※このお話は、破壊,残酷描写が含まれます。
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  気分を害されても唐変木は一切の責任を負いませんので、読むかどうかは自己責任でお願いします。

退屈しのぎ

「今日も何もない一日だったなぁ・・・」
高校に入って何かが変わるかと期待した自分がバカだったのかしら。確かに受験勉強からは解放されたけど、結局早ければ来年から同じことの繰り返し。
部活でも入ろうかとも思ったけど、なんか自分にしっくり来そうなものが無いし、でも、まあ、いっか。
そんな独り言をブツブツ言いながら家路を急ぐ女子高校生。名前は琴美。身長は165cm、体重内緒、体型も普通かな?胸はFカップほどある美巨乳ではあるが、
今のところそれを活用したくなる相手はいない。

「あのぉ・・・助けて、ください・・・」
ん?なんか声が聞こえた。慌てて振り向くが、誰もいない。空耳かな?そう思って琴美はてくてく歩きだそうとする。すると、また、
「あのぉ・・・お願いです。助けて・・・」
だれ?どこにいるの?って、見ると一匹の犬がこっちを見てる。犬が喋る?わけないよね。でもちょっと可愛いな、そう思ってしゃがんで犬と向きあってみる。
「あんたが喋ったの?おいで、ワンちゃん」
手を出して指先をクィクィッと上に向ける。首輪をしているところを見るとどこかの飼い犬だろう。人懐っこい性格のようで、タッタッタッと琴美に近づいてくる。
口に何かを咥えて・・・何?人形?
「よかった。。。助けて。食べられるの、嫌ですぅ・・・」
はぁ?食べられる?どういうこと?犬が咥えている人形を見るとかなりリアルな作りだ。顔立ちも可愛く苦痛に歪んでるし。ん?何で人形なのにそんな表情?
「は、早く・・・出して、くださぁい」
思いっきり声と口の動きがリンクしましたっ!
「に・・・人形がっ!喋ってるぅ???」
素っ頓狂な声を上げて尻もちをついた琴美に驚いたのか、犬は咥えていた人形をポロッと落として逃げていってしまった。
横たわった人形がむっくりと起き上がってアスファルトの路面に両手を突く。再びたじろぐ琴美。
「あ、ありがとう、ございました。。。」
それだけ言うと力尽きたのか、人形はその場にばったりと倒れ込んだ。

「なんだろう?これ。こびと?妖精?・・・」
まさかその場に放置する訳にもいかなかったので、ちょっと気味が悪かったが家に持ち帰って来たのだ。机の上に寝かせて観察中である。
それにしても小さいなぁ。巻き尺を持ってきて採寸してみる。身長、15.5cmくらい・・・か。スタイルはちょっとグラマラスな感じ?身体の割に胸が大きい。
「う・・・ん・・・」
気がついたようだ。むっくりと周りを見て、琴美と目が合った。
「わっ、きゃっ!」
慌てて逃げ出そうとする小さな女の子を、琴美は余裕の表情で鷲掴みにして目の前に持って来た。
「命の恩人に対して、それはないんじゃないの?」
手の中でジタバタしていた女の子も抵抗を止め、琴美の顔をじっと見つめる。
「あ、あなたは・・・私をさらってどうするんですか?天罰を下しますよっ!」
「だ〜れが人さらいよっ!犬に咥えられてたのを助けた恩人の顔も忘れたのっ!?」
「へっ?あっ、ごめんなさい。。。ちょっと興奮して・・・」
「ったく、それより今、天罰って言ったわよね。そんなにちっちゃくてどうやって天罰下せるのよっ!」
「べっ、別に好き好んでちっちゃくなったんじゃありませんっ!いいですっ!私の力を見せてあげますっ!」
突然琴美の目の前が真っ暗になり、意識が・・・すっ飛んだ。

目を覚ますと、見覚えがありそうでなさそうな場所。誰かが顔を覗きこんでくる。金髪が肩の少し先まで伸びている可愛らしい女の子。でも、初めて会った気がしない。
「気が付きましたか?ごめんなさ〜い。気絶させる気は無かったんですけど・・・」
この声、さっきのこびとそっくり。
「あ、あんた・・・誰?」
「申し遅れました。私、フィーアと申します。」
ペコリとお辞儀をする女の子。
「そうそう、先ほどは失礼いたしました。改めて、命を救っていただいたこと、お礼を申し上げます。」
命?救った?私が?でも、助けたのはあのこびと・・・うそ・・・
「あ、あ、あんた・・・さっきのこびと?」
「あのですねぇ、たまたま小さくなってただけでこびとじゃありません。それに今はあなただって同じようなもんじゃないですか。」
同じようなもんって・・・あの馬鹿でかい本って、まさか!?
「ひょっとして、ここって・・・」
「はい、あなたのお部屋です。」
うそ!?小さくなってるの?私が?じょ、冗談じゃないわよっ!一体どうやって生活すんのよっ!
「今戻してっ!すぐに戻してっ!とにかく戻してっ!!!」
「え〜っ、だって、天罰見たいって言ったじゃないですかぁ」
「て、天罰って・・・だいたい雷がドッカ〜ンッ!て落ちるとかじゃないの?」
「そっち系がよかったですか?でも、感電して痛いですよ。」
はぁ〜・・・こんな奴助けなきゃよかった。
「あの〜、お名前、なんて言うんですか?」
「こ、こんな時に何で自己紹介?」
「いや、名乗ったんですから、せめてお名前だけでも・・・」
「琴美よっ!」
「琴美さんですかぁ、いいお名前ですね。」
「っていうか、あんた・・・いや、フィーアさぁ、一体何者なの?」
フィーアは腕を組んで片方の手を顎に当てて首を傾げている・・・自分の正体で悩むのかぁ?
「何者なんでしょう?一応、何でも出来ますが。でも、よく失敗するんですよ。それでさっきも小さくなりすぎて、あんな目に・・・」
「でも何でも出来るんだったら簡単に逃げ出せたでしょ?」
「そうなんですけど、ちょっとテンパっちゃいまして・・・」
はぁ、やっぱり助けない方がよかった・・・

「それよりさ、身体痛くないの?」
「はい、それほどでも。でもお洋服が・・・」
確かにボロボロである。特に犬歯が当たっていたと思われる左側からは大きな胸が見え隠れしているし、腰回りもかなりセクシーになっている。
「何でもできるんだから直せばいいじゃん・・・」
「あっ!そっかぁ、そうですよね。では、失礼して」
琴美の目の前でフィーアが一回転すると、あら不思議、高校の制服に早変わりだ!
「すごっ・・・魔法みたい!ってか、うちの制服じゃん!」
「ばれました?でも琴美さんのお洋服がとても可愛らしかったので、真似したいなって」
「ま、いいけどさ。そんで?いつ元の大きさに戻してくれるのかなぁ?」
「その前に・・・お願いが・・・」
「何よ!何でも出来るんでしょ?必要ないじゃん!」
「い、え、その・・・お友達になってくださいっ!」
フィーアがペコリと頭を下げて右手を差し出す。お友達にならなかったら一生このまま?ってことは無いと思うけど、実害もあんまりなさそうだし、面白そうだし。
「いいわ。仲良くしましょ。」
琴美もフィーアの右手を握って微笑んでいた。

「ねえ、フィーア。なんか面白いことない?」
琴美は元の大きさに戻って机に向かって今日の復習中だ。フィーアは小さいままで机の上で寝転がっている。この大きさの比率が気に行ったらしい。
「例えば?」
「そうねぇ、なんかスカッとすること。」
「スカッと・・・ですかぁ。どこか星でも潰しに行きますか?私、たまにストレス解消でやるんですけど、気持ちいいですよ〜!」
いきなりそのスケールのでかさはなんなんだ?っていうか、身長15cmちょっとで言われても説得力が・・・ない
「星まで潰すのはいいけどさぁ、大きくなって暴れるのは、ちょっと気持ちよさそうだよね。」
琴美も意外と順応しやすい性質のようだ。自分が小さくされたり大きくされたりしたからなのだろうか?
「気持ちいいですよぉ!スカッとします。特に力のありそうな国をいたぶるのってやめられないですっ!」
見かけによらずドSですか?フィーアさん。というか琴美の脳裏に疑問がひとつ、ふたつ・・・
「ちょっと質問したいんですがぁ・・・」
なんかうっとりと自分に酔い始めてるフィーアを現実の世界に引き戻す。
「は、はいっ!なんでしょう?」
「この星以外に私たちみたいな生命が存在する星って、あるの?」
「ここみたいに辺境の中の辺境では珍しいですけど、いっぱいありますよぉ!それこそ数え切れないくらいです。文明レベルも色々ですけどここはちょうど中間くらいの文明かなぁ」
宇宙のド田舎ですか、ここは。だから他に知的生命体がいてもここまではなかなか来ない訳ね。
「ふ〜ん、フィーアってさ、今ちっちゃくなってるって言ってたでしょ?」
「はい」
「元々どのくらい大きいの?星を潰すって言ったから気になっちゃって・・・」
「えぇっと、普段は今の1億倍ですっ!でも、気分次第でもっと大きくなったりもしますけど」
「はぁ・・・いちおく・・・」
物凄く大きいってことはわかるけど、ちょっとピンと来ない琴美。フィーアもそれに気付いたようだ。
「簡単に言うとですねぇ、この星よりおっきいです!」
「はぁ???」
地球より大きいって、そんな天文学的なサイズの人間なんて・・・
「論より証拠って言いますよねぇ。ちょっと体験してみます?」
体験ってちょっと・・・琴美の目の前の景色がぶっ飛んでいった。

漆黒の世界。少し遠くで何かが光っている。あれは何だろう?というか、私、浮いてる・・・本当に1億倍ってこと?
「ごめんなさぁい・・・面倒なんで琴美さんも一緒に1億倍にしちゃいましたぁ。」
声がする方を見ると小さいままのフィーアの姿。やっぱり浮いてる。
「ちょ・・・いきなり何すんのよっ!ここって、どこ?」
「一般的に『宇宙空間』って言います!」
大きな胸を張って、思いっ切り断言しているフィーア。
「うちゅ、って、あたし・・・」
慌てて口を押さえる琴美。いや、もし思ったとおりだったら既に遅いと思うんですが。
「あ、大丈夫ですぅ。真空でも生きられるように琴美さんの身体にも細工しておきましたから」
どういう細工よっ!と聞きたいところだったが聞いても分からないと思うのでやめておこう。それより・・・
「ねぇ、本当に1億倍になってるの?」
「はい!そこの星、見えますかぁ?」
琴美がフィーアの指さす方を見ると、小さな青い球体が見える。直径12cmくらい?片手で簡単に掴めそうな大きさだ。
「ふふっ、なんだと思います?」
「なんだ、って・・・う、うそ・・・」
見覚えのある地形。これが北アメリカで下が南アメリカ。じゃあ、この結構広い青い部分が太平洋で・・・あ、日本列島だっ!つまり小さな地球儀が浮いている訳で・・・
「ち、きゅう???」
右手をそっと近づけてみる。ソフトボールよりひと回りくらい大きいくらいだろうか。琴美の手が太陽光を遮って、地球全体を暗闇に染めている。地球から見たら突然の日食?
そう思ったら、琴美もちょっと楽しくなってきた。
「あっ、触らないでくださいね。触っちゃうと琴美さんが帰る場所、無くなっちゃいますから。」
琴美が慌てて手を引っ込める。そうか、指先で触れただけで大災害を起しちゃうんだ。だって、指の幅だけで日本列島の半分は隠れそうなほど小さい。
「そう言えばさ、フィーアは何しにここまで来たのよ。」
「お、怒りません?」
「なるほどぉ、潰しに来たんだぁ。別に怒らないけど、潰すの?」
無感動に言ってのける琴美に、フィーアが若干焦る。琴美が絶対に怒ると思ったのだ。
「なんで怒んないんですか?琴美さんが住んでる星ですよぉ?それと、潰すんじゃなくて、あんまり綺麗だから、アクセサリーにしたいな・・・って」
フィーアのドギマギが一層増幅している。
「なんでだろう?わかんないや。潰して欲しくないとも思うし、別に潰れてもアクセにされてもいいとも思うし。でも、確かにアクセにしたら綺麗だよね。」
「琴美さんって・・・面白い人なんですね。」
「はぁ?フィーア程じゃないと思うんだけどなぁ・・・」
「えぇ〜っ!?私ってそんなに面白いですぅ???」
フィーアはまるで自分がまともだと思っていたらしい。ちょっとふくれっ面になった。
「ま、まあ、面白くてもいいですけど・・・そろそろ戻りましょうか。長い間いると壊しちゃいそうですから」
琴美はそん時は別にいいじゃんとも思ったが、ひとまずはフィーアの言葉に従うことにした。

テレビではどこのチャンネルでも突然発生した超常現象の特番に切り替えられていた。およそ10秒間の突然の皆既日食、いや、全くの暗闇。解説の超常現象オタクたちは
好き勝手な自説を思う存分展開している。
「ちょっと手を翳しただけなんだけど・・・」
この騒ぎを起こした張本人は少々困惑している。だが、少なくとも客観的な事実をつないで、あれが本物の地球だったということは理解できた。
「少し大きくなって、『私がやりました』とか言ったら面白いかなぁ。」
「それ、面白そう。。。やりましょうか?」
何故かフィーアの目はランランだ。悪戯大好きなのかもしれない。琴美もその辺は同類だが今回はまだ気が乗らない。
「やっぱ、やめとく。それよりさ、逆にちっちゃくすることもできるよね。私もちっちゃくされたし」
「はい、できますけど。なんでですかぁ?」
「ほら、大きくなっちゃうと目立つし色々面倒でしょ?ちょっと箱庭みたいな感じのものがあればいちいち自分が大きくなんなくても遊べるじゃん!」
「はぁ・・・」
フィーア自身、色々な星で自分の能力を見せてきたが、ここまで順応されたのは初めてだ。
「それでさぁ、やっぱ自分が生まれ育った星をいじめるってのも可哀想だからさ、他の星、ちっちゃく出来る?」
「出来ますけど・・・」
「じゃあ、お願い。なるべく地球に似てる星がいいなぁ。」
フィーアも戸惑いから少し持ち直したようで、
「わかりましたぁ。ちょっと待っててくださいねっ!」
その場から掻き消えていった。

きっかり1分後、フィーアが戻って来た。相変わらず15.5cmのままである。
「お待たせしましたぁ。こんな感じで、どうですかぁ?」
机の右側半分に何やら模様が出来ている。
「あ、おかえりぃ、ってこれって・・・まち?」
「はい、1億分の1に縮めて持って来ましたぁ!どうですかぁ?」
どうですかぁ?って言われても、模様にしか見えない。
「ちょっと小さすぎじゃないの?これ。だって、1000kmが1cmになっちゃったんでしょ?」
琴美さん、計算早いじゃないですかぁ。と思った人、はずれです。さっき1億倍になったっていう実感を改めて計算していたらしいです。
「ざ〜んねんでした。そうなんですけどぉ、この子たちって元々地球の人より千倍くらいおっきいんですよぉ」
千倍???身長1600mとかですか?千倍の人が1億分の1になったってことは、えっとぉ・・・プシュゥ・・・琴美さんオーバーヒートかぁ?
「考えてもしょうがないですよぉ。ちっちゃくなったことには変わりないからいいんじゃないですかぁ?」
フィーアはアバウトな性格らしい。そのあたりのことは気にしないようだ。
相対的には琴美から見ると10万分の1の地球の街並みと同じになる。つまり、東京タワーの高さが約3mm、スカイツリーでさえ6mmである。わかったかなぁ?琴美さん。
引き出しの中をごそごそと何やら探している琴美。おっ、あったらしい。これは、虫眼鏡だっ!
虫眼鏡越しに模様を見てみる。あっ、なるほどぉ。超がつくほどちっちゃい建物が並んでる。あっ、こっちは海ね。船が浮かんでるし。でも凄くちっちゃいなぁ・・・
「ねえ、何で海があるのに水漏れしないの?」
琴美は人差し指を伸ばして一隻の船に近づけていた。指先と比べるとあまりにもちっちゃい。沈めちゃおうかな?
「それはですねぇ、周りを一応コーティングして持って来たんで、大丈夫なんですよぉ。それにこびとの逃亡防止にもなりますしねぇ」
そうなんだ。あ、指先になんかちっちゃいものが当たった気が・・・沈んじゃった?指先が触れたあたりに白い波しぶきみたいなのが見える。
「ふ〜ん、この街にいる子から私の姿って見えるの?」
「もちろんですっ!じゃなきゃつまんないじゃないですかぁ。もう、大パニックですよ。ここの人たちって自分達より小さい人間しか見たこと無いから。」
そっかぁ、そうだよね。元の大きさでこの星に来たら、この子たちってとんでもない大巨人ってことだもんね。でも、フィーアも随分嬉しそうだなぁ・・・
「ひょっとしてさ、フィーアって元々おっきな人をいたぶるのが好きなんじゃない?」
「ば、ばれましたぁ?実はこの星、次に潰そうと思ってたんですよぉ。なんか大きいからって調子に乗ってたんでぇ。周りの星の子とか可哀想でしたよぉ、なんか。
いっつも弄ばれて虫ケラ扱いで。だから、虫ケラの気分でも味あわせてから潰そうかなって」
全く悪びれずに言うフィーア。相当いい性格をしているようだ。でも、何故か琴美も同調している。
「いつもは大きいことを威張ってたのに、か。面白そうだね。でも、この大きさじゃあすぐ全滅しそうじゃない?」
「じゃあ、ちょっと小さくなってお散歩でも行きます?」
「うん!」
琴美とフィーアの姿が、その場から消え去った。

「今どのくらいの大きさなの?」
街の中に入って琴美とフィーアは並んで歩いている。確かに地球の街並みとは少し違う感じがする。住宅地なのだろうか、奇抜なデザインの家が足元に点在し、
蟻くらいの大きさのたぶん人間が逃げ惑っているのが見下ろせた。
「琴美さん、身長どのくらいです?」
足元など気にせずに、せいぜい足首ほどしかない住宅を踏み潰していくフィーア。
「165cmだけど」
そう答えながらも、まだかなり足元を気にして歩いている琴美。
「じゃあ、ここの子たちを基準にすると165kmですね。私は156kmで〜す!」
近くにいたこびとを摘まみ上げて、琴美の掌に落とした。目の前まで上げると、本当に小さな人間がガタガタ震えている。
ってか165kmって・・・1cmが1kmってこと?わかりやすいけどでかすぎっ!でも、この子も2km近くあるんだぁ。縮められなかったら本当に大巨人なんだね。
なんだか可哀想・・・
そんなことを思いながら、琴美がそのこびとの若い男を摘まみ上げる。キィキィ鳴いてる。結構可愛いかも・・・
琴美の隣ではフィーアがもうひとり摘まみ上げていた。
「ふふっ、なんか必死に命乞いしてますよね〜。」
「へ?言葉、わかるの?」
「あっ、忘れてましたぁ。琴美さんにもこの子達の言葉がわかるようにしますねっ」
そう言われた途端、琴美の指先のこびとの鳴き声がか細い声に変わった。
『お願いします。たっ、助けて・・・』
ほんとだっ!助けてって言ってる。
「でも、あなたたちも小さい人間をいじめてるんでしょ?どうしようかなぁ。」
意地悪な笑顔。本当だったら高層ビルなんかよりも遥かに大きな子を指先だけで摘まんでる優越感。意外と気持ちいいなぁ・・・
ぷちゅっ・・・
へっ?こんなに簡単に・・・うわっ!指先が真っ赤だっ!
「潰れちゃいましたねぇ。じゃあ、私もっ!」
ぷちゅっ・・・
フィーアが琴美の目の前に手を伸ばして、摘まんでいたこびとが・・・弾けたっ!
真っ赤に染まったフィーアの指先、自分の指先と同じ色だ。ヤダッ、人・・・殺しちゃったの?でも、不思議と冷静でいられた。
「けっこうこの星って人口多いんですよ。さ、行きましょ」
全く罪悪感を持っていないフィーアに続いて、琴美もずしんずしんと建物や人を踏み潰しながら街の奥へと入っていった。

結構開けてきた街並み。中心街は10階建て以上のビルが建ち並び、大通りを大小様々な車が走っている。地球の、それも日本とよく似た風景がそこに展開されていた。
「はぁ・・・なんか大きさを別にすればそっくりだよね。」
今頃ふたりの姿に気がついて逃げ出そうとする車を、琴美が軽々と摘まみ上げた。外観は乗用車そのものだが、大きく違うのはタイヤが無いこと。
「でも微妙に違いません?例えば、ここの車は全部エアカーなんですよね。それに、この星は一応宇宙船も持ってますし」
「そう言えばそうだね。へぇ〜っ!こっちの方が文明も進んでるんだ!でもさ、縮めても空から逃げられちゃうんじゃない?」
「それは大丈夫です。空もコーティングしてるから絶対に逃げられません!」
大きな胸を張ってフィーアが答える。
「へぇ〜っ!フィーアって凄いんだね!」
と言いながら全く違う行動を取る琴美。伸ばした左手でフィーアのブラウスのボタンをふたつばかりパパッと外した。
「へ?ふぇっ?」
全く予想していなかった琴美の行動に、フィーアは思わず後ずさり、踵で横にあったビルをグシャリと踏み潰した。土煙がもうもうと舞い上がる。
そんなことはお構いなしに、琴美は持っていた乗用車をフィーアの胸の谷間に挟みこんだ。
「おぉ〜、フィーアの胸ってやっぱでかいと思ってたけど、車も挟んじゃうんだね〜っ!」
「い・・・いきなり何するんですかっ!!!」
真っ赤になって抗議するフィーアを無視して、琴美はもう一台を摘まんで、今度は自分の胸の谷間に挟んでみた。
「あっ!私でも挟めるじゃんっ!」
ずっしぃぃぃんっ!!!
その場で四つん這いになる琴美。両手で3つずつくらいビルを押し潰し、膝から下はその3倍以上を破壊していた。
「かわいいっ!!!」
逃げ惑う車や人を片手で通せんぼしたり、ビルを屋上から鷲掴みにしてそのまま押し潰したりとやりたい放題だ。というより、完全に巨人であることを楽しんでいるようにしか見えない。
「あ、あの・・・琴美、さん?」
「ん?な〜に?」
「な、なんでもないです。。。」
フィーアは、こんなに簡単に順応した人って、たぶん初めて。と言いたかったのだが黙っていることにした。

いつの間にかフィーアも琴美の前で四つん這いになっていた。ふたりは手の届く範囲を外側から破壊して、こびとたちを中央のひと区画に追い立てていた。
「ほんとにいっぱいいるんだねぇ。」
顔の真下で逃げ惑い、うち震えている身長1.5〜2kmの『こびと』たちを観察しながら、琴美は次は何をしようかを考えていた。
「この星全体で2億人くらいですかね。でも、持って来たエリアには300万人くらいしかいませんよ。」
フィーアは何人かを指先で弾き飛ばしていた。弾かれたこびとたちは、一瞬で身体が四散し、肉片を辺りにまき散らしている。
「それって多い方なの?あ・・・おんなのこ!」
琴美はビルの陰に隠れている数人の女の子の集団を摘まみ上げて、掌に落とした。全部で5人、身体を寄せ合って何か泣き叫んでいる。
「それはですね。この星の大きさって、地球人基準で言うと陸地の面積は日本と同じくらいしかないんですよ。つまり日本の約2倍の人口密度なんです。」
「だから多いんだ!なるほどぉ!」
琴美は掌の5人に裸になるように命令していた。しかし、全員がパニック状態で誰も言うことを聞こうとしない。少し怒った琴美はそのうちのひとりを指先で摘まみ、他の4人の前に晒した。
「言うことを聞かないんならこうするから!」
少し怒った表情で言うと、4人の前で摘まんだ女の子をプチッと捻り潰した。
パニックはさらに増幅したが、それでも4人は自力で服を脱ぎ始めた。琴美は満足そうにそれを見ながら今しがた潰したものをお尻の横に擦りつけていた。
「へぇ〜、地球人とそっくりね。」
4人とも地球人と変わらない身体だった。フィーアの解説だと、宇宙の知的生命の99%はこのヒューマノイド型だということだった。
「あなたたちもエッチなこと、するのかしら?」
胸の谷間からさっき挟んだ乗用車を摘まみ出すと、車は乗っていたこびと諸共クシャクシャに潰されていた。女の子たちの悲鳴が聞こえた。
車をポイっと投げ捨てた琴美は、女の子たちに死刑宣告にも等しいことを宣言した。
「あなたたちもおっぱい大きそうだけど、私も結構自信あるんだ!比べっこしましょうか?」
そう言うと、今度は4人の女の子を、今しがた車を潰したばかりの胸の谷間に転がり落とした。
「どう?あなたたちより大きな胸って魅力的かなぁ?」
胸元からは悲鳴と絶叫が一度だけ帰って来たが、琴美が少し胸を揺らすと、もう何も返事は帰って来なかった。

場所を変えて同じようなこと繰り返していると、琴美のヒップになにか熱いものが当たった感触がした。
「あっつ・・・なに?今の」
振り返ると、少し離れた場所に何かがいる。それもひとつやふたつではない。かなりの数だ。
「やっと出てきましたね。この星の軍隊です。」
「軍隊?そんなのも一緒に持って来ちゃったの?」
「はい。だってけっこう楽しいおもちゃですよ。いろんな意味で」
いろんな意味というのが気になるが、おもちゃには違いない大きさだ。
琴美は持っていた車を投げ捨て、その場に立ち上がるとその戦車とも思える車両群を睨みつけた。
ずっしぃぃぃんっ!
「ちょっとぉ!服に穴が空いちゃったでしょっ!どうしてくれんのよっ!」
超高圧的に吐き捨てるように言いながら、何とか原形を保っているビルを右足で踏み潰した。
帰って来たのは一斉攻撃。だが、琴美には全く当たらなかった。目の前に突然壁が現れたのだ。
その壁の主はフィーアだった。琴美の10倍の大きさになっている。戦車から発射された弾は、全てフィーアの巨大な手のひらに当たっていた。
「フィーア?どうしたの?」
「言い忘れてました。この星の軍事力だと、100倍くらいじゃ負けちゃいますよ。さっきお尻に当たった時だって痛かったんじゃないんですか?」
「え?あ、うん。」
「一斉攻撃受けて顔とかに当たったら大変ですよ。当たり所悪かったら死んじゃいますし。」
フィーアはひたすら繰り返される一斉攻撃を顔色ひとつ変えずに防いでいる。
「え?そうなの?そう言うことは先に言ってよっ!」
「ごめんなさ〜い。」
琴美の頭上では、フィーアが全く反省していないような笑顔で謝った。

琴美は元の大きさに戻って今まで遊んでいた街を見下ろしていた。フィーアはまた15.6cmである。
「私たちがいた場所って・・・この辺、かな?」
虫眼鏡で見ながら琴美が指を伸ばしてみる。
「そうですねぇ。こうやって見ると全然壊してないですよねぇ。。。」
移動した距離はせいぜい5000kmくらいなんだろう。つまり、たったの5cmしか移動していない。フィーアが持って来た範囲は50cm四方くらいなので、まだ全然
蹂躙していないことになる。これは遊びがいがありそうだ。でも、あの軍隊を相手にする時はもっと広い範囲を破壊することになるんだろうな。そういえばあの軍隊は?これ?かな?
「当たりですっ!ここまで大きいと何されても大丈夫ですよ」
試しに軍の真上に指先を翳してみた。とても小さな光が、パパッと瞬いてはいるが、痛いとも熱いとも、それ以前に何かが当たったという感覚が無い。
「ほんと!でも、さっきのは許せないなぁ!ちょっとお仕置きが必要よね。」
そのまま人差し指が降ろされた。街や軍隊はもちろん、近くの丘なども巻き添えにして、直径1000kmの範囲を完全に押し潰し、地中深く埋め込ませていった。
彼らが地球人サイズだったとしても直径1kmの指先である。そんなものに抗えるものなど、存在がするはずが無かった。
「これでムカつく戦車は潰したし、今度は海とかにも行かなきゃね。」
琴美は満足そうに指先をティッシュで拭っていた。

素朴な疑問、そう言えばこの星の一部を切り取って縮小してこの机の上に置いているってことは、他の部分はどうなったんだろう?
「見てみます?」
一瞬で琴美の身体は宇宙空間に漂っていた。また1億倍なのかな?そう思って周りを見てみる。
「うわぁ〜っ!きれ〜いっ!」
満点の星空はさっき地球を見た時と比べても遥かに多い。本当に地球って辺境なんだとしみじみ実感する。で?あの星は?
「これですよ。」
いつの間にか横に現れた同じくらいのサイズのフィーアが、一点を指さしていた。そこにあったのは豆粒大の星。あれ?地球でさえ掌サイズだったのに、何で?
「今、琴美さんは1兆倍なんです。すっごくちっちゃくて可愛いでしょ?」
「ちょ?う???」
つまり、1億倍だとこの星はどのくらいに見えるの?あ、ダメだ、わかんない・・・ぷしゅぅ・・・
「1億倍だと、ちゃんと星には見えるんですけどね。ちょっと見てみますか?」
琴美の目の前に、星の表面が現れた。
「で・・・でかっ!」
星に降り立って余裕で歩きまわれるほど大きい!ガスタンク?いや、もっと全然大きいなぁ。地球が掌サイズだったのに・・・ん?あの四角形は?
「見えましたぁ?そこが切り取った場所です。私からはちっちゃ過ぎて見えませんけどぉ」
「うわっ!」
振り向くと一面の白い壁。よく見れば星の上下にはこの星より少し大きな・・・指先?ひょっとしてフィーアは1兆倍のまま?億と兆って、そんなに違うの?

「そうそう、ゆっくりと近づいていくと重力に引かれていきますよぉ」
フィーアが言うとおり、星に落ちていく速度がどんどん早くなる。大気圏に入ったのかお尻が少しあったかい。と、思ったら・・・
ズッドォォォン!
すぐ地表だった。
琴美がおしりをさすりながら立ち上がると、大気圏を突き抜けたのかフィーアの指先、というより、指の指紋がはっきりと確認できる。
「ちっちゃい星でしょぉ?」
天空から轟く声に促されるように琴美が足元を見ると、部屋で見たのと同じような模様しか見えない。星全体の地形もとても小さな凸凹レベル。
「なんか、大きくなり過ぎてつまんないね〜。」
都市と思われる場所を踏みつけてみたが、ただ地面がズブズブっと凹むような感覚しかない。きっとこれで何万人も潰してるんだろうけど・・・
星の表面を少し歩くと、なんだか小さな物体が宙に浮かんでいる。それもひとつやふたつではない。かなりの数だ。
気配を察したフィーアが、それの正体を教えてくれた。
「宇宙戦艦ですね。大きいものだと2000kmくらいあります。琴美さんから見て2cmですけど。」
「これが宇宙船・・・」
その場に寝そべって、足首の少し上あたりを浮遊していた宇宙艦隊を上空から見下ろして、艦隊中央の一番大きな船を摘まんでみた。本当に2cmちょっとしかない。
「こんな日本列島並みの船が地球に来たら大変だね〜。」
メキリッ・・・潰れちゃった・・・前後が軽く湾曲し、直接挟んでいた中央部分の指と指がくっついている。指から解放すれば、当然重力制御など出来るはずも無く、落下。
小さな煙が立ち上るのが見えた。
他の船が一斉にビームのようなものを琴美の胸に浴びせかけるが、痛くもなんともない。そもそも、ブラウスを突き抜けているのかさえ疑問なほどの貧弱さに、
思わず「クスッ」となってしまった。
その風圧をもろに受けた数十隻が飛ばされ、他の船に激突し次々に墜落していく。これには琴美もあきれ果てた。
「なにやってんの?自滅?もう、バカとしか言いようがないじゃん・・・」
あまりにもバカバカしくなったので、片手を振り上げて軽く振り下ろす。小さな船が手に当たる感触。地面に叩きつけてさらに凹ます感触。ただそれだけだった。
だが、そのただそれだけで、宇宙艦隊は消滅し、地表に刻印された巨大な手形の中にほとんどの艦船が押し固められていたのだが。
「もういいや〜」
琴美はこれ以上は意味が無いと思ったので、星を軽く蹴って宇宙空間に出た。
身体に浮遊感が戻る。と同時に、今までいた星はどんどんと遠ざかり、白い壁に向かって一直線だ。白い壁?あ、フィーアのブラウスか。当たったら潰れちゃうのかな?

琴美は、フィーアと同じ大きさに戻っていた。
「大き過ぎると意外につまんないんだね。私はさっきの100倍とか1000倍の方が面白そうかなぁ」
「そうですね。こびとをいじめるのはそのくらいがちょうどいいかもしれませんね。」
あの星は、向かい合っている琴美の胸元からフィーアの胸元へゆっくりと動いていた。
「ところで、琴美さんから見た1万倍の私ってどうでした?」
「もうっ!びっくりしちゃった!潰されるかと思ったし・・・」
「琴美さんにそんなことしませんよ〜。だって、ずっと、その・・・仲良くしていたいし・・・」
「そうなの?あたしのこと気に入っちゃった?」
フィーアは少し俯いて黙って頷いた。
「じゃあ、一緒に居よっ!また犬に襲われたら助けてあげるから」
いや、このサイズの女の子を襲う犬なんて、どこの世界に居るんだか・・・
「はいっ!うれしいっ!」
フィーアが急に琴美に抱きついたので、宇宙空間の中で抱き合った状態でクルクルと回ってしまう。
「ふふっ、フィーアって甘えんぼさんだね。ん?あれっ???」
確かあの星って私とフィーアの間にあったはず。琴美は少しだけフィーアから離れてみる。ふたりのブラウスの胸元には、小さな星が粉々になってブラウスにくっついていた。
「やだ、潰しちゃった・・・」
「いいですよ。元々潰すつもりだったし。胸で潰してあげたんだからいいんじゃないですか?」
フィーアはもう一度琴美に抱きついた。今度は太股の裏に何かが当たった気がしたが、またどこかの星だろう。そう感じたが、琴美はもう気にしなかった。

帰ったらまたあの街で遊ぼうかな?それとも他の星でも潰そうかな?ひょっとしたらフィーアがまた面白いこと考えてくれるかもしれない。
どっちにしろしばらくの間退屈な日々を送らなくて済みそう。琴美はそう思いながら、しばらくの間フィーアと抱き合いながら広大な宇宙をクルクルと回っていた。