夢葉のある初夏の奇跡
第4話:明日輝くソレイユ



「すごい、みんな日本語喋ってるの」
「当然だよ。ここは日本だから」
海外で育てた私は始めて9歳の時日本にお母さんと一緒に帰国した。

「でも、母さん、ここの日本語はちょっと違う気がするの」
「ここは大阪だよ。関西弁言うの」
関西空港から電車に乗って、今は大阪駅で乗り換え。家では普通標準語で喋っていたから、関西弁は初めて聞いた。

乗り場に着いた時すでに止まっている電車には『富山』と書いてある。

「母さん、これ、『ふじさん』?」
私は普通家で日本語喋っていたけど、漢字はあまり慣れていなかった。でも、この字は確かによく見たことあって、覚えている気がする。

「いいえ、『とやま』と読むの。この電車の終点よ」
絵本の中に富士山がよく見ていたから、この字は慣れているからそうだと思っていたのに、本当はただ似ているだけ。

「とやまに行くの?」
「違うよ。私たちは途中で降りるの」

『まもなく、12:42発特急サンダーバード21号富山行きが発車します』
報告は乗り場の中で響いている。

「ほら、早く電車に入ろう」
私たちが入ると、電車はすぐ発車した。

「母さん、富士山見たいの」
日本に来たからには、ずっと本の中しか見たことない富士山は自分の目で見たかった。

「後で連れて行くよ」
「雪も見たいの」
ずっと熱帯に住んでいたから雪も写真にしか見えなかった。

「寒くなったらきっと降るよ」
とは言っても今年の冬は終わったところだし。もうすぐ花が咲くだろう。次の冬まで待たなければならないみたい。

「漢字ももっと読めたいの」
「これから学校でゆっくり勉強してもいい。友達にも教えさせてもいい」
「友達・・・か」
「心配しないよ。きっといい友達ができるよ」
「うん」
とは言っても、育っていた環境はこことはとても違うから、ここの子供たちはどんな人かな、本当に友達ができるかなと心配していた。

そして、新しい家に着いて、私の新しい生活はここから始まった。





一週間後。

「ワン!」
「わ!」
まだここに引越ししたばかりの私は、家の辺りの道で散歩している時にいきなり大きな犬に遭って吼えられた。首輪ついているからどこかの飼い犬だろう。

「ガルルル」
むっつりな顔で迫力いっぱいの声で唸りながら、目の前の犬が私の方へ歩き始めた。

落ち着いて、私、犬は逃げるほど追ってくるそう、と考えて私の足は固まって動けなくなった。

「あの、私、怪しいものじゃないよ」
と話してみても犬は人間の言葉をわかるわけでもなく、まだもっと迫ってきて、不意に私は少しずつ後退りしていく。

どうしよう?このままじゃ噛まれちゃうかも。でも、逃げたくても逃げられるわけがない。

普通は運動神経あまりよくない私だから子犬でも追いつかれちゃうかも。私はうろたえて手も足も震えている。

誰か、助けて!

「ほら!」
突然後ろから人の声が聞こえて、振り向いたら、小さな女の子が走ってきている。見たところで私よりちょっとだけ小さいから、ちょっと年下か、それとも同い年?。

「止めろ。リヴァ」
女の子の言ったとおりに犬が止まった。

「リヴァって?」
「この子の名前だよ。ちょっとやんちゃだけど、お隣さんの犬だよ」
犬の名前か?なんか西洋人みたいな名前のような気がするが。

「やんちゃっていうか、怖くないのですか?」
「全然怖くなんかないよ。ほら」
そう言って女の子は犬の頭を撫でて、犬もよく彼女に馴染んでいるように見えた。

「あんなに怖そうだったのに・・・」
「可愛いでしょう?」
「いや、なんというか・・・」
どう見ても可愛いとは思えない。あまりにも大きくて危なそうだし。私には犬好きの人の気持ちなんて一切わかりっこない。

「見慣れない顔だな。君はこのあたりの子じゃないの?」
「引越ししてきたばかりなのです」
「じゃ、これからは隣人だよね。私は三松秘実子、小学四年生」
「あ、私と同じ年なのですね。初めまして、粟野夢葉といいます」
やはり同い年だった。隣の家に同学年の子がいてよかった。

「本当!?じゃ、これからは仲良くしたらいいな」
「はい!よろしくお願いします」
「そんなに丁寧しなくてもいいのに」
「お母さんが言ってたのです。知らない人には・・・」
「これから私たちは友達でしょう」
友達?まだ引越ししたばかりで学校もまだ通っていないのに友達ができるとは思わなかった。こうなると本当に嬉しかった。

「は、はい」
これは私と秘実子の出会いだった。あの時助けに来た秘実子は格好よくて、髪もまだ短くてちょっと男っぽいのもあいまって、まるで王子様みたい。本当にこの人と友達になれたらいいなって幼心で考えた。これはとても感動な出会いだったけど・・・

「ね、この子触ってみない?」
秘実子は犬の頭を撫でていながら私に聞いた。

「へ?この犬なの?いや、無理なの」
「大丈夫。絶対噛まないよ。見て」
秘実子は手を犬の口に移して、犬は彼女の手を馴染んで舐めた。

「ほら、噛まないでしょう。君も試してよ」
「う、うん」
私は恐れ恐れ右手を犬の前に動かして、そしてその瞬間。

「ガブ」
犬はぎゅっと私の手を噛んじゃった。

「痛いいいいいい!!!」
その後、秘実子は私を病院まで連れて行くことになった。結局これは覚えたくない思い出になっちゃった。それ以来私は犬に近づけなくなった。でも、別にこの事件で私は秘実子のこと嫌いになるわけでもない。むしろそれをきっかけとして私たちは仲良くなった。怪我を手当てした後母も迎えに来て、秘実子の両親も来て、二人の家族は知り合いになった。





「おはよう。秘実子」
「おはよう。もう大丈夫?」
次の朝、私のお見舞いするために秘実子は家に来た。

「うん、まだちょっと痛いけど、心からまだ遠いので、平気なの」
「本当にごめんね」
包帯に包まれた私の右手を見て心配そうな顔で感嘆した。

「いいの。秘実子の所為なわけじゃないし」
そして私は秘実子と一緒に散歩に出た。

「これはこの辺りの神社」
「わー!これは本物の神社。やっと見た」
「へ?神社見たことない?っていうか、住んでいた場所は神社がないの?」
「私は子供の頃から海外に引越ししていて、今戻ってきたばかりなの。帰国子女なので、日本に来たのは初めてなの」
生まれたばかりで物心がついていなかった頃は日本に住んでいたようだけど何も覚えていない。だから日本の思い出は全然ない。

「海外から引越ししてきたの?全然そうとは見えないけどね」
「家では日本語で話してたし、両親にも日本の文化とかずっと教わっていた」
おかげでここに来ると言語も食べ物も暮らし方も大きな適応をする必要はない。

「それでも、実は私はまだここの環境に慣れているわけではないし。でもいろいろ感動するの。ほら、これも」
私は桜の木に指さした。今は三月末で桜が咲いている季節だから回りは桜色に染まってとても綺麗だった。

「夢葉の住んでいた場所は桜がないの?」
「あるの。でも、こんなに多くないの。それに、冬にしか咲かないの」
それに山まで行かないとあまり見つからないし。こうやって桜の木いっぱいの町でうろつくのも初めて。

「冬に?こんなとこもあるの?じゃ、雪を遊びながら花見をすることもできるよね」
「あそこの気候がここより暑いし全然雪が降らないの。でも山では涼しいのよ」
そう考えると懐かしい感じがした。お父さんと一緒に山を登って桜を見た思い出。今お父さんが亡くなったから、それをきっかけとして私とお母さんは一緒に日本に戻ってきた。

「あ、あれは絵馬なのね。書いてみたいな」
私は絵馬の書くところに駆けつけた。

「絵馬も知ってるよね?」
「漫画とかでよく見てたの。祈りを書く看板なのよね?ちょっと待ってね」
ずっと書いてみたかった。今の祈りというと・・・

『ずっとひみことともだちでいられるように』って、私は慣れない右手で拙い文字で絵馬に書いた。

「できた!」
「何を書いたの?見せて」
「いや、秘密なの。見ちゃだめ」
「ええ?けち」
恥ずかしいから絶対見せられない。勿論私は神様なんかのことを信じているわけでもなく、ただ自分の願い事を書いておきたいだけ。それ以来私と秘実子は二年間の間本当に仲がいい友達になっていた。この願いは本当に叶ったと思ったとたん、『ある事件』が起こっちゃって、私たちは喧嘩して、お互いに憎み合って、結局別れて、現在のような関係になっちゃった。

「さあ、次の場所に行くの」
私は絵馬を掛けて、秘実子に見られないように急いで神社を連れて出て行った。

「何なのよ。怪しいな」
「何でもないの・・・あ!」
道路に出たとたん、車は高速で向かってきた。多分運転手は酔っているかのように見える。

「危ない!」
私は不意に秘実子を押し飛ばした。

「わ!」
秘実子は道路のそばに飛ばされた、その瞬間突然周りが暗くなって何も見えなくなった。

「痛い!」
秘実子は地面に尻餅して、私は助けに行こうと歩いたけど、その姿はなぜかどんどん遠くて小さくなった。

「秘実子!」
気がついたら私は見慣れないところで寝ていた。

え?夢?本当に懐かしい夢だった。まだぼやぼやな意識で周りを見るとこれは秘実子の部屋。そうだ。昨日私の身体が縮んじゃって秘実子の家に連れられてきて、秘実子の寝床で寝た。

でも、こう見たら違和感がする。昨日より今の部屋は小さく見える。昨日ごろごろしていた広い寝床も今開いた両腕の広さくらい。ということは・・・

私元の大きさに戻った!今回は夢じゃないよね。もっと確認のために自分の身体を見ると・・・

「わ!」
自分の身体には何も着ていないと気づいて、反射的に腕で身体を庇う様子になった。身体の下を見るとそこには自分の身体を包んでいたのと同じハンカチがいた。でも、サイズが小さすぎて、自分の身体を包んだことあるだとは信じがたいくらい。本当に昨日の私はこんなに小さかったのね。そういえば秘実子はどこ?もう一度部屋を見渡したけど人の気配がないよう。多分先に起きて部屋を出たのかな・・・と思いきや、ふと寝床の隣の床に見下ろすと、そこには・・・

「何これ?」
床に体育座りをしている寝巻き姿の女の子が見つかった。けど、その姿は小さすぎて人間というより人形に見えそう。よく顔を見ると・・・

「秘実子・・・なの?なんでそこに・・・」
「あんたは私を飛ばしてきたじゃないか!」
この声はやはり秘実子だ。今回は秘実子は小さくなったの?

「飛ばしたって、あれ夢じゃないのか?」
確かにさっきの夢では私は秘実子を飛ばしちゃったけど・・・いや、夢と混同しちゃだめ。状況を見る限り寝ている間に私は本当に秘実子を寝床から落としたらしい。

「ごめん。いや、そうじゃなくて、どうしてこんなに小さいの?」
「わからない」
「そうなの?私も起きたら元に戻ったみたい」
そう思ったら夢見たい。昨日もそうずっと願ったけど、本当に元に戻るとは思わなかった。私は寝床の上に立ち上がって手を上がってみた。すると手がまだ天井には届かないけど跳んでみたらすぐ届きそうな感じ。普通なことだとわかっているけど、昨日はずっと小さかったままでいたから、戻ったら普通なことでも楽しくなれる気がする。

「あ!」
私はふと自分がまだ裸だとまた気づいちゃって、腕で大切な部分を庇った。床に見下ろしたら秘実子は佇んで私を見つめている。

「何じろじろ見てるのよ!」
女の子同士だからってこんなにじろじろ見られると恥ずかしくなった。

「私の魅力的な身体に見惚れてるのね」
照れ隠しをしようと言った。

「いや、べ、別にあんたのような小学生みたいな身体なんて」
「何だって?私よりちょっとしか大きくないくせに・・・っていうか、今はそうじゃなくなったみたいね」
私はふと思いついちゃった。今の秘実子のちっちゃい身体を見てニコニコ笑ってきた。そう、今は昨日とは逆になったのね。

「今どう見ても私の方が大きいのね」
「・・・・・・」
私はふてぶてしい態度になって、寝床から降りて秘実子の前に立って見下ろした。彼女の身長は私の膝にも達していない。

「どう?私は大きいのよね?」
私屈んで片手で小さな身体をひょいと拾い上げた。

「わ!ちょっと、何をする?」
秘実子はちょっとでも抵抗しようとしたが無駄みたい。私は簡単に彼女の身体を持ち上げられる。この身体は小さくて軽くてか弱くて、力を入れすぎたらすぐ壊れちゃいそう。

私の視線くらいの高さで手を止めた。詳しく見たら本当にちっちゃい。私の手の平くらい。今手を握ったら潰れちゃうかも。

「何じろじろ見るのよ?」
秘実子は恥ずかしそうな顔をした。

「こんなにちっちゃくなったら意外と可愛いのね。普通はあまり可愛くなかったけど」
実はもともと秘実子も可愛いとはわかっているし、いや、そんなこと認めちゃだめ。どう見ても琴花先輩の方が可愛いの!

「それ、褒め言葉として受け取るよ」
「いや、全然褒めてないし」
秘実子は本当にいつも楽観的なよう。今小さくても弱音をあらわしないようにみえる。

「でも、ちっちゃいとは褒めてるよ~。ふふ」
「わ!」
そう言って指で秘実子の頭をなでなでとした。なんか自分の方が大きくなったのっていい気分。態度も昨日とは全然変わった。それは当然なことだと言っても無理はない。昨日の返しをしたら今こそ。

「昨日はいろいろやられっぱなしだけど、今は私の好きなようにする番ね~」
そう言ってもう一つの手の指で秘実子の身体を触り始めた。

「な、何をするのよ!嫌!自分が大きいからって、そんなのってずるいよ!」
「昨日自分が何をしたって忘れたか!五十歩百歩じゃないか!」
秘実子は抵抗しようと私の指を飛ばそうとしたが、あまりの小さな力だからあまり感じていない。圧倒的な力っていうのはこういうものよね。

「無駄なのよ。今の秘実子は私に逆らえるわけがないの。ふふ」
逆らっても無駄だと納得したように彼女は抵抗をやめて私に勝手に触れさせた。私の指は寝巻き越しで彼女のいろんな部分を触って柔らかい感覚だった。小さくなった以外には普通のサイズの人間とは特に何も変わらないみたい。

「そういえば、この寝巻きも一緒に小さくなってるのね」
私の時とは同じだ。あの時私が着ていた学校の制服も一緒に縮んだ。

「じゃ、私の昨日着てた制服は?」
そう思って私は自分の手の中の小さな秘実子に聞いた。

「・・・・・・」
彼女はまだ反応ないみたい。さっき私はやりすぎてまだショックしているのかな?

「秘実子!」
「は?」
秘実子はやっと気づいてきた。

「私の制服はどこに置いたの?」
「え、あ、昨日は洗濯してあげた後、窓辺に置いたよ」
彼女の言ったとおり私は窓辺の方へ視線を移した。そこには小さな制服が置いてある。

「元のサイズに戻ってない?身体が元に戻ったのにどうして服は・・・」
私は秘実子の身体を床に戻してから、この小さな制服を拾い上げて確かめた。こんな小さな服はどう見ても自分が着ていた服だとは信じがたい。手のひらの中の制服をちっちゃな自分が着ていると想像したら変な感じになっちゃった。

「とにかく、私の服はどうしたらいいの?こんなに身体が大きくなっちゃって」
「知らない」
「まあ、元のサイズに戻ったし。服なんかもう問題じゃないはず」
そう考えて私はこの部屋の中にあるたんすを開けてみた。

「ちょっと、勝手に開けるな!」
私の勝手な行動を彼女が止めようとしたが、私は全然気にしなかった。中には制服も下着もいっぱいある。

「あんたの服なんか全然着たくはないけど、仕方ないから」
確かに少し大きかった秘実子の服だったら少し大きくても問題なく着られると思うけど、なんか複雑で説明できない感じがする。

「本当に嫌なら、裸で外に出たら?別に私は構わないけど」
「出られるものか!」
「そうか。夢葉は私の服がないと外に出られない身体になったね」
「そ、そんな言い方は・・・」
なんかむかついた。

「キャー!」
小さくなっても相変わらず突っ込みが荒い秘実子に、私がたんすの中の制服を取り出して投げかけた。すると、彼女は自分の服の下に埋められた。

「馬鹿なこと言うな。ほら、この服あんたには大きすぎるのよ。もうあんたの服じゃない」
小さな秘実子が自分の服の下で蠢いて笑いながら、私はたんすの中の制服を取り出して着てみた。

「別にこんな服なんか好きで着てるわけでもないし。家に戻ったらすぐ自分の服に着替えるからな」
家か、今帰ってもいいかなってふと考えついちゃった。

「家に帰るのか?」
服の下からやっと這い出たばかりの秘実子が不安そうな顔で聞いた。

「学校に行かないとね」
「もう学校に行くの?」
今私に帰られたら彼女はこの身体では何もできなくて困りそうね。まさか自分は元に戻った代わりに秘実子が小さくなるなんて。新たな問題が意外と起こっちゃったから、当然放っておくわけには行かないね。

「そうなの。あんたのこと元に戻る方法を探さないとね」
「へ?」
「昨日はいろいろされたけど、一応助けてもらったし。暑さ忘れて陰忘るというのはよくないし。結局のところ情けは人のためならず。魚心あれば水心っていうことなのよ」
「本当に手伝うの?」
「別に手伝いたいわけじゃないからね!それにあんたが小さくなったのはたぶん私の所為かもしれないし、今私の方が手伝うの」
まるで伝染病とかが移すみたい。昔に私が風邪引いた時に看病してくれたお母さんも感染して私は直った後変わりに風邪引いちゃった。今もそのような感じ。でもこれは病気なんかとは違うし。

「そうね。当然だよね。こんなことになったから、私の身体をこんなにめちゃくちゃにしたこと、責任の取ってくれるよね」
「ふ、調子に乗るな!」
元気に戻ったらおかしげな返事をした言葉に私なんかはいらいらして、つい手を秘実子の前に伸ばして空気とかをぎゅっと握り潰す様子を見せた。

「やっぱり、責任取るために潰してあげてもいいのね」
「じ、冗談だよ・・・」
秘実子はびびって二散歩くらい後退りした。まったく、本当に今すぐこの小さな身体を握り潰したいくらい。冗談でも今なら簡単にできそうだし。でもその気持ちはすぐ抑えた。

「まあ、いいの。それに、どうして私は元に戻ったとか、どうして秘実子が代わりに小さくなったとかって、原因がわからないままでは何が起こるかはわかりっこないし」
「うん、私もそう思う」
「そういえばあの人形は?」
ふとあの不思議な人形のことを思いついてきた。今回は昨日とは違って変化が起こる時に眠っているから、よくわからないけど、場所は違っても今思い出した共通点はただ一つ、あの人形があるってこと。この人形は今寝床に置かれている。また触ったら小さくなるのかなって不安で思い込んじゃって、私は恐れ恐れ人形を拾い上げた。今回も何も起こらなかったよう。

「何の変化もないかな?あ!」
よく目つきを見ると昨日よりちょっと代わった気がする。昨日小さくなった時もそう思ったけど、今はもっと変化が著しくなってきた。

「ね、昨日この人形はこんな顔ではないよね?」
確認させるために人形を秘実子の前に差し伸べた。今秘実子と人形はほぼ同じ大きさ。

「うん、よくわからないけど、昨日とは違うの?」
「・・・わからないの?」
「いや、あんなに詳しく見ていなかったから」
「全然頼りになれない・・・」
でも、多分顔は本当に変わっていく。この状況に関係があるかもしれない。

「私はもう一度学校に戻って調べる」
昨日行くって言ったのは秘実子だけど、今の逆になっちゃったから、仕方なく私は代わりに行くしかない。

「じゃ、私も行く」
「いや、こんな小さな身体では何ができる?」
って言うのは昨日秘実子の言った言葉と同じ。なんかちょっといい感じ。

「それは、わかったけど」
「じゃ、まずは私の家に戻ろう。学校に通う準備をするので」
そう言って私は秘実子をに向かって手を伸ばして掴みあげようとした。

「待って、外に出るなら私も着替える」
「着替える?でも、あんたサイズの小さな服は」
「その、あんたの制服だよ」
「は?どうして私の制服を」
「し、仕方ないからだよ。寝巻きを着て外に出たらちょっと・・・それに、私の制服を貸してあげたから・・・等価交換よ!」
「なんなの、その理屈。まあ、いいけど。今の私にはもう小さすぎるし。あんたみたいな小人しか着られないしね」
自分の着用していた服のことをこんな風に言うのもちょっと変だけど、秘実子のことを見下ろすのは意外と言い気分。結局私は小さな制服を秘実子に渡した。

「え?これは昨日あんたが着てた制服なの?なんか大きすぎないか?」
「は?」
この服は秘実子と合うサイズだと思ったら、よく見るとそうじゃなく、ちょっと大きすぎて着用したらだぶだぶに間違いない。

「ちょっと待ってね」
私は机の上にある定規を取り出して秘実子の身長を測ってみた。

「15センチ・・・」
「へえ!?」
秘実子は驚いて感嘆した。

「昨日の私は18センチなのね?つまり、今の秘実子はもっと小さい縮尺で縮んだみたい。元の身長は15Oセンチだっけ?ちょうど10分の1くらい」
8分の1の私の制服を着たら大きすぎるのは当たり前。

「そんな・・・」
「まあ、そんなに落ち込まないで、10分の1やら、8分の1やら、あんなに違いが大きくないよ。最初は服と比べなければ全然気づかないしね」
私は秘実子を慰めるようになった。そう、同じように身体が縮んだから、てっきり同じ縮小だと思った。もし私は昨日と同じ大きさのままで今の秘実子のそばに立ったら、きっと秘実子は身長120センチくらいの子供のように見える。秘実子から見れば、私は身長180センチくらいの長身女になる。そういう風に想像したら変な感じになったけどいい気分かもしれない。

「とにかく、服は着られないのよね。もし着たら大人の服を着てみた子供みたいに見えるはずなのね。ふふ」
そう言って私はついちょっぴり笑っちゃった。

「わ、わかったよ」
「大丈夫、そんなに小さかったらどんな服を着ても人から見ればそんなに変わらないし。っていうか、そもそも誰かに見られたら困るし」
「うん、そうよね」
「じゃ、そろそろ行こうか。早くしないと遅刻しちゃうの。鞄貸してもらってもいい?私の鞄は昨日学校に置きっぱなしみたい」
昨日は小さくなっちゃった所為で、自分の鞄を持ち帰るどころか、自分自身の身体だって人の鞄で運ばれなければ帰れなかったし。

「うん」
「すぐ家に着くから、鞄に入らなくてもいいと思うの。手で庇って凌げるよう」
15センチなら手のひらには収まらないけど、簡単に乗せられる大きさ。それに、鞄の中に入れ込まれた人間の気持ちをよく把握したから、必要なかったらそんなことしたくないとも思った。幸い私の家と秘実子の家は近所だから、ゆっくり歩いても5分も経たない。

必要な物を鞄に入れて私は秘実子を持ち上げて部屋を出た。

昨日の『巨人の梯子』だった階段を気楽に自分の足取りで下りてから家のドアのノブを回して外に出てきた。なんか元の大きさに戻ったら普通の生活が戻ったみたい。誰の世話にもならず自分で何もできるのって一番いいことだから。





外に出たら私は鞄を右腕に掛けてその右手で左手の中にいる秘実子を庇いながら足は歩いていく。

「あら、夢葉ちゃんじゃないの?」
家に向かっている途中で突然私を呼ぶ中年の女の声が聞こえた。

「パン屋さん!?」
声の元に向いたら隣家のパン屋さんのおばさんがパン屋の前に立っている。

「朝っぱらからどこに行ってきたの?」
「あの、ちょっと散歩なのです・・・」
手の中にいる秘実子の姿を一生懸命隠しながら、私はひょいと思いついたばかりの答えで誤魔化した。

「散歩するのにどうして鞄を待つの?」
無謀な嘘ついちゃったから、疑われるのって当然。

「実はついでに公園の猫に餌をやりに行ってきたのです」
「なるほど、こんな朝から偉いね」
まさか本当に信じてくれた!

「いや、今日は普段よりちょっと起きるのが早すぎただけなのです」
「そうなの?じゃ今は疲れたよね?朝ごはんは食べた?」
「いいえ、まだ」
言われるとちょっと本当にお腹がすいた。

「じゃ、ちょっと待ってね。パンをあげるから」
「いや、いいのです。財布持ってないのです」
「いいよ。朝から勤勉したご褒美よ」
「は・・・」
そういってすぐ店の中に入った。まあ、ちょうどよく昨日何も買っておいていないので、朝ごはんのことはこれで解決していいじゃないか、と思いきや・・・

あ、手が・・・今は両手で秘実子を庇っているからパンを持つ手が残らない。仕方なくパンを諦めて今すぐ家に帰った方がいいのか?でも、それはよくないし。

「ごめん、秘実子仕方なく鞄に入れるから、ちょっと我慢してね」
私は小さい声で秘実子に囁いた。他の方法思いつかないから、この方法しかない。だけど、私はしゃがんで鞄を膝に置いて開こうとするその瞬間・・・

「お待たせ」
「あ!」
パン屋さんが店から出てきた。

何でこんなに早いの!鞄に入れるには間に合わなさそうなので、仕方なく私は素早く制服の襟首をめくって秘実子を制服の中の入れ込んだで下に落ちないように右手で服越しに支えながら人に見られないように庇った。

「おや、お腹はどうしたの?」
他の人から見れば私は腹が痛い時みたいに腹を押しているように見える。

「いいえ、いきなりお腹空いてきちゃって。なんでもないのです」
「そうなの?なら早く家に戻ってパンを食べた方がいいよ」
「わかりました。ありがとうございます。失礼します」
私は右手がお腹で秘実子を支えたまま左腕で鞄を掛けて立ち上がって、その手でパンの入っている袋をもらってすぐ家に向かい続けた。

ばれなくてよかった!秘実子を制服の中に入れたまま家まで歩いてきた。歩いている間は秘実子がずっともぞもぞ動いていて、くすぐったかった。





『ガチャ・・・パン』
家に入った後、私は秘実子を制服から取り出した。

「大丈夫?」
彼女は息切れして苦しそう顔している。

「ごめん。いきなり入れ込んじゃって」
制服の中は狭くて、それに私は服越しに力を入れすぎたかもしれない。

「酷いよ。いきなりあんなところに」
「他の方法は思いつかないし。っていうか、『あんなところ』って何よ。別に好きで入れ込んだわけじゃないし」
正直言うと恥ずかしい。

「ところで、思ったより太ってるね」
その言葉は秘実子への哀れみを完全に抹消した。

「全然太ってないもの!自分が小さいからそう思い込んでるだけじゃないか!?」
「でも、確か・・・」
「もう言わないで!」
実は最近そんな感じもしたけど、直接に言われるとなんか気になった。

「もう秘実子なんか知らない!」
私はつい秘実子の身体を床に置いた。

「私は自分の部屋に戻るから、これから勝手に歩いてね」
「待って。私が自分で歩かせる気?」
「この普通の小さな家では自分で歩けるよね?」
「・・・・・・」
それはいい気分。ちなみに私の寝室も二回にある。昨日小さな自分で階段を登らせられた羽目になったから、今はその件の返し。必死に巨大な階段を登る秘実子の想像をしている間にその時・・・

「きゃあ!」
いきなり大きい声叫び出した秘実子に、私はすぐ振り向いて見下ろしたら、ゴキブリが走ってくるのが見えた。長さ4センチくらいのごく普通のゴキブリだけど、秘実子から見れば40センチのように見えるみたいだから、怖がるのは無理もない。

「嫌だ!助けて!」
そう悲鳴した秘実子は私の足にくっついちゃって泣いちゃった。今まで強がって弱音を見せなかった秘実子だけど、今回は違って、本当に怖くて耐えられない所為か、弱さを著しく表しちゃった。そんな秘実子を見たら私は・・・

『パン!』
秘実子のくっついていない方の足で私はゴキブリを力いっぱいで踏み潰しちゃった。普通は嫌だから近づけようとしないので、こんなことしたことないのに、今はつい初めて殺っちゃった。

「もう大丈夫なの。ゴキブリはもういないの」
私は秘実子を拾い上げて慰めた。でも、秘実子の泣き声はすぐには止まっていない。本当に意外な展開だった。いつも強く見える秘実子はこんな風になっちゃうなんて思わなかった。

「私の部屋に入るの。落ち着いたらパンを食べよう」
自分に足で踏まれて即死したゴキブリの遺体を嫌な気分で見ながら私は自分の寝室へ歩き始めた。片付けは後でいい。ちなみに足を洗うことすら忘れてしまった。





「さっきのことは早く忘れて!」
寝室に入って落ち着いた後、正気に戻った秘実子は会話を始めた。今彼女は私の寝床に座って、私は隣に椅子に座っている。

「何のことなの?」
勿論何のことか知っているけど、私は一応知らないふりしてみた。

「ゴキブリのことだよ。私は、その、そんなに怖かったこと」
「あ、そのことか・・・」
そこに私は突っ込んでみたら多分秘実子は悔しい感じがするかもしれない。例えライバルとしてどんなに嫌いな者でも、人に必要以上に傷つくのは嫌な感じだな。私にはできない。だから、今は慰めるしか考えられない。

「いいのじゃないの?誰だって怖いものくらいあるし、私だって、犬のこと・・・」
つい悪い思い出が頭の中に沸き込んじゃったから、言葉を止めた。子供の頃から秘実子が虫とかが苦手だとはわかっている。私だって犬とか蛇とかが苦手だけど、それは危険を感じるから怖いわけ。それに対し、秘実子は私と違って、人畜無害の虫の方が怖い。それは秘実子の、意外と女の子らしいところ。

「とにかく、今お腹空いてない?パンを食べるの。まだ冷めないうちに」
そう言って私はパンを袋から取り出して一端を小さめに裂いて秘実子にあげた。

「昨日自分で言ったのよね。小さくなったら食べ物を食べ放題って」
まさか本当に小さくなるとはね。

「あ、うん。ありがとう」
秘実子は腕いっぱいのパンを美味しそうに食べた。そんな彼女を見た私もたちまち笑ってきた。変だな。彼女のことをずっと憎んでいたのに。さっきだって『これがやり返すチャンスだ』と思っていたのに、こうなったら今はそういう場合ではなくなった。ただこの小さくて弱い人間を守らなければならないという感じになった。人は小さくなると誰でも弱くて脆くて可愛く見えるようになると今になってわかった。というか、普通は人がいきなり小さくなったりしないけどね。

「パン屋さんのパンは相変わらず美味しいね。でも、こんな腕いっぱい食べられるのって初めて。もうお腹いっぱい」
「もう食べ終わったの?」
私から見ればこの小さなパンの欠片はあまり減っていない。まるで鼠とかに食べ残ったパンみたい。私は秘実子が残したパンを一口で食べた。

「あのね、その・・・」
秘実子はなにか言いたいことがあるよう。

「できれば、お風呂入りたいけど」
「お風呂?朝なのに?」
普通朝は急いで学校に通うからお風呂に入る余裕はまったくない。

「折角だから、小さいままで一度お風呂に入りたいの。いつ元に戻るかわからないし」
昨日言っていたことか。まさか本当にしたいとはね。

「・・・あんた、元に戻りたくないみたいね」
「ち、違うよ。勿論元に戻りたい。だからこそまずは戻ったらもう二度とできないことを・・・」
「それはそうだけど、何で私があんたのために」
「昨日自分も入ったじゃないか。ずるいよ」
「別に望んだわけではないし。まあいいか。昨日はああいうのだったから私も普通の人間みたいにお風呂に入りたいし。すぐ準備をしてくるから、ここで待っててね」
私は寝室から出て一階にあるお風呂に向かった。

って、どうして私はあんなやつの望みどおりにしなくちゃならないのよ!ライバルなのに。嫌いなのに。どうしてかそんな気持ちがどんどん消えてゆく。ちぐはぐな感じはどうにも落ち着いていないまま、お風呂を準備した。





私は昨日秘実子がしてくれたのと同じようにシャワーを浴びさせた。そして指に石鹸を擦って、その指で秘実子の小さな身体を少しずつ擦った。彼女に触れる指の感覚は柔らかくて気持ちいい。

「はあ、いい感じ」
湯船に入ったら秘実子ははしゃいで泳いでいる。それを見ている私はちょっと羨ましくなってきた。自分の時は溺れるばかりで何もできないのに。

「楽しそうね」
「勿論。夢葉ももう一度小さくなったら泳いでみてよ。あ、でもあんたは泳げないよね。残念。わ!」
むかついたら私は指で秘実子の足を摘み捕らえた。

「あっぷあっぷ!」
こうしたら勿論彼女は泳ぎ続けなくなった。

「殺す気か!?」
「いや、ただ泳げても溺れられるって教えておいてやるの!」
「ハァハァ、わ、わかったから放して!」
苦しくてかわいそうだからすぐ放した。そんな彼女はいきなり私の方泳いできて、今の水面は私の胸くらいで、彼女はそこにくっついてきた。

「な、何いきなり!」
「ほー、今は大きく見えるけど、やっぱりぺちゃんこ・・・わ!」
「あんたこそ、ぺちゃんこになりたいみたいね!」
私は彼女の身体を片手で水から掬い上げてもう一つの手は彼女の身体の上に重ねた。今この手に力を入れたら彼女の身体はすぐにぺちゃんこになれるはず。

「ちょっと!冗談よ!」
まったく、自分も私とあんなに変わらないくせに!とは言っても、今私の手のひらにも彼女の身体の膨らんだ部分を、わずかだけど感じている。それを意識し始めたら私・・・いや、別に、何でもないよ。秘実子なんかの相手に全然何も考えないからね!

「あの、私は苦しいんだけど」
手のひらの中の小さな彼女の苦しそうな声が聞こえて、つい力を入れすぎちゃったかなと思って、私は彼女の上に重なっていた手を離した。彼女はまだ無事みたい。

「遅刻しちゃうから私はすぐ上がるの。あんたは続けてもいいよ。私は学校に通う準備が終わるまで」
変な思いに沈まないように、お風呂はこれで終わりにした方がいい。それに、もう時間のようだし。早くしないと初めての遅刻になる。今までは遅刻どころか、いつも朝っぱらから通うのに。

「うん、じゃ、ここで待ってるね」
私は風呂から上がって寝室に戻った。、学校の支度の他に、秘実子が私のいない間に部屋で自分一人で生活できる準備も必要がある。私は本棚からたくさんの本を取り出して秘実子にとって寝床や机に上ることができる階段を造って、お菓子も寝床で置いておった。

準備を終えてからお風呂に戻った。

「お待たせ。あ!」
湯船の中を見たら秘実子はまだそこにいるが、なんか顔が苦しそう。お風呂の時間が永すぎたから逆上せているみたい。私はすかさず秘実子の身体を掬いだした。

「大丈夫?どうしてあがってこないの?」
「上がれないからだよ」
「は?」
よく見ると今の水面は低すぎる。私は出た後水面が激しく下がって秘実子が湯船の枠を掴めなくなるくらいになったよう。

「ごめん、忘れちゃって、すぐ寝室に戻るから、あそこでよく休んでね」
冷たい水で秘実子の身体を洗ってからすぐ寝室に戻った。

「ほー、本いっぱいね」
寝室に戻って本で造られた階段を見たら感嘆した。

「これで一人で私が戻るまでいられるのね。漫画もあるから、つまらなかったらどの本でも読んでもいいの。ただし行っておくけど汚れたりしたら握り殺すのよ!」
「わ、わかった。留守番任せて」
「外にはゴキブリとかがいるかもしれないので、絶対に出ちゃだめなのよ」
と言っても扉を閉めたら出たくても出られないのよね。

「わかったから、ゴキブリのこと言うな」
ゴキブリと言う時のそんな反応も意外と可愛い。いや、そんな風に考えちゃだめ。彼女は所詮ただの嫌いな相手、そんなことなぜか忘れかけた。

「すぐ元に戻す方法を見つけようとがんばるから。じゃね」
でも、考えてみればこの事件は解決したら私たちの関係はどうなるのだろう?また敵同士に戻るのかな?それとも・・・まあ、例えどうだとしてもその時の問題にしていい。今は解決方法しか余計なことを考えなくていい。





私は急いで家を出てバスで学校に通った。学校に着いた時にもうすぐ授業が始まる時間だから、生徒会室に行く時間がない。琴花先輩に聞きに行くなら昼休みまで待つしかないみたい。

「おはよう。珍しいな。夢葉がそんな時間に来るなんて」
「おはよう、盟子。ちょっと用事があってね。そういえば、あの、湖由梨はまだ着てないの?」
湖由梨の席を見たらまだ来ていないみたい。

「湖由梨?見てないと思う」
「そうか。普通はこの時間くらい来てるはずなのに」
その後、授業が始まるまで待っても湖由梨はまだ来ない。何でこんな大事な時に来ないのかな?病気かな?それともこの事情に何か関係がある?別に湖由梨の所為だとは思っているわけではないが、この人形について何か知っているかもしれない。湖由梨が来なかったらまずは昼休みまで待って琴花先輩に聞くしかない。そっちの方が可能性高いし。そう考えて授業が始まった。





今は授業中、私は諸々なことを心配してまったく集中できない。昨日はまだ普通に暮らしていたのに、今は何でこんな状態になっちゃったのかな。そう考える時にいきなりめまいしてきて、自分がどんどん落ちていくような感覚がした。別に私は屈んでいくわけではないのに。着ている制服を見たらちょっとだぶだぶになった。

これはいったい!?自分の制服なのにどうしてこんなに大きいの?制服が大きくなったの?いや、違う。まさか、私はまた小さくなった!?何で?でも今回は昨日とは違って、服は一緒に小さくならないみたい。変化はまだ止まっていない。服はまだ大きくなっていって、視線の高さもだんだん落ちていく。私は席に座ったままでどんどん身体が小さくなっていく。

最後に、私は巨大になった自分の服の下に埋められた。



-つづく-

初投稿:2014/08/31