メイドさん十五番勝負-裏-:一番勝負:ご主人様調教

作:湯田

■注意とお願い
作中にメイドさんが出てきます。
メイド嫌いの方、人間の縮小に興味のない方は、どうぞ以後は読むのをお控えください。

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初めまして。突然のお呼び立てで申し訳ございません。
なにぶん、機会がございませんでしたので。
聞いてない?
それは失礼しました。
非礼はお詫びいたします。
とりあえず、コートをおかけになってお座りください。
粗末な椅子で申し訳ございませんが。


改めまして、ご挨拶をいたしましょう。
この格好からお分かりと想いますが、メイドでございます。
主人は誰か、でございますか?
今は特定のご主人様にお仕えしてはおりません。
メイドなのにそれはおかしい、ですか。
おいおいご説明しますので、まずは話を続けさせてくださいませ。

お客様は、主従とはどのようなものとお考えでしょうか?
主に対して、部下。召使。手下。配下。下っ端。いろいろとございます。
本来、主従とは対等であるべきなのです。
主は従者の衣食住を保証し、その代わりに従者は忠誠と労力を捧げる。
それが根本になければなりません。
まあ、実際のところは主の方が権力や財力を持っていますし、従者を雇うのも辞めさせるのも簡単です。
従者の方は、主をとっかえひっかえすることはできません。
ですので、主の多少のわがままには、従者は従わねばなりますまい。
主の気まぐれに付き合うのも、従者の甲斐性というものでしょう。

ですが、ものには限度というものがございます。
あまりに一方的なふるまいや理不尽な扱いを主から受けた時には、どうすればいいか。
主に向かって面と楯突くことは簡単ではございません。
法に訴えるのも難しいこと、大抵の法は強き者の肩を持ちますもの。
では、どうするのか。
そのような時、召使いたちは私に頼るのです。
私の噂は従者たちの間で広く流れております。
伝手を頼って、私に連絡をするのです。
主を調教してほしいと。

驚かれました?
調教とは何事か、と言いたげなお顔ですわ。
旦那様、ご主人様、主。そのように扱って欲しいなら、然るべきふるまい方がございましょう?
無知や無能は、まあ構いません。
神輿ののようなもの。黙って担がれてくれるなら、担ぐ方も担ぎがいがあります。
ですが、己の身分を鼻にかけ、けしからぬ行いをする、暴力をふるう、
度を越した仕事を押し付ける、人を軽んじる。
そして、人として許されぬことをする。
これらは許されることではありますまい。
そのような心得違いをしているご主人様には、躾が必要です。
馬と同じでございます。
競馬馬にしろ農耕馬にしろ馬車馬にしろ、役割に応じた相応しき振る舞いがあります。
旦那様に満たぬ者を、旦那様として振る舞えるように飼い馴らして差し上げるのです。

そのようなことができるのか、と?
できますとも。
現に今この部屋で、私は何人ものご主人様の調教を進めております。
さ、お見せしましょう。

この引き出しに入っていらっしゃる旦那様達は、針仕事をやっていただいています。
このくらいの大きさになりますと、針を持ち上げるのも一苦労でございます。
そうして糸を通し、布に突き刺して潜らせ、糸を引っ張って通す。
今は、私のメイド服を修繕して頂いています。

そこの旦那様。間違えましたね。
やり直して頂きます。
そう怯えないでも結構。やり直せばいいだけです。

失礼しました。
小さいと、布を見通すのも中々難しくなりますから。あれでも精一杯、やっているのですわ。
…びっくりされましたか。
この小さい人間はなんだ、と?
私が縮めたのです。
物の大きさを変えることは、素養があって物事の道理を弁えたものが
訓練を積めば、存外簡単にできるものなのですよ。
税の取り方や法の整備の方が、よほど難しいことでございます。

もちろん簡単な修行ではありませんし、素質がなければどう頑張っても無理です。
私も今の勤めを始める前には、修行に励んだものでございます。
ですが、肝要なのは物の大きさを変えることではありません。
旦那様に合わせて相応しい調教の方法を与えること。
その方がずっと、ずっと難しゅうございます。

あの旦那様達は、お針子に無理な仕事を押し付けたのです。
繕い物は家事仕事の基本の一つ。
ですが、一日中針を動かしても、中々はかが行かない場合もございます。
そのような時に、なぜ出来ぬのかと責め立てたり、やっと終わったと思った時に
また山のような繕い物を持ってきたり。
仕事が終わるまで食事はやらぬと言われ、夜通し何も食べずに針を動かしたお針子もおります。
酷いお話でございましょう?
ならば、お針子と同じ立場になっていただくのが一番です。
針がどれほど重いものか、布がどれほど硬いものか、糸がどれほど始末に負えぬものか、
その身でやってみれば、よく分かりましょう?

それにしても、私の服を直すのに数人がかりでかかって、ちっとも進んでない。
どういうことでしょう。
手を抜いているのではありません?
本気でやりませんと、終わりませんよ?

…まあ、今のはちょっとした脅しです。
できぬと分かっている仕事を無理に押し付けられるのがどれほど酷いことか、
それを詰られるのがどれだけ辛いか、身にしみて判っていただきませんと。


さて、次に参りましょう。
こちらの靴箱では、私の靴を磨いていただいています。
むろん、靴は大事な身だしなみ。汚くしていては、主の沽券にも関わります。
ですが、歩けば汚れが着くのは仕方のないこと。
それを召使のせいにして、どの靴も新品のごとくなければならぬ、
常に光り輝くようにせよ、というのはやり過ぎでございましょう。
そのようなご主人様に、靴を綺麗に保つのがどれだけ大変か、
自ら体験して頂いているのです。
あれは女性ではないか、と?
ええ、そうです。ある名家のお嬢様ですわ。
この方はおしゃれにうるさく、特に靴については履ききれないほどの靴をお持ちで、
それが一足でも汚れていると癇癪を起こすとか。
困ったものでございます。
幸いにして、私にも似たような靴を持っております。
日頃召使をいじめているのがどのようなことか、ようくわかるでしょう。

お嬢様。全然磨けていませんよ。
なんですか、靴に寄りかかったりして。
そんなことをしても、駄目です。
疲れた?何を言ってるのです。
たかが一足の靴も磨けないの!
ご自分でそうおっしゃったそうですわね。
ならば、ご自分でやってみせてくださいませ。
たかがメイドの靴一足でございましょう?

まあこれも、脅しというものです。
最初あのお嬢様はふてくされて布も持とうとしませんでしたが、
足踏みして脅して上げましたら、すぐに取り掛かりました。
暴力や脅しでいうことをきかせるというのは褒められたことではございませんが、
しかし、そうやらないと動き出さない、わからない方がいるのも事実です。
本当に、躾けてない馬と同じです。


次は、台所にまいりましょうか。
流石に縮めた旦那様や奥様に包丁や鍋を扱わせるわけにはまいりません。
こちらでは、豆を袋から皿に移して頂いています。
一抱えもある豆を懸命に持ち上げて、汗をかきかき運び、全力で持ち上げて皿の中に移す。
中々大変そうでございましょう?
まあ、私がやれば一瞬なのですが、食事をつくるということがどれだけ大変か、
少しは分かってもらえるのではないかと思います。

あの瓶の中のおぼちゃまですか?
あれは、胡椒瓶の掃除をしていただいているのです。
なんでも、メイドたちに胡椒をふりかけてくしゃみをさせるという、
困ったいたずらが大好きなのだそうです。
召使にとっても迷惑ですし、食べ物を粗末にするのはいけません。
早めに直して差し上げるのが、おぼっちゃまご自身のためでもございましょう。
おやおや、くしゃみが止まりませんか?
まあ、胡椒瓶のなかですから。
いやがる人にくしゃみをさせるのはよくないと、覚えてもらえばいいのですが。
掃除は進んでいるようですし、瓶の中に放っておいては可哀想ですから、
しばらくしたら外に出してあげるといたしましょう。



さて、今までのご主人様は調教が簡単でした。
召使に無理難題を押し付ける。
これは、自分でその身になってみれば直ぐに酷さがわかります。
物分かりの言い方なら一日で、長くても一週間ぐらいでふるまい方を身につけていただけます。
ですが、これからお見せする旦那様達は、さらに調教に時間がかかります。

この方たちは、弱いものは好きなように扱っていいのだと思っているのです。
確かに、旦那様にとってみれば召使は弱者ではあります。
だからといって、何をしていいのだ、とはなりません。
そこには互いを尊重し、時には相手を思いやる事も必要です。
大抵の旦那様は弁えていらっしゃるのですが、
世の中には、残念ながら弱者を虐げることは当然の権利と思っていらっしゃる
ご主人様がいるのも、また事実です。

そのようなご主人様はどう調教すればいいか。
寝室に参りましょう。

あの鏡台の上を御覧ください。
上にハンカチがございましょう?
仕舞い忘れたのではございませんよ。
あの下に、うんと小さく縮めた、蟻ぐらいの大きさのご主人様がいるのです。
あの大きさのご主人様にとっては、ハンカチは大型帆船の帆、サーカスのテントのような
ものでございます。
抜けだそうとしても抜け出せない。
一晩経ちましたが、一人も外に抜けだしていません。

その横にあります、クリームの瓶。
あの中には、ご主人様を一人入れています。
ほら、ご覧ください。
匂いはするでしょうが、クリームは底までしか入っていませんから、
大人しく座っていれば命には関わりません。

その隣にいるのは、これは私と同じ格好をしていましょう?
ある屋敷のメイドです。
この者はけしからぬことに、働きの悪さを咎めた旦那様を貶めようと企み、
調教してほしいと私に連絡してきたのです。
そんな手は通用しません。
彼らが言い立てている事が本当なのか、しっかりと裏を取れない限り
私は事を起こしません。
調べようは幾らでもあります。
そして、もし彼らのいうことに大げさなことがあったり、虚偽があった時には、
絶対にそれは許しません。
まして、自らの主を陥れるなど、とんでもないこと。
厳しい罰が必要です。
彼女には私の雑用をさせています。
ほら、その化粧道具を早く片付けなさい。
見ていないと思ってのろのろやっていたら、許しませんよ。
また、エプロンの中に閉じ込められたいですか?

その下の鏡台の机には、ご主人様や奥方やおぼっちゃまやお嬢様を数人、入れています。
寝る前に、私のベッドの上に置くのです。
別に、ベッドを整えさせようというのではありませんよ?
そのような調教をすることもありますが。
不潔な寝床しか与えないのは主の恥。
そのような旦那様は、ほら、こちらの箱のなかで、私の履き古した靴下とともに
過ごしていただいています。
引き出しの中の方達は、夜中にどんちゃん騒ぎをするのが好きなお方でして…
中には夜中に疲れて休んでいる下僕の部屋に、なだれ込んでくるのだとか。
そういう方には私と共に寝床をともにすることで、
寝室で思う様に振る舞われるのがどういうことか、夜になったら体験していただきます。
むろん、気をつけてはおります。
万が一にも寝返りで潰されないよう、ベッドの隙間に押し込んでおくのです。
これなら上を抑えられても、潰されずには済みますから。


寝室にはまだご主人様がいますが、先に浴室に参りましょう。
私のような身分には過ぎた設備ではございますが、
仕事柄、身は清潔に保たねばなりません。
もちろん、こちらにも調教しているご主人様がございます。
こちらの石鹸箱をご覧ください。
何人か、小さな人影が見えましょう?
浴室でけしからぬ行いを行った方達です。
こうやって、一日を石鹸箱の中で過ごす。
その外に出られるのは、私の入浴の時だけです。
裸はいいのか、ですか?
別に、見られて恥ずかしいことはございません。
第一この大きさでは、私の裸身のどこまでが見えることか。
いえ、屈みこんだ時など秘所も丸見えでございましょうが、
それも調教の一環なのでございます。
無理矢理見せろと迫ったものを、無理にでも見せつけられる。
それはとてもいい躾になるのです。
それでは浴室はここまでにして、居間に戻りましょう。


お分かりになりましたか?
奉公人に弱いものいじめをする主には、そのようなことをする自分がいかに卑小なものであるかを、
とっくりと思い知って貰う必要があるのです。
弱小なものはどう扱ってもいい。
ならば、それを受ける身になったらどのように感じるか。
そのことを骨身に染みて理解していただくのです。
これには時間がかかります。
早くて数週間、長ければ数ヶ月。
私も、これで中々大変なのです。
それだけの期間、常に目算通り調教が進んでいるかだけでなく、
逃げ出していないか、体調を崩していないか、しっかりと見はらなくはなりません。
特に小さい人ですから、健康には気を遣い、怪我をしないようにと注意しています。
私が行っているのはあくまで調教で、虐待ではございませんから。



さて、今までにお見せしたご主人様は、まだ扱いが楽な方です。
弱い相手をいじめていいのだと信じている方は、
自分が小さく弱い存在になったらどうか、
それを実感してもらえば、たいていは行いを改めて頂けます。

本当に手強いのは、相手が弱いのではない。
自分が偉いのだ、強いのだ、だから何をやってもいいのだと、心から信じている方です。
これは難物です。
実際、ご主人様の中には知性も体力も、人並み以上の方がいらっしゃいます。
まあ、子供のころから召使に傅かれ、食事も上等なものを食べ、仕事に追われることもなく、
勉学と運動に励んでいればいいのですから、そうなってもらわねば困るというものですが。

ですが、知性と心根は別なものでございます。
優れた主が自らの知識と肉体を人を活かすのに使うところを、
捻くれた主は辱めるのに使うのです。
従者の懸命な訴えを舌先三寸で言い負かし、狼藉を止めようとする召使を殴り倒す。
自分の力をむやみに振るうのではなく、狡猾に使いこなします。
そういう主には、ちょっとやそっとの調教は効き目がありません。
私も、正直扱いに困るところがございます。


私は今、そのような主を三人、調教しています。

一人目は、この足です。
この爪先には、ある名家の跡取り息子を一人、閉じ込めています。
家督を継ぐと、彼はさっそく好き放題を始めました。
彼には、父の代から仕えた忠実な執事がおりました。
彼に行いを諌められると、ちょっとした間違いを咎めて厩番にしたのです。
今までの執事が厩番になる。
どれほどの屈辱でございましょう。
それでも、彼は主を見捨てることがございませんでした。
若主には、想いを寄せていた女性がおりました。
ある日、彼がその女性を厩に連れ込み、想いを遂げようとした時、
元の執事は懸命にそれを止めました。
女性は何とか逃げ出すことができましたが、そのことを怒った若主は、
元の執事を殴り倒し、足蹴にしました。
「貴様など、これぐらいの扱いで十分だ!」

ならば、彼に、人を足蹴にすることがどのようなものか、
十二分に味わっていただかねばなりますまい。
今も彼は、私の足指を相手に虚しいあがきを続けています。


二人目は、女の方です。
結婚し、レディと言われるのが相応しい身分であり、官界や軍隊の高官とも馴染み深い、
大した権力の持ち主です。
ですが、彼女は男好きでした。
彼女が自分の権力を使って男たちを床に誘ったことは、私には関わりのないことです。
彼女には、身の回りをする小間使いがおりました。
小間使いに軍人の恋人ができたと知った彼女は、なんとその青年に手をつけました。
お前が私の男になれば、その方面に口添えしてやろう、そうすれば出世もできる、
彼女にも楽をさせてやれるぞ。
なあに、互いに大人同士、割り切った関係にすればいいではないか。
嫌というなら、彼女は放り出す。
そう言われて、青年士官は嫌々ながら、彼女の相手をしました。
さんざん相手をさせたあげく、出世のことを口にした青年を、
彼女は戦地に赴く連帯に送り込んだのです。
恋人から全てを打ち明けられた小間使いは、真っ青になって主のところに向かいました。
しかし、彼女は小間使いをあざ笑ったのです。
「それは、お前に魅力がないからでしょう?
そのような貧弱な胸や腰では、殿方は満足しないのですよ。
ほら、ごらんなさい。これが本当の女の乳房というものです。
お前の想い人とやらが、どれだけこの胸で猛ったか、見せてやりたいほどですよ。
戦に赴く前に良い思いをできて、彼だって幸せというものです」
そうして小間使いは、雀の涙の給金と共に屋敷を追い出されました。

ならば、本当の女の乳房とはどういうものか、私が教えて差し上げることにしたのです。
私は彼女を、私の胸の下着の中に閉じ込めました。
今も必死になって私の乳房を押し返そうとしています。


三人目は、これも立派な、爵位を持つ主です。
彼は妻子ある身でありながら、新入りのメイドに手を着けました。
それだけなら、まだ許せる話ではあります。
子が出来てしまったのです。
子ができたならできたで、まだやりようがあります。
私生児として認めるか、せめて家を出し、食べるに困らない仕事を与えて生まれた子供を養育させる。
ですが、この主がやったのは恐ろしいことでした。
一見子供が出来たのを喜んでみせておきながら、言葉巧みに堕胎させるように計らったのです。
子供ができるのは嬉しいが、残念ながら直ぐには子として認めるわけにはいかない。
いつか私の子と認めるように計らうから、それまでは君が育てて欲しい。
私の家名に恥ずかしくない子にしてもらえるとありがたい。
そう言われて少しでも蓄えを増やそうと、彼女は必死に働きました。
主に立派な子を産み、生まれてくる子供が困ることのないようにと。
しかしそれは無茶でした。
体調を壊した彼女に、主から薬が届けられました。
それはとても強い薬で、彼女の体調は一気に悪化してしまい、お腹の子供は流れてしまったのです。
呆然とした彼女の前に、主は密かに姿を表しました。
「これでよかったのだ。どうせ生まれてもろくな事にはならなかったろう」
ならなぜ、子を産ませるような行いをしたのか。
半狂乱になって掴みかかろうとする彼女を押さえつけて、主はあっさりと言いました。
『君のあそこの具合がよかったからさ。それだけだ。男女のあいだなんて、そんなものだろう』

そうでしょうか。
そういうことなら、女の秘所をむやみに扱うとどうなるか、ごく身近でたっぷりと、
思い知っていただきましょう。
その男を、私は腰の下着の中に入れました。。
ちょうど秘所に当たるように、そう、決して逃げられないように。
今でも、彼が私の秘所を懸命に弄っているのを感じます。


私はもうかなりの間、この方たちの調教を続けています。
毎日着替えの時に様子を確かめてはいるのですが、一向に馴らされる様子がみえません。
強固に、頑なに、悪いのは自分ではない。
そう信じているのです。
自分はたまたま運悪く貶められているだけだ。
罪など認めない。
ここから開放されたら、また同じことをしてやるぞ。
これだけの目にあっても、その信念は変わることはないようです。

人間というものは、自分がやる分にはどれだけ酷いことでも平気ですが、
やられるとなると途端にとんでもなく不当な扱いを受けていると思うものでございます。
彼らも、そうなのかもしれません。

私の調教は、間違っているのでしょうか?
いえ、そうとだとしても、彼らが改めるまでは世に戻すわけにはいきません。
少なくとも私が彼らを馴らしている間は、哀れな従者達に害を及ぼすことはありません。
あとしばらくの間は、この調教を続けるといたしましょう。

今までにも同じように強情な主はいらっしゃいました。
そのような方がどうなったか、お知りになりたいですか?
…聞きたくない、と。
そうでございましょうね。


それではお客様。
その顔色を拝見しますと、お気づきになったようですね。
そうです。次は、あなたの番ですわ。
もう身動きはできませんでしょう?
簡単な術なのですが一度かかれば私が解かない限り、決して効き目が消えることはありません。

あなたの場合、特に依頼者から頼まれたのですよ。
主を調教してするまえに、自分がなぜこのような目に合うのか、
これからどういうことになるのか、とっくりと見せて教えてやって、理解させて欲しいと。
驚きました。
今までに、そんなことを望まれたことはございませんでしたから。
…ですが、あなたのご所業を伺って納得しましたわ!
これでは使用人達があなたを深く深く恨むのも、当然と思えましたわ。

私に依頼する召使いたちは、本当はご主人様に改心して欲しいのです。
だから、調教とはいえ、できれば酷い仕打ちはしないで欲しいと私に頼みます。
ええ、使用人達は、心の底では自分のご主人様に少しでもいいから良い人間になってほしい、
仕えるに相応しい、立派な人間であってほしいと、そういう切ない想いを抱いているのですよ。

ですが、あなたの場合…どうでしょう?
あなたの今までの行いを拝見した限りでは…私、自信がございません。
どれだけ痛めつけても嬲っても、頑として自分の非を認めない、変わらない方ではないかしら。
ですがまあ、できるだけはやってみましょう。
時間はどれほどかかってもいいと、言われましたし。

さあ、もうすぐ眠くなってきますよ。
眠りなさい。
目が醒めましたら、あなたの調教の始まりです。