥海といずれも200mを超える大型の艦娘だ。
さらに、身長260m以上ある空母の赤城姉さんまでが加わっている。
その堂々たる勇姿を見上げるその他の艦娘の中に、川内と那珂の姿もあった。
「みんなでっかくて強そうだよねぇ。」
「うん、でも、司令官本気なのかな?」
「え?なぁに?おねえちゃん。」
那珂が川内の心配そうな顔を覗き込む。
「神通をね、あの部隊に編入させるって・・・」
「ふぇ?あん中に入ったら、神通ちゃん、ちっちゃい子供みたいになっちゃうよ。」
「そうなんだよね。ただでさえ気が弱いのに・・・」
川内と那珂は揃って5人の艦娘の姿を見上げていた。そこでも、話題は残りひとりのメンバーのことだったようだ。
鳥海の声が響く。
「別に司令官が決めることだから神通ちゃんでも構わないけど、また集中攻撃されたらどうすんの?」
「大丈夫よ、こっちが先に敵を沈めればいいんでしょ。それより神通ちゃんがあまり活躍できなくなるかも知れないけどいいの?」
扶桑が平然と言い放つが司令官は全く動じなかった。
「そんな心配は無用だ。神通は「神通大」となって戻ってくるんだからな。」
敢えて全員が突っ込まなかったが、全員が「神通改」をいい間違えたと思い込んでいた。
それにも増して全員を驚かせたのは旗艦の発表だった。誰もが赤城が旗艦だろうと思っていたのだ。
戦艦と重巡洋艦の4人が戸惑いと驚きとを隠せないで好き勝手なことを言っている中、赤城本人だけが落ち着き払っていた。
「わかりました。神通が旗艦ですね。精一杯サポートさせていただきます。」
う~ん、さすがは赤城ねえさん。大人の対応である。
そんなごたごたの最中、神通の大改造が終わりこちらに向かっているという報告が入ってきた。

遠くに見える岬の向こうに大改造用の特設ドックがある。中に入れるのは司令官とドック長とその他数名の限られた整備兵のみ。大改造は完全な秘密の中で
行われる。そして、その岬の向こう側に突然何かが現れた。よく見ると人の頭のようにも見える。
神通は大改造中ずっと眠って、いや、眠らされていた。スピーカーを通して大改造が終了した旨を告げられ、まずはその場で上体を起こしてみた。
胸元や腕、腰から脚にかけて自分の身体を観察してみたが、特に以前と変わっていないように思える。
「火力が強くなったのかなぁ。」
そういえばドック長さんも声は聞こえるけど姿は見えない。他の整備兵も誰もいないようだ。これからどうするんだろうと思うと次の指示が来た。
「ゆっくり立って、司令部に来てくれ。ゆっくり、な。」
今度は司令官の声がスピーカーを通して聞こえる。
「あの、司令官はどちらにいらっしゃるんですか?」
「司令部から無線で話している。いいからこっちに来い。」
「はい。」
言われるとおりに神通はゆっくりと立ち上がった。

「なに・・・あれ?」
岬の向こう側のなにやら巨大なものに全員が目を奪われている。と、その時、それが大きく動いたかと思うと垂直に急上昇していった。
「え?う・・・そ・・・」
「神通、ちゃん・・・なの?」
扶桑と山城はそれだけ発するとそのまま口をあんぐりと開けたままになっていた。岬の向こうに聳え立っているのは間違いなく艦娘なのだ。
しかも、身長は戦艦などおもちゃ扱い出来るほどに巨大なのだ!そして、それが神通だということがわかるまでほんの一瞬でしかないほど、その勇姿ははっきりと
全員の目に焼きついていた。
赤城姉さんがよろけるほどの波しぶきを上げながら近づいてくる神通の姿は圧巻だった。一歩また一歩と進むたびにその姿がグンッ!グンッ!と拡大されていくのだ。
その圧倒的な巨体が司令部の前まで至るまでの数十秒間、誰も神通から視線を外すことが出来なかった。

全員を足元に見下ろしている神通本人もかなり戸惑っていた。何しろあの巨大な戦艦や空母の赤城姉さんまでが小さいのだ。いや、司令部ですら指先に乗ってしまう
のではないかと思うほど小さい。つまり、私が大きくなったっていうこと?もう、何がなんだかわからなくなっていた。
「紹介しよう。神通改め、神通大だ。全てにおいて10倍の巨大化改造を行った。」
いやいや、全長1600m超えの軽巡洋艦なんて聞いたこと無いから。しかも、主砲は125cm砲というとんでもない代物で、一発で戦艦でも吹き飛んでしまうのでは
ないかという破壊力なのだ。さらに機銃も駆逐艦の主砲クラスの破壊力だ。
「ま、まあ、旗艦としての威厳は充分だから、いいんじゃないかしら。」
赤城姉さんも動揺を隠せない言い方だ。それはそうだろう。まさか自分が他の艦娘の膝を見上げるなんて夢にも思わなかったろうから。
かくして、新神通機動部隊の陣容が整った。

初出撃。山のように巨大な神通を先頭に、それと比べるととても小さな戦艦たちが後に続く異様な光景を見送りながら、川内が呟いた。
「沈むことは絶対無いと思うけど、大丈夫かしら・・・」
そして、その不安は数日後に的中する。
戻ってきた神通は、以前の姿を単に10倍に拡大したようなボロボロの姿だったのだから。
「また、集中攻撃・・・か?」
他の5人はほとんど無傷なのだから、集中攻撃を受けたことは間違いない。だが、どうして?
巨大な身体を一生懸命縮込ませて謝っている神通に代わって、赤城が戦況報告を始めた。

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時間は前日に遡る。怪しい海域での哨戒行動で敵が近いことを悟った赤城は、偵察機を飛ばそうと準備を始めた。その時である。
「あ、敵です。空母2、戦艦2、重巡洋艦2。12時の方向。このまま進むと接触します。」
神通の第一声である。っていうか、偵察機要らないじゃん!少し赤城が機嫌を損ねたのに気づいた神通。
「すみません・・・」
「気にしなくていいわ。でも凄いわね。あんなに遠くまで見えるのね。」
私も大改造してもらおうかな。などと、赤城は思い始めていた。
「それより、戦闘準備!神通ちゃんの合図で先制攻撃かけるわよ!」
扶桑の声が大きく響く。赤城が飛行甲板を水面に浮かべて戦闘機を誘導する。他の4人は弾薬の装てんと確認作業だ。
神通が全員を見下ろして大きく深呼吸をした。戦闘準備完了だ。
「では、行きます。」
神通の合図で扇形に広がって敵に突き進んでいく。遠くに敵影が見えてきた。向こうも気がついたようだ。空母を中央に入れた球形陣になりつつある。
「え?ちょ・・・遠くない?」
既に発射体制を取っている神通に驚く山城。ドンッ!構わずに神通が砲撃を開始した。他の艦娘だったら後ろに吹っ飛ばされるほどの衝撃も、神通にとっては
たいした反動ではなかったらしい。体幹もそれだけ強くなっているようだ。
唸りを上げて真っ直ぐに適に向かって打ち下ろされた主砲の一発目は、敵戦艦の第2艦橋に命中した。いや、それだけではない。桁外れの威力に第1艦橋は
吹き飛ばされ、砲弾はそのまま強固な戦艦の船体を貫いて艦尾の機関室を押し潰した付近で爆発した。黒煙を上げて艦首を真上にしてズブズブと沈んでいく
敵戦艦を見て、他の5人はあっけに取られている。
「たった一発で沈めちゃったの?凄すぎるっ!」
だが、一番驚いていたのは当の神通自身だったようだ。
「え?あの、どうしましょう・・・」
何故かオロオロしてしまう神通。だがそんな時間は無いと言いたげに、やっと射程距離になった敵重巡洋艦に対して、扶桑と山城が猛攻を始めた。
「ほら、ぼおっとしてないで。敵空母、来るよ!」
黒煙の向こうに敵の空母の姿がうっすらと見える。
「制空は任せて!神通ちゃんは空母に攻撃っ!」
「はいっ!」
赤城姉さんの声にはっとなって、少ししゃがんで砲身を空母に向ける神通。バシュッ!周りの空気を震わせて2射目が敵空母に襲い掛かった。
神通の攻撃に呼応して、両側から空母の足を止め、さらには後ろの軽空母をも狙おうと回り込んでいた重巡洋艦の愛宕と鳥海の目にとんでもない光景が飛び込んできた。
神通の一撃が空母の正面を捉えたかと思うと、そのまま奥へと貫いていったのだ。衝撃で飛行甲板はバリバリとめくれ上がり、離陸途中の戦闘機が次々に海中に
叩き落されていく。砲弾は空母のほぼ中央で炸裂し、ど真ん中を完全に吹き飛ばしていた。
「うっそでしょ!?」
真っ二つになって沈んでいく空母の姿を眺める鳥海。神通ちゃんだけで楽勝なんじゃないの?と言いたくなるほど一方的だ。
次に神通に向かって来たのは敵の艦載機群だ。こちらの艦載機が間に合わないと感じた赤城が前方の神通に向かって叫ぶ。
「神通ちゃん!避けてっ!」
「え?でも、迎撃します!」
力強く答える神通だが、確か対空砲火は余り充実していなかったはず。と思った赤城の目がみるみるうちに点になっていく。
頭上を飛び交う敵の戦闘機に向かって、それより高い位置から駆逐艦の主砲クラスの威力を持つ機銃掃射が雨のように降り注いでいたのだ。
「上に向かって撃つ必要がないってこと・・・」
もう、呆れてものが言えない。しかも、銃弾は戦闘機をかすめただけで主翼を吹き飛ばし、直撃なんぞすれば瞬時に木っ端微塵だ。慌てて逃げ出す戦闘機群に
神通はさらに追い討ちをかけ、軽空母に近づいていった。
桁外れの破壊力の機銃が軽空母に襲い掛かり、ドカドカと飛行甲板のど真ん中を貫いていく。もう飛行甲板はなんの役にも立たなくなっている。
さらに、縦に綺麗に穿たれた穴の周りに亀裂が走り、まるで切り取り線から千切れるように軽空母は縦に真っ二つに引き裂かれて轟沈していった。
「機銃だけで沈めちゃったよ。。。」
近い位置でとどめを刺そうとしていた愛宕も呆然としてしまった。

あっさりと敵主力の3隻をたったひとりで片付け、残るは戦艦と重巡洋艦2隻だけだ。重巡は扶桑と山城によってそれぞれかなりのダメージが与えられ、
戦艦は戦意を喪失して逃げにかかっていた。それを囲むようにして愛宕と鳥海が追い詰め、背後からは赤城が襲いかかろうとしている。
「神通ちゃんにばっかりおいしいとこ持って行かれるのもくやしいもんね。」
そう言いながら敵に集中砲火を浴びせる愛宕と鳥海。赤城も対艦爆撃機を発進させている。
「神通ちゃん、ちょっと下がって。」
膝から上が海面に出ている神通の太股が爆撃コースを少し妨げていたのだ。しかも並みの太さではない。
「あ、はい。」
自分ひとりで3隻も沈めてしまったので、あとはお姉さんたちに任せようと思っていたので、神通も素直に後ろに下がろうとするその時だった。

ズルッ!バッシャーンッ!!!
「ふぇっ・・・」
神通は少し浅瀬になっていることに気づかず、思わず足を取られてしまったのだ。
盛大にあがる水飛沫と大波が他の艦娘たちを翻弄させる。その隙をついて中破した敵戦艦が逃げ場を求めてあろうことか少し脚を広げて座っている神通の脚の間に
突っ込んできたのだ。
神通もそれに気づいたがもう遅い。主砲が座り込んでいる神通の海面すれすれの位置にまで下がった胸元に襲い掛かった。
「キャッ!」
短い悲鳴を上げた神通だったが、あまり痛さは感じなかったようだ。ただ制服の胸元部分はボロボロになってしまったが。
「もうっ!」
さらに突っ込んでくる戦艦の艦首を掴んでそのまま太もも付近まで押し戻した時に、何故か2隻の重巡洋艦が突っ込んで来たのだ。たまたま戦艦姉妹に追い立てられ
こっちに向かって来たらしい。しかも主砲は神通の方を向いている。
「なんで・・・あたしだけ・・・」
目にうっすらと涙を溜めながら、思わず神通は脚をギュッと閉じてしまった。
メキメキッ!バリバリッ!
太股の間に挟まれて3隻の敵艦がその圧力に簡単に屈してどんどんと潰れていく。そして・・・

ドッカァ~~~ンッ!!!ズッガァ~~ンッ!!!
どれかの艦の重火器に引火して次々と大爆発を起こす敵艦たち。神通の周りはあっという間に黒煙に包まれてしまった。
「神通っ!」「神通ちゃんっ!」
僚艦が慌てて黒煙に近づいていくと、中から声が聞こえてきた。
「ううっ、ひどいですぅ・・・」
「神通ちゃん、大丈夫なの?」
下手をすると戦艦クラスでも沈んでしまうような大ダメージを至近で受けたはずの神通だが、敵艦3隻分の残骸がバラバラと浮かんでは沈んでいる中で、
服装も兵装もボロボロになった神通が半べそになって座り込んでいる。
「はい、身体は。でも・・・」
「中破ってとこだね。」
冷静に山城が応じる。
「結局、神通ちゃんひとりで全滅させちゃったんだぁ・・・」
少し不満そうに鳥海が呟く。「すみません・・・」と小声で謝る神通。
「でもいいんじゃない。白雪ちゃんの敵討ちもできたでしょ?」
赤城姉さんの一言で、その場は丸く収まったようだ。

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つまりは、戦闘自体は完勝に近い内容だったわけだが、神通のひとりボケで何故かダメージを負ってしまったという次第である。
「でも、ちょっと神通ちゃんは強すぎですねぇ。」
毒気が籠った声で、赤城姉さんが締めくくった。
「いや、敵もどんどん強くなるかも知れん。これでいいんだ。」
司令官は、専用ドックに横たわる山のような軽巡洋艦の女の子の姿を見て満足そうにうなずいていた。だが、心の中では、
『太股で戦艦を潰す場面はおいしいなぁ。。。今度は撮影隊を同行させよう。』
と固く誓っていたのだが。

※「大改造」なんて、ゲームシステムにはありませんよ!念のためwww
 それと、こんなSS書いて、制作会社に叱られないか心配ですなぁ・・・