女神黙示録 第1話「遭遇と日常の終わり」


西暦25××年、地球の衛星軌道上。



「さて、そろそろ地球人を使っておもしろいゲームでも使用かな」

地球視察に来ていたギガント星人のギニアスは新兵器実験で開発した新兵器を試そうとしていた。

「テーダ、あれの発射準備を」

ギニアスは側近らしき男に指示をだす。

「はっ、ただいま」

テーダと呼ばれたその男は新兵器発射のため他の部下に指示を出す。

そのころ、日本に留学していた金髪蒼眼のツインテール少女はショッピング街でウィンドウショッピングを楽しんでいた。

少女はまさか自分が見知らぬ宇宙人の実験台にされるなどとは思ってもいるわけなく、買い物を楽しんでいた。

「ギニアス様、発射準備が整いました。して、ターゲットはいかが致しましょうか?」

正面のモニターにはランダムに選ばれた数百人の映像が映し出されている。当然その映像の中に彼女の姿もあった。

しばらくあごに手を当てて考えていたギニアスだったが、一人の少女の映像を指を刺すとテーダに命ずる。

「あの娘に発射しろ!」

「は、マイクロ巨大化ミサイル発射!!」

彼の乗艦から一発のミサイルが発射され、一直線にターゲットに向け飛来していった。

そしてわずか30秒ほどでとあるデパートに入ろうとしていた少女の首下に命中した。

「ん?」

少女は首になにか当たったかなと思うと、急に体中が今まで感じたことのない苦痛に襲われる。

「う、うぁぁぁぁぁぁ」

入り口を入ってすぐ少女は叫び声を上げながら膝をつき、よつんばの状態で頭を抱える少女。

次の瞬間にはあまりにも非現実的な光景がおきた。

少女の体が徐々に巨大化しはじめたのだ!

ミシミシ・・・

次第に部屋いっぱいに広がった彼女の体は壁という壁を破壊しはじめした。

さらに巨大化し、デパート内に納まりきらなくなった彼女の体は建物を粉々に吹き飛ばした!!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

尚も悲鳴をあげながら少女の体はどんどん巨大化していく。

ざっとみても100メートルは確実にあるだろう。しかし巨大化は止まらずさらに大きくなていく。

よつんばの状態で巨大化していた彼女の巨大化は止まった時にはその身長は150メートルに達していた。

「はぁはぁはぁはぁ・・・・・」

「なに・・・これ・・・・」

「(どうだい、気分は?)」

少女の頭の中に若い男の声が響く。

「だれ!?」

「(僕はギニアス、君に力を与えたものだよ)」

「力って・・・」

少女は辺りを見渡す。彼女の目に映るほとんどの建物は自分が履いてるパンプスよりも低い位置にあった。

突然街に現れた巨人に人々はパニックになっていた。

そしてこのあまりにも非現実的な光景に彼女も驚きを隠せなかった。

「あなたがやったの?」

「(そう、とろこで君名前はなんていうんだい?)」

「私?私はナリスよ」

「(ナリスか・・・、いい名前だね。ところで、気に入ったかい?)」

「そうね、最初はびっくりしたけど慣れてくるといい気分だわ。神にでもなった気分よ」

「(気分じゃない、君はたった今神になったんだよ。)」

「私になにをしてほしいのかしら?」

「(ふ、簡単な事だよ。僕を楽しませてくれればいい)」

「それはどんなやり方でもいいってことよね?」

「(ああ、好きにしてかまわないよ)」

「いいわ、あなたのいう通りにしてあげる」

「(物分かりのいい娘は好きだよ)」

「それって私が望めばもっと大きくなれるってことかしら?」

「(そういうことだね。じゃあ期待しているよ)」

それを気に彼の声は聞こえなくなった。

「服はやぶれてないのね。」

ナリスは立ち上がろうとその巨大な足を地上に向ける。

ずうううううううん!!

それだけで地面が10メートルほど沈む。

だがそれで終わりではない。

彼女がこの場所に足をつけたのは立ち上がるための準備だ。

「よっこいしょっと」

ナリスは両手を地面に着き、その巨大な肉体を持ち上げた。

なんという大きさだ。

あまりのでかさに首を垂直にあげても彼女のお腹あたりまでしか見えない。

そこには金髪のツインテールに可愛らしい白いワンピースを着た、まるでフランス人形の様な身の丈150メートル近くありそうな少女がそびえ立っていた。

「うふふ、一度やってみたかったのよねー、こういう事♪」

ナリスはうれしそうに辺りを見渡す。

「さてと、こんなところにずっと立っててもしょうがないし、手始めに町でも破壊してみようかしら。」

そう言うと彼女は右足を高く上げ一歩前へ踏み出す。

ズッシーーーーーーーーーーン!!!!!

マグニチュード7クラスの地震が辺りを襲う。

比較的小さなビルやお店は今の一撃で半壊もしくは全壊した。全力で逃げ出そうとした車は横転したり電車は脱線してそのまま高架橋の下に落下した。

人々は悲鳴をあげて逃げまとった。

その光景をまじまじと見ていた彼女は思わず笑ってしまった。

「あっははは、たった一歩踏み出しただけなのにね。こんなに脆かったんだ、小人の街って」

そう言いながら今度は左足を高く上げ踏みおろす。

ズッシーーーーーーーーーーン!!!!!

先ほどの一撃に加え、マグニチュード7クラスの地震が再び襲った事により、何とか耐えていた大きめのビルも倒壊しはじめる。

逃げまとう人々の何人かは崩れたビルの破片が直撃して即死するものもいた。

「うふふ、小人たちが群れをなして逃げて行く様は最高ね。今度はどうしようかしら?あ、そうだ♪」

ナリスは意地悪っぽい笑顔を浮かべると屈んで目の前に横転しているバスを摘み上げる。

まだ中には逃げ遅れた人々が乗っていた。

「きゃああああああああ」

乗客の悲鳴が当たりに響く。

ナリスの親指と人差し指に支えられたバスはギシギシと軋み音をたてながら遥か100メートル以上に軽々と持ち上げられた。

彼女にしてみればおもちゃのミニカーもも打ち上げているようなものである。

ナリスはまじまじと中をみつめ、中にまだ人が乗っていることを確認すると満足そうに左手の上にバスを降ろした。

「そんなに怖がらなくてもだいじょうぶだよ〜。すぐに握りつぶしたりしないから、だから逃げちゃだめだからね♪」

今彼女はなんといった?

「すぐに」握りつぶしたりしないから。

その言葉の意味する事。それは逆をいえばいずれは握りつぶされるということである。

その事をいち早く理解したひとりの若いヤンキー風の男が他の乗客を押しのけバスの飛び降り逃げ出した。

それを見ていた他の乗客も逃げ出そうとしてピタリと固まった。

先ほど逃げた男はナリスの右人差し指につかまっていたのだ。

ナリスは逃げ出した男をそのままつまむと自分の目の前にもってくる。

「だれが、勝手にバスから降りていいって言ったかな、おチビくん?」

彼を摘んでいる指にほんの少しだけ力を込める!

ミシミシミシ

「ぐぁぁぁぁぁぁ」

たったそれだけで男の顔は大きく歪み悲鳴を上げた。

「私はね、自分の言うことを聞かなかったり、自分の思い通りにならないことが一番嫌いなんだぁ」

ナリスは喋りながらも更に指に力を込めていく。

メキメキッ

バキバキッ

男「ゴフッ!ガフ、ゲホッ!」

男は口から大量の血を吐きながらも彼女に訴える。

男「た、頼む・・・。い、命だけは・・・たすけて・・・く」

グチャッ!

最後の言葉を言い終わる前に男は彼女の指の中で絶命した。

そしてその光景を見ていた他の乗客は一気に血の気が引いた。

「えーと、今のでわかってもらえたと思うけど、私に断り無く勝手なことしたらさっきのおにーちゃんみたいになるからね」

そう言うと彼女は小人たちに向けて微笑んだ。

「さて、とりあえず出てきてもらおうかな」

ナリスが言うと小人たちは車両から次々とでてきた。

その光景に満足そうに彼女は頷く。

「うんうん、そうそう人間素直が一番だよ♪」

ナリスは小人たちが左の手の上に降りたのを確認すると反対側の指でバスを持ち上げた。

「じゃあ、ちょっとだけ私の力見せてあげるね♪」

小人たちの注目を十分に集めてナリスは少しずつ指に力を加えていく。

すると彼女の指に挟まれたバスは前後方向からミシミシと潰れ始めた。

さっきの男を潰したように軽々と今自分たちが乗っていた車両を潰して行くナリス。

手の上でその光景を見せられていた人々は改めて自分たちは彼女にとって蟻並みの存在であることを再認識した。

グシャリ!!

やがて1分もしないうちに彼女の指はぴったりとくっつき、指の間にはペラペラした金属いたが挟まっていた。

ナリスはそれを丸めると指で弾いた。元バスだった鉄くずは勢いよく数百メートル飛来し地面に激突した。

それを目の辺りにした乗客たちはさらに自分たちが置かれている状況に絶望した。

「いっておくけど、今のはかなり手加減したんだからね?本気になれば、あんなおもちゃほんの5秒で鉄くずにできるんだから」

彼女は自慢げに言うと残っている小人たちに向かって彼らが一番聞きたくなかったであろう言葉を口にした。

「じゃあ、次はあなたたちの番だよ・・・。」

彼女の顔から笑みが消え,代わりに凍るような冷たい視線が彼らに降り注ぐ。

そしてナリスはゆっくりと左手を閉じていく。

彼らにしてみれば五本の巨大な柱が迫ってくるような物だ。

「うぁぁぁぁぁぁ」

「きゃあああああ」

手に上に乗った乗客たちは逃げるのを忘れその場に崩れ落ちガタガタと震え上がった。やがて彼等の頭上に巨大な影が射す。

しかしいつまでたっても自分たちの体が潰れていく感覚はなかった。恐る恐る上空を見上げる乗客たち。

すると閉じかけていた手のひらが徐々に開いていき、ナリスの顔が彼等の視界に入る。ナリスは乗客たちに微笑みながら言った。

「えへへ、びっくりした?冗談だよ♪じょ・う・だ・ん♪」

その言葉に乗客たちは安堵する。と同時にあまりの恐怖に身を置かれていた反動か、女性客の数人が泣き始めてしまった。

「ごめん、ごめん、そんなに怖がるとは思わなかったよ」

まるで小動物をあやす様に優しく泣いている女性客たちにい〜こい〜こしてあげるナリス。

「じゃあ、素直に私の言うことを聞いていたあなた達はそろそろ降ろしてあげるね。」

そう言うとナリスは体を屈め、左手を地面に降ろす。

恐る恐る彼女の手のひらから降りる乗客たち。

やがて全員降りたのを確認したナリスはゆっくりと立ちあがり下にいる小人たちに言った。

「たぶんね、あと少ししたら軍隊がくると思うんだぁ。だからここにいると巻きこまれちゃうからはやく逃げたほうがいいと思うよ?でも私と軍隊との戦いを見たい人は残ってもいいけどね♪」

やがて降ろされた乗客たちが散り散りに逃げ始めたのを確認すると、彼女は遥か遠くになにかハエのような編隊がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

数にしておよそ100機以上、その後ろには戦闘空母や戦闘艦が合わせて数十隻浮遊していた。

「ふん、やっと軍隊の到着ってわけね。しかも結構やる気満々じゃない?うふふ、腕がなるわぁ♪」

うれしそうに自分の前に展開している艦隊を見つめるナリス。今、ナリスと機動艦隊との戦いのまぶたが気って落とされた。




次回予告

ついにナリスの前に現れる連邦軍艦隊。そして対峙する巨大少女と連邦艦隊。果たして勝利の女神ははどちらに微笑むのか?


次回、第2話「価値観の違い」。 おたのしみに〜、ってか全然予告になっていないな、おい・・・