「ふぅ……今日も大満足だったぜ……」

今日もどこかで、女性へのセクハラを働いてきたのだろうか。
川田は満足げな顔を浮かべながら、自宅の扉を開いていた。

そして彼は靴を脱ぎ、居間へと続く通路を歩いていく。
そしてドッカリと居間の中心に座り込んだあと
川田はリモコンで、テレビの電源を付けていた。

そのまま彼が、セクハラの興奮による余韻に浸りながらボーっとテレビを眺めていると
新たに居間を歩いてくる、何者かの足音が聞こえてきた。

「あら、幸太郎。今日は随分と早いのね……」

部屋の扉を開けて中へと入り、声を掛けてきたその人物は、女性であった。
綺麗で長い黒髪に、真っ白なカチューシャを付け
スラリとしつつも大人びた体型に、端正な顔立ちを併せ持ち
厳格な厳しさの中にも優しさを秘めているような、不思議な表情を浮かべている、その女性。

「ああ……何だ、咲姉ちゃんか。お帰り」

彼女の正体は驚くべき事に、川田の実の姉である、川田咲子であった。

ちなみに幸太郎、というのは川田の下の名前だ。
川田幸太郎。それが川田の本名なのである。

「確かいつもなら、夜遅くまで帰ってこないはずでしょ?」

幸太郎の姉である咲子は、文武両道で容姿端麗であり
学校ではファンクラブがあるほどの有名人である。

そしてその弟である、川田幸太郎も実は、姉と同じくかなりの美形であった。
ファッションや髪型に気を遣えば、ちょっとしたアイドルぐらいのカッコ良さにはなるはずなのだ。

だか幸太郎はそんな事に、全く興味は無い。
今日もいつものように友人の松尾を連れ、女の子へのセクハラ行為に夢中であり
彼の変態っぷりに注目する人はいても、その容姿にあえて注目する人など全くいないのである。

「なんか今日は不作だったからさ。しかしやっぱ、優弥の温泉の方が可愛い子いるかもな……」
「……ふーん、そう……」

そんな弟のボヤキを軽く聞き流しながら
咲子は、自分の部屋へと続く階段を上がっていく。

「そういえば咲姉ちゃんさ。今日はやけに楽しそうな顔してたけど……何かあった?」

その言葉に一瞬動揺しながらも、それを必死に隠し、足早に階段を上がっていく咲子。



彼女はその後、自分の部屋へと入って鍵をしっかりと閉めたあと
明かりも点けずに、何故かいきなり部屋の真ん中で、息を荒くし始めていた。

「ふふっ……今日の後輩の女の子、本当に可愛かったわねぇ……しかも、あの純朴そうな顔に似合わず、おっぱいなんか私と同じくらいに大きかったし……」

部屋の真ん中で、少し大きな声を出しながら、独り言を呟いていく咲子。
彼女は豊満すぎるほどに大きな自分の胸を、服の上から力強く掴むようにして揉みながら
饒舌になって話し続けていく。

「んへへ……それで私の事を、ウルウルした目で見つめていたあの姿は、まさしく萌えの塊みたいなものだったし……興奮を抑えるのが、本当に大変だったわぁ……」

実は、幸太郎の姉である咲子もまた、弟と同じくらいか、それ以上のド変態なのである。

そして今日は、自分の事を慕って声を掛けてきた、後輩の女の子に対して
まるでオッサンのような、変態的な眼差しを向けていた咲子。

その少女の事を思い出しながら彼女は、家に帰ってきた今になってもまだ
興奮を抑える事が全く出来ずにいた。

「あぁ……明日は一体、どんな萌える子に出会えるのかしら……もう、明日への期待が今から収まらないわ……」


興奮と快楽の渦の中で、思考の巡らせ続けていた咲子。
恐らく彼女の興奮が収まるには、まだまだ時間が掛かるはずである。



「咲姉ちゃん、また部屋の中で一人、妄想をスパークさせてるよ……我が姉ながら、流石だな、全く……」

一方、下の居間でテレビを見ていた幸太郎は、軽く呆れながら頭をかいていた。

幸太郎は驚くべき事に何と、姉のこういった知られざる変態っぷりを知っている。
咲子は家族や知り合いなど、ごく近しい者の前では、自らの変態性を一切隠すことなく
堂々と見せつけるようにして、いつも振る舞っているのだ。

だが咲子は学校の中だと、優しい優等生の先輩で通っている。
そんな姉の評判を、弟の自分が自ら壊すのも、何か気が引けると考えていた幸太郎は
あえて咲子の前では知らないフリをして、その正体を言わないようにしていた。

「まぁ、咲姉ちゃんの変態性なんて、別にどうでも良いんだけどな……よぉぉぉし! 明日は松尾も連れて、大宇宙温泉の女湯にでも忍び込むかぁっ!!」



この姉にしてこの弟あり。
今日も明日も、姉弟そろって
己が欲望のままに生きているのである。