テルス

 ※小人さん食べるの我慢しました(何
 ※踏み潰すのも我慢しました
 ※だってぱにっしゅされるの怖いから


 一通りの作業が終わったアユムはカインと共に神殿に戻った。全てがリーナの大きさに合わせられているそこは、アユムにとってもカインにとっても大きな空間だ。だからと言ってアユムはテーブルに届かないとか、階段の段差が上れないわけではない、飛べば済むので移動には困らない。だがアユムの手に収まるほどの大きさのカインからすれば階段なんかは断崖絶壁である。
 アユムは椅子に飛び乗ろうと羽根を広げて構える、カインはその姿を見てクスッと笑った。椅子に飛び乗ったアユムは手のひらの上で笑っているカインを見て首をかしげた。
「何かおかしかったですか?」
「いやいや、何か猫みたいだなって」
「猫ですか?」
「ええ、とっても可愛いと思いますよ」
「可愛いですか…」
「リーナ様も奇麗で美しいし、貴女様は可愛らしい、お二人がいるこの国の人間で良かったと思います」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
 アユムは嬉しそうに微笑みカインを見た。手のひらの上に座っているカインも微笑んでいるようだった。
「貴女もリーナ様のように色々できるようにならにといけませんね」
「はい、それにはもっと頑張らないと…」
「少し試してみては?」
「試すって?」
「魔法とか」
「でも、何をすれば…」
「召喚魔法が使えるなら、とりあえず食べ物を」
「お腹すきました?」
「すきました。」
「では何かあってはいけないのでこちらに」
 アユムはカインを膝上に降ろすと、椅子の上に魔法円を描くかのように手を動かす。そしてそこが白く光ったかと思うと何か出てきた。
「何?」
「シチューです♪」
「ふーん…」
 シチューと言うには焦げたかのような黒さと具らしいものが何一つ見えない、そしてやたらと多い、大きいと言った方がいいのか器も大きく、添えられているスプーンも大きかった。
「これ…多すぎませんか」
「はぅ…私にあわあせてしまいました」
 つまりこの量はアユムがいつも食べる量なのか…と、覗き込んでいると急に何かに摘まみ上げられて椅子の上に降ろされた。
「びっくりするじゃないか!」
「あぅぅ…ごめんなさい、落ちたらいけないと思って」
 アユムなりの気遣いなのだろう、それにしても唐突過ぎて毎回驚いているような気がする。
「あのぉ、美味しいと思いますよ?」
「へ?」
「シチューです♪」
「分かった…分かったからこの大きさ何とかして!」
「うーん…」
 小さくして欲しいと言われてもやった事がないので分からない、できるかどうかも分からなかった。
「えっと…確かここをこう…」
 リーナに教えられた魔法円を部分的に書き換えてみるが、いざ発動しようとすると何も起きなかった。
「あれぇ?」
「何も起きないね」
 もう一度書き換えて発動、やはり何も起きなかった。
「やっぱりダメですね」
 アユムは魔法円を消してため息をついた。別に彼女が悪いわけではないし、よくよく考えてみれば何も起きなかっただけ良いだろう、この世の物ではない物が出てきても困るだけだ。
「よし、食べようか!」
 意気込んでお皿によじ登るカインだったが、スプーンがなかった。アユムがそれを手にしてシチューをすくい…
「はい、あーんして下さい」
 アユムはスプーンで少しだけすくったシチューをカインの目の前に差し出した。
「あ、ありがとな…」
 黒い得体の知れないもの、アユム曰く美味しいらしいそれを指に付けて味見した。まずくはないが美味しいともいえない、具がないと思ったが細かくなって所々にういていた。まさかとは思うが召喚者の料理レベルと同じなのだろうか…




続く…?めいびぃ