マンガみたいなシチュエーション2 ある日常

「スリー・ツー・ワン・バンジーッ!」
「は〜いっ!」
「グエッ・・・」
解説しよう。最初の声は聞き覚えがあるおっさんの声。次の声はもっと聞き覚えがある女の声。そして俺が一気に腹全体を圧迫された呻き声・・・
この瞬間、俺は強烈な上昇Gを喰らって、目の前に遊里の何とも言えない悪戯顔が現れていた。。。会話の内容から推測すると逆バンジー、しかもこいつの顔が目の前にあるってことは、
100m近く一気に引き上げやがったってことか?っていうか、気持ちわる・・・

「おはよっ!」
「おはよじゃねぇっ!何で朝っぱらから逆バンジー?ってか誰がハーネス付けた?」
ブラブラしている足の遥か下を見ると、ぽっかりと天井が外された俺の部屋の中に・・・オヤジだ、手ぇ振ってやがる!やっぱり空耳じゃなかった。黒幕はあのくそオヤジに違いない!
だいたい遊里の極太の指で俺の身体にハーネス装着させるなんて不可能だし。そんなことされたら今ごろ俺はミンチボールだ・・・
普段は誤って遊里から落ちた時の転落防止用として通学用に使っているハーネスは、俺の胴周り全体を覆ってくれて保護してくれる。もちろん、ハーネスに付けた鋼鉄製ワイヤーの先は
遊里の指先に巻いてもらうのだが、こいつに何回助けられたことか。というか、悪戯に使っていいって誰が言った!?
「だってぇ、お義父さんが圭君を一緒に起こそって・・・」
やっぱり、こいつらの顔に反省の色は全くない。

元々義母さんと遊里が住んでいたこの家に、オヤジと俺が転がり込む形で生活が始まった。俺たちが普通に住むような家に身長165mと169mの母子が住めるはずも無く、
これは必然という奴だろう。
家の間取りは2LDK、広さは・・・尋常じゃないことだけは確かだ。間違いなくキロメートル単位。
リビングと遊里の部屋の間のちょっとしたスペースに、俺の部屋がある。ただ、この巨人母子との関係上、部屋は床から100mの高さにちんまりと置かれた箱みたいなものだ。
リビングから見ると、まるで隙間家具の上に置かれた箱みたいな感じにしか見えない。それでも個室としては充分過ぎるほどの広さだし、水回りもついている。
天井は開閉式で、といっても開閉できる膂力の持ち主は決まっているが、毎朝義母さんが指先で優しく起してくれるのだ。それが、今日は・・・
ちなみにオヤジの部屋は、義母さんの部屋のドレッサーの上に置かれている。

「は〜い、朝ご飯よ〜!」
そう言いながら現れた義母さんは、オヤジをひょいっと摘まみ上げて一度だけ睨みつけると、ダイニングに戻って行った。俺を吊るしたままの遊里がそれに続く。
「どうしてこう子供なのかしら?私はただ圭君を起こしてって言っただけですけど!」
まずは義母さんが少し呆れた顔で、テーブル上のオヤジにお説教を始める。
「だって、起こし方まで言わなかったじゃないか。それで遊里と相談して一発で起きるように・・・ひでぶっ・・・」
義母さんの人差し指がオヤジの上に圧し掛かる。オヤジの全身が悲鳴を上げているようにも見えるが、潰されることは無い絶妙の力加減。
「だからってあんな起こし方がありますかっ!それに、遊里。あなたもよ。圭君に何かあったらどうするの?」
義母さんの正面で、両手を膝の上に揃えて大人しく座っている遊里。やはりこの家の一番の実力者は義母さんなのだろう。
ひととおりのお説教が終わって朝食タイム。最近の我が家はパン食が多い。何故かって?最近巨人専用のパン工場が出来たので、目の前の巨大母娘のサイズにあったパンが
供給されるようになったからなのだ。

通学途中、俺は遊里の掌に乗せられながらもど真ん中で胡坐をかいて正面だけを見据えている。ズシン、ズシン・・・という下の方から聞こえる地響きに呼応して、
遊里の掌が少しだけ上下に動く。もちろん件のハーネスは装着している。
「まだ怒ってるのぉ?」
「フンッ!それよりちゃんと下見とけっ!」
「もうっ!圭君って器もちっちゃいんだ〜」
「あのなぁ、朝っぱらからあんなことされて・・・」
ぷら〜ん・・・
突然足場が消えたと思ったら、またもや遊里の目の前でプラプラしている俺・・・
「でもさぁ、寝ぼけて怒ってる圭君、可愛かったよ」
もう何も言うまい。。。結局、学校までそのままの状態にされていた。といっても、遊里の足で数十秒なんだけど。

遊里と俺、何故か同じ高校に通っている。遊里を受け入れるとは奇特な高校もあったもんだが、まさか俺まで同じ高校に入学させられるとは思わなかった。
ようやく校門で解放された俺は、少々ふらつき気味に校内に入って行く。遊里はというと学校に隣接した空き地に女の子座りだ。
約400m×200mの敷地の横にある約400m四方の空き地。この巨大女でも余裕で寝そべることもできる。去年までは野球部とサッカー部の専用グラウンドだったらしいが、
今年からは遊里専用。遊里が下校したあとにようやく使用できるらしい。

で、一時限目は体育。今日はバレーボールだ。一応運動神経は並みよりちょっと上という程度の俺だが、球技は得意な方に入る。
遊里は?と見ると、両肘付いて寝そべってつまらなそうに見下ろしている。その巨体で体育はちょっと無理があるもんなぁ。
「せんせぇ、あたしもバレーボールやりたい」
「えっ?いっ、いや・・・む、無理じゃ・・・」
顔面蒼白でビビる先生。体育大学出身で学生時代はラグビーで大学日本一になったこともあるんだが、遊里から見れば所詮はありんこである。何気なく伸ばされた指先で簡単に
押し倒される。そのまま先生の上にチョコンというしぐさでドスンッ!と人差し指が乗っかる。と言っても身体半分以上が隠れているが・・・親子だなぁ
「いいじゃん、ちょっとくらい」
5秒も経たないうちに、先生の右腕が地面を3回・・・そうですよね。普通、「参った」しますよね・・・という訳で、女子チームに巨大な人差し指が加わった。
ピピィッ!試合開始。女子チームのサーブ。レシーブが受けてトスが上がって、よっしゃ!絶好球っ!スパイクを放とうとする俺の前には肌色の指紋?ど、どこにも打てねぇ・・・
敢え無くスパイクは遊里の指先に叩き落とされた。喜ぶ女子たち。反則じゃねえの?それ・・・
今度は女子のサーブを受け損なってダイレクトで女子チームにボールが返る。レシーブ、トス・・・ってめちゃめちゃ高くねぇ?どんなに高いトスでも関係ないとばかり
遊里の指先がクイッ!と曲がった瞬間、ヒュンッ!パァ〜ンッ!俺の真横を何かが飛んでったかと思うと、破裂音!?
を〜い・・・皮だけになったボールがプスプスいって煙出してるんですけど、直撃されたら死んじゃいますけど。手加減って言葉、知ってますよね。
「ごめんねぇ、もうちょっと軽くしてあげる〜」
いや、あなたの軽くって言うのは、それでもスーパーヘビー級以上なんですけど、わかってます?
当然、女子チームの一方的な勝利に終わり、満足げに指を引っ込める遊里。しかも、俺が前衛にいる時だけ手ぇ出しやがって、絶対根に持ってやがる・・・

2時限目からはぼんやりと超拡大コピーの教科書を見ながらおとなしいものだ。いや?なんか、振動が・・・
教室全員窓の外を見ると、校庭の先で女の子座りしている遊里の頭が、カックンカックンしてる・・・寝てんのか?そのカックンカックンに合わせて膝が動いているのか、
グラグラッグラグラッという何とも重厚な響きが学校全体を襲っている。
それよりも・・・上体が、なんか、斜めになってないか?た〜おれ〜るぞ〜ぉっ!俺の頭の中で木こりのおっさんが叫んでいた。
ずっず〜んっ!!!
教室の壁際のロッカーが勢いよく倒れ、立っていた奴らはその場に倒れ、女子なんぞは机にしがみ付いて必死に揺れに耐えていた。
「んわ・・・寝ちゃった・・・」
柵を簡単に破壊して、空き地から頭半分出した格好で転がった遊里の額に運悪く通りかかった車がぶつかって、やっと現状を把握したらしい。
右手でおでこをさすりながら苦笑いをして、ようやく遊里は起き上がった。

授業を中断して、一番被害が大きかった図書室の片づけを命じられた俺と遊里。なんで俺まで?
「ほらぁ、寝る子は育つって言うじゃん。」
全く反省していない口ぶりの遊里は、窓から指だけを入れて倒れた書棚を立て、俺はぶちまけられた本を元の書棚へと戻す。
「あのなぁ、それ以上育ってどうすんだよっ!」
ぶゎきぃっ!
書棚がひとつ、木端微塵だ・・・
「あら、古かったのかな?壊れちゃった。」
せんせぇ!怪獣が書棚をぶっ壊しましたぁ!なんとかしてくださぁい

昼休み。遊里は俺を膝に乗せて校舎に背を向けて弁当を食うことにしている。
初めての弁当の日、実は数人の女子生徒が遊里の豪快な食いっぷりに怯えてしまい、保健室に担ぎ込まれたのだ。彼女たちは逆に遊里に謝ってくれたらしいが、
流石にこれには少し凹んだようで、それ以来みんなから見えないように校舎に背を向けている。ちょっと可哀想なので、いつも俺が遊里の膝の上で一緒に食うことにしているのだ。
「おぉ〜っ!見て見て!久々の天然ものっ!」
嬉しそうに箸で魚のフライを挟んで俺に見せつける遊里。しかしずいぶんでかい魚だなぁ。体長5m以上はありそうだ。でも、こいつから見ると小魚にしか見えない。
「なんだ?そりゃ?」
「ホオジロザメだって、お母さんが言ってた。おぉ〜、5匹も入ってる!」
ホオジロザメ?ってあの人食いザメですか?ジョーズさんですよねぇ・・・それをひと口に放り込んで、バリバリボリボリ・・・骨まで平気で噛み砕いている。
これには俺も気持ち悪くなってきた。。。
「圭君も食べる?おいしいよぉ!」
2匹目が箸に摘ままれてズイッ!と目の前に現れる。口を大きく開けた状態で綺麗にあがっているそれ。まさか人間にひと口で平らげられるとは夢にも思っていなかったんだろう。
「食えるかっ!んなもんっ!」
「美味しいのに〜っ!そう言えばさ、これくれた漁師の人に頼まれたらしいんだけど、今年は大量発生して困るから採りに来てくれって言われたんだって。あたしも行こうかなぁ」
なるほどねぇ、漁に有害な魚はいなくなるし、採ったら採ったで鰭以外はたいした金になんないし、漁師さんにとっては一石二鳥って訳だ。
「採りたてだったらお刺身にしてもいいよねぇ。でもちっちゃいから踊り食いでもいっかぁ!」
ジョーズフライを次々と平らげながら、目を輝かせている遊里。で、今度はジョーズの踊り食いですか?スピルバーグ監督もビックリするだろうなぁ・・・

午後の授業は何事も無く終わり、帰宅の時間です。
ちょっと遊里にお願いして、いつもの通学コースから外れてもらう。そうすると、まあ、色々大変なので、最初は先に帰ってろと言ったのだが、ついて来ると言い張ったのだ。
近所の皆さん、ホント申し訳ないです。。。
遊里でも比較的歩きやすい片側3車線の道を選んだけど、広い道イコール車が多いということになる。巨大なローファーが踏み下ろされるたびに、慌てて避けようとする車が
小さな事故を起こしまくっている。
「あのねぇ、あたしが踏み潰すと思ってんの?」
慌てた拍子に横転した車をつま先で器用に退かしてでかい足を着地させる。
「そう思ってるから避けてるんじゃねえの?」
「な〜に?よく聞こえなかったんですけど。」
ドアが開け放たれて運ちゃんが逃げ出したタクシーを摘まみ上げて、俺に見せつけてのご発言だ。ドアは千切れ、フロントガラスは既に砕け、車体全体がメキメキミシミシいっている。
「い、いえ・・・何でもありません。。。」
「わかればいいのよ」
遊里は、全体がボコボコになりながらも、まだ何とか車としての形を保っているタクシーを、膝ほどの高さのビルの屋上に置いた。誰が取りに来るんだろうな?

「ちょっと待っててくれ。」
遊里は駅前のバスターミナルをでか足で占領し、俺は足元に降ろされた。駅に入れなくなったバスが、やむを得ないといった感じで駅の反対側に移動していく。
それにしてもでかい靴だ。ターミナルの中で立ち往生してしまったバスの長さの2倍以上ある。確か25mだったよな。よく車を一台も踏み潰さなかったと感心してしまう。
「パンツ、丸見えだぞっ!」
「圭君のエッチ!」
しゃがんでいる遊里のつま先方向から見れば、極太の太股の奥にある白いものが丸見えになる。そんくらいわかるだろう?というか俺だけじゃなくて他の皆さんからも・・・
駅から出てくる人の波は、そのほとんどが巨大ローファーを見ていつの間にか回れ右をしている。ところが中にはそこに留まって見上げている不届きものもいるのは確かで、
遊里はひょいひょいとそいつらを摘まんでは左手の上に落としていた。全員が男、まぁ当然と言えば当然か。
「あんたたち、あたしのパンツ見たらどうなるかわかってるんでしょ?」
俺のいる場所からは見えないが、きっとみんな震えているはず。たぶん土下座してるんじゃないかなぁ・・・
脅されるだけだと分かっていても相当な恐怖のはずで、遊里の脅しに屈さなかった奴を俺は見たことが無い。というか、存在自体が脅してるようなもんだし。
「全員携帯没収ね。何人か写メ撮ってたでしょ。ほら、圭君はさっさと本屋に行く」
掌越しに、まだ見上げていた俺の姿を認めたのか。彼らのうちトラウマになる奴が何人出るのかな?と思いながら、遊里に追い払われるように俺はビルの中に入っていった。

誰かさんが起こした巨大地震のせいでエレベーターとかエスカレーターは止まっているので、仕方なく階段で7階まで上がる。
急がないとなぁ。そう思って目的の本を探してお会計。その時だった。
「あら、遊里。何してるの?」
ビルの外から聞こえた大音響。義母さんだ。直後にビル全体が大きく揺れた。
「圭君が用事があるからって。待ってるのよ。」
「そう、じゃあ、一緒に帰ろっか。」
掌に十数人乗っかっているのを知りながら、その台詞ですか?というか、義母さんも「こびとを脅すのが大好き」みたいな人なのだ。親子だなぁ・・・
会計を済ませた俺は、慌てて階段を駆け降り、ビルの外へ・・・
「うぁっ・・・」
目の前には高層ビル級の脚が4本、所狭しと聳え立っていた。何台かあったバスやタクシーは完全に歩道に追いやられて横転したり引っくり返ったりしている始末。
上空では立ちあがっている遊里の掌を義母さんが突ついている。たぶんさっきの男たちだろう。親子していじめてるんですかぁ?人格崩壊しちゃいますよぉ
でも、考えてみれば床からふたりを見上げたことって無かったよなぁ。。。それにしても凄い光景。もう、人影がほとんど無くなっているのもわかる気がする。
そういえば本屋も客は既に俺だけだったっけ?
「圭君、おかえり。何の本買ったの?」
義母さんが僕の姿に気がついたようだ。ふたつの高層ビルがこちらに倒れ込み、いや、義母さんがしゃがんで俺を優しく摘まんでくれた。
「さ、参考書・・・です。。。」
「偉いじゃない、遊里も見習わなきゃ」
「はぁ?あたしこれでも学年トップなんですけど」
そうなのだ。遊里は授業中あれだけ寝てても頭がいいのだ。ちょっと前の中間テスト。全科目満点は遊里しかいない。俺などは遊里の回答を標準サイズに書き写す役目をしていたので、
カンニングを疑われる始末だった。よ〜く考えろぉ、自分の答案を出した後に遊里の答案を書き写してたじゃねぇか!これには遊里も怒り心頭で、全教師を掌の上で正座させて
延々と2時間は説教をしてくれたのだが。
で、俺は遊里に勉強を教わるのが怖いので参考書を買い込んで自力で勉強しようと思った次第で、本当は遊里には知られたくない事実だったのだが。
「でもさぁ、あたしに言えば教えてあげんのに。圭君も変なとこよそよそしいよね。そうだっ!」
遊里が、本屋があるビルの前にしゃがんで何やら始めた。

ボコッ、ボコッ・・・
指先で屋上を軽く突き崩し、中を覗き込む。
「誰もいないね。」
今度は水平にした右手を最上階の8階に突き刺して・・・ボゴォッ!メキメキメキッ!そのまま天井を半分ほど剥ぎ取った。
相変わらず左手の上に捕まっていた奴らから悲鳴が上がる。
「あ、忘れてた。今日はこれで勘弁してあげるわ。その代わり、落ちてもしらないからね。」
一部分残っていた屋上に転がされた男たちは、慌てて近くにしがみつく。
「何してるの?あんまり壊したらダメよ。」
義母さん、もっときつく言ってくださいよぉ!こいつ、破壊神なんですからぁ・・・
「本屋さんで圭君向けの参考書を見つけてあげんの。レベルが違う本買っても意味ないでしょ?」
バキバキィッ!ぐしゃぐしゃぁ・・・
全く悪びれずにレストランの客席やら厨房やらを片手で纏めて薙ぎ払い、乗り捨てられた車で埋め尽くされている路上にぶちまける。
同じように8階の床も半分ほど引き剥がして、7階の本屋を覗き込んだ。カウンターの中で震えていたさっきの店員さんを見つけたようで、指先でカウンターを粉砕し、
ひょいと摘まんで目の前に上げる。
「ねえ、高校の参考書ってどこ?」
「か、カウンターの・・・み、ぎ・・・おく、です・・・」
店員さんががんばって答えた。凄いなぁ、初めてこいつに摘ままれた時は俺なんか恐怖で一言も喋れなかったもん。
「そ、ありがと。危ないからどいててね。」
店員さんを足元に解放して、言われた範囲の本棚を纏めて摘まみ上げ、掌に乗っけた。
「お、おいっ!そんなに必要ねえだろ!」
「いちいち探すの面倒でしょ?家に帰ったらちゃんと選んであげるから。」

俺の抗議など完全に吹き飛ばされ、巨大な母子に連れられ、いや、掌に乗せられ家路についた。って義母さん、いつの間に・・・何故か俺の目の前に5台のバスが鎮座している。
見上げると、義母さんが下に目配せしている。何だろう?当然掌の正面には普通サイズに換算しても推定Iカップ以上の爆乳があるはずで、敢えて見ていなかったのだが。
「う・・・わっ!!!」
思わず腰を抜かしてしまった俺。歩いている義母さんに合わせてゆっさゆっさ揺れる胸元を少し広げたシャツのその奥では、1両、いや、3両の電車がメキッメキッと今にも
潰されそうな悲鳴を上げて胸に合わせて上下していた。
「あ〜っ!お母さん、ずる〜いっ!」
気がついた遊里が義母さんの胸元に手を入れて、既にほとんど潰れかけている電車を摘まみ出して、溜息をついた。
「はぁ〜、もう潰れちゃってんじゃん・・・」
「ごめんね〜、大き過ぎるのも困りものよねぇ。」
笑顔の義母さんに、ムッとした遊里。3両の電車をまるでティッシュのようにクシャクシャっと丸めて足元に転がすと、
「バスは貰うわよ!」
と纏めて3台のバスを持ち去っていった。
だから、遊里も義母さんも、バスや電車はおもちゃじゃないって・・・やっぱり親子だ・・・