目を覚ますと、屋外にいた。周囲に建物も植樹も見当たらない。地面はサラサラという感じで、灰色の砂が地面に敷かれているようだった。

レナ『お姉ちゃん、無事到着したわね』
「レナ・・・?」
いつの間にか、ワイヤレスイヤホンを付けさせられていた。レナはそれを通じて話していた。近くにはいないらしい。

レナ『寝ぼけているところ悪いけど、状況を説明するわ』
レナ『捜索していた東京を捕捉できたの。奇跡的な幸運だった。でも、余りにも小さくなってしまったから、私じゃあ直接触れられなかったのよ。送り込める条件を満たしていたのはお姉ちゃんしかいなかった。そこで、お姉ちゃんを転送させてもらったわ、東京の街中に』
「街中って、これ、まさか・・・」
体を起こして辺りを見渡す。何にも遮蔽物が無い平地、ではなかった。目の前に広がる景色は、航空写真のようだと分かった。
砂の感触のようだったのは、微小な建物群だった。
「ウソでしょ?これが東京の街?私をこんな巨人にして、どうするつもりなの」
レナ『違うよ、巨人じゃないわ、お姉ちゃんは。言ったでしょ、東京は分子サイズになってしまった。だから、お姉ちゃんにも小さくなってもらったの。それでもそのくらいまでしか、縮小できなかったのよ」
「でも、これじゃあ東京の街を踏み荒らす破壊の大巨人になってしまうじゃないのよ?!」
起き上がった背中から、パラパラと砂粒、いや、圧壊した瓦礫屑が舞って落ちていくのを感じた。
それは私の身体よりもずっと小さいものだ。しかし、それが何千万トンもあるなら、私はとんでもない大きさになっているに違いない。

レナ『さて、お姉ちゃんにはやってもらいたいことがあるの。今からスマホに送る座標に向かって欲しいんだけど』
「ちょっと待って、いきなりそんなこと言われても、心の準備が出来ていないわ」
レナ『そうよね、まずは深呼吸して心を静めて』
言われるままに、大きく息を吸った。すると、突然激しい頭痛に襲われた。
「うっ、頭が割れる!!」
レナ『落ち着いて!この世界では、ある条件で自分の肉体の大きさを自由に変更できる。だから、今の痛みは錯覚に過ぎないのよ!』
「え?どういうこと?」
レナ『とにかく、その地点に行ってみてちょうだい。そこで、やってほしいことが待っているわ』
「もう・・・訳分かんない」
私は頭痛に耐えながら立ち上がった。そして歩き出した。
足の裏に感じる地面はとても硬く、まるで金属板の上を歩いているような感覚だ。一歩踏み出すごとに、大地が激しく揺れ動いた。


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