マコとミコ

1週間ほど前から、各地で奇妙な現象が発生していた。10代前半から20代前半の女性が何の前触れもなく突然巨大化するのだ。
それも、巨象より大きな10倍から、時には大怪獣並みの100倍にまでなってしまう。
100倍クラスの女性など、指先で人間を軽く摘まんだだけで簡単に捻り潰してしまう。人間どころか、鉄筋コンクリートの頑丈な建物でさえ
軽く引っぱたいたり蹴り上げただけで木端微塵にしてしまうほどの強大な力を持ってしまったのだ。
巨大化したほとんどの女性はただ茫然とその場に座り込んでしまい、やがて駆け付けた警察や軍に説得、誘導されて、広い場所で何人かまとまって
過ごすようになっていた。
だが、すでに数百人にも達した彼女たちをどうすればいいのか、政府は何も決められずただ時間だけが過ぎていった。

マコとミコは中学2年生の13歳。並んで歩けばあまりにも目立つ近所でも有名な長身コンビだ。
ミコの身長は192㎝、上級生はもちろん男性教師でさえ軽く見下ろしてしまうほどの長身に、Hカップというとても10代前半には見えない
身体つきをしていた。だが、それをすべて凌駕して余りあるのがマコだ。
身長228㎝のマコの前ではミコでさえギリギリ肩に届くかというくらいだ。しかもバストサイズはJカップもあり、巷の爆乳アイドルなど
逃げ出してしまうほどの巨大でなおかつ張りのある身体なのだ。小柄な同級生ならマコの爆乳の下にすっぽりと収まってしまう。
しかもふたりとも抜群の運動神経とけた外れのパワーを誇り、バレー部に所属しているマコとバスケット部に所属しているミコがお互いの試合に
助っ人として参戦するので、どちらも学校始まって以来の成績を残していた。

その日はマコがひとりで学校に向かっていた。一応待ち合わせはしているのだが、どちらかの体調が悪かったりするとあまり待たずに学校に向かうのが常だった。
「最近調子悪そうだよなぁ。先週から部活も顔出してないし・・・帰りに寄ってみようかな。」
そんな独り言を言いながら歩いているマコの背後から同級生たちが近づいてきた。
「おっはよ、マコ!今日はミコは?」
「う~ん、来なかったんだよね。なんか最近調子悪そうみたいだし。」
せいぜい160㎝そこそこの同級生たちはマコの爆乳と会話しているようにも見えるほど小さい。
「じゃあ今日はシングルタワーだ~!」
「はぁ?なにそれ」
同級生のその手のからかいに冷たい視線で見下ろすのはいつものことだ。だがその発言が男子生徒がしてしまったら、彼は間違いなく地獄を見ることになるだろう。
「でもさぁ、巨大化しちゃった子から見たらマコもミコもちっちゃいんだよね。」
確かにそうだ。いくら規格外に大きいとはいえ、巨大化した子から見ればマコもミコも大きめの小虫のようなものだろう。
「そういえば、おとといだったかな。巨人の子が歩いてるの見たよ。高校生みたいな感じで10階建てのビルと同じくらいあった。」
「すっごい!校舎なんか軽くひと跨ぎじゃん!」
「でもさぁ、服とか千切れちゃうんでしょ?いきなりマッパはやだなぁ」
「そんなに大きくなんなきゃ下着くらいはあるって噂だよ。でも、マコがでっかくなったらそのバカでかいのは入らないかもねぇ。」
「え~っ!?なにそれ~」
笑いながらもマコは自分が巨大化した場面を想像してみた。巨大化しても規格外なのかなぁ。ふとそんなことを思ってしまったのだ。
そんなマコの心中を知るはずもなく、ひときわ大きな女子中学生を中心とした4人が笑い声を交えながら学校へと向かっていった。

それに最初に気づいたのは誰だっただろう。体調が悪いので休むとミコの母親から連絡があったのをHRで聞いて、授業にあまり集中できずに少しぼんやりと外を見た
マコの瞳に飛び込んできたのは、巨大な女性がこちらに向かって歩いてくる姿だった。しかも相当な大きさだ。足元の建物がまるで小さな箱にしか見えない。
「なにあれ?」
そう言った時にはすでに教室内がかなりざわついていた。
よく見ると、その女性のせいぜい膝から腰ほどの身長の何人かの女性がその横を歩いていた。しかも全員全裸だ。
なんで巨人が?あんな街の中を堂々と歩いていいの?その時、風に乗って巨人の物騒な会話が流れてきた。
『このあたりであそぼっか~』
一番大きな高校生くらいの女の子の声が轟く。
『そうだね~、でも、おまわりくらいならあたしたちでも楽勝だけど、軍隊が出てきたらよろしくね。』
『おっけー、この前戦車に撃たれた時にちょっと痛いくらいだったから大丈夫だよ~!』
笑いながら、膝の高さまで右足を上げて勢いよく踏み下ろした。足の両側から煙のようなものが吹き上がり、やや遅れて地響きが校舎を微かに揺らす。
まだ5㎞は離れているというのに、とんでもない破壊力だ。
「とにかく逃げよう!」
誰かの一言で教室内は蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。

「マコちゃんっ!どこいくのっ?」
校門を抜けて、みんなが逃げる方とは違う方向へマコは走りだそうとしていた。
「みんなは先行ってて、あたしっ!」
振り向いたマコの視線の先、このあたりでは一番大きな20階建てのマンションが見える。そこにミコが住んでいるのだ。
同級生もマコの行動を理解したらしい。
「わかった!気を付けてね!」
そう言いながら、巨人達から横に遠ざかろうと走り出していた。
「急がなきゃ、あんなに目立つのって、絶対ヤバイ!」
徐々に大きくなる地響きに少しずつ足を取られながらも、マコはそのマンションに向かって走り出した。

マコがマンションまであと100mもない場所まで近づいた時、不意に空が暗くなった。同時に足元が大きく揺さぶられる。
「えっ?すごっ・・・」
よろけながらも何とか踏みとどまって見上げたその先には肌色の巨大な壁、あの巨大女子高生の足が何軒もの住宅を踏み潰していたのだ。
「もう、着いちゃったの?」
同時に巨人の声が上空から轟く。
『意外とちっちゃいんだね~。』
少し嬉しそうな声と同時に、目の前数十m先にあった左足が、足裏に貼りついた廃材と化した家屋やペシャンコに潰れた車をまき散らしながら上空に舞い上がる。
そしてその凶暴な足が移動した先はミコが住んでいるマンションの真上だ。
「え?あれって・・・」
ミコの部屋、ちょうど中央付近の10階のベランダに出てきた人影にマコは思わず息を呑んだ。
「ミ・・・コ・・・ちゃん・・・」
間違いない、ミコだ。その横にもうひとり、でも・・・ミコのお母さんじゃないし、ミコより大きい若い女の人?
いやいや、今はそんなことを気にしてるんじゃなくて、ミコちゃん、早く逃げなきゃ!でも、目の前に巨人がいるのは気が付いているはずなのに・・・

巨人の足がマンションの屋上に触れた瞬間、建物全体が歪み、すべての窓ガラスが砕けて壁面には無数のヒビが走った。
それでもミコは逃げないどころか、隣の女性と何やら話をしている。
「ミコちゃん、何やってんの?早く逃げ・・・」
その時だった。ミコがマコの方を見てほほ笑んだ気がした。次の瞬間には、大轟音とともに、20階建てのマンションが巨大女子高生の足に取って代わられた。
「いっ・・・いやぁ~っ・・・」
絶叫し、その場にしゃがみ込んだマコに爆風が襲い掛かる。吹き飛ばされそうになったマコが顔を上げると、マンションの近くに止まっていたであろう車が
自分に向かって飛んでくるのが見えた。が、あまりのショックに身体を動かすことも声を上げることもできない。
だがその時、マコの心臓が一瞬高鳴り、全身が真っ白な光に包まれると、車はその光の中に吸収されるように飛び込んでいった。

「暴走されるとAクラスでもけっこうキッツイわね~」
「すみません、まさかここまでひどいことになるなんて・・・」
「あ~、いいのいいの、もっと凄い暴走見たことあるし、その時なんか宇宙がどんだけ消し飛んだかわからないもの。」
女の人ふたりが会話している。ひとりはミコちゃんだ。というか無事だったんだ。よかった。。。
そう思いながらゆっくり目を開けると、ミコではない方の女性と目が合った。
「あら、気が付いたみたい。」
その声にもうひとりの人影が動く。ミコだ。
「マコちゃん、よかったぁ。。。」
その声にマコががバッと跳ね起きた。
「よかったじゃないよっ!なんで逃げなかったのよっ!巨人に踏み潰されちゃって、あたし、あたし・・・ってなんでピンピンしてんの?それに・・・その人、だれ?」
「魔女よ」
マコの顔が鳩が豆鉄砲を食ったような表情になる。
「まじょ?」
「そ、エリナっていうの。よろしくね。ついでに言うとミコちゃんもマコちゃん、あなたも魔女だから。」
「へ?あたしも?まじょ?」

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時間は1週間ほど前の朝早くに遡る。
息苦しさに目が覚めたミコは、自分の異常さにすぐに気が付いた。
「げっ・・・おっきくなってる。。。」
脚はキングサイズのベッドから余裕ではみ出し、しかもベッドを圧し潰していたのだ。身長はすでに部屋の大きさと変わらなかった。
「どうしよう・・・このままじゃこのマンション、壊しちゃうかも」
途方に暮れていたミコの目の前に、突然長身の女性が現れた。絵里奈だった。
絵里奈はいつものように覚醒前の大きな力の存在に気づいてこの星に現れたのだが、同時にミコが魔女として覚醒したのだった。
「へ~、ちゃんと力をセーブできてるじゃない。立派ね。」
「あ、あなた・・・だれ?」
ミコは身体を動かしたくても動かせないほど大きくなっていた。下手に動くとこの部屋、いや、マンションさえも壊してしまいそうだ。
「あ、自己紹介しなきゃね。あたしは絵里奈、簡単に言えば魔女かな。」
「ま・・・じょ?」
「そ、でもその大きさじゃちゃんと話もできないでしょ?騙されたと思って言われた通りにしてくれるかな。」
ミコは絵里奈に言われた通り、深呼吸して心を落ち着かせながら元の大きさになる自分をイメージした。今はそうするしかないと思ったからだ。
すると、ゆっくりだがミコの身体が小さくなっていった。
「ありがとうございます。。。ってでかっ!」
絵里奈の今の身長は218cm、ミコが軽く見上げるくらいだ。自分が見上げるような人間は中学に入ってからひとりしかいなかったので少し驚いてしまった。
「あら、あなただって大きい方じゃない。」
「あ、すいません。それで魔女とか力ってどういうことなんですか?」
「話すより経験した方が早いわよ。」
そう絵里奈が答えた瞬間、ふたりの姿は部屋の中から消えてしまった。

それから1週間ほど、ミコは毎日学校から早く帰っては絵里奈と一緒にほかの星や宇宙に出かけて力の使い方を教えてもらっていた。
自分がAクラスという、魔女や女神としては最高位に近い力を持ってしまったことや、最近現れた巨大化した女性たちはただ大きくなっただけで力を持っていないこと。
「でも、なんでおっきくなったかわかんないんだよね~、他の魔女が大きくしたわけでも無さそうだし。」
その中で、ミコが一番驚き、かつ、喜んだのは、もうひとり、覚醒していないが力を持った女の子がいることだった。
「その子、あなたと同じ学校みたいね。マコちゃっんっていうんだけど、知ってる?」
知ってるも何も大親友の名前が出てきたことにミコは躍り上がるほど喜んでしまい、無意識にまた2倍ほどに巨大化してしまったほどだ。
「まだ覚醒してないからねぇ。」
「何か大きなショックがあると覚醒するんですよね。」
「絶対ってわけじゃないけどね。」

そしてこの日の朝、何気なく現れた絵里奈の一言で、ミコは学校を休むことにしたのだ。
「なんかさぁ、巨大化しちゃった子、ストレスたまってるみたいだよ。」
「エーッ?それって暴れるってことですか?じゃあ、止めないと!」
星も、いや、宇宙でさえ指先で弄べるほど大きくなれるのだ。たかだか300mちょっとの巨人など怖くもなんともない。それにあの場所で暴れだしたら・・・
ミコは学校にいるマコのことを考えていた。
「でもさ、暴れさせちゃっても面白いかもね。」
そのあとの絵里奈の提案を聞いて、ミコは目の大きさが2倍になったのではと思うほど驚いてしまった。
「だ・・・大丈夫なんですか?マコちゃん・・・」
「前も言ったじゃない。あり得ないほどのショックを受けたりして覚醒することが多いんだって。それに覚醒できなくてもマコちゃんは守ってあげるわよ。」
「う~ん、わかりました。もし怒られたらあたしが謝ります!」

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「ふーん、じゃああの時ベランダに出たのはわざとだったんだ。」
マコは少しふくれっ面になる。
「ごめんね~、あの状況をうまく使えるな~って思っちゃってさ。」
ミコは両手を合わせて謝っているが顔は笑っていた。まあいいか、ミコが無事だったんだし。
「そういえば、エリナさん。暴走って・・・」
「ああ、それ?マコちゃんが覚醒した時、宇宙が100万個くらい吹っ飛んじゃったってことよ。」
うちゅう?ひゃくまんこ?なにそれ?
「ぜんぶあたしとミコちゃんが再生しておいたから大丈夫よ。それに宇宙の数なんてそれこそ数えきれないから気にすることないわ。」
「はあ・・・そうなんですか。」
そういえばあの巨人女はどうなったんだろう?そう思って聞いてみた。
「マコちゃんが暴走した時に、この星と一緒に塵になっちゃったと思うけど、そのまま再生したんだっけ?」
「はい、たぶん今は軍隊と遊んでるんじゃないかなぁ。」
いつのまにか部屋に現れた大型テレビに、映像が映し出された。

この巨人の女の子はもちろん、世界中の誰もが自分たちが一度殺されているなど思っていない。彼らからすれば一瞬のさらに数億分の一以上の短さで
瞬殺され、再生させられたのだから。
身長約350mの巨大女子高生の行動に触発され、各地でおとなしくしていた巨人たちが、首都から少し離れた軍基地を目指して歩いていた。
情報封鎖が遅れたため、突然暴れだした巨人たちの情報もどこに向かおうとしているかも、ほかの場所にいた子たちにも筒抜けになっていたのだ。
「この大きさだと、軍隊に勝ち目はないわね~。」
実際、戦車砲や攻撃ヘリの対地ミサイルの攻撃など、30倍程度の巨人にならともかく、200倍クラスの巨人に対しては「少し痛い」程度の感触しか与えられていなかった。
しかも、500mや1000mの距離など彼女たちにとってはあっという間に移動できてしまうのだ。第2撃の前にはすでに目の前に聳え立つ巨大な足に踏み潰され、叩き落され、
一方的に蹂躙されていた。
生中継の戦闘シーン(というより一方的な虐殺シーン)からカメラが切り替わり、画面には参謀本部の狼狽ぶりが映し出されていた。
テレビスタッフも頭を抱えているだろう。巨人に対抗する画を撮りたいのだが、どこもかしこも敗色か混乱かしか出てこないのだ。
並んでソファーに座ってテレビを見ていた3人だったが、ふとマコが口を開いた。
「ねえ、エリナさん。魔女ってなんでもできるんだよね。」
「ええ、巨大化してあの子たちを苛めてくる?」
「う~ん、今はそんな気分じゃないなぁ。そうだ、誰かほかの人もおっきくできるよね。」
マコはふと画面に映り込んだひとりの女性下士官の姿に目を止めていた。
「もちろん、やってみたら?体験した方が自分が力を持ったってわかるもんね。」
マコは教えられたとおりに、画面に映る女性が巨大化する姿を想像して念じてみた瞬間、テレビの画面が真っ白になった。

「初めてにしては上手いじゃない。さすが、ミコちゃんと同じAクラスね。」
切り替わった画面には、あの巨大女子高生とマコが大きくしたあの女性が対峙していた。サイズは女子高生より少し大きいくらいだろうか。
『え?うそっ・・・あたしと、かわんない・・・』
女性は狼狽している女子高生を睨みつけていた。自分も巨大化してしまった。だったらこの子を止めるのは自分だけだ。そう思っているようだ。
『いい加減にしなさい!あなたたちのせいで何人死んでると思ってるの!』
『うっさいなぁ、こんな虫けら避けろって言う方がムリなんだけど』
そう言いながら女子高生は、近くの崩れかけのビルをグシャリと踏み潰した。
『ちょ・・・なんてことを・・・』
女子高生を止めようとして女性が一歩踏み出すと、ボゴォッ・・・ズンッ!何かを踏み抜いた感触で足が止まる。
『えっ?あっ・・・』
『あ~らら、そこ、地下鉄の駅だよ。さっきいっぱいこびとが逃げ込んでたみたいだけど、どうなったのかなぁ?』
『そ・・・そんな・・・』
女性が慌てて足を引き抜くと、道路の真ん中にぽっかりと開いた穴の中は赤黒く染まり、その周りではたくさんの人が驚き、怯え、必死で逃げようとしていた。
その時だ。軍の攻撃が援軍のつもりで駆け付けた女性にも集中し始めた。
『仲間割れ?ダッサ~!』
『や、止めてっ、あたしはっ・・・』
女子高生の笑い声を聞きながら、女性の怒りは目の前の巨大な少女ではなく、背後の味方であるはずの戦車部隊に向けられていった。

「あ~らら、あの人味方の軍隊を攻撃しちゃってるよ。」
3人ともテレビ音声からは聞こえないふたりの会話を聞いて少し呆れていた。
「ねえ、エリナさん、そろそろ行ってもいい?」
「いいんじゃない?マコちゃん、あなたも行ってみれば?自分が巨大化した方が実感がわくと思うよ。」
「え?あたしが、巨大化?」
「ふふっ、マコちゃんはすでに巨大だからね~、あんまりおっきくなりすぎないでね。じゃあ、先行ってるね。」
その瞬間、ミコの姿が消えてしまい、数秒もしないうちにテレビからはアナウンサーの絶叫が聞こえてきた。
『きょ・・・巨人です!また巨人が現れましたっ!しかし・・・お、大きすぎるっ!』
テレビの画面にはふたりの巨人から少し離れた場所に聳えている2本の塔、いや、脚が現れていた。慌ててズームアウトするカメラ。
「うわっ・・・ミコちゃん?すっごい・・・」
ミコはその場所に、1000倍に巨大化して現れたのだった。

「あの・・・エリナさん?あたしもあんなに大きくなれるの?」
「ええ、もちろん。一緒に遊んでたから見慣れてるけどやっぱり中学生には見えない身体つきだね。マコちゃん、あなたもね。」
ミコは水着姿で立っていた。水着といってもビーチバレーで着るようなスポーツビキニだ。
「あ、あれ」
「聞いたわよ、ふたりでビーチバレーもやってるんだってね。しかも、敵なしなんでしょ?凄いじゃない。」
「いえ・・・それほどでも・・・」
マコはすっくと立ちあがった。高い天井でもマコが手を伸ばせばついてしまうほど大きい身体だ。しかし、マコは少し違和感を覚えていた。
というよりも目の前の魔女も2mを軽く超える長身ということをすっかり忘れていたようだ。
「エリナさんも大きいんですね。」
「あら、今さら?それよりそろそろ行ってあげたら?ミコちゃん、待ってるわよ。」
「あ、はい」
マコは自分とミコがビーチバレーをやっている姿をイメージして、軽く目をつぶると次の瞬間にはその姿は消え去っていた。
「さぁて、しばらくはふたりに任せて、ちょっと休憩しようかな。」
そう呟くと、絵里奈の姿もいずこかへ消えていった。

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上手くいったのかなぁ・・・マコは恐る恐る目を開けると、そこは間違いなく室内ではないことに気が付く。
さらに横からの聞きなれた声を聴いて、マコの不安は少し和らいだ。
「上手くできたみたいじゃん!」
「そ、そうなのかな。」
マコは隣でしゃがんでいるミコを見下ろすと、その足元の小さなものに気が付いた。慌てて視線を自分の脚に向けると、自分が巨人になったことを改めて実感した。
「うわっ・・・ちっちゃ・・・」
35cmという元々巨大な素足が、今は350mという巨大なサイズで廃墟と化した街のど真ん中に鎮座している。周りの建物がまるで豆粒のようだ。
そして、それだけでも建造物といえるほどの大きさを誇る親指の少し先には米粒大のものが右往左往しているのが見える。
マコはしゃがみながらその米粒大の黒いものを摘まみ上げてみた。
「これ・・・戦車?」
親指と人差し指に挟まれ、簡単に潰れて人差し指に貼りついているもの、そして運悪く戦車と一緒に摘ままれてしまったであろういくつかの小さな赤い点、これが人間なのだろう。
人を殺してしまったという罪悪感などまるで感じられないほど小さくて弱いのだ。これじゃあ、あの女の子が虫けらって言ってたのもわかる気がするな。
そう感じて、マコは指を少し振って貼りついていた戦車の残骸を飛ばした。
「どう?大巨人になった感想は。この子たちから見ても虫けらなんだから、塵か埃にしか思えないでしょ?」
ミコはいつの間にか脚を摘まんで逆さづりにしていた女子高生と女性兵士のうち、女子高生の方をマコに向かってポイッと放った。
「え?ちょ、ちょっと・・・」

ズゥッシ~ンッ!
「すっごぉいっ!さすが、元がでかいと破壊力も違うよね~。」
「いきなりなにすんのよっ!」
マコはいきなり投げられた女子高生を受け止めようとして、しゃがんだ体勢を崩して思わずしりもちをついてしまったのだ。
巨尻の周りは一瞬でクレーターと化し、周囲の建物も車も何もかもが爆風で散り散りにされながら吹き飛ばされてしまった。

受け止めた女子高生は、必死にマコの身体にしがみつこうとしていた。
この子って確か・・・マコはミコのマンションを踏み潰した恐ろしく巨大な足を思い出していた。その足の持ち主がこの子なんだ。
そう思うとなんだかおかしくなった。
「本当に大巨人だね。」
マコは女子高生の脚を摘まんで目の前に逆さまに吊るしてみた。「お願い・・・助けて・・・」泣き顔で必死に命乞いをしている。
その時だ。横から小さな悲鳴が聞こえてきた。
「ミコちゃん?な、なにしてんの?」
「ん?股裂き。」
いや、それは見ればわかるけど、ミコに摘ままれている女性は両手の指で脚を強制的に広げさせられて180度の大開脚状態だ。
女性の叫びも悲鳴というより絶叫に近い。
「これさぁ、このまま引っ張ったら真っ二つになるのかなぁ。」
いやいや、ミコちゃんってそんなに残酷だったっけ?そりゃ、男子に対しては冷徹だけど・・・あ、あたしも人のこと言えないか。
「それはさすがに可哀そうじゃない?」
「そぉ?じゃあ、やめとこうかな。」
ミコはそう言うと、女性の脚を摘まんでいた片方の指を離すと、そのまま自分の胸にしがみつかせた。

マコがそのまま両脚を伸ばすと、ふくらはぎの裏側で少し離れていたおかげで何とかその場に踏みとどまっていたいくつかの建物をあっさりと圧し潰す。
だが、それも小さな物がサクサクと潰れていく程度しか感じられなかった。
たったこれだけのことで一体どのくらい破壊しちゃったんだろう?マコは伸ばした両脚の周りに舞い上がる土煙を見下ろしてみる。
と、その時、右脚の膝の少し下あたりで何かが動いているのを見つけた。
「あは、可愛い!」
指先で摘まみ上げたそれは小さな女の子だった。だがそれはマコから見てのことで実際には身長100mくらいの巨人なのだ。その巨人を摘まんでいた指を少し緩めて
そのまま右手の掌の上にポトリと落とす。握ったら全身隠れちゃいそう。マコは左胸にしがみつかせた女子高生と大きさを比べていた。
「何してたの?」
マコは女の子に尋ねるが、答えはない。あまりの恐怖に全身が強張って何もしゃべれないような顔だ。
「つまんないなぁ・・・」
そう呟きながら、マコは右手を軽く握ってみた。怖がっている女の子にちょっと痛い思いをしてもらおうかな。そう思って少し力を入れてみる。
ゴギュッ!ボギョッ!
何かが折れ砕ける感触。
「えっ?げっ・・・」
掌を開くと、両肩と腰のあたりが変形した女の子が、ピクンッ!ピクンッ!と痙攣している。軽く握っただけなのに・・・壊れちゃった?
直後に左胸から悲鳴が聞こえる。あの女子高生からは、右手の上の惨劇が丸見えになっていた。

「あ~らら、マコちゃんってほんとに馬鹿力なんだから。」
「え~っ?こんなので潰れちゃうの?確かに握力は強いけどさぁ・・・ってあれ?この子・・・」
掌の上で恐怖にゆがんだ顔で絶命している女の子に見覚えがあった。さっき摘まんだ時は気づかなかったが、バレー部の1年生だ。
「そういえばうちの1年生で巨大化しちゃった子がいたって聞いてたけど、この子だったんだ。。。悪いことしちゃった。」
「じゃあ、生き返らせてあげれば?」
相変わらず身長300mちょっとの軍の女性を弄びながらミコは平然と言い放った。
「大丈夫だよ。マコちゃんならできるって。」
「魔女ってそんなこともできるの?」
「そりゃそうだよ。あたしたちくらいの力だと宇宙を創ることだってできるんだよ。」
はぁ、何だかピンと来ないけど、生き返らせることができるなら、とマコはミコに言われた通りに、この女の子が部活で頑張っている姿を思い出してみた。
「は・・・う・・・ん・・・」
「マジ!?生き返った!」
「はう・・・せ、せんぱ~い・・・ひどいですぅ、怖くて喋れなかったのに握り潰されるなんて思わなかったです・・・」
掌の上でちょこんと正座しているのは紛れもなくたった今握り潰した後輩の女の子だ。
「あ・・・ご、ごめんね。。。痛いとこ、ない?」
1年生は立ち上がって身体のあちこちを動かしているが、特になんともなさそうだった。

マコは掌の上の後輩と胸にしがみついていた女子高生を足元に降ろし、ミコも弄んでいた女性を足元に降ろして立ち上がっていた。
「それにしてもずいぶん壊しちゃったね。」
思わず巨尻のクレーターを見て、あまりの破壊力に嘆息してしまう。数十にもおよぶ戦車が巨尻の右側があった場所でペシャンコになって地面に貼りついていた。
恐らく直撃を食らわなかったものは爆風で吹き飛ばされてしまったのだろう。人間の戦闘部隊は完全に消滅していた。
「さて、これからどうしようか。エリナさんに基礎は教えておいてねって言われちゃってるから、ほかの星でも行く?」
「いいけど、ここはどうするの?」
「そうだなぁ、戻ってきたらマコちゃんに直してもらうよ。」
直す?そんなに簡単に言うけど・・・でも後輩の子は本当に生き返ったんだよね。そう思うとできない話でもない気がしてくる。
せっかくそんな凄い力を持っているんだったら、使ってみたいなぁ、ともマコは思っていた。
「わかった。直せるかどうかはわかんないけど、ほかの星行ってみようか。」
「そうだね。じゃあ、あたしの心を読んでついてきて。」
「あ、待って、その前に。」
マコがそう言うと、後輩の子がさらに巨大化していた。マコやミコには及ばないが184cmの長身の少女が1840mの大巨人となって聳えている。
「さっきのお詫び、この中で一番大きいから好きなことできるでしょ?あたしたちが戻るまで遊んでてね。」
マコはそう言うとミコに向かって頷いた。それを合図に、マコとミコ、ふたりの大巨人の姿は、ほぼ同時に消え去った。

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マコが移動した先は、何もない漆黒の世界だった。遠くの方には無数とも思える小さな光が瞬き、その中に自分の身体が身体が浮いている、そんな感覚だ。
「ここ、どこだかわかる?」
横を向くとミコも隣で浮いていた。そのミコの胸元に、何か小さなものが見える。テニスボールくらいの大きさの小さな球体が浮いていた。
「これ、なに?」
ちょうど球体がふたりの巨大な胸の間で浮いている格好になる。見下ろすと胸よりも全然小さい。簡単に挟めたりして。。。そう思っていた。
「魔女ってさ、ほんとに信じられないくらいおっきくなれるんだよね。」
ミコのなぞかけのような言葉にマコは何かに気づき、思わず球体を二度見してしまった。
「え?う・・・そ・・・これって・・・」
「たぶん当たりだよ。あたしたちが住んでる星。星よりでっかいおっぱいとか信じられないでしょ?」
「え?あ、うん。。。」
やばいなぁ、これ、挟んだりしたら壊れちゃいそう。そしたら、みんな潰れちゃうんだ。。。ミコはマコの心を読んでいた訳ではないが、長い付き合いである。
何を想像しているのかはなんとなくわかる。
「星も挟んじゃう特大おっぱいで挟んでみる?」
「え?いや・・・だって、それは、みんな殺しちゃうんだよ。ダメだって!」
「言ったじゃん。元に戻すことも簡単にできるんだって。それに、星の方はマコちゃんに潰されたいみたい。」
「えっ?」
マコが胸元を見ると、もう、星が左の上乳ギリギリにまで近づいていた。どうやら星より巨大な身体の引力に引かれていったようだ。
「うわっ!まずっ!」
慌ててマコが体勢を変えようとしたのがいけなかったらしい。ブルンと揺れた爆乳が星に叩きつけられ、星は木端微塵になってしまったのだ。
「あらら、マコちゃんっておっぱいも凶器だよね~」
ミコは笑っているがマコにとってはそれどころではない。自分がいた星を全滅させてしまったのだ。
「ミコちゃん!どうしよう・・・」
ミコは少し考えて、両手を大きく広げると、砕けた星のかけらがミコの胸元に集まって来た。
「いきなり星の再生は大変かもしれないから、見本見せるね。」
そう言いながら両手をゆっくりと胸元に近づけていき、掌をそこに何か丸いものがあるかのようにおわん型に包み込む形にすると、みるみるうちに星のかけらが
くっついていき、ついにはマコに破壊される前の状態に戻っていったのだ。
「す・・・凄いっ!」
「マコちゃんも少し練習したらこのくらい余裕だって。さっき、後輩の子を生き返らせたでしょ?あれを星全体に広げただけだから。」
「う~ん、頭ではわかってるつもりだけど、本当にあたしにできるの?」
「もちろん、あのエリナさんのお墨付きだよ。マコちゃんの力もあたしとほとんど変わらないんだって。それよりさ、またこれ壊しちゃうといけないからそろそろ行こうか。」
ミコの姿が消え去り、マコも後を追うようにしてその途方もなく巨大な姿をかき消した。

後編へ続く・・・と思う