注意:この作品はSF巨大娘物です。実際に登場する人物、団体は一切関係ありません。
   どこかできいたような兵器もでてきますが、それらを含めて許せる方のみ閲覧ください。
今回はストーリー重視のためあまり破壊描写はありません。
 


女神黙示録 第3話「本当の侵略者」






地球統一連邦第1主力艦隊旗艦、ガルガンチュワ級超弩級戦艦「ガルガンチュワ」 メインブリッジ

「指令!プロトンミサイルが…」

「お、おのれ…、化け物め…、よくも私の計画に泥を塗ってくれたな…」

ガイナルの計画…。それはプロトンミサイルという強力な核ミサイルでナリスを葬るという作戦であった。
勿論その作戦には膨大な犠牲が伴う。だが彼にとってそれは些細な問題でしかなかった。

「こうなったら総力戦で叩いてくれるわ!左翼艦隊、右翼艦隊前進!!やつを取り囲むように展開しろ!!」

第1艦隊は連邦艦隊の中でも最大規模の艦隊である。本気になれば小国ひとつを簡単に跡形もなく消し去るほどの火力を有している。

総艦艇約数100隻、艦載機1000機以上がナリスを包囲する形で展開する。

「全艦!戦闘配置完了!」

「艦載機全機、攻撃準備よし!」

重々しい唸りをあげ、第1艦隊のすべての艦の主砲がナリスに標準を合わせる。

「全艦、5秒以内に総攻撃開始だ!艦載機は主砲発射と同時に攻撃をしかけろ!」

「攻撃いつでもいけます!」

「よし、撃ち方始め!!!」

ガイナルの号令と共に数百のビームが一直線にナリスの顔をめがけ飛んでいった。




地球統一連邦領域、経済特区日本、東京上空




『こいつら、本当に進歩がないわね・・・、攻撃が通らないことくらいさっきの戦いで分かっているではずなのに・・・』

ナリスは自分を包囲しつつある艦隊に半場呆れながら、大きなため息をついた。

『うーん、全滅させるのは簡単だけど・・・、それじゃなんの解決にもならないわよね・・・』

確かに今の彼女の力を持ってすれば相手がどんなに集まろうと所詮は烏合の衆。ナリスの敵ではなかった。
しかし、前回のようにここで戦えば自分の周りにいる関係のない人たちまで巻き込んでしまう。
それに、桐生のような人があの艦隊の中にもいるかもしれない。
できれば最小限の被害でやつらを無効化する方法をナリスは探していた。
腕を組んでなにかいい考えがないかと下を向いて思考を凝らすナリス。

『やっぱり大将を潰すのが一番手っ取り早いか・・・、よし!』

ナリスは顔上げ艦隊の方に向き直る。

バキューーーーーーン!!!!

バキューーーーーーーーン!!!!

バキューーーーーーーーーーン!!!!

バキューーーーーーーーーーーーーーン!!!!

『へ?』

次の瞬間、彼女の顔面に無数のビームが直撃し大爆発を起こした。

『ぶはっ・・・』

ずっどーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!

『いったたた・・・』

不意打ちの攻撃でバランスを崩したナリスは思わずその場に尻餅をついてしまった。

『あ、やばい・・・また下にいた人たちを潰しちゃったかな・・・』

ナリスは慌てて自分が尻餅をついた場所を確認する。
彼女がその巨大なお尻で潰した場所は東京ドーム3個分ほどの公園だったのだが、幸いにも中には誰もいなかった。

『ほっ・・・、よかった・・・』

ナリスは胸を撫で下ろすとお尻を摩りながらゆっくりと立ち上がる。
そしてガイナルたちに向け荒々しく抗議する。

『ちょっと!乙女の顔にいきなり攻撃するなんて脳みそ腐ってるんじゃないの!?』

その間にも艦載機の群れが無数のミサイルをナリスの顔面めがけ次々と発射してくる。
もっとも顔に直撃したとて彼女の顔には傷ひとつできなかったが。

『あなたたち、退くのなら今のうちよ!じゃないとどうなっても知らないからね!!』

ナリスは威圧的にギンッとにらめ付けながら、戦闘機のパイロットたちに憤りまじり警告する。
事実上の降伏勧告であった。
しかし、それぐらいで退くようならば軍人ではない。そしてミサイル攻撃は止むことはなかった。

『ああ、もう!人が下手に出てればいい気になって!!』

ナリスはその巨大な手でミサイルもろとも艦載機を次々と吹き飛ばしたり、握りつぶしたり撃墜していく。
しかし、まったくその数が減る様子はなく艦隊からはまるで害虫のように次々と出てくる。

『もー、こうなったらやけくそよ!』

ナリスは自分の顔に迫ってくる艦載機に向かって大きく口を開け、数十機のまとめて飲み込み粉々に噛み砕いた。

『うげぇ〜、口の中が鉄臭い〜』

ぺっぺと残骸を吐き出すナリス。

『次はこれよ!』

ナリスは大きく胸を張り、大量の空気を一気に吸い込む。

『ふぅーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

前回のブレスとは比べ物にならないの量の圧縮された空気が一気にナリスの巨大な口から放出される。
見えない壁にぶち当たり戦闘機の群れはきりもみ状態になりながら次々と墜落していった。


一方その頃……


ガルガンチュワでは新兵器の発射準備が着々と進められていた。

「指令、艦載機隊にかなりの損害が…」

「かまわん、どうせやつらは時間稼ぎのための囮だ」

「し、しかし・・・」

「それより、リニアキャノンの方はどうなっている?」

「はっ、あと5分程で発射できます」

「そうか、作業を急がせろ!」

「はっ!」

「ふ、ばかなやつだ、あんなちっぽけな島国の人間のために思ったように攻撃する事ができないようだな」

「指令、超電磁リニアキャノン発射準備完了しました」

「ふ…、これでやつの体にに大穴をあけてくれる!艦首ををやつの心臓付近に向けろ!」

「了解」

ガイナルは自分の席のトリガーを握り、スコープが越しにナリスの左胸付近に標準を合わせる。

「これで終わりだ…死ね!小娘が!!!」

ガイナルはトリガーを引く。
そして爆音と共に長さ100メートル、直径50メートル程の巨大な砲弾が発射されナリスの胸めがけ直線に飛んでいった。



地球統一連邦領域、経済特区日本、東京上空



ナリスは手の届く範囲でなんとか艦載機隊をなぎ払っていたが、自分の下にいる住民のことが気になって一方的に攻撃してくる艦隊に対してはまったく反撃できないでいた。

『むう・・・、一気に近づきたいけど関係ない人たちを踏み潰したら嫌だし・・・、どうすればいいのよ!もう!!』

イライラし、じだんだを踏むナリス。すると無数のビームが飛び交うなかを一機の戦闘ヘリがナリスの前に向かって飛んでくるのに気づいた。

『ちょっと、そんなところをフラフラ飛んでいるとあぶないわよ?』

ナリス少し前屈みなり左手でヘリを無数のビームから護りながら顔をそっと近づけるナリス。

『あれ、ヘリの下になにか書いてあるわね・・・』

戦闘ヘリの下には一本の白い帯のようなものが括り付けてあった。

『なになに?「ここら一体の住民の避難は完了した。周りの事は気にせず思う存分戦ってくれ。by 反連邦組織『アバロン』」って、あなたたち・・・』

おもわず口に手を当て苦笑するナリス。

『もう、余計なことしれくれちゃって。でも一応感謝しておくわ。ありがと♪』

ナリスは体を再び起こす。

『あんまり時間をかけてられないから、一気にいくわよ!』

ナリスは一気に跳躍し、ものすごいスピードで艦隊に近づいていく。

ずどーーーーーーーーーーん!!!

ずどーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!

ずどーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!

ものすごい地響きを立てて一気に距離を詰めるナリス。
急に動き出した巨人に頭の付近を飛んでいた戦闘機は次々とナリスの巨大な顔や髪の毛に激突し爆散した。
さらに彼女が生み出す乱気流により直撃を免れた戦闘機もつぎつぎとコントロールを失い墜落していく。
そして、マッハのスピードで走っていたナリスの視界に巨大な弾丸が視界に入る。
先ほどリニアキャノンから発射されたあの巨大砲弾であった。
彼女からしてみれば拳銃から発砲された弾丸サイズのそれはナリスの左胸に深く食い込む。

『っ…』

思わず歩みを止め、腕をクロスにして自分を抱え込むように唸るナリス。

「死んだな…」

ガイナルは勝利を確信した。

だが次の瞬間、その期待は大きく裏切られた。

『んんんんんん・・・』

ナリスが大きく息をすると彼女の乳房が大きく盛り上がる。

『ふんっ!!!!!!!』

するとめり込んだ砲弾は彼女の豊満な胸に弾かれ、ガルガンチュワの方に一直線に飛んでいった。

「ば、ばかな…」

ガイナルを顔面蒼白でその場に膝を着く。

「指令!砲弾が!!」

「か、回避しろ!!!」

ナリスの正面で指揮を執っていたガルガンチュワであったが回避行動が間に合うはずもなく、ナリスの巨大な胸によって弾かれた砲弾はガルガンチュワの周囲に展開していた多数の護衛艦を次々と貫き、ついにはガルガンチュワのエンジン部分貫通しを大爆発を起こす。
そして、それでも止まらない砲弾は後方の戦闘艦も次々と撃沈し爆発した。

「我が艦隊被害甚大!消耗率50パーセントを超えました!」

「指令!艦の体勢が維持できません!不時着します!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

ズズーーーーーンッ……

エンジン部分が大破し航行不能となったガルガンチュワはその場に不時着する。

「し、指令!はやく脱出を!」

その時だった。

ずしーーん…

ずしーーーーん……!!

ずしーーーーーーーーん………!!!

ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん!!!!!

ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん!!!!!!!

巨大ななにかが近づいてくる。
艦橋にいた兵士たちは激しい恐怖を覚えた。
次の瞬間、巨大な影がガルガンチュワ全体を覆い尽くす。

ナリスは屈みこむとガルガンチュワの艦橋に右手の指をやや強引に差し込む。
指は豆腐を引き裂くように鋼鉄の船体を軽々と貫いた。

メリメリメリメリッ!!

轟音とともに艦橋の天上が引き剥がされ、ナリスの大きな顔が艦橋全体をゆっくり見渡す。

『おひさしぶり、ちょび髭おじさん♪』

「くっ…」

艦橋にいた兵士たちはまるで蛇に睨まれた蛙のように固まっていた。

「おまえたち、何をぼさっとしている!はやく撃たんか!!」

ガイナルは放心状態の兵士たちに罵声する。
しかし誰一人としてそれぞれが携帯している護身用の銃を撃とうとする者はいなかった。

「き、きさまら…」

『ねぇ、あなたたちにチャンスをあげるわ。私この人だけに用があってきたの。だから逃げるなら追わないわよ?』

その言葉はそこにいた兵士たちにとっては救いの女神からのささやきだった。

「に、にげるぞー!」

一人の兵士がそう叫ぶと、固まっていた兵士たちは次々と逃げ出そうとした。
だが、奥のドアから武装したガイナルの直属の護衛兵士たちがなだれ込んでくる。

「将軍!だいじょうぶですか!?」

「おまえたち、この裏切り者共々、あの化け物を殺せ!」

ガイナル直属の護衛兵士たちはアサルトライフルをナリスの顔と自分を措いて逃げ出そうとした兵士たちに向けて発砲した。

ダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!

「うああああ」

「ぎゃあああ」

ダダダダダッ!!

「た、たすけ…」

ダダダダダッ!!

「うげ…」

いくら顔は人体の急所のひとつといえど、今の大きさのナリスにアサルトライフルの弾など効くはずもない。しかし彼らにとっては一瞬で命を刈り取る凶器。その凶器に一人、また一人と血まみれになり殺されていく。

『ちょっと、やめなさいよ!』

バチィィィィィィンン!!!!

その一方的な殺戮劇に気持ち悪さを覚えたナリスは右手でアサルトライフルを乱射する兵士たちを次々と吹き飛ばした。

ブチャ!

グチャ!!

吹き飛ばされた兵士たちは断末魔をあげながら壁にめりこみ、そのまま絶命した。

ナリスはガイナルを左手で摘みあげると自分の右手の上に乗せ、ゆっくりと立ち上がる。

ナリスにとって彼は蚊よりも小さいほどの存在でしかなかった。

「降ろせ!この化け物が!!」

『それはできない相談ね。あまたには聞きたいほどが山ほどあるの』

ナリスはガイナルを見つめながら彼に問いかける。

『なんで、あんな事したの?』

「あんな事だと?何の事をいっているのだ?」

『とぼけるんじゃないわよ!ミサイルの事をいっているの!!』

「その事か、勿論貴様を殺すためにきまっているだろう」

『それだけのためにあんなにたくさんの関係のない人たちを巻き込もうとしたわけ?』

「なにを、偉そうに…。貴様とて何百人のいう人間を殺しているではないか?いったい何が違うというのだ?」

彼の言うことは決して間違いではない。
その事もナリスは従順承知していた。
しかし、それを差し引いても許せないことがあった。

『だったら・・・、だったらなんで住民を逃がしてからやらなかったのよ・・・』

そう言いながら、再び彼の摘み上げるナリス。
そして彼の今までの行動を思い返すと思わず無意識に力がはいってしまった。
ミシミシと彼の体が前後から潰される。

「が、がはっ…」

その圧力にガイナルの体は大きく歪み、彼は口から大量の血をはいた。
ナリスの綺麗な白い指先が真紅に染まる。

『私だけが目的なら、避難が完了してからでもよかったじゃない!』

「怪物風情が…自分よりも…遥かに…小さい人間を…哀れむとは…なんとも…滑稽だな…」

『でも、こんな私を見ても桐生たちは私の事を同じ人間だって言ってくれた・・・、すごくうれしかった』

「ふ…、あの若造か…くだらん事を…」

メキッ!バキッ!!ボキッ!!!

「ぐああああっ」

更に彼を摘む指の力が強くなる。

『あの人たちの事を悪く言わないで・・・』

ガイナルはほとんど虫の息であった。
体はピクピクと痙攣し、大量の血を吐いている。

「お…おまえは…私に…どうしろと…いうのだ…?」

『この街の人たちに謝罪して、そうしてくれれば私はあなたたち、軍の言うとおりに従うわ』

「私が…謝罪だと…、こんな…小さな島国…の為に…謝罪しろ…だと…?」

パン、パン、パン!

ガイナルは弱弱しくナリスの顔に右手に持っていた銃口をむけると発砲する。

『そう、それがあなたの答えなのね・・・』

そう言うとナリスは彼を摘んでいた指を離す。

「う…嗚呼ぁぁぁぁぁ………」

絶叫と共に彼の体は1200メートル程の高さからものすごい速度で落下していき地面に激突した。
それを見届けたナリスは彼が落ちた場所付近にゆっくりと足を上げる。

ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!

巨大な質量の足があがると乱気流が舞い、轟音があたりに鳴り響く。
まるで台風でもきたかのようにその超巨大な足を上げた付近は荒れ狂っていた。

『さようなら』

ずっどおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!

今までで一番強く深く、ナリスはガイナルが落下した付近を踏みつけた。
巨大なパンプスは200メートル近く大地にめり込み、縦180メートル、横幅60メートル程の巨大なクレーターを作り上げた。ナリスが自分の足をあげたときにはガイナルの姿は愚か彼女の巨大な足の下敷きになった物はすべて原型をとどめることもなく大地にめり込んでいた。

『これで、おしまいね・・・』

そう言うとナリスその場にゆっくりと座り込み、自分を包囲していた残存艦隊に顔を向ける。

『もう、私にあなたたちと戦う意思はないわ。煮るなり焼くなり好きにして』

すると一隻の軍艦から小型艇が出てきて、自分に向かって飛んでくるのが見えた。
ナリスはゆっくり静かに右手を前に差し出すと小型艇はその手の上に着陸し中から一人の軍人がでてきた。

「指令代行!一人で行くのは危険です!」

彼のあとにでてきた兵士たちは慌てて彼とナリスの前にバリケードを作るように立ちはだかる。

「いや、おまえたちは下がっていろ」

「し、しかし・・・」

「命令だ、下がっていろ!」

「はっ!」

兵士たちはバリケードの解き、その間をその軍人はナリスの方にゆっくりと歩いていく。
そしてナリスの顔の近くまでくると彼はナリスに問いかける。

「私は地球統一連邦の八神大佐だ。桐生が随分と世話になったようだな」

『あなた、あの人の知り合い?』

「ああ、同じ軍学校の同期だ。やつの戦友といったところか」

『そうなんだ』

「それよりも君にもう戦闘の意思がないというのは本当か?」

『ええ・・・、もう気が済んだし、あとは自分が犯した罪を受けるだけよ・・・』

「そうか…、なら我々もこれ以上君に危害を加えないことを約束しよう」

『え?』

彼の意外な言葉に目を真ん丸くするナリス。

「どうした?鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして」

『私を殺さないの?』

「今のところはその必要はないと判断したのだが、それよりも街の復興に力を貸してもらわないとな。処分はそれからだ」

ニヤリと笑いながらナリスを見つめる八神。
ナリスは思った。
桐生も相当の変人だけどこの人も相当変わっている。

『ぷっ』

ナリスは思わず吹いてしまった。

「なに笑ってるんだ?今のところは感動のあまり泣くところだぞ?」

『そうね、でも類は友を呼ぶんだなって思ったらなんかおかしくなっちゃって』

「失礼なやつだ」

がっはっはと豪快に笑いながらナリスに背を向け小型艇に戻り始める八神。

「ああ、ひとつ言い忘れていた」

『なに?』

「今度また暴れた時は俺が直々にお前を溶岩の中に叩き落とすからな」

そんなことはただの脅しだと頭では分かっていても、彼の言いたいことは今のナリスには痛いほどよくわかった。

『肝に銘じておくわ』

胸に手を置きを彼に大きくうなずくナリス。

「いい返事だ!よし、おまえら撤収だ!」

八神は小型艇に乗りこむと小型艇はナリスの手の平の上から元いた艦に戻っていった。




だが次の瞬間……



ビビビビ・・・ガガガガガガガ・・・ドグワァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!

ナリスの目の前を黒く激しい光をまとった極太のレーザーが飛んでいた小型艇もろとも周囲に待機していた残存艦隊をつぎつぎと飲み込んでいく。

どかーーーーーーん!!!!!!

ちゅどーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!

次々と起こる連鎖爆発。

周囲に響き渡る悲鳴。

ナリスは思わず目を閉じ耳を塞いだ。

やがて、レーザーが収まったころには周囲は焼け野原となり、残存艦隊は一隻も残らず沈められていた。
ナリスはゆっくりと目を開ける。

『そん・・・な・・・、なん・・・で・・・』

放心状態のまま、ふらふらと立ち上がりレーザーが飛んできた方に顔を向けるナリス。
すると上空から雲を切り、漆黒の巨大円盤が姿を現す。
ギニアスの乗艦、ヴァルヴァロッサ型浮遊機動要塞である。
巨大円盤はナリスの近くまで降りてくると停止し、その上空に悪の魔王が座っていそうなイスにもたれ掛かり真っ赤なマントを広げながら左手を頬にあて、くすくすと笑うギニアスの姿が映し出されていた。

「はじめまして、地球人の諸君。そしてナリス、君に僕の姿を見せるのは初めてだね」

『ギニアス・・・』

ナリスは彼を恨むようにキッっと睨みつける。

「困るなぁ、ナリス。ゲームを勝手に終わらせちゃあ…」

ギニアスはお手上げのポーズを取ると首を横にふり大きくため息をつく。

『あなたが・・・、やったの・・・?』

「そう、君に余計な事を吹き込んでいたみたいだからね。お仕置きさ」

くすくすと笑うギニアス。

『ふざけないで!!!!!!!』

大音量の声で罵声を浴びせるナリス。
その声に大地は大きく振るえ、周囲を跳んでいた鳥たちが一瞬で木っ端微塵に吹き飛んだ。

「君は僕の玩具なんだよ?しっかり働いてくれないと困るんだよね」

『冗談じゃないわ。私はもう嫌なの!はやく私を元の大きさにもどしなさい!じゃないと宇宙船ごと捻り潰すわよ!!』

「残念だけど、それは無理だと思うよ?」

『ほんとむかつくわね・・・、喧嘩売ってる…』

ドックン!!!

突如、ナリスの見る世界が大きく歪んだ。

『あ、あれ・・・』

急に視界がぼやけ、立ちくらみを覚えたナリスは思わずその場に膝をついた。

ズズゥゥゥゥゥゥンンンンン!!!!!!!!

その衝撃で周辺にあった建物の窓ガラスは粉々に吹き飛び、回りにあった比較的小さめのビル郡はまるで将棋倒しのように次々と倒れていった。
ナリスは自分の体の異変に気づいた。
体が縮むような感覚に見舞われたのだ。
その証拠に彼女の視界はみるみる低くなっていく。

「どうやら、時間切れみたいだね」

『なんで・・・すって・・・』

ギニアス笑いながらナリスを見下ろしていた。

『うぅっ・・・』

全身に走る痛みに額に汗を滲ませ、顔を歪めるナリス。
そして全身を覆っていた痛みがなくなった頃には、ナリスの身長は最初に巨大化したときとほぼ同じ150メートル前後にまで小さくなっていた。

『そ、そんな・・・』

ナリスは立ち上がると、自分に起きた異変に困惑していた。

「いっておくけど、あそこまでの大きさになれたのは君の中の負の感情が一気に爆発したからさ。
余程、憎かったんだろう?君の大事な服をボロボロした彼らが…」

『・・・・・・』

悔しかった。
そして自分が情けなかった。
こんなやつを喜ばせるために暴れていたなんて・・・。
ナリスは唇を深くかみ締め、拳をふるふると振るせる。
彼女の頬から一滴の涙が地上に向かって零れ落ちる。

「さて、君には僕の地球征服のための兵器としてもう一度暴れてもらおうか」

『だ、誰かあんたの言うことなんか!!』

ナリスは右手を胸をあて、左手を大きく広げギニアスを睨みつけた。

「これでもそんな事を言っていられるかな?」

パチンッ!

その音を合図にテーダは部下に指示をを出す。

「マインドコントロール装置起動!」

「はっ!」

すると宇宙船の上部から一本のタワーのようなものがせり出し先端部分が赤く点滅し始める。

『う・・・』

頭に手を当て苦しみだすナリス。

『うわあああああああああああ』

やがてその瞳からは生気が消え、まるで意思を持たない人形の用にナリスは立っていた。

「さぁ、ナリスよ!おまえの力を地球人に存分に思い知らせてやるのだ!!」

『はい、ご主人様・・・』

「はっはっは、あーっはっはっはっは」

その言葉を最後にギニアスのホログラムは消えてしまった。
ギニアスに操られたナリスは大きく一歩踏み出す。

ズッシーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!

「うわああああああ」

「きゃああああああ」

再び悲鳴が飛び交い街は大パニックになり、住民たちは再び怯え逃げ惑った。

「ふふふ、いい光景だよ。もっと怖がらせてあげようか…テーダ、制圧部隊を出してくれるかい?」

「はっ!地上制圧部隊降下用意!」

要塞の下部にあるハッチが開き降下用ポッドが次々と射出され、地上に向かって落下していった。
地上にはまだ避難途中の住民たちが数多く取り残されていた。
やがてそのポッドが地面にめり込むとハッチが開き、重々しい重低音と共に中から3本足の黒いボディをしたロボットのような物が次々と姿を現した。
地上制圧用の大型多脚戦車『ゴンガ』である。

「おい、なんだあれ・・・」

避難途中の住民群れにいた一人の男が突如出現したゴンガを指さす。
次の瞬間、ゴンガは大きく踏み出し、街を破壊しながら近づいてきた。
さらにゴンガの下部から飛行用のバックパックを背負いレーザーライフルで武装したギガント帝国の武装兵たちがライフルを連射しながら次々と降下してきた。

「に、にげろーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

パニックになった避難民たちは我先にとこちらに向かってくるゴンガとは反対方向に逃げ始める。
付近に展開していた戦車隊も完全に不意打ちを喰らい、たいした反撃をできぬまま次々と破壊された言った。


一方そのころ…


桐生たちは市街地を避難用シェルターに向かって走っていたが、突如現れた無数の多脚戦車に遭遇し慌てて建物の物影に身を潜めていた。

「あれがナリスを巨大化させた張本人か…」

「見たいですね、でもナリスさんが再び暴れ始めるなんて…」

彼らは携帯していたラジオからの放送で再びナリスが市街地を襲い始めたのを知った。

「君は、彼女がまた自分の意思で私たちを襲っていると思っているのか?」

「それは…ないと思います」

葉山少佐は彼の言葉をきっぱりと否定する。

「私もそう思う」

彼女の意見に桐生も頷いた。

「操られているのでしょうか?」

「その確率が一番高いだろうな」

桐生は辺りを見渡す。

「あれを使おう」

桐生は自分たちがいる場所から50メートル程離れた先に乗り捨てられているオートバイを指差しながら言う。

「あれでアバロンに合流し、情報を集めよう」

「反連邦組織にですか?」

「ああ、どうせ本部に掛け合ってもまともに相手にしてくれるとは思えん…」

「でも…彼らは…」

「ナリスも言っていただろう。過去の楔にいつまでも囚われていてはいけないと」

「わかりました。行きましょう!」

「よし、あの多脚戦車が通りすぎたら一気に駆け抜けるぞ!」

「はい!」

そして彼らは多脚戦車の後ろをすり抜け、二人はオートバイに跨り桐生はエンジンをかける。

「しっかり捕まってろよ」

その言葉に葉山少佐は彼の背中に顔をよせ、強く彼に抱きつく。

ブルン!ブルーーーン!!!

「(絶対に助けてやるからな!待っていろナリス!!)」

桐生は心に強くそう誓うと反連邦組織『アバロン』の本拠地へとオートバイを走らせた。



第4話へと続く…。


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あとがき(どうやら出演者が作者に言いたい事があるようです)

葉山「ちょっと作者さん!」
作者「な、なんですか?いきなり…」
葉山「せっかくハッピーエンドで終わりそうだったのになんて事をしてくれたんですか!」
作者「近い、顔が近いって…(汗」
葉山「質問に答えてください!」
作者「し、しかたなかったんですよ、当初はこんな話にするはずじゃなかったんですから…(滝汗」
葉山「もし、このまま詰まってクダクダで終わらせたりしたら今度は私が巨大化してあなたを踏み潰しますからね!!!」
作者「はい…、肝に命じておきます…」

バタン!(扉を閉める音)

作者「ふう、参ったなぁ…、また新キャラだして無理やりつじつま合わせるか…(ボソ」

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